闇と影   作:春の雪舞い散る

15 / 67
精霊の巫女の周りに人が集まり始めてきた…巫女を助けたいと願い…


噂の主③

ただでさえ目立つパステルカラーの可愛いエプロンを着けた留美菜達の屋台はダントツに目立っていた

そこにファッションショーのラストで着ていたワンピースのままで現れたチサとりんが一気に客を集めた

二人が手伝い始めると四つ用意した鍋はあっという間に底を尽き空いた順に追加を用意してるけどとても間に合わない

四人はまだまだ材料を刻んで鍋の準備をしている留美菜達の様子を見ながら

「りんとそのお嬢様の手が空いてるのならうちの店も手伝っておくれでないかい?」

と聞かれ

「チサちゃん良い?」

とりんが聞くから

「りんちゃんの親しい人なの?」

そうチサもりんに聞くと

皆が「時化て漁が出来ない時のお昼ご飯食べに行くお店なんだ」

そうりんに教えられて

「そうなんだ、じゃいつか皆で食べに行きましょう

でも今日は二人でお手伝いしましょ♪」

そうチサに言われて手を繋いで蕎麦屋に向かった

未だ昼飯には微妙に早い時間で留美菜達の鍋を食べ損ねた物達が軽く腹に入れておこうと蕎麦屋に集まったが勿論チサとりんが目当てだ

そんな訳で蕎麦屋も瞬く間に売り切れにした二人は

「りん、そちらのお嬢さんと皆の分用意して有るから今のうちに食べときな」

そう言って皆で熱い蕎麦を振る舞われ

「おじさんの店、冷たいお蕎麦も有りますか?」

と聞かれた主が

「お嬢さんは冷たい方が良かったのかな?」

そう言われたチサが

「私は平気だけどせっかくの美味しいお蕎麦が冷めて延びるより冷たいお蕎麦の方が猫舌のみこちゃんには良いかな?って思ったんです」

と言われた主が驚いて

「みこちゃんって人魚姫様の事かい?猫舌だって噂は聞いてるがそんなにすごいのか…?

あぁ勿論冷たいのも有るからいつか一緒に来ておくれ」

と言われて

「はい、必ず行きます」

そう嬉しそうに返事され素直に嬉しい主だった

昼時になんとか間に合った鍋を見て

「チサちゃん、隣のおまんじゅうとお握り買って鍋と一緒に観月様の所に差し入れに行こうよ」

そうりんが提案すると

「じゃありんちゃんはおまんじゅうを買って、私はお握りを買うから」

と二人の会話を聞いていた店番の婆さん二人が

「りん、うちは金は良いからうちも手伝っておくれでないか?」

「お嬢ちゃん、うちも金は良いからお握りを鍋とセットで売ってくれないかい?」

二人にそう言われて共に二十個ずつ分けて貰い鍋と共に留美菜が控え室に運び込むと

「みこにはおまんじゅうと鍋を器に入れて持っていってあげて

マイはお茶を持って留美菜を案内してあげなさい」

そう言われたマイに命がモデルをしている所に案内された留美菜が様子を見た

すると命は広場のシンボルとも言える水飲み場から流れる人口の川縁の岩に腰を下ろし竪琴を胸に抱くと言うポーズを取っていたが…

命の顔はひきつって強張っていた

「みこちゃんが休憩に入りまーす」

努めて明るく声を張り上げ忍に手渡されたタオルを巻き付けると忍が抱き上げ椅子に座らせ

「みこちゃん食べられる?」

そう言ってまんじゅうを差し出したけど緊張で強張っていた命の手は思うように動かない

物思いに更けると微動だにしない命も動いてはいけないと言うのは初めての経験

大公邸の頃からしたらかなり解消されたかに見えた人見知りもさすがに歌も歌えずただじっと見詰める視線に耐えきれない

だから留美菜の声を聞きその顔見た瞬間それまで堪えていた涙が堰を切り止めどなく流れ落ちた

しかし不謹慎は承知でも画家達はその表情を書き止め甲斐甲斐しく命の世話を焼く留美菜

そしてその甲斐あって徐々に表情が和らぐ二人の姿や表情を余す事無く書き止めた

勿論食事を終えお茶も飲んで一息入れた命がお礼に留美菜のリクエストに応え唄う姿もスケッチした

後半は命に頼まれ参加者の邪魔にならない場所で見守っていたので一度の休憩を挟み無事その役目を果たした

そして終了の時間になり

忍に抱かれ退場する命を見送りひとつの決意を秘めて皆の元に戻る留美菜だった

 

チサとりんが手伝って大いに盛り上がった出店は売り切れ店が続出

ライバル店が早い段階で店仕舞いしたので残りの店もチサとりんが手伝って更に盛り上がった

今まで命の影に隠れ気付かれて無かったチサが改めて注目を集めあの紅い髪の少女は一体何者といった声も上がり始めた

そのついでと言うか副産物言うか手伝った店の数だけ

「売り物で悪いけど…」

そう二人に持たせたものだから練り物の串焼き、甘いまんじゅうも蒸かしたのや焼いたものに焼き菓子

魚介類の串焼きに煮凝り等々が集まり鬼百合を驚かせたけど酒の肴になるものは鬼百合が貰い受け馬車に運んだ

その途中何やらキョロキョロしている留美菜達に気付いた鬼百合が

「留美菜、こんな所で何してるんだ?帰り支度はもう済んだのかい?」

と、その聞き覚えのある声に振り返り

「あっ…鬼百合さん」

そう応えたた留美菜に

「何だ、なんか探し物か?」

と、聞かれ

「今日見ていたみこちゃんはやっぱり可愛くて…

私にも何かみこちゃんに出来る事有るんじゃ無いのかな?

って考えてたら私も側に居たいって気持ちが我慢出来なくなって…

母さんにみこちゃんの側に行きたいって言ったら一緒に観月様にお願いしてくれるって…」

留美菜の言葉に母親が頷くのを見て別の母親が

「アタシだってみこちゃんやチサちゃんの側に居たいって今まではっきり物を言わない娘が言ってくれたから私もその気持ちを大切にしてやりたくてね」

話を聞いていた鬼百合は

「りんが今あるのは勉強や作法を一生懸命に習ったからだ

お前達もりんに負けない位頑張れるか?」

そう聞かれて

「日々漁に頑張るお父さんやお母さんも子供の頃から頑張ったから今があるってよく聞いてます」

「初めてのお手伝いって思えない位に器用に屋台の仕事をこなすチサちゃんみたいな特別な才能なんかない私達は頑張るしかないですよね?」

「初めての漁で船酔いで散々な目に合っても親父みたいな一人前の漁師になるんだから船酔いなんかにいつまでも負けてらんねぇからよっ!

そう言ってる兄ちゃんが格好いいって思えたから私もみこちゃんの側に居たいなら頑張るしかないですよね?」

そう口々に言う少女達に

「お前達の決意を確かに受け取ったからアタイが仲介に立つが心配するな

確かに観月は直接お前達を知らないがそのエプロンは誰にもらった?

ユカとミナがお前達ならって託したんだろ?

つまりその二人が認めてるしユウだってお前達が良い娘だって知ってるんだからよ、ちと待ってな」

そう言って駆け出す鬼百合を見送ったが程なく戻ってきて

「明日の朝岬に出掛ける時間にりんの家の前に迎えの馬車を寄越すから荷物を用意して待ってなさい…だとよ

明日はアタイも迎えに行くから楽しみにしてるぜ」

と話してると片付けを手伝っていたチサが

「留美菜ちゃん達も来てくれるの?皆が来てくれたらみこちゃんも喜ぶから待ってますね」

そう言って母親達に頭を下げ馬車に向かって歩いていった

「もっとも冷静さを失っている姉さんは逆に凄く怖いんだけどね…雪華は覚えてないだろうけどね」

そう苦笑いする深潮に?と言った表情の雪華

そんな四人に観月が

「始まりますから静かになさい」

そう声を掛けると

「急の事ゆえ皆も状況が分からぬであろうが以前より陛下より男爵任官の打診を受けていた劉そ啓吾が承諾

その為にこの任官式を急遽執り行う事と相成った、陛下…」

そう筆頭大臣が声を掛けると王妃と市長夫妻を従えた国王が席の後ろの垂れ幕から現れ国王の前で市長が膝まづき…

王妃の前では夫人が膝まづいている

お洒落な母の見たてでいつもこざっぱりしてる父が着ているのは一目でわかる高級なタキシード…もしかして美月製

母が着ているのも明らかに美月製のパーティードレスで初めて見る二人の姿にその意味を考える春蘭

その四人に向かい

「陛下はこちらを、奥方はせっかくのドレスがシワになるから王妃様の隣に立って控えなさい」

国王に小箱を渡しながら夫人に声を掛ける大臣に小箱を受け取り頷くと

「劉啓吾、陛下の御前に…」

そう言われて一旦立ち上がり国王のすぐ側に近寄り今度は方膝を着き控えると

「劉啓吾、長年に渡り王都市長の歴任大儀であった

これからはそなたの手腕を男爵として王都のみならず国全体の為に発揮して欲しい」

そう告げられ

「我が身には過ぎたるご厚情ではありますが私を推挙下さった大臣や陛下の恥にならぬ様精進を重ねるつもりです」

そう宣言し妻を見て

「無論お前も力を貸してくれるのであろう?これまで同様に」

そう夫に言われ微笑みを浮かべ頷くと会場は割れんばかりの拍手に包まれたさ

そして市長を立ち上がらせると勲章の入った小箱を授け

「精霊の巫女様をお迎えした我が国は何かと賑やかになろうが期待している」

そう言って右手を差し出すと市長それを両手で受け取り

「どうせ賑やかになるのであれば皆が笑顔で居られるよう尽力致します」

そう答えると

「全くこれ程の重大な事を思い付きでされては晴れ舞台で新しいドレスの一着も用意出来ない奥様がお可哀想です

幸い女神の祭典の為のドレスが仮縫いまで仕上がっていたから良かったものの…」

と渋い表情で夫を睨む王妃に

「全くこれ程の重大な事を思い付きでされては晴れ舞台で新しいドレスの一着も用意出来ない奥様がお可哀想です

幸い女神の祭典の為のドレスが仮縫いまで仕上がっていたから良かったものの…」

と渋い表情で夫を睨む王妃に

「大丈夫ですよ、伯母様…伯母様のはユミが責任を持って祭典に間に合わせてくれますからね、伯父様宛の請求で」

と、意地悪く言われ

「はははっ…お手柔らかに頼むよ」

苦笑いで答え

「後日就任披露パーティーを行うので勘弁して欲しい」そう答えたので

「それは勿論王家の主催で、ですね?」

そう追及され

「勿論…と言うより国王ではなく啓吾の友人として私個人の主催で開くつもりだ」

その答えでやっと追及が止み

「勿論私もお手伝いしますし…」

そう言って観月を見ると観月も

「命を始め皆喜んでお手伝いしますよ、伯父様」

そのやり取りを見ながら両親の晴れ姿を涙を流して見つめる姉妹達だった

翌朝観月との話し合いでユウ、ユカ、ユキ、ユミ、ミナは美月の仕事もあり仮設事務所で寝起きすることになり

A班マイ、マユ、春蘭、深潮、りん、スー

B班マキ、マナ、弥空、雪華、スエ、スズ

という編成で留実菜達は到着後に割り振る事に決まりクローゼットの整理をした

昨日ショーのモデルを務めた彼女達のクローゼットには昨日ショーで着た服が臨時ボーナスとして支給されていたためクローゼットを開けるのが楽しくて仕方無い彼女達

勿論春蘭達も昨日買って貰った一着が飾ってあり自己主張していた

歌の稽古を終えた命について命の部屋の侍女達も礼拝堂で祈る事が彼女達の日課に加わった

そして祈りの時を終え朝食が終わる頃に留美菜達が来た

ユカと春蘭が案内に立ち七人の少女達を割り振り昨日受けた説明を春蘭がするのをユカが見守っていた

最初は春蘭にライバル心剥き出しの留美菜達の視線に

(私達も夕べチサちゃんとりんの二人をあんな目で見ていたんですね)

苦笑いしながらの春蘭の

「大好きなみこちゃんの為に力を合わせて頑張りましょう」

と言う言葉に自分達の過ちに気付かされた留美菜達

着替えを終え自分達の荷物と支給された予備の制服を仕舞い終える頃命の部屋の侍女達も食事を終えて戻ってきた

その他の見習い侍女達と共に

そして留美菜達と王宮の侍女達の両者を知るりんに互いの紹介を任せ見守る二人

チサと弥空、深潮の学力はほぼ同水準で三人は自習しながら雪華とりんの指導

見習い侍女達はユキが留美菜達の指導はユウが隣室で行いミナはマナ、マユに裁縫の手解きをしながらユカと共に新作製作を作成

ユミは同室にて王妃の為のドレスに取り掛かりマイは小ホールで踊りの稽古をする命

マキはチサの側で控える事となり午前中を過ごす事に

午後はアリア女史のレッスンと都合が着かなければ半日を楽士達と過ごし

春蘭は作法、ダンス共にそつなくこなし弥空と深潮は無難にこなせるのがわかり

春蘭とチサは小ホールでユミが見守る中ダンス指導

弥空と深潮は部屋で美月の仕事をこなす傍らのユカが見守る中指導をする事になりそして三日目

朝のお祈りを済ませ着替えをする命達に

「先週は行けませんでしたけど今日は特に予定が有りませんから岬に出掛けますか?」

観月の突然な提案だったけど

「うん、岬も行きたいんだけどみこお蕎麦食べたい

だってチサちゃんズルいんだよ?みこが一人で寂しい時に留美菜ちゃん達と美味しいお蕎麦食べてたんだもん」

と命に恨めしそうに言われて苦笑いしながら

「でもみこちゃん、漁のお手伝いするんならお昼には行けませんよ?」

と言われてぶーっと頬を膨らませると

「大丈夫だよみこちゃん、お蕎麦屋さん今日は定休日だから頼めばお昼頃蕎麦を持って岬に駆け付けてくれるよ」

そう言われて膨らんだ頬がすぼまり目を輝かせて

「ホントっ、留美菜ちゃんっ♪」

と嬉しそうに聞いてくる命に

「休みじゃなくてもみこちゃんに会いたくてこっそり店を抜け出すかもねぇ~っ?」

とはなが笑いながら言うと

「さすがにそれは不味いのでは?」

心配そうに言うチサに

「休みだから大丈夫だよ?チサちゃん

 

まぁ休みじゃなかったら漁のお手伝い終わったら鬼百合さんか誰かに頼んでみこちゃんとチサちゃんだけでもお店に連れて行ってもらえば良いだけの話だしね」

と生真面目に言う小明(あかり)に

「確かに小明の言う通りだけどそれじゃ私達がつまらないよ?ね、春蘭さん?」

同じ見習い侍女でも歳上で聡明な四姉妹でも特に春蘭を姉の様に慕う岬の子達は四人もさん付けで呼んでいるがいきなり振られたその春蘭が

「そうですね、私だってみこちゃんのお供をしたいですからつまらないと言うか寂しいですね…」

その春蘭の言葉を聞いて

「蕎麦屋さんが休みだからホント良かったよねっ♪」

そう言って笑いあう少女達だった

 

 

「あ、おばさんおはよーっ!」

聞き覚えのある声に洗濯をする手を止め振り返ると

「りん、それに留美菜…お城にいるはずのあんた等がこんな所で一体何をやってんだい?」

大きな声に驚いて蕎麦屋一家が顔を出すと遅れてきた命がチサに連れられてきたので

「人魚姫様っ!」

と叫び声が上がったけど当の命はヒバリに言われた事と未だ見たことの無い蕎麦で頭が一杯で聞こえてなかった

「この間おじさんにお蕎麦ご馳走になったのみこちゃんに話したら

チサちゃんばっかしズルいって言われちゃって…」

苦笑いするチサに代わり

「留美菜達が今日は定休日だからと聞きましたからどうでしょうか?岬で臨時の出張営業をお願い出来ませんか?」

ユカからの突然の提案に驚いて顔を見合わせる蕎麦屋一家に

「仕込みの時間なら大丈夫です

みこちゃんはお母さん達の漁のお手伝いしに行くからお昼前迄に食べられる様に出来れば良いですから」

そうりんが言い

「海軍の非番の方達が既に岬で釣りをしながら待ち構えてますしね」

とユウも言い

「そうだね、岬の事はかなり噂になってるから行きゃかなりの人が居るんだろうね…

よし分かったよ、人魚姫様に喜んで頂けるようしっかり支度して岬に向かうとしよう

あんた、仕度するよっ!」

そう声を掛けると

「あぁ大急ぎでな、親父とお袋も頼むっ!」

そう言って幼い息子と娘を見やると

「行こ…」

いつの間にか命が我が子達に手を差し出すのを見て

「何遠慮してるんだ?留美菜にりん、二人を頼んで良いか?」

そう聞かれた二人の答は勿論

「みこちゃんが二人を招待してるんだから任せてください」

そう言って二人を馬車に招き馭者は岬へと走らせた

馬車が岬に着くと岬はいつもと異なる雰囲気があった

漁師の子供達、画家、海軍の兵士達とは明らかに異なる市民達がちらほら混じっているのだ

もっとも美月のスタッフは何人かの人     達から岬の事を聞かれていたので予測の範囲内ではあった

ただ、これまでの二回は幼い子供は別として海兵隊と海軍の兵士だけだったから命が岸辺で裸になっても目を背けていたが…

「マイ、みこちゃんの服を脱がせタオルを巻きなさい

瑞穂様はタオルを巻いたまま水に入れてあげてくださいまし」

そう言われた二人の手伝 で沖に向かって泳ぐ命を残念そうに見送っているのは始めて訪れた者達なのは明白だった

命が潜るといつもなら滅多にお目に掛かれないような獲物が少なからず上がり海女達を喜ばせた

今日も命が現れてから漁の調子は一変し何処から現れたかのように漁はあっという間に一日の限界量に達し海女達は漁港に向かい

命はは漁の途中見付けたとて綺麗で大きな貝殻で

「観月様に見ていただいたら?」

そう言われて運んでいる途中

その一方で鬼百合と柳水に船が

苦手な女神の騎士団三人が漁の手伝いに加わっていた

大きな軍艦と違い小さな漁船の揺れは軍艦比では無い

無論未だ船酔いは克服出来てないが風の精霊救出以降日に日に高まる女神の騎士団の一員で有ることの自覚と覚悟

それでも己が使命に気付いた男達士気を挫くものではない

それがともすると船酔いに負けそうな自分達を支えていた

海もそんな三人に大漁と言う形で応えてくれた

だがそれ以上に騎士団の三人と鬼百合に柳水が持つ命の蒼い霊玉…

そして柳水が持つアクエリアスの祝福を受けた銛が三人を祝福した

漁師達が魚をより分けている間の暇潰しする鬼百合と柳水の竿を賑わせた

鬼百合が釣り上げたのは二尺半の花鰹二枚に桜鯛は一枚で柳水が四本の三尺クラスの大マグロ

鬼百合も知っての通り花鰹と桜鯛は本国では大公領程の付加価値は付かない

だから網元の勧めもあり王宮に持ち帰り観月初め大公領の乙女達に食べてもらい

桜鯛は岬で騎士団の三人に振る舞うつもりだ

そして大マグロの方はと言えば相応の魚と交換して貰い岬に運んでもらうことにして交渉を成立させた

陸に上がった鬼百合は花鰹を担いで王宮に戻り観月に報告し厨房に運び込み

料理長に任せたので岬に向かおうとしたら葡萄酒一樽持って行くように言われて遠慮せず持っていくことにした

 

漁のお手伝い終わり岸辺に近付いた命は陸を見て驚いた

岬に居る人の数が算術の苦手な命にもわかる位に増えていて自分の姿を見て歓声を上げていた

その事態に怖じ気づいた命は取り敢えずチサ達が遊んでいる潮溜まりに行き

「何でこんなに沢山の知らない人が居るの?」

と聞くと

「時々みこちゃんがこの岬に遊びに来るらしいって話がかなり広まってるらしいの

で、皆さんはただじゃ申し訳ないからって屋台の時と同じ代金を支払って鍋やその他の食べ物を買って食べてるのよ」

そう言われても事態についていけない命が頭を抱えていると

「深く考えなくても良いですよ?みこちゃん

ほら、潮溜まりで遊んでる子達…初めて見る子達も皆仲良く遊んでるでしょ?

だからみこちゃんも岬に友達か増えたって思えば良いだけの事じゃないのかな?」

そう言われて左の掌に右の拳をポンと打ち鳴らし

「おおっ、成る程…チサちゃん頭良い」

と言われて

(みこちゃん…鬼百合さんの変な癖移っちゃってる…)

内心そう思って苦笑いしながら

「所でさっきまで何か持ってたみたいだけど…」

そう言われて水中から出したのは大きな二枚貝の一枚で

「綺麗だから見てたら留美菜ちゃんのお母さんが持って帰って観月様にお見せしたら?って言われたの

他にも色々見付けたんだよ?」

そう言って見せてくれた魚籠には色とりどりの貝殻が入っていて

「綺麗なのが一杯みつかったんですね?」

チサにそう言って貰い嬉しそうに微笑む命だった

「そうそうみこちゃん、今お蕎麦屋さんがみこちゃん用のお蕎麦を湧水に晒して冷たいお蕎麦用意してますから上がってお洋服着ますか?」

と尋ねられて

「うん、お蕎麦食べたい」

そう命が答えたから

「瑞穂さん、みこちゃんをお願いします

阿さんはこれを馬車に運んでもらえますか?」

と、チサに声を掛けられた三人は膝下まで水に浸かり命の尾ひれが水に浸かる高さまで抱き上げるとマイがタオルを命の身体に巻き付け

それが済むと一気に抱き上げ二人で馬車に向かうその後を阿も貝殻を担いで馬車に向かった

見習い侍女達はユキが留美菜達の指導はユウが隣室で行いミナはマナ、マユに裁縫の手解きをしながらユカと共に新作製作を作成

ユミは同室にて王妃の為のドレスに取り掛かりマイは小ホールで踊りの稽古をする命

マキはチサの側で控える事となり午前中を過ごす事に

午後はアリア女史のレッスンと都合が着かなければ半日を楽士達と過ごし

春蘭は作法、ダンス共にそつなくこなし弥空と深潮は無難にこなせるのがわかり

春蘭とチサは小ホールでユミが見守る中ダンス指導

弥空と深潮は部屋で美月の仕事をこなす傍らのユカが見守る中指導をする事になりそして三日目

朝のお祈りを済ませ着替えをする命達に

「先週は行けませんでしたけど今日は特に予定が有りませんから岬に出掛けますか?」

観月の突然な提案だったけど

「うん、岬も行きたいんだけどみこお蕎麦食べたい

だってチサちゃんズルいんだよ?みこが一人で寂しい時に留美菜ちゃん達と美味しいお蕎麦食べてたんだもん」

と命に恨めしそうに言われて苦笑いしながら

「霊力が解放されたあの姿の時のは参考にならん

全て霊力が補ってるんだからな身体能力、体力ともにな…

しかも未だ人魚化に水が必要な状態じゃ未々半人前としか言えんと思うが?」

そう言われて悔しいけど何も言い返せない命に

「踊り…覚えたいんだろ?歌だってもっと一杯歌いたいんだろ?

だったらもっと歩いて体力着けな?

一杯歩いて踊りの稽古を一杯すりゃ飯も食えるようにならぁ」

そう言われて少しずつ歩く機会を増やし始めている

歌の稽古、お祈りを終えた命が部屋に戻り食事様のドレスに着替えを終えると食堂に向かった

命を送り出した後しばらくして自室から観月が現れ

「春蘭…お茶、ですか?良い薫りが漂ってますが」

そう尋ねられたので

「はい、薬草や香草に詳しい母が調合したオリジナルブレンドのお茶です」

と春蘭が答えると

「良かったら私にも一杯淹れてくださらない?」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。