迷子
五章 迷子
①迷子の迷子の人魚姫?
体力はすぐにつくものではないけど着実に散歩の距離は延びている
未だ真琴の望む命自身が生きる意味を見出だすまでには至ってないが興味を持った踊りをちゃんと習いたい
あの時見た芸妓達の様に踊れる様になりたい
その気持ちこそが生きる活力となり始めている命は徐々にではあるけど食事量が増えている
世話をする者が後一口、せめて一匙でも…と思う一匙を受け入れ食べるようになり始めている
そのせいかアリア女史からも
「最近声の延びが良くなりましたね」
そう誉められご満悦の命
そして再び岬に行く日になりこの日起こる大騒ぎを知らず浮かれ気味の命の部屋
いつものように岬に行き漁の手伝いを終えてりんの母親達を見送るとぼんやり空を眺めていた
気が付くと南国の日差しは閉され海は荒れに荒れていた
その状況の変化をぼんやり眺めていると波に弄ばれる船が一隻
しかし乗組員達を苦しめているのは時化だけではない
空から攻撃を仕掛けるガーゴイルの群れ
その群れが放つ闇の波動を見て不快そうに顔を歪めると
ー青龍双爪牙っ!ー
そう呪文を放つと青龍の左右の爪と牙がガーゴイル達を襲った
船を覆う様に群がっていたガーゴイルが命に気付き生き残った半分が命に襲い掛かったけど
「ふんっ…」
と鼻を鳴らし
「双頭の黒竜炎っ!」
と放たれた呪文はガーゴイル達を呑み込み塵ひとつ残さす消滅させた
だが二度目に放たれた呪文を知らぬ闇の者はない
残っていたガーゴイル達パニックを起こし逃げ惑い一匹残さず逃げ去った
命が船に近付くと乗っている何者かが首を横に振り一本のロープを投げてきた
命がそれを受け取るとその何者かは頷くと船は霧の中に消えていった
暫く船が消えた方を見ていたけど理解出来なければする気もない命にはどうでも良く考えるのを止めた
(みこを呼ぶ声がする…みこが知ってる声がみこを呼んでいる…鬼百合の声だ…)
波間に漂ううちにいつのまにか居眠りしていた命が鬼百合の声で目を覚ました
掴んでいたはずのロープが無いこと気付き変な夢を見ていたんだと思っていたら鬼百合に
「お前…こんな所で何やってるんだ?」
そう聞かれて
「お空見てたら寝ちゃってた…」
寝起きの顔でそう言われて
「お前なぁ~っ…」
そう言って肩を落とす鬼百合に
「そういうみこなのだから仕方無い
鬼百合、みこを引き上げろ」
そう言われて命の身体を引き上げると左手がロープを掴んでいる事に気付き柳水にタオルを巻かれた命に
「みこ、こいつは何だ?」
そう言ってロープを見せたが
「わかんない…でもいー物だから鬼百合にあげる」
命のその一言で今までは全く手応えの無かったロープに引きずり込まれそうになり慌てて踏ん張り
「わりぃ柳水、ちぃーとばかし手を貸してくれねえか…」
そう言われて二人掛かりでもかなりの苦戦はまぬかれず一刻の戦いを経て船に寄ってきたそれを見た漁師の一人が
「芭蕉扇…」
呟いたがその巨体は優に十間は越えるだろう大物で正直この船団では最大の船でも積みきれないから又も曳航して帰る事になる
「芭蕉扇か…こいつを市場に出したらいくら位の値が付くんだ?」
留美菜の父親に聞くと
「新型漁船四隻買っても釣りが来るだろうな…」
そう言って溜め息を吐くと
「ならこいつを売って船を買いな
まぁ流石にこんだけの獲物をただっうのは互いの関係上良くねぇ」
そう言われて
「ワシもそう思うが…さっき言った価格に見合った対価をワシ等には払えんぞ?」
と答えると
「取り敢えず四隻一気に買える訳じゃなかろう?
まず最初の一隻を買ったら一番古い船をアタイにくれ
んで残り三隻はかなりくたびれた船をちらほら見掛けるから格安で譲ってその代金をみこ宛で観月に預けてくれさえすりゃそんで良い」
そう言われても悩む留美菜の父親を他所に
「姐さん、なんか別のロープがからんでますぜ?」
そう言われて曳航準備の終わった鬼百合も気付き
「みたいだな」
そう言ってロープを手繰ると少々の手応えが有るだけで難なく引き上げられその先には四個の宝箱が括り着けてあった
「ふーん…どうしたもんか」
そう言って鍵に触れると錆び付いていたそれはポロっと落ちたので中を確かめると
「ほーっ…」
と唸る鬼百合の後ろから覗き見る柳水が
「一振り抜いてみてはどうだ?」
そう言われて手前の太刀を抜くと
「かなりの業物…名人級の刀鍛冶師の手で鍛えられた物だろう」
と言うのを聞いた鬼百合が
「判るのか?」
と聞くと
「刀の良し悪しがわかるとは言わんがワシ等漁師も魚を捌く為に包丁を扱う以上刃物を見る目は必要だからな…
そう言う目で見てもそいつの切れ味は相当なものと見える」
そう言われて
「成る程な…」
と言って他の三箱も確かめると
最初の箱には四振りの太刀、二番目の箱には小太刀が六振りで三番目の箱には短剣が八本細に最後の長い箱には短槍が四本収まっていた
「柳水、こいつは王宮に持ち帰り国王と観月に報告し扱いを相談…つか任せた方が良かろう?」
と言うのを聞いて
「私達には必要無い物だから構わない」
そう答え
「みこ、岬が見えてきた…そろそろ
皆の元に戻りなさい」
そう言われて
「うん、そーする」
そう答えるとタオルを剥ぎ取りポーンとヘリを飛び越え
「鬼百合、又後でねっ♪」
その言葉を残し岸に向かって泳いでいった
海女達が出荷を終えて戻ってきたにも関わらず命が戻らない事態に岬がざわつき始めていた
その騒ぎの中命の霊気が近付いてきたのにいち早く瑞穂にそっと教えると海に入り命を迎えにいった
岸が近くなった事もあり仰向けになり鼻唄まじりでのんびり泳いでいると胸まで水に浸かった瑞穂が
「みこ、貴女と言う子は一体何を考えているのですかっ!?」
その物凄い剣幕に気圧された命がばか正直に
「みこ、何も考えて無いよ?」
と答えたものだから更に怒りを増した瑞穂が
「見なさいあれを、貴女がいつまでも戻らないから皆心配して生きた心地じゃ無かったんですよ!」
そう怒鳴る瑞穂の目は真っ赤に充血していた
陸ではチサは泣き止んだみたいだけどユウ、ユカ、ユキにユミとミナが…春蘭と妹達…りんと留美菜とその仲間達が…
マイ、マキ、マナ、マユに非番の侍女達に見習い侍女達に海女達とその家族…
蕎麦屋等の店主達に名前も知らない町の人達…
皆か悲嘆にくれ涙を流していた…
未だに自分は要らない子と言う呪縛から解き放されていない命には理解できない感情…
それでも自分の不用意さが引き起きた事だと言う事まで理解できない命じゃない…
「瑞穂、みこ…皆に何て言ったら良いのかな?」
そう殊勝に聞かれ溜め息を吐くと
「ごめんなさいと言えば良いんですが取り敢えず何をしていたんですか?」
命を抱え陸を目指しながら聞いてくる瑞穂に
「お空見てたら寝ちゃってたの
そしたら鬼百合がみこを呼ぶ声がしたからお船に乗せてもらって近くまできたの
なんか良くわからないけど鬼百合が物凄いお魚を仕留めたんだって
お船に乗らない位大きなお魚だよ」
そう楽しそうに話され
(帰ったら観月様にお説教していただいた方いいようですね)
楽しそうに話す命の様子を見ていて完全に毒気を抜かれてしまった瑞穂に怒る気力は失せてしまったのだから
そろそろ命の身体が完全に水が離れる位置まで来るとタオルを持って待つ阿に命を渡し抱き上げて水から出した
陸に上がり皆に向かい
「ごめんなさい…」
ばつ悪そうに謝ると
「チサにミナは瑞穂様に着替えをご用意しみこちゃんに服を着せなさい」
ユウにそう指示され
「春蘭さんに手伝って頂いても宜しいでしょうか?」
そうユウに聞くと
「春蘭、頼みますよ
私達は皆さんにみこちゃんに怪我など無いからご安心下さるよう伝えて回りますから…」
と言うと
「別に何かあった訳じゃなく波間に漂ううちに居眠りしていただけ…ですね?」
そう瑞穂に改めて聞かれ
「う、うん…」
と小さく答える命を呆れてみるユウだった
船が漁港に戻り曳航されてきた魚が引き揚げられると漁港は騒然となった
ただでさえ高級魚の芭蕉扇がこのサイズではどれ程の値が付くのか想像もつかない
競りに出され値はどんどんつり上がり結局最新の船が六隻買える値で落札された
「おい、こんな大物一体どうやったら獲れるんだ?」
笑いながら話し掛けて来たのは隣村の網元で
「別にワシ等は命様の従者の方から頂いたのだが…」
そう言って暫く考え込み
「お前もこの恩恵に与れ
あの方はワシに良い船で漁をすりゃ漁獲量が増えそいつが市場に出回りゃ街も活性化し何よりうまい魚が食えりゃそれだけで幸せになれるんじゃねぇのかと…」
そう言われて自分が言った
「だがお前と違って俺にゃそんな金はねぇぞ?」
と、言われて
「ワシだって買い換えは未だ先で今資金を貯めてる途中だがあの方はこうも言った
かなりくたびれた船を見掛けるから最初の一隻を買ったら一番古い船をアタイにくれんで残り三隻は仲間の漁師達に安く譲ってやんな
その代金は命宛で観月に預けてくれりゃ良い…とな」
驚いた隣村の網元が
「何て豪気なお人なんだい…」
そう溜め息を吐くと
「うちの漁師達は勿論海軍の兵士や大公家の海兵隊のもん達にまで慕われてる程の方だからな」
笑って言われて
「わかった、その恩恵を受け俺から二人の船主にも恩恵のお裾分けをし漁に精を出すとしよう」
その他の魚も良い値で引き取られ漁獲高は他の追随を許さず鬼百合達の金一封を預かり岬に戻ることにした
「鬼百合、内密に相談したい事とはなんですか?」
観月に聞かれ波間に漂う命を見付け船に上げ渡されたロープに巨大魚が掛かっていたこと
その魚を売った金で船を買わせ今使っている船は順次おんぼろ船の船主に安く譲ってその代金をみこ宛で観月に預ける様に言った事
そして足元の宝箱を見やり
「問題はこいつだがどうやらどこぞの国かはわからんが王家の紋章らしき物が描かれてるだろ?
それに中身はかなり手の込んだ装飾が施されてるだろ?」
そう言って王に一振りの太刀を渡すと
「ウム、確かに他国訪問の際護衛の騎士に持たせても良い物だろう」
その答えに頷きながらも
「だが問題はいつ何処でみこがこいつを手に入れたのか?
それにこの紋章が何を意味するのか…
後は国王か観月の判断でコイツらを支給してやってくれ」
そう言われて観月が
「貴女が推薦する者は居ないのですか?」
そう聞かれて
「アタイが戦士としての実力を知るのは女神の騎士団の四人だけだがアイツ等は既に魔力を帯びた武器をつかいこなしてる
だから如何な業物とは言え今更普通の武器に変えさせる必要はねぇから他の者に持たせるべきだろ?」
三人が頷き
「わかりました、これらは私が預かり紋章について調べさせましょう
但しこの小太刀は真琴に持たせます」
その言葉に反論しようとする鬼百合を押さえ
「武器として持たせるなら小太刀ではなく太刀を持たせるはず
それに陛下のお言葉を聞いてないのか?
ドレスではなく戦士として公式の場に出る時の物ですね?」
その柳水の言葉に
「あっ…」
と呻く鬼百合と悠然と頷き
「あくまで礼装用ですから小太刀で十分です」
と答えるのを聞いて
「確かにそうだが真琴の腕なら闇の者でも雑魚くらいそいつでも十分蹴散らせる」
と照れ隠しで憮然と答える鬼百合を笑いながら見る四人だったが
「ですがみこと双子なのですよね?真琴は…」
その問い掛けに
「よく似てますがそっくりではありません
体型は普通の人間の物ですし顔立ちも目元がはっきりと異なりますば
垂れ目のおっとりしたみこと違ってつり上がった目元のスッキリした顔立ちの真琴をたまにお兄ちゃんと呼んでましたからね…みこは」
と観月が言えば
「ユキから聞いたぜ、アタイ等と同じ大公家の客分騎士の正装をしたら少女達にモテモテだってな」
面白そうに言う鬼百合に
「私でも全く面識の無い時に今の真琴に会っていれば紅顔の美少年と言われても疑わ無かったでしょうし気付く者も中々いないでしょうね」
と言われて益々驚く二人に
「美少年とも美少女つかない真琴は男女問わず人気を得てますからね、みことは異なる意味で…」
その言葉を聞いた王妃は
「それは是非とも一度で良いですから美月主催のパーティーで真琴に騎士の正装をさせて参加させてもらえますか?」
それを聞いて驚いている国王を他所に
「騎士の正装も良いでしょうがどうやらユミが絵本の中の王子の衣装を作っているようです」
と答えると
「さすが美月のスタッフ、仕事が早い」
そう言って手を叩き合わせ喜ぶ妻を見て上機嫌の王だった
「伯父様、また今日もお酒を頂いて鬼百合達に持たせて宜しいでしょうか?」
そう聞かれて
「遠慮は要らん、持って行きなさい」
そう言って当番の侍女を呼び
「鬼百合殿と柳水殿と厨房に向かい料理長にお二人に酒樽をお渡しする様に伝えなさい」
そう言われて
「承知しました」
そう答えると
「鬼百合と柳水は箱を持って私の部屋に、マサミでしたね?貴女はその後についてきなさい」
そう指示し
「それでは失礼いたします」
そう言って退出した
「鬼百合は少し話が有りますからマサミ、柳水をつれて二樽貰ってきてください」
そう言って二人を送り出すともう一度箱を明け
「鬼百合、この箱何かおかしくありませんか?」
そう観月に言われたものの意味がさっぱりわからず
「何がおかしいって言うんだ?」
と聞き返すと箱の中を探っていた観月が内張りの布を剥がすと上げ底になっていてその底を取り外すと皮の巾着袋が入っていて中身を確かめると
「砂金…ですね」
と呟き他の箱も確かめると宝石や貴金属が入った皮袋がぎっちり詰まっていた
「鬼百合、どうしますか?」
そう聞かれて
「さすがにこれは貰うわけにはいかねぇからみこに返す」
と答えると
「ですがみこに管理出来る物でも有りませんね?」
そう聞かれて返事に困り
「ならお前か国王もしくは王妃に任せるのか?」
と聞き返すと
「あの話がまとまればこの地に残るみこの物をいずれ大公領に戻る私が管理すべきではありません
私なら伯母様だけに話管理してもらえればいつかみこ達が必要になった時に最も有効に使って下さります」
と答えると
「国王じゃダメなのか?」
更に聞き返すと
「どんぶり勘定の傾向のある伯父様ですから国の財務関係は伯母様が監理してるんですよ?」
と言われて
「まぁ良い、アタイにゃお前に相談する以外思い付かないんだからお前の判断に任せる
王妃の部屋に運ぶときは声を掛けてくれりゃ良いからな」
そう笑って言う鬼百合の耳に足音が聞こえ
「どうやら戻ってきたようだ」
と言うと部屋の戸を叩く音がして
「柳水様が戻られました」
とマサミの声がして
「入りなさい」
と言う観月の返事で二人が室内に入り
「鬼百合、話はすんだのか?」
酒樽を渡しながら聞く柳水に
「あぁすっかりな」
そう答える鬼百合に
「ならばみこ達の元に戻ろう」
そう声を掛けると
「そうだな、急がねぇと呑む時間が無くなっちまうぜ」
と言って観月とマサミを笑わせ柳水を呆れさせた
濡れて張り付く服を脱ぎ下着から着替えた瑞穂に手渡された服は…
イベントの日に嵐が着ていたのと同じデザインだが決定的に違うのが生地の色
瑞穂が思わず赤面したその色は淡い桜色でこの時が訪れるのを虎視眈々と待ち構えていたユキの自信作
「ミナ、これしか着替えは無いのですか?」
と聞かれ
「戦士の瑞穂様には申し訳ありませんがそれしか合うサイズがありません」
勿論嘘や隠し事の出来ない素直なミナも何も知らされておらず指示された廿楽から出してきただけ
だからその本当に申し訳なさそうな顔をしているミナを責める事も出来ない瑞穂は諦めてその服を着るしかなかった
それでもやはり細身で上背のある瑞穂のスーツ姿は映え男達の視線を釘付けにし
多くの男達が一緒に呑もうと瑞穂に群がっていたがユカの視線が気になる阿、飛び火が怖い嵐と忍は気の毒そうに見守るしかなかったが
斬刃、修羅は我関せずと他人事だしモリオンと喧火は面白そうにニヤニヤ笑っているだけでだるけで誰も救いの手を伸ばさない
瑞穂の試練は未々始まったばかりだった
一方の命はチサと春蘭が整えたスタイルは
青いミニのワンピースに水色のシースルーの襞をふんだんにあしらいその背には透明の…妖精の羽を模した飾り羽をあしらったもの
そこにオレンジ色のカチューシャをアクセントにし藍色のサンダルを履いた命はまさに水の妖精だった
「みこちゃん妖精さんみたいだね」
そう笑って言われて
「うん、ホントだねっ♪みこ先におりてるから」
そう言ってドアに手を掛ける命に
「みこちゃんそそっかしいからちゃんと足元見なきゃダメですよ?」
と、言われて
「今のみこはよーせーさんだから歩かないからへーきだもーんっ♪」
そう言ってその言葉通りにポーンと馬車から飛び出した
後に残されたチサと春蘭だったけどチサが春蘭に向き直り
「春蘭さんに今からお話する事は未々計画中の話で私も会話の端々からの推測に過ぎません
ですから春蘭さん胸の中に留め置いて欲しいのですが…続きを聞いていただけますか?」
そう言って自分を見詰めるチサに頷くと
「今多くの国々から精霊の巫女、人魚姫のみこちゃんの訪問要請がひっきりなしに来ていますが…
みこちゃんには大事な使命、女神の祭典に合わせ歌の女神様の救出と言う果たさねばなりませんから
その間は国王様や観月様も祭典を理由にお断りしてますがその後取り敢えず月影の国から訪問するのが妥当ではないかと纏まり始めてます」
この話に自分がどう関わるかはわからないので
「政治的な話はわかりませんけど確かに地理的には月影の国からが無難だと思います」
と、答えるのを聞き
「観月様と美月の方達も政治不介入の原則に基づきその手の話は致しませんから私も知りません
それに私がお願いしたいのはどうやらユウさんかユカさんのどちらかが観月様の代理でみこちゃんのお供をするらしいけど…
後、ミナさんともう一人お手伝い出来る人が欲しいと観月様は考えているようですが私は春蘭さんこそがその人だと思います
勿論私が口出し出来る話じゃないけど推薦する事は出来るし応援もします
ですから春蘭さんみこちゃんを助けて上げてください
勿論りんちゃん、留美菜ちゃん辺りもお供に選ばれるでしょうけど本当にお供の一人でしかないと思います
ですから春蘭さんの様にしっかりした人がみこちゃんの側にいて欲しいんです」
と、言われて最大の疑問
「チサちゃんではダメなのですか?」
その一言に
「私はフレア様の巫女、その私の使命はアクエリアス様の巫女の同伴者ではありません…残念ながら…」
そう泣き笑いの顔で答えるチサを見て悪い事を聞いてしまった事を悔いる春蘭に
「私は私の使命を果すのがみこちゃんの為だとわかってますからどうかみこちゃんの事をお願いします」
そう言われてチサの手を取ると
「先ずはみこちゃんのお供に選ばれる様に頑張ります…それが最初の関門でしょうから」
そう言ってもらい今度は本当の笑顔を見て自らも嬉しい気持ちで一杯の春蘭だった
瑞穂を苦行から救ったのもやはり命で
「みっずっほぉーっ♪」
馬車から顔を出すと真っ先に見付けたのは瑞穂でその瑞穂に向かってポーンと跳ぶとそのまま真っ直ぐ瑞穂に向かって宙を滑り瑞穂の胸に飛び込み
「ねぇねぇ、みこよーせーさんみたいだった?」
顔を覗き込む様に見詰める命に微笑みながら
「みたいではなく本当に妖精が翔んで来たのかと思いましたよ」
そう言われて叱られて悄気返っていたのが嘘の様に笑う命を見る目はいつもの落ち着きを取り戻していた
プレイボーイの少なくない海軍の下士官のグループが
「もう一押しで俺達のグループの輪に入りそうだ」
そう手応えを感じていた所に命が現れ冷静さを取り戻したのを見てがっかりしながらも
「まぁ可愛い妖精のお出ましにそれはそれで良しとするか…」
一人が呟くと
「今日の所は諦めて普通に接しよう」
そう言って皆いつもの様に飲み始めたがつまるところ
「いつかは他の奴等を出し抜いて彼女を口説き落とすっ!」
と言うのを皆腹の中で考えてるのだけど
まぁとにもかくにも瑞穂の試練は面白がって見ていた喧火とモリオンをがっかりさせる幕引きとなった…今日の所は…
「皆遅いね…」
いつもなら既に二、三杯は呑んで上機嫌の鬼百合が未だ戻ってない事に気付いて瑞穂に漏らす命を見ながら
(そうやって人の心配はするのにご自身は心配されている自覚は無いのですか?)
そう思いながら
「大物を仕留めたのなら競りが長引いても不思議ではありませんよ?」
そう話して居ると荷車を押して女神の騎士団の三人が戻ってきて留美菜の母親に預かってきた魚を渡すと一斉に捌き始めた
瑞穂の肩に乗り三人に近寄り弓士の玄に
「玄、鬼百合達は?」
と聞くと
「姐さん達なら何やら急用が出来たから観月様の所に寄ると言ってましたが…」
そう聞いて
「そうなんだ…」
と肩を落とす命を見守る瑞穂の頭の中で
―真琴ちゃんとレムさんが側に居ない今のみこちゃんにとって鬼百合さんは特別な存在だから…―
チサの声が響くのに気付き
(私の心を読んでるのですかっ!?)
と、叫ぶと顔をしかめて
―違います…私の様に感度の高い受信能力を持つ者にとって瑞穂さん達の様に強い精神力を持つ方の思念
それはまるっきり独り言を大きな声で喋っているのと変わらないんですよ―
そう苦笑いを浮かべ額に脂汗が流れているのを見て
(大丈夫ですか?具合悪そうですが…)
そう心配して聞くと
―出来ればもう帰りたい位です
私のこの力はみこちゃんが私の身体に埋め込んだ黒い勾玉が与えてくれたもの
ウィンデイー様救出の後急激に力を増してきて特にみこちゃんが側に居る時程力を発揮するのに私自身制御出来ないんです―
そう言って溜め息を吐いているとチサの顔色が悪い事に気付いた春蘭が香草茶を差し出しなから
「これを飲んで休まれた方が良いですよ?」
そう言われて差し出されたお茶を啜ると少し落ち着いて
「有り難う、春蘭さん…」
そう言って残りを飲み干し
「馬車で横になってます…」
チサの言葉に阿が頷いてチサの身体を抱き上げ馬車に運んだ
鬼百合達が酒樽を抱え戻ってくるに気付いた命が今度は鬼百合に飛び付き空いてる左肩に飛び乗り腰掛け
「よーせーさんのお迎えだよぉーっ♪」
笑いながら言う命に
「この妖精は気まぐれで皆を振り回して大変だからなぁ~っ♪」
鬼百合にそう言われて
「え~っ?みこ鬼百合みたく人を振り回せるよーな力無いよ?」
そう言って頬を膨らませる命を周りに居てその発言を聞いていた者は皆笑い声を噛み殺して肩を震わせていたが当の命は
(皆何が可笑しいんだろう?)
と不思議で仕方なかったけど
「んな事よりみこ、ちゃんと飯は食ったのか?」
と鬼百合の不用意なその一言に命は頬を更に膨らませ
「鬼百合待ってたのにっ!行こっ春蘭さん」
そう言って春蘭の手を取ると冷たい蕎麦を貰いに行き
春蘭が器を受け取ると手頃な倒木に腰を下ろし命が食べやすい高さに持っていくと悪戦苦闘しながら自分で食べている姿は微笑ましかったけどび