闇と影   作:春の雪舞い散る

20 / 67
生まれて始めてのおお舞台と精霊の巫女としての務めをを大成功の地に果たした水の精霊の巫女の次なる舞台は?


舞い踊れ

六章 舞い踊れ

 

 

①みこが踊りを習う時

 

酔仙亭の女将は悩んでいた

あの日以来客達が挨拶代わりに

「人魚姫様が訪れてくれるのはいつなんだい?」

と、聞くようになったけどそれを一番知りたいのは女将自身でどうしたら酒場に幼い人魚姫を呼べるか…呼んでも良いのかと頭を悩ませていた

そんなある日の事、顔を歪ませた芸妓が女将の部屋を訪れて今しがた出てきた座敷で聞いた不快な密談を女将に話した

「全く…忌々しいったらありゃしないよ、あの獣達ときたらっ!」

そう女が吐き捨てる客達は以前翠蘭太夫と揉めた事の有るその客を快く思う者はなく金離れの良い客だから女将も太夫に頭を下げ店の出入り禁止は回避したのだが…

話を聞いている内にこれが太夫の耳に入ったらさすがに今回ばかりは庇えないし事と次第によっちゃ当人達だけじゃ済みそうにない様な気すらしてきた女将だに…

今回の事は自分の顔を立てて欲しいと太夫に頭を下げた自分の面目丸つぶれにしてくれた相手に同情する気等更々無い

観月に話の内容を手紙を認め招待状と共に持たせ使者を送った

招待状と手紙を受け取った観月は御法の話に何やらキナ臭い物を感じていたが真相がはっきりしなかった為様子を見ていたのだが…

直ぐ様その手紙を手に国王に面会を求め手紙を渡すと怒りも露の国王と不快感に顔をしかめる王妃を気遣い

「至急内偵を始める様に手配します」

そう告げて国王の執務室を退出した

 

 

そして命が店を訪れる日を迎え王家の馬車からまずミナが降りると続いて命が瑞穂に抱かれて降りユカ、マイ、マキ、マナ、マユ、留美菜、りんの順に降り出迎えた太夫の案内で置屋に入ると

「お招き有り難うごいます」

そう言って箱を女将に渡し

「これが命様が頂いた着物の代わりになるかは存じませんが命様が水の精霊の巫女のお披露目のパーティーでお召しになった一着、差し支えないようでしたら着物を剥ぎ取られた人形が可哀想ですから着せてあげる訳にはいかないでしょうか?」

ミナがそう女将に聞くと女将は嬉しそうに

「アタシ等が着れない美月のドレスが着れるなんて人形が羨ましいよ

しかも人魚姫様がお召しになったを…」

そう答えると太夫も

「女将、うちの新しい名物になりそうだね?」

と言うと

「若い娘達が美月のドレスの実物が見れるって昼時に殺到しそうだよ」

そう言って頭の中で早くも算盤を弾く女将が更に王宮の侍女達を見て

「もしアンタ等が嫌じゃなきゃ着物を着てみないかい?」

そう聞かれて

「宜しいのでしょうか?ユカ様…」

と聞かれて

「昔踊りを習っていた私も持ってますから経験してみてはどうですか?」

と言われてマイが

「嫌じゃ無く私達なんかが高価な着物を着ても良いのという気後れが…」

と答えると

「観月様が人魚姫様の同行を許す者ならばそれだけで十分だと思うがね?」

そう女将に言われて

「き、着付け出来ませんから宜しくお願いしますっ!」

マイが両手をついて頭を下げると

「任しときなよ…お前達、お嬢さん達の事宜しく頼むよ?」

女将がそう声を掛け留美菜とりんに目を止めると

「留美菜、りんアンタ等には…」

そう言って折り畳まれた着物を見せると

「今時これを着るの娘は居ないが昔の王家の女官童(わらは)…

今の時代ならアンタ等みたいに幼い見習い侍女が着ていた物で

うちじゃたまに皿洗いのお手伝いを頼む子達が着てるもんだが着てみるかい?」

そう聞かれた二人が目を輝かせると

「はい、着てみたいですっ!」

そう元気良く答えたので太夫も笑いながらユカを見るとユカも穏やかな笑みを浮かべ頷き

「ミナ、私達も命様の着付けを始めましょう」

そう言って表舞台の仕度が始まった

 

その一方で置屋の裏口から店に入った国王、観月と御法、忍、春蘭に護衛の嵐と

阿は命の訪れでざわつく店の内外の隙を突き国王と観月に嵐は目当ての座敷に潜り込み

御法は異国から来た芸妓で忍、春蘭は今日が初座敷の新人の芸妓と言う触れ込みでこちらも目当ての座敷に案内された

「もっと側に来なさい…」

御法の肩に手を回し抱き寄せても正体には全く気付かないけど妻子が有りながら御法に懸想する男にってはまさにタイプの女の登場だ

「生真面目で融通が利かず鈍いから自分のアプローチに全く気付かないから困らせて私に泣き付かせる筈が中々どうして

又新しい手で足を引っ張ってやるわっ!」

そう御法本人とは気付かず息巻く男に溜め息を吐く御法

そして今日の為に裏付け調査した報告書を持って隣の座敷から国王と観月に二人に付き従う嵐が入ってきて

「全く…何故お前の様な愚者が家督を継いだのだろうな?

王家とも浅からぬ名家をお前の様な愚者の為に潰すのは忍びない

家督を息子に譲り今後は一切出ぬと約束するならば不問にしよう」

そしてもう一人の商人には

「悪い噂は絶えぬがそれでもお前の商才が我が国にもたらしてくれた実績は決して小さくない

同じく早晩にも息子に暖簾を譲り隠居するのなら大目に見るが…」

そう言って御法を見ると

「みこちゃんとチサちゃんが私の服が好きと言ってくれ観月様にも認めて頂いた今の私にはもうどうでも良いことです

女好きの困った所を除けば尊敬していましたし何も知らない奥様には何とお世話になってましたから…

陛下のご判断にお任せします」

そう御法が答えると

「御法さんは人が良すぎますっ!」

そう仲居の一人が叫ぶと別の者も

「隠居するのなら反省謝罪の意味で頭を丸めな、アタシ等が刈ってやるからよっ!」

その声を聞いた国王も

「その程度の罰で許されるのなら有り難く思うが良い」

そう国王の許しを得て頭を丸められた二人が方々の体で逃げ出したが…

命の登場を心待ちにする者達にはそんなオヤジ達の事などどうでも良いとゆーより命の登場の方が大事だった

そして青い髪を高く結い上げた極上の太夫(命)が習ったばかりの優雅な歩みで練り歩き

その後ろに童(留美菜とりん)従えるその姿は一の幅錦絵さながら…

コテンっと命が派手にスッ転ぶまではだが…

「だから手を繋ごうよって言ったのに…」

そう言いながら命に手を差し出すりんと立ち上がった命に竪琴を渡す留美菜に

「えーっ、そんなの格好悪いよ?」

そう答えた命だけど

「転んでしまうのはもっと格好悪いですよ?」

そう言われても

「練習じゃちゃんと歩けたのに…」

そう本人はぶつぶつ言っていたが留美菜とりんは

(練習じゃ手を繋いでたって危なかしかったのにね…)

互いにそう思い苦笑いしあった

「ま、いっか…」

そう言って床を蹴りまるで水面に向かって泳ぐように階上に向かう姿を見て

「まさに人魚姫様だ…」

一人が呟くと皆も頷き同意して上昇する命を見送った二人に一人の酔っ払いが近付き

「お前、もしかして兄貴の娘のりんか?義姉さんの若い頃に良く似ている…

するとこっちは網元の末娘の留美菜だな?」

そう声を掛けられた二人は互いに顔を見合わせ知ってる?という表情をしていると

「お前がこの街から姿を消して何年だい?二人の親達がお前の事など話す理由は無いんだから知る訳無いだろうっ!?」

そう怒鳴られても気にする事無く

「そんな事よりお前達がここで働いているのなら一杯奢っちゃくれねぇか?」

パシャっ…

いつの間にかカウンターから出てきた女が手にしていた徳利を逆さにして男の頭から酒を浴びせ

「この一杯はアタシからの奢りだからこれで我慢して足元の明るいうちにさっさと帰りなっ!」

そう言われて

「このアマっ!」

そう喚き女に掴み掛かろうする手を別の方から伸びてきた腕が掴むと捻り上げ

「アンタ…良い啖呵を切るね、気に入った

留美菜にりん、お前達の知り合いか?」

鬼百合が聞くと二人に代わり

「こいつはりんの父親、舟頭のロンの弟でこいつがこの街を出たのはりんが生まれてすぐだから二人は初めて会った」

そう言われてじろじろ見ていると

―鬼百合、そのままその男を押さえたまま店を出なさい―

アクエリアスからの呼び掛けに従い店を出るとどこからか現れた水が二人の頭に降り注ぎずぶ濡れにした

「みこの奴めぇ…」

そう言って怒りに震える鬼百合に対しもがき苦しみ始めた男の身体から黒い煙が現れやがて消滅すると

―闇に操られついたその男を浄化しましたから後の事は任せます…―

そう言って気配を消したアクエリアス

「へきしっ!」

横たわっていた男が我に返り

「何で私はずぶ濡れでこんな所で寝ているのだろう?」

そう呟く男の様子を見る二人の少女の顔に見覚えがあり

「お前…兄貴の娘のりんか?姉さんんの若い頃そっくりだ…んで一緒にいるのが網元の末娘の留美菜だな?

義姉さん達と一緒で仲良いらしいな…」

先程とは違う穏やかな笑顔で言う男を不思議そうに見る他の客達

「鬼百合、大変な事になってしまったな?」

そう言われて

「全くだ…後でみこをとっちめてやらんとな…」

唸りながら言う鬼百合に

「さっきのがみこではなくアクエリアスからの呼び掛けだと気付かぬ貴女ではなかろう?

みこに八つ当たりは止めなさい」

そう言ってピンクのフリルたっぷりドレスを手渡し

「早く着替えないと風邪をひくぞ?」

そう言われて嫌な顔をしながら

「何でこんな物を着なきゃならんのだ?」

怒気を孕ませ言う鬼百合に

「水難の相が出てるから今日大人しくしてた方が良いですよとチサちゃんがいってましたよ?と言うユウに

馬鹿馬鹿しい、そんな目にあったらこのドレスを着てやるよっ♪そう言ったのは貴女自身、貴方もさっさと立ち上がりついてきなさい」

そう言ってカウンターの中に戻っていたフロアリーダーに

「済まないが二人が着替えられる場所とその男の着替えを貸してやってください」

そう言われて

「人魚姫様の従者のアンタに頭を下げられちゃ嫌とは言えない…

仕方無い、留美菜とりんにアタシが引っ込んでる間酒や料理の配膳手伝ってくれるんなら用意するよ?」

そう言われて

「お手伝いにぴったりな服丁度着せてもらってますから任せてください」

二人が応えると

「留美菜は奥のじいさんに熱燗、りんはほらっ、手を振ってる髭親父に麦酒を持っていっとくれ…」

そう言って渡された酒を運びテーブルには置かずに

「どうぞ…」

そう言ってる笑顔で徳利を傾けると戸惑いながら湯飲みを差し出すと互いに持っていた酒を並々と注ぐのを見て

「人魚姫様の従者の二人が酔っ払い相手にそんな事してやらなくても良いんだよっ!」

と叫ぶと

「漁の後の宴会じゃいつもの事だよね?」

そうりんが言えば

「網元の娘として働く漁師達を労うのは当然の事って習いましたから普通の事ですよ?」

そう留美菜にまで言われて鬼百合を見ると

「アタイだって妹みたいな留美菜やりんが酌してくれる酒は手酌で呑むよか遥かに旨いんだからな

それに貴族にだって胸糞悪い酔っ払いだって居るんだ

少なくとも翠蘭太夫の目が光ってるこの店でそんな問題起こすような客はおるまい?

まぁさっきみたいなのは例外で心配は要らん

それに二人に酌してもらった奴等を見てみなよ?」

そう言われて男達を見てから考え込み

「そうだね、さっきおん出された様な質の悪い酔っ払いは例外だけど確かに貴族にも…

権力を嵩に余計質の悪いのが居るね…そう言って溜め息を吐き

「わかったよ、但し注いでやるの最初の一杯だけ…まぁお代わりすりゃ又そん度に注いでやるの構わないけどね」

そうフロアリーダーの女が言うと様子を見ていたが客達がお代わりに酌してもらえる酒を注文し手元の酒が残っている者は急いで飲み干しお代わりを求め一階の居酒屋が賑わい始めた

命の気配に気付いた観月と春蘭に忍の三人

「伯父様、みこが下から来ますよ」

そう言われて春蘭が襖を開けると命が王の胸に飛び込んできた

その様子を見ていた三階の客達が滅多に無いこの機会にと国王の座敷に訪れて来た

その内の二人の人間が観月と御法の目に

止まり

「あの二人が経営する店はさほど大きな店構えではありませんがどちらの店も経営者の拘りが詰まった店構えと品揃えで若い子達に評判の店です」

そう聞いて

「差し支えがなければお二人を紹介してもらえませんか?」

そう言われた御法が二人にその旨を伝えて観月の前に案内して

「こちらは真依さん、王都で人気の子供服を商っている人です

もう一人の早苗さんは十代前半の少女向けの服を中心のブティックを経営している人です」

そう言って一人ずつ紹介すると

「唐突な話になりますが先日催したイベントで発表しました美月の新ブランド、若月の服の代理店を引き受けていただけませんか?」

と、観月自身の言葉通りの唐突な申し入れに戸惑っていると

「デザイナーのユカの発案で作った服達ですが基本的にオーダーメイドの美月には売り出す店舗がなければ販売の為のノウハウも販路も無いことに気付いたのです」

そう言って笑いながら

「ですのでその打開策を考えていましたが今日ここで貴女達と出会えたのは何かのご縁

美月、新ジャンルの服の服達を貴女達に託せませんか?」

そう持ち掛けられた二人は

「あ、あの服達を私達にお任せ下さるのでしょうかっ!」

興奮を隠せない二人の声が綺麗にハモり驚きの声を上げると微笑みながら

「貴女達自らデザインを手掛けているのなら自分の手掛けた服への思い入れは理解できますね?」

そう言われて頷く二人に

「少なくともそういう感性を持った方達に託したいのですよ」

その言葉に観月を始め美月のスタッフ達が自分達の手掛けた服への思いの深さが垣間見え

「「はい、その思いと共に若月の服を私達にお任せください」」

そう答えると嬉しそうに頷いて命の側に控えていたミナを呼び寄せ

「この者はミナ、前回のイベントの総指揮者ユカのアシスタントでありデザイナーのユカのパートナーでもあります」

そう言って二人に紹介すると

「ミナさんには私の原画を基に新作を作製していただいてます」

そう言って御法からも口添えすると

「ミナ様…、「もしや雨水の精の巫女様のミナ様ですかっ!?」」

そう言って驚いた二人に

「ミナ様等と…私はユカ様の指示に応えようと必死に足掻いている者ですし精霊の巫女としても修行を始めたばかりの未熟者ですから…」

そう言って戸惑うミナに

「そうですね、今は未だ美月の準スタッフですから今の内に親しくなっておけば良いですし先々の話になりますが先日のようなイベントでの新作発表の場では色々と手伝っていただく機会もありましょうからスタッフに準ずる扱いになっていくかもしれませんからその意味でも期待しています」

 

 

大人達の話が一段落したのを見て

「みこ、まずは太夫にお稽古の成果を見ていただきなさい」

そう観月に言われた命が太夫に見てもらうために足捌きと体捌きとを見てもらうとつい先日教えたばかりとは思えないその動きに感心した太夫がいよいよ踊りを教える事になり

「せっかく着物を着ているのだから貴女達も踊りを習ったらどうですか?」

と、観月が言うと太夫の視線に気付いた手の空いている芸妓達が指導を始め普通はお目にかかれない踊りの練習風景が舞台に流れていた

暫く踊りの稽古をしていた観月が同じく命を見守っていた太夫に視線を合わせると

「太夫にお願いがあるのですがよろしいでしょうか?」

そう真剣な面持ちで言う観月に頷くと

「巫女達に着物を仕立ててみたくなってしまいましたのでその道に詳しい業者を紹介してほしいのですが…

勿論仕立て自体はそちら様ににお任せで美月はあくまでもデザインをするだけですが

後着物の小間物を扱う業者もご紹介いただくと有り難いのですが?」

そう話を持ち掛けると日頃から着物の衰退を憂い嘆く呉服屋の女将の愚痴を聞いている太夫は

「私が贔屓にしている店で宜しければご紹介致しますが?」

そう答えると

「今の貴女の姿を見れば貴女な選美眼の程は十分に伺えますのでその貴女の目から見たお勧めの店を知りたいのですよ」

そう観月が答えると

「わかりました、先方に打診しますが差し支えなければ観月様のご都合の良い日をお教え願えますか?」

そう太夫に聞かれた観月は

「この話しは今思い付きで話してますから私の予定もはっきりしてませんので明日にでものユカを私の代理人として寄越しますので日程調整をしたいのですがいかがでしょうか?」

そう問い掛けると

「そうですね、それでしたら声を掛けて呼べる店の数も増えますからその方が何かと宜しいかと…」

太夫もそう答えたので

「ユウ、聞いての通りですから明日の打ち合わせはユカとユキに任せますから二人にそう伝えてください」

そうユウに指示を与えると

「承知しました」

とユウが答えるのを聞いて

「その際我が儘承知のお願いですがみこちゃんの同行もお願いしてもよろしいでしょうか?」

そう女将が言うと一通りの指導を終えお茶を飲みに戻っていた太夫も

「そうですね、みこちゃんと共に今日踊りを教えてる子等を一緒に連れてきてくれたら今日の続きを教えますがいかがでしょうか?」

と言う女将の要望と太夫の提案を聞いて

「わかりました、みこについてはダメだと言おうものなら落ち込んで食事も喉を通らなくなりますから伯父様までお嘆きになりますしそもそも本人も喜んで参りましょう

それと侍女達に関しましては踊りを通して優雅な所作を身につけてもらいたいですからご指導うのほどよろしくお願いいたします」

そう言って言って頭を下げる観月に

「そのついでにと言っちゃなんだけどりんや留美菜に一階の手伝いに寄越してくれるとうちとしても助かるし客達も喜ぶんじゃないのかい?」

ニヤリと笑いながら言う太夫に頷きながら観月に懇願の目を向ける女将に

「わかりました、では明日ユカに同行するメンバーはみこ、ミナ、マイ、マキ、瑞穂、忍、留美菜、りんを含む漁師の娘達

御法さんは勤務を終えてからみこと合流すると良いでしょう

みこも太夫のいうことをちゃんと聞くんですよ、良いですね?

太夫、世話の焼ける子ですが踊りを習いたい気持ちは本物ですから厳しく指導してあげてください

女将さんに他の皆さんもみこの事をよろしくお願いいたします…ミナ、マイ達もみこの事を任せますからね?」

その観月の言葉に笑顔で頷く一同だったけどそう言ってもらったものの一抹の不安を覚える女将が

「王女様になられる方に本当によろしかったのでしょうか?」

そう観月にお伺いをたてると観月も

「女将、女将は踊っているみこを見て何か感じるものはありませんか?」

そう観月に小声で問われて暫く考え込んでから「あっ!」と驚きの声をあげたので

「やはりその可能性に気付かれましたね?みこのあの異常なまでの才能に…」

そう言われて頷く女将に

「未だ確証の持てないことですので内密にお願い致しますがそう言うわけですからみこと太夫の出会いはただの偶然ではないと思いますよ?私は

それに水の精霊の巫女として水にまつわる奉納踊りを習いたがるのは必然ではないのでしょうか?きっとこの出会いは舞の女神の采配なのだと私は思います」

そう答えると

「太夫、アンタには今の会話の秘密を教えよう…新しい舞姫様の師に選ばれたかもしれないアンタには知る権利があるんだからね…」

その重大さが十分に予測できる言葉に息を飲む太夫だった

 

 

そんな訳で明日も又命が訪れること知らされ二日続けての命の訪問は嬉しいが板場の者達のプレッシャーは半端なかった

始めての来店の経験を踏まえてたっぷり用意したはずの食材達が軒並み底をつくような異常事態になり板長の顔色も気の毒なくらいに青ざめていたが明日の朝からフル稼働で対応するしかないのだと腹もくくっていた

外は陽もすっかり落ちきって真っ暗になり町に火が灯る頃になり

「みこ、今夜の舞台を頼みますよ」

観月に言われた命は頷いてミナから竪琴を受け取ると宴舞台に舞い降りて歌い始め今日の宴は最高潮に達しようとしていた

酒や魚が次々に注文され客の胃袋に治まり消えていった

その盛り上がりは命達が帰った後も静まることなくり出せる料理が殆ど無くなるまで繰り広げられたが最後の客が店を後にしたのは未だ夜半を回って少し経ったくらいの時間だった

 

 

そして一夜が明け打合せに集まった人達だけどまずマイを始め侍女達は着物の着付け後に踊りの稽古で留美菜とりんを始め漁師の娘は一階のお手伝いや洗い場の手伝い等にそれそれ別れミナは前回同様に着付けを手伝いを兼ねて習っている

その一方で昨日の今日で準備が不十分な状態で命を迎えるには限界を女将はとにかく酒や食材の買い付けに走り回り一部の予約料理以外は底をついた状態の料理の仕込みを急がせ…

酔いどれ小路酔泉境で人気の屋台の店主達を集め

「夕べの大騒ぎは知ってると思うが今日も早くから人魚姫様がお越しくださる事が決まってるが早朝から急がせちゃいるけど姫様の吸引力の前じゃ正直言って焼け石に水さね」

そう言って溜め息を吐いて見せ

まぁ今もこんな有り様で作りおきの惣菜なんかも改めて仕込まなきゃなんない状態

「この現状打破だけでも大変なのに不定期じゃあるが姫様が家の太夫に踊りを習いにいらっしゃる事が決まってるからこれからが大変でね…」

そう言って一同を見回して

「で、アンタ等に集まってもらったのは他でもないんだけど一階の客を中心にアンタ等に料理を出してほしいんだよ」

そう持ち掛けられた男達が顔を見合わせていると

「なにうだうだやってんだい?この高慢ちきな女が自ら進んで頭を下げてんだよ?」

そう言ってきたのは酔いどれ小路の入り口に御棚を構える仕出し屋の女主人で女将の幼馴染みにして幼い頃からから何かにつけて張り合ってきたライバルと言うかケンカ友達で…二人の仲の悪さについては酔いどれ小路界隈でも有名な話であるため彼女の登場に女将以外の者は皆驚きを隠せないでいる

その仲の悪い仕出し屋の女将に頭を下げて料理の注文をするなどまですると言う女将の苦心の末にこうしてやっと昼前の開店にこぎ着けたのだった

 

 

当然真っ先に着付けを終えた命は暫くミナを見ていたがその瞳が煌めいてウンウンと頷いた後

「ミナさん、みこユカさんにご用があるから先にユカさんとこ行くねっ♪」

そう言って控え室を出ていく命を見送るミナだった

ユカの座敷には美月との、ひいては王宮との取引も夢ではない今回の話に功名心に逸る店主達が各々に持ち寄った商品を各々に見せているところに戻ってきた命が

「ミナさんに似合いそうな着物だね?せっかく色々揃ってるんだからミナなさんに着せちゃおうよ?」

イタズラな笑みを浮かべ瞳を輝かせながらそう話す命に

「ミナがうんと頷くとは思えませんが確かにその提案は観月様も喜ばれるとは思いますけど何と言って説得すれば良いのやら…」

そう言ってこめかみを押さえるユカを見て驚いた命は

「え?なんで?みこはミナさんの気持ちを聞くつもりなんかないよ?ミナさんの意見聞かないから着せちゃおうよってゆったんだけど…下で飲んでる人にも手伝ってもらってねっ♪

大丈夫、ミナさんには後でちゃんと一杯一杯みこがごめんなさいして『みこが着てほしかったのってゆーからねっ♪』」

命の言い訳を聞いて

(成る程、下手に説得しようとしなくても命様に甘いあの子なら命様のお願いを無下に断ることなどできませんね?それならば一噌の事…)

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。