そう言われてさえ尚
「私の供の二人が何か粗相でもいたしましたか?」
そう答えられた観月が何とか声だけは荒げる事無く
「何故王宮に来て一緒に食事をさせないのですか?」
そう男爵夫人に問いただすと
「ならば私も伺いますが例の件はどうなてるのでしょうか?」
一旦言葉を区切り二人を交互見る男爵夫人に
「ですから現時点での推論を二人に…少なくと真琴には知る権利が有ります」
そう観月が言うと
「みこには無いって言うの?」
その挑戦的な物言いに
「あまり耳に優しい話ではないだけにどう話せばよいのか…それ以前に話してよいのかも私達には判断できません…」
王妃がそう表情を歪めて言うと観月に
「真琴は強く聡明な娘ですから信じて話すべき…いえ、私から話しましょう」
と言って真琴を見て
「真琴、貴女は現在レムが何をしているか知ってますか?」
と、一見何の関わりも無さそうな話しに取り敢えず
「地の精霊の探索のはずじゃあないんですか?」
そう答える真琴に
「それはあくまでも表向きの理由で十数年前に滅んだ司祭の里である調査を行って貰ってます」
そう告げれ意味がわからず
「それがどうしましたか?僕やみこに何の関係が有ると言うのですか?」
そう問われて王妃が
「順を追って話さねばなりませんから昔話から聞いてください」
そう言われて
「ふんっ…」
と鼻を鳴らす真琴に構わず
「夫人はご存じですね?私が何処の国の生まれで私達の母が何者かを?」
そう言われて
「貴女と貴女と共にこの国を訪れた妹君は今の月影の国の女王陛下の妹君で貴女方三姉妹の母上は司祭の里の元祭司長の姉上に当たられる方で
最後の舞姫と言われる方は貴女方の従姉妹でしたね?」
そう言われて益々わからない真琴が何か言おうとするのを夫人が目で止めるのを見て
「私と咲夜は年は離れてましたが話が合い手紙のやり取りをする仲で妊娠した事
通常よりお腹が大きく双子ではないかと言われていた事等色々な事を聞きました」
そう言われて
「それが僕やみこに何の関係が有ると言うのですか?」
苛立ちを隠さずに同じ質問を繰り返す真琴に
「私の元に届いた最後の手紙には娘達が生まれました…
とだけ書かれた文字が涙で滲むそれが私の元に届いた時は既に里を襲った惨劇で一人の生存者も無く滅んだ後でした」
王妃の言葉を継ぎ
「レムから聞いた貴女達推定年齢、貴女達の現れた廃坑と司祭の里の調査結果
赤子の死体は見受けられず廃抗は司祭の里の隠し通路である事とかなり磁場の乱れた特殊な場所であるなど判明し…」
最後に王妃が
「最近習い始めたにも関わらず異常なまでの上達の早さ…」
そう言われて
「だから何?そんな事言われても僕達には何も言えないけど逆に言う事も何もない」
そう答えると
「何よりも私に確信させたのは踊る命の姿が咲夜を彷彿とさせるものだったのです」
そう言われて
「信じる信じないは別にしてその話のどこにみこに話せない要素が有ると言うの?」
真琴のその問い掛けに
「ここからがみこに話せない事になりますが…
当時の月影の国側からの調査報告によると里の者達を殺害したのは遺体の様子から単独犯
しかもその容疑者は最後の祭司長にして咲夜の夫…即ち貴女達の父親かも知れないと言うのです…」
その言葉に黙り込む真琴に
「そう考えるとあまり良くない方向で辻褄があってしまいます
貴女達の黒い魔力を忌み嫌い…この里に…と言ったみこの言葉
磁場の狂った隠し通路
祭司長の狂気が生まれたばかりの子供にも向けられたら…」
そう言葉を綴る観月にもう一度
「信じる信じないは別にして…」
そう言って溜め息を吐き
「確かにみこには話せない…
少なくとも今のみこには耐えられないしまたぞろみこの死にたい病が顔を出す…
やっぱりみこなんか生まれてきちゃいけなかったんだって…」
真琴の言葉に溜め息の四人
「私もチサには早いと思います
知ってしまえばこの先みこちゃんに気取られず接することはまだ難しいと思いますから…」
そう翼が言葉を挟むと
「これらの事実関係を踏まえた上でも私達の申し出を受けてくれますか?」
王妃が祈る様に手を組むと
「逆です…いくら上手に隠してもいつまでも隠しおおせるものじゃないし
その最悪のシナリオが真実でみこ自身がその事を思い出したらどうしようもないよ…
だからその時みこがすがりつく存在が必要だけど僕じゃみこの罪悪感が増すだけで救いにならない…だからその時みこの弱い心を守ってくれますか?
受け入れを…救いを求めるのは貴女達じゃない、僕達の方なんです…」
その真琴の言葉を聞き
「陛下、そろそろ出てきて陛下自身のお言葉を皆にお聞かせください」
そう言われて姿を表した国王は
「まぁ色々有るようだが私にとって言えるのはお前達の父親になりたい、私達の娘になって欲しいただそれだけだ」
穏やかではあるけど確固とした信念を感じる口調て語る国王に向かい
「書類上の手続きは済み継承権の無い王女として養子に迎えられるよう整えました
後は両陛下と関連大臣のサインが入れば良いようにしてあります」
そう言って書類の束を渡す男爵夫人は更に
「観月様、後は閣議の結果次第ですがチサ様にいつまでも給仕はさせられませんし侍女や見習い侍女達の教育も見直す時ですからこの後二人で相談し結果を両陛下にご報告致しましょう」
そういつもの男爵夫人の調子にやっと胸の支えが取れた観月が
「伯父様、朝の閣議の時間はよろしいのですか?」
と、こちらもいつもの調子で言うと
「済まないが春蘭に頼んでお茶を会議室を用意してもらうように伝えて欲しい」
そう言って会議室に向かった
その後ろ姿を見ながら
「観月様の部屋ですが相変わらず書類の山でしょうからどのみち祭典後大公領にお戻りいただかねばなりません故現状のまま
但しチサ様は隣の美月臨時事務所の本客間に翼様とお使い頂き私もう一部屋をお借りします
サエはユウ達と同じ部屋ですからそれで良いですね?」
男爵夫人が言うと
「取り敢えず二人を命の部屋付きの侍女達に紹介しますからついてきなさい、レイナとサエも…」
そう言って王妃に
「では後程執務室にお邪魔いたします」
そう告げて四人を案内した
部屋に入り勉強中の見習い侍女達に向かい
「皆に紹介します、この子は翼…大公領では忙しい私に代わり社交界に参加してもらってました
その隣に居るのが見てわかると思いますがみこの姉の真琴です
そしてこの方はレイナ=ワイマール…その名を知る者も居るようですね?
これから貴女達やこれから入ってくる見習い侍女の教育の総責任者になりますからこれからも励むように
そして最後にサエ、この者は公女宮の侍女さで最近美月のスタッフになり翼の世話役になりました
つまりみこにとってのミナのような存在、仲良くしてやってください
それと春蘭、陛下が貴女に会議室でお茶を淹れて欲しいと陛下のお言葉ですからお願いしますね」
そう言われて
「承知しました」
そう答えると茶葉を用意して部屋を後にする春蘭を見送り
「チサ、申し訳ないけど今日か貴女の部屋はユウ達と同じ部屋の本客間ですから宜しいですね?
貴女の代わりに真琴がみこの部屋に入りますから」
と聞いて
「じゃあ食事も一緒に?」
笑顔で聞くチサに
「勿論翼も一緒に摂ってもらいますからサエ、これからはチサに代わり見習い侍女達の教育も頼みますよ
?
まぁ何にしろ体制作りや真琴のレッスン等今からレイナと相談しますから取り敢えサエも勉強を見てあげなさい」
そう告げて観月の部屋に入っていった
新に決まった体制は命付きにマイ、チサ付きにマキは変わらないし翼付きにサエも大公領に居た時と変わらない
最初の変更点は新にマミと言う侍女が真琴付きに選ばれマキはチサと共に部屋替えでマミは命と真琴の部屋付きになった
歌の女神について検証を行う学者の中から女性の弟子の学者を二人紹介してもらい一人は春蘭、弥空、深潮、雪華、翼、チサの勉強を見てもらい
もう一人に見習い侍女の勉強をみてもらう様にしたこと
更にマサ、マチ、マツ、マホの四人を男爵夫人付きに選び公女宮の侍女達の様に巡回させ不備があれば修正し
自分達では無理なら報告させ自分の方から手を打つと言うことに
命は歌と踊りの稽古で真琴は祭典に向けた調整に集中し
翼とサエは見習い侍女達のダンス指導を弥空と深潮と代わり二人は午後だけ観月の側について仕事を学ぶ事になった
当面は雑用係りではあるけど
それらの事を王妃の執務室に報告に行くと王妃にお茶を淹れている春蘭が居て二人を見ると頷いた春蘭は湯と茶葉の量を増やし二人にも用意すると王妃の後ろに控えたので王妃に体制の報告を行うと今度は王妃から
「四人を養女に迎える件は満場一致で可決と言うかやっと決まりたしか?と逆に呆れられてたそうですし特に海軍の将軍は男泣きしてたそうですよ?
将軍を始め、陸の事務方にまで慕われてる二人ですからね…」
そう言われて
「わかりましたではやはり以前から出ていた見習い侍女の募集を検討してください
レイナが来てくれましたから受け入れ体制は整いましたから」
そう告げて
部屋に戻る頃には昼近くで
「翼と真琴は着替えてサエ、翼と真琴の荷物を纏めておきなさい
食事の時にでも誰かに頼んで運ばせますから
真琴は着替えたら小ホールで踊りの稽古をしている命を迎えに行きなさい、任せましたよ
チサも侍女の服は卒業ですからね」
そう言われチサも新しい部屋に着替えに行き翼と真琴も荷物を置いてある部屋で着替えに向かった
稽古を終えた命に
「そろそろ食事の時間ですよ?」
とマイが声を掛けても全く反応せず俯いて座り込む命を見て
「みこ、ご飯の時間だから迎えに来たよ」
そう言って呼び掛ける真琴の声にも気付けなくただ力無く首を横に振る命の身体を抱き上げ
(あの時のままじゃないか…)
そう思い苦笑いしながら
「ならこのまま連れていくからね」
その聞き覚えのある言葉に
(いつ誰から聞いた声なんだろう?)
そうぼんやり考えているうちに椅子に座らされ我に返ると笑顔の真琴が居た
「みこ、僕が来たんだからちゃんとご飯食べるよね?」
そう言われて小さく頷き王妃達を安心させた
食事の後、命の午睡の間今朝やれなかった素振りをこなし午睡から目覚めた命に楽士寮に案内され翌日から午前中とアリア女史のレッスンの無い日の午後はここで稽古をすることになった
そして夜になると風の精霊ウィンディーの巫女と命の姉の真琴の歓迎パーティーが開かれ正式に四人を養女として迎える事が決まったことを発表した
益々華やかになった王宮パーティーに勿論命の踊りも花を添えている
真琴が久し振りに会った命は色々成長していた
早朝、真琴が目を覚ますとマイに手伝われながら着替えているとこで
「みこ、こんなに早くからどこに行くの?」
真琴に聞かれいつものポーズで
「お歌のお稽古とお散歩だよ、踊りを習い始めた時にすぐ疲れちゃうみこに『たくさん歩いて体力着けろ』って鬼百合にゆわれたの
だからお歌のお稽古とお祈りの間に少し歩くから段々朝起きるの早くなっちゃって…」
そう言って小さく笑うみこは全く歩けないと言っても過言じゃなかった頃の覚束ない足取りではない
そして真琴達が入国して四日目の夜の夕食の席で観月から
「明日の朝留美菜の父親、網元の船の浸水式があり予定通りにみこには踊りを奉納してもらいます
勿論留美菜やりんも同行させますし他の子達も浸水式には立ち会わせます
翼、真琴、チサはどうしますか?」
そう聞かれた三人に
「チサちゃんは見てるけど翼ちゃんとまこちゃんまだ見てない踊りがメインなんだよっ♪」
そう嬉しそうに話す命に嫌とは言えないしあれ程人前に出るのを嫌がって…
と、言うか怖れていた命を変えたのが何か気になる真琴は同行することにし翼とチサも二人が行くのなら…と同行する事にした
その多分生まれて始めてであろう命は素直に真琴に夜甘えて
「今日はまこちゃんと一緒に寝たい」
そう言われた真琴は
「みこ、甘えん坊になったんじゃない?」
笑いながら言うと命は
「違うよ、まこちゃん…甘えん坊になったんじゃなくて甘えん坊だって認めただけだよ…
鬼百合やレム、まこちゃんに翼ちゃんとちさちゃんやミナさんにユカさん王妃様達…みこ、甘えん坊だったんだよ…」
そう呟きながら眠りについた命の寝顔を見ながら
「あの迷宮で抱き上げた時より軽くなっていたみこの背はちっとも伸びてなかった
僕は風の精霊救出からの僅かな間も少し伸びたのにみこが伸びたのは髪の長さだけ…
今度はいつまで一緒に居られるのかわからないけどその間だけでもちゃんと食べさせないと…」
そう思う真琴だった
翌朝も歌の稽古の後散歩にお祈りを済ませると一台目に観月、命、翼、真琴、チサ、鬼百合、留美菜、りんが乗り
二台目に瑞穂、柳水、はな、なみ、小明、咲、みか、ほなみ
三台目に女神の騎士団の三人にユカ、ミナ、春蘭、マイ、マキが同行する事になった
命は現地で着物に着替える為お祈りの時のまま…今朝は白いワンピースだったのでそのまま出掛け
真琴は若月のマリンルックでは無く海兵隊名誉隊員の真琴に支給されたお気に入りの海兵隊の制服姿
翼はショーでスーが着ていで着ていた海兵隊風のワンピースとチサとりんは当日着ていた物で後のマイ、マキと漁師の娘達は侍女の制服で出掛ける事になった
命の訪問は事前知らされていない漁師達が慌てて出迎えると
国王からラム酒が一樽、観月と鬼百合や騎士団からは月影の国の瀑酒を一樽に命、チサの連名で大公領の地酒玉蜀黍酒を一瓶を祝いに贈られ
命は一旦馬車に戻りミナに着付けをしてもらっている間は翼と真琴に子供達が群がり
鬼百合達、特に鬼百合の周りには見習い侍女の親達が感謝の言葉をのべ集まっていた
そして命の準備が整ったのを知らされた組合長が
「網元、私達の人魚姫様が航海の安全祈願と大量祈願の踊りを奉納してくださいます、皆も祈りなさい」
そう言われて驚くと着物姿の命が現れ舞い始めた
居合わせた者も皆目を閉じ漁の安全と大漁を願い祈った
命の踊りが終わりまず留美菜とりんの両親に
「みことチサちゃんのお姉ちゃんの翼ちゃんとまこちゃん
翼ちゃん、まこちゃん、留美菜ちゃんとりんちゃんのお父さんとお母さん達だよ」
そしてそれ以外の人達にも二人を紹介すると再び着替えて出てきたのは海兵隊の制服命バージョンだった
網元から振る舞い酒が配られ来賓に挨拶をして回る網元と四人の船頭達
留美菜とりん以外の見習い侍女達は先に王宮に戻り勉強に戻り
鬼百合や柳水、顔馴染みの三人に漁師達が酒を勧めた
「準備が終わりましたぁーっ!」
ミナの手伝いをしていた留美菜が声を張り上げると手頃な場所を見つけ腰を下ろし歌い始めた
真琴に群がっていた子供達も命の歌が始まると耳を傾け静かに聞き入った
その様子を見て驚く真琴に
「稽古と比べてどうですか?」
そう観月に聞かれ
「いいえ、お互いに距離をとってますからみこの歌を聞いたのは十六夜様に聞いていただいた時以来です…
が、良い方向ですっかり変わりました
楽しい歌は楽しく悲しい歌は悲しくとメリハリがついてるし…
前のみこは楽しい歌があまり楽しそうに聞こえなかった…」
と言って追憶に更ける真琴に
「切っ掛けをくれたのはりん」
そう言われて驚き
「あんな小さな子が?」
そう観月に言うと
「みこよりは大きいししっかりした子なのはわかりますね?」
そう言われて
「確かにそうだけど…」
と、中々納得しない真琴に
「もっとも…真琴が疑問に感じるようにりんが特別何かしたわけではありませんが…再会後のみこの変化何かありませんか?」
そう言われて暫く考えて
「相変わらすな少食だけど前よりはましになってるし食卓に着く着かないでミナさん困らせなくなった…」
そう答えると
「一番最初の切っ掛けはりんが海に落ちたこと…
それも屈強な海の男ですら怯むカ海域で」
何となくわかり
「みこが?」
その答えにうなずき
「人魚化して助け、りんの両親は一度諦めた娘の命…
人魚姫様お側で生涯お仕えさせてくださいっ!って言われて公女宮の見習い侍女として受け入れました」
その不思議な出会いの物語に唸る真琴に
「ミナを食事の事で困らせたのは二回
入国して最初の晩餐でその頃はまだ寝起きの悪いみこは例によって
『お腹空いて無いから要らない…そう答え
『でもりんちゃんが一緒なら行く』
それを聞いた伯母様が『りんちゃんの席も用意するから来てねって…』」
「ほんと不思議だ…確かにりんは何もしてない…ただたまたまそこに居合わせただけ…」
そう驚く真琴に