闇と影   作:春の雪舞い散る

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精霊の導きを求めし戦士達の邂逅…そして精霊に選ばれた魔導師の少女の運命は?


火と水と女神②

 

 

 

 水の精霊が命の身体で話掛けているのだと言う事に

 

 「命の霊の本体は心の奥深くに隠ってしまい私の説得にも一切応じようとはしません」

 

 ですが、その壊れた命の魂の残骸と言えるものが体裁を整え人格形成を始めてますから目覚めるのに今しばらくの猶予が必要です」

 

 そう言って一同を見回し

 

 「その目覚めの時のまで、巫女の事を宜しくお願いしますね…それと」

 

 少し間を置き

 

 ―皆に頼みが有りますが、この地の何処かに封印されし我が同胞の精霊と泉の女神を解放して欲しいのですが頼めますか?―

 

 そう水の精霊、アクエリアスが依頼を要請すると

 

 「あんたの同胞ってのは地の精霊、火の精霊、風の精霊…あんたを含めた四大精霊の内の三人と泉の女神が封印されてる!?」

 

 思わず絶叫する鬼百合と眼を見開き絶句する真琴に

 

 ―私が完全に封印されていれば世界のバランスは完全に崩れ崩壊の一途を辿っていたでしょう…―

 

 その水の精霊の言葉に

 

 「それがこの世界各地に起こっている異変の元凶だったのか?…」

虚ろな表情で鬼百合が呟いた

 

 「解りました…正式には命の意識の戻り次第だけど…精霊の巫女たる命がそれを引き受けると信じ僕もその手助けをすると約束します」

 

 そう答えたのを満足そうに聞いた水の精霊は

 

 「ありがとうございます、私も全力で巫女を導きましょう…では、くれぐれも巫女の事を宜しくお願いしますね」

 

 そう言うと水の精霊は命の霊の奥底に沈んでいったが意地悪く自分を睨む鬼百合に

 

 「僕もじゃなく僕達もっ!じゃねえのか?真琴よっ♪」

 

 ニヤリとニヒルな笑みを浮かべる鬼百合に言われ

 

 「そうだね…ごめんなさい…」

 

 と、素直に詫び一同を笑わせた

 

 

 

 朝食の後すぐに真琴に四本の腕で新に戦士達を召喚させて盗賊風の白浪に海賊の海猫、野武士の信濃バイキングの九鬼の四人だ

 

 

 

 「この二人は着替えさせますが真琴はどうしますか?

 

 それと命様に合うサイズは有りませんでしたからタオルを巻き付け上に旅装のマントを羽織らせましょう」

 

 それが着替えのない命に対するレムの思い付いた唯一の考えだった

 

 「僕はこの袖の無いシャツとパンツそれに旅装用のマントに水筒を貰って良いのかな?」

 

 そう言ってそれに着替えると鬼百合が

 

 「シンプルで動き易い格好だな」

 

 半ばからかう様な口調で言ってから

 

 「守りたい者が居るお前は今でも十分強いがもっと強くなれる…頑張んなっ!」

 

 真琴に初めて見せる真剣な顔で真琴を励ました

 

 その他には袖無しのワンピースと大判のタオルと手拭いを一枚ずつ鞄にしまうと

 

 「ついでにこれもしまっておきなさい」

 

 そう言って渡されたのは小さめの巾着袋で

 

 「中身は干し豆が入ってますから非常時の食料に持ってなさい」

 

 そう言われたので鞄にしまうことにした

 

 

 

 二人の拳闘士のうち阿が命を抱き吽が真琴を肩に乗せ…

 

 格闘家の闘華と舞が少女を抱いて行くことになった

先頭は鬼百合、殿はレムで剣士達は荷物を運ぶ事になった

 

 移動は丸10日掛かり隣国の国境にたどり着いたのは深夜の事だった

 

 

 

 

③ 国境の攻防戦

 

 「 門を開けてくれっ!連れの三人の子供の具合が悪いんだっ!頼む、医者に見せたいから通してくれっ! 」

 

 門を叩きながらレムが叫んだ

 

 覗き窓から見た門番はパッと見で解るくらいに具合の悪そうな三人の少女を見ると慌てて上の者の許可を貰うから待ってろと言い残して走り去った

 

 戻って来たのは門番一人ではなく身なりの良い隊長らしき人物を伴っていた

 

 その隊長らしき人物は一行の顔を眺めた後、何も言わず潜り戸を開け

 

 「 早く子供達を休ませてやりなさい 」

 

 そう言っただけで自らが空いている部屋に案内しレムだけ別室に呼んだ

 

 「 良いのですか?子供達に… 特に昏睡状態にある娘にこれ以上無理させたくない我々にはとても有り難いが貴女にも立場があるはずでは… 」

 

 そう問い掛けると

 

 「 確かにお前らだけなら門は開けなかったが…特にあの昏睡状態の娘を見て開けぬような鬼では無い

 

 取り敢えずひとつだけ質問に答えて欲しいがお前達は何が目的で我らの領地に来たのだ? 」

 

 真っ直ぐな目で聞かれたレムはやはり真っ正面で向き合い答えることにした

 

 「 我らの目的は子供達にキチンとした治療を施してやりたいのがひとつ

 

 もうひとつは水の精霊の依頼

 

 ーこの地に眠る3人の精霊と泉の女神の封印といて欲しいー

 

 と言う依頼をを果たすため 」

 

 まじまじとレムの顔を見る隊長

 

 「 水の精霊に逢ったと言うのか? 」

 

 と、聞かれ別に隠す必要の無いレムは

 

 「 水の精霊の救出は赤い胸当てを着た者が受けてきた依頼だからな

 

 あの四人の娘達は精霊を封印しようとしていた者に襲われていた村で出会った子等だ 」

 

 と、多少の嘘を混ぜ

 

 「 ならば養い親が見付かればその者達に託してみてはどうだ? 」

 

 反応を確かめるように聞いてきた問いにレムは

 

 「 本人達がそれを望むのならば…としか言いようがない

 

 垢の他人にすぎない我々が勝手に決めて良いものでは無いと思うが…

 

 特にあの昏睡状態の娘は、我が主にして水の精霊の巫女なのですからこの国の偉い方に判断を仰ぐ必要があると思います 」

 

 その衝撃の告白に

 

 「 水の精霊の巫女… それが事実なら確かに我等の判断でどうこうして良いレベルの話ではない 」

 

 そう話している部屋に慌てて飛び込んできた鬼百合の腕には命が眠っていた

 

 「 命様を連れて貴女は一体何してるんのですっ!? 」

 

 と問い詰めるとしどろもどろになりながら

 

 「 この子が敵襲だって言っているような気がして仕方ねえんだからしょうがねえだろがっ! 疑うならこの子の手に触れてみな! 」

 

 鬼百合が差し出した命の手に精霊との契約者の刻印を見つけた隊長は廊下に飛び出し

 

 「 第一級の警戒体勢を取れっ! 」

 

 大声で命じ部屋に戻り二人を指令室に伴い善後策を練ろうとした

 

 だかそれでは間に合わないとばかりに目を閉じたままの命は櫓まで翔ぶように移動し…

 

 ー レム、それと貴女は鬼百合と言いましたね?

 

 真琴達には既に屋上に集まるように伝えてありますから貴女達も急いで向かいなさい

 

 隊長の貴女は兵に弓矢を十分に用意させなさい

 

 敵は毛玉達とそれに運ばれてくる腐った死体達と一体ごとの兵力は大した戦力ではありません

 

 ですが両者を併せて千を下らない無駄に多くの数を投入していますから油断大敵、死の恐怖も痛みも知らぬ腐った死体は面倒な敵ですからね ー

 

 そう言って本人はそのまま櫓まで翔ぶように移動し未だ見えない敵に向かい…

 

 ー 八叉の黒竜炎っ! ー

 

 と、呪文を放ち駆け付けた沙霧に投げ付けると

 

 ーこの神剣、貴女に託しましょうー

 

 そう言って更に

 

 ー 八叉黒竜炎っ! ー

 

 と、呪文放ち

 

 ー これは貴女に ー

 

 そう言われた千浪が驚きながら受け取ったのは一対の小太刀で

 

 ー 八叉の黒竜炎っ! ー

 

 と、三度目の呪文を放つと遅れてきた鬼百合に神剣を投げつけ

 

 ー それらは貴女達のです、その代わり三人に頼みが有りますが沙霧は黒い勾玉の大太刀をレムに渡しレムの長剣をそちらの隊長に渡しなさい

 

 千浪の勾玉の小太刀は白浪に渡しソードブレーカーは九鬼に渡して下さい

 

 沙霧、貴女の弓矢と鬼百合の剣鉈にレムのサーベルとレイピア達に九鬼のサクスは勾玉が主人を選びますからその者達に託すつもですー

 

 そう言って蒼い霊玉を千切り取ると戦士達に向かって投げ飛ばすと霊玉はその霊力を解放して水色の翼となって敵を迎え撃つべく敵の元へと案内した

 

 

 

④ 兄妹…

 

 

 

 その国境警備隊基地司令官の提案を聞いたレムも

 

 「 もしそれが許されるならば急いで命様を医者に見せたいのですが… 」

 

 そう言って鬼百合を見ると鬼百合の方も嵐と司令を見て

 

 「 みこを医者に見せてやりたい、頼む… 」

 

 そう言って頭を下げると

 

 「 遠慮は無しだ、精霊の巫女様の前でつまらん駆け引きや遠慮は互いに要らんだろう? 」

 

 そう言ってニヤリと笑うと鬼百合も同じくニヤリと笑って返し

 

 「 まぁそうゆー訳だから誰を付き添わせるよ 」

 

 そう鬼百合がレムに問い掛けると

 

 「 鬼百合、貴女と阿、白浪の三人にお願いしたいのですが… 」

そう答えたので驚いた鬼百合が

 

 「 同行しないのか?、二人供お前も一緒の方が良いのだろうに… 」

 

 そう鬼百合に言われて

 

 「 自分達の勾玉を受け入れた貴女達に不満等はないはず?

 

 それに鬼百合、真琴は貴女に対し戦士として尊敬の念を隠していないのだから同行してくれれば嬉しいはずです

 

 それ故、後は向こうでの受けの問題だろうが… 貴女はそれなりに名の通った賞金稼ぎなんだろう? 」

 

 そのレムの問い掛けに

 

 「 まぁその筋じゃちったぁ名の知れた姐さんさ 」

 

 そう苦笑いで答えると

 

 「 なら問題ない、私も貴女なら背中を預けて良いと思える戦士の貴女に命様を託せぬ訳はない

 

 異界から来た私達にとり貴女に出会えたのは幸運としか言い様が無い 」

 

 「 そんなこっ恥ずかしい事を正面切ってゆんじゃねぇーよ… だか、まぁあれだな?

 

 アタイだって長年追い求めていた水の精霊の巫女と出会えてやっと運命を見出だせた今

 

 アタイにとってもあの二人はもう大事な守りたい子達なんだからよ… わかった、二人の事は任せろ 」

 

 照れ臭そうに言われて安心した表情で任せると答えるレムだった

 

 

 

 

 驚異の身体能力と命から授かった水の翼のチカラを以て一行が大公の居城に着いたのは間も無く東の空が白み始める頃だった

 

 「 国境の砦から火急の用だ、入城の許可を頼むっ! 」

 

 隊長の嵐がそう叫ぶと、正門の横の通用口にある覗き窓から様子を見るた門番が嵐の顔を見ると驚いてドアを開け放ち相方に見張りを任せ

 

 「 嵐様、案内いたします 」

 

 そう告げる兵士の態度は明らかに一隊長に対するものではなく鬼百合は気付かぬ振りで済ませたがその理由はすぐに解った

 

 鬼百合達と共に歩く隊長の嵐にいきなり抱きつき頬擦りする男が

 

 「 嵐…我が妹よ、兄はお前に会いたかったぞーっ! 」

 

 と叫んだからで最初は不意を突かれ狼狽えてた嵐も何とか気を取り直して

 

 「 大公閣下っ、客人や部下の前なのですよっ…お願いですからご自分のお立場をお弁えくださいっ! 」

 

 そう言われて渋々嵐の身体を離すと

 

 「 久し振りの兄妹の再会に大公閣下とは相変わらずつれないぞ…嵐 」

 

 そう言われた嵐が門番と鬼百合達を横目で見ると視線を反らし見ない振りをしてるのに気付いて溜め息を吐いて

 

 「 貴方は現職の、この地を治める大公で私は勤務中の一隊長に過ぎないのですから当然の対応ですっ! 」

 

 そう答えられて、千波今度は大公の方が溜め息を吐き

 

 「 客人から話を聞きたい、客間の支度と医者の手配を大至急するように 」

 

 そう言われて後ろに控えていた侍女の一人が頷くと重ねて大公は

 

 「 眠っておられるお嬢様は貴き方なのだからくれぐれも粗相の無いよう頼む 」

 

 そう指示を与えると驚く嵐と門番を気にせず

 

 「 真琴…少しは休めたか? 命を頼むぞ… 」

 

 命を気遣い、様子を見守る真琴とその眠っている命を抱いている阿と白浪にもそう声を掛けると

 

 「 十分です… 」

 

 真琴は鬼百合に答え阿と白浪が黙って頷くと

 

 「 そうか、なら宜しく頼む 」

 

 大公に命じれた侍女に軽く頭を下げる鬼百合に

 

 「 畏まりました 」

 

 そう言ってお辞儀をして三人を客間に案内した

 

 大公が侍女を引き連れ二人を執務室に案内し部屋に灯りを点けると

 

 「 御主人様はいつものでお客様には何をご用意致しましょうか? 」

 

 そう話すのを聞いた嵐が

 

 「 私には閣下と同じお茶を頼むが客人には酒と適当なつまみを頼む 」

 

 そう答えると侍女は黙って頷き退室した

 

 「 嵐、水の精霊の巫女様が私を頼っておみえになった…と、そう解釈してよいのだな? 」

 

 顔には出さないけど、今度ばかりはさすがの鬼百合も驚きつつも

 

 「 さすが賢公の噂に高き歌の国の大公閣下、水の精霊とその巫女の願いを聞き届けてほしい 」

 

 そう言われて

 

 「 ひとつだけそなたに問う、そなたの目的、狙いはなんだ? 」

 

 探るような視線を感じなから聞かれた鬼百合は笑って

 

 「 そんなもの何もねぇ、アタイは水の精霊の巫女様がアタイを運命へと導くって宣託を受けてるから水の精霊の巫女の守護者になっただけだ

 

 だから取り敢えず、その巫女の明るい笑顔を見てみたい、早く冒険の旅を共にしたい…だな 」

 

 そう言われて

 

 「 成る程、きっと誰もが虜にならずにはいられない笑顔…だろうな…

 

 あい解った…隊長、当面は水の精霊の巫女様とお連れの方達を頼む

 

 後日大公家の重鎮達と共に詳しい話を聞きたい…で、宜しいかな? 」

 

 寂しそうに言う大公に

 

 「 あ、兄上如何なされましたか? 」

 

 慌てて聞く嵐に

 

 「 私がもっと若ければそれこそ自らが陣頭指揮を執るのに…そう思うとそなた達が羨ましくてな… 」

寂しそうに笑う大公に

 

 「 巫女様が可愛いと思うなら…幼い現し身と裏腹に今尚人と異なる自分を忌み嫌い自分を否定してる巫女様を愛してやってくれ…

 

 そのおさなごころに温もりを与えてやって欲しい 」

 

 辛そうに言う鬼百合に

 

 「 良いのか?その様に振る舞っても? 」

 

 そう言われた鬼百合は

 

 「 自分は罪深き子であり生まれてくるべきではなかった…生きていてはいけない子だったんだ…そう言ってる子にそれ以外の何が必要だ? 」

 

 本当に悲しそうに言う鬼百合に

 

 「 そうだな… あの淡雪の様に触れたら消えてしまいそうな第一印象は間違って無かった訳か… 」

 

 そう悲しそうに呟く大公だった

 

 




ちょっと寂しいです

サクス、スクラマサス

サーベルとカットラス
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