闇と影   作:春の雪舞い散る

32 / 67
いつかは精霊の巫女を守る騎士と夢見るしょうねんたちはたびだった


見習い騎士と霊獣シーホース

「がっかりした?みこがこんなおバカな子だって知って…

でもごめんね、これがホントのみこで皆幻想を見てるんだよ…

水の精霊の巫女、人魚姫って…」

淋しいと言うよりは辛そうに笑う命に

「そんな事有りません、りんちゃんに聞いたけど王女様になる前の命様をみこちゃんって呼んでたよ?って…

ホント言ったらねその話を聞いても最初はあまりピンときていなかったんだけど命様とお話しした今なら何となくわかったんです…

私に何が出来るかわからない…だけど…ホンの少しだけれど命様の事が知れてもっともっと命様が好きになりました

春蘭様、ミナ様、一生懸命頑張りますからどうか命様にお仕え出来る様ご指導宜しくお願いしますっ!」

そう決意も新に頭を下げると他の少女達も我に返り頭を下げるのを見た春蘭が

「取り敢えず食事を再開しなさい、命様もそろそろお腹が空いてきたでしょうしね?」

そう言われて皆も食事を再開し命とお弁当を分け合うと言った春蘭はミナを呼び

ミナが春蘭の隣に腰を下ろすと命も指定席に腰掛けると少女達も腰を下ろしながら

(あのお姿はやっぱり命様って言うよりみこちゃんって呼ぶ方がしっくり来るよね?)

それが留美菜とりんにも改めて感じる正直な気持ちだった

春蘭から命用のさ小さな器を受け取り食事を始めると皆も食事を再開した

 

 

「たいきの思う理想的な騎士ってどんなの?」

食後の一時に命にそう聞かれた大樹は

「それはやっぱり伝説の騎士達の様にお守りすべき方の為…守るべき人達の為に戦う騎士と思うけど…それがどうかしましたか?」

そう大樹に聞き返された命は

「ンーなんか違う気するけどまっいーか?」

そう言うと祈り始めると空の彼方から何者かが舞い降りてきた

それが何者なのか最初に気付いた瑞穂が思わず

「霊獣シーホース…」

そう呟くと

「あの子はたいき達に力を貸してくれるかもしれないからあの子の試しを受けてみる?」

そう言われ大樹が

「その試しとはなんでしょうか?」

内容を気にしてそう尋ねると

「別に特別な事をする訳じゃないよ?お馬さんに乗れるたいき達ならね

乗りこなすまではゆわないけどちゃんと乗れたら良いだけなんだからね?」

その答えに

「炎、海斗に風華さん…俺からでも良いかな?」

そう聞かれた三人が頷くのを見て気合いを入れてシーホースが降り立つのを待つ大樹だった

シーホースが降り立ちまず命がその背に股がると

「たいきからで良いんだよね?

じゃあ早速みこの後ろに乗って」

そう言われて命の後ろに乗ったものの前にいる命の存在が気になって仕方ない大樹と炎が集中出来ないのも無理からぬ事

二人の結果は落馬こそしなかったものの良いところ無く試しは終わってしまってしまった

そして海斗の番になり二人の失敗を参考にとにかく乗馬に集中する事だけを心掛けることにして

「頼むよ…」

そう声を掛けると一気に飛び乗りゆっくり歩かせてみた

精神を集中した乗り手にシーホースは答え徐々にその速度を上げるとそれを感じとった海斗が

「このまま翔んでくれるのかな?」

その問い掛けに応え宙に駆け上がり始めた

暫くは見守っていた春蘭達も出発の支度を済ませると

「降りてきて出発の支度をしなさいっ!」

春蘭がそう声を掛けると

「かいと、このまま行っていーか春蘭に聞いて?」

命にそう言われて

「春蘭様っ!、命様がこのまま行って良いと聞いてますけどっ!?」

そう叫ぶと

「どうやらんこのまま海斗にはシーホースと組んで貰う事になりそうですから海斗の代わりに私が馭者をします」

そう阿に言われた春蘭は

「未だ慣れてないのだから無理は禁物ですからねっ!」

そう海斗に向かって叫び返した

勿論海斗の方も前方に見える雨雲が気になり始めていたから無理をする気は更々無いのに命の指示で海上に出てしまい

(良いのかな?馬車ともかなり離れちゃったけど…)

そんな海斗の思いとは他所に難しい顔をして前方を睨む命がやがて溜め息吐くと宙に浮き

「かいと、敵が来るから警戒するよう阿に伝えて

みこはここで迎え撃つから」

そう言って山風、山谷風の精達と霧の精海原の精を呼び出すと未だ動かずにいる海斗に

「何をしているのです?早く皆の元に行きなさいっ!」

今迄の命と異なる表情の命に強い口調で命じられた海斗が慌てて引き返すのを見送り

「敵は闇に侵された雷精達と雷精達が操る霊玉達です

山風と山谷風の精達は雷精達が呼ぶ雷雲を極力払ってください

霧の精と海原の精は私のサポートを頼みます」

そう言って霊力を高めると未だようやく視界に入った雷精達に向かい

ー八青龍神っ!ー

命が放った呪文を見た精霊達が

ー巫女様、その呪文では雷精を倒す事はできませんよ?ー

そう言われて

「そう、あくまでも雷精達の浄化と放電により霊力を弱め無駄な戦闘を控えるため

雷精達が本命の敵じゃ無いしその為に神剣を呼び出したのですからね…」

そう告げ竜頭の直撃を受けた雷精達が浄化され闇の呪縛から解き放たれ…

同じく浄化された霊玉で結界を張り霊力の回復を図った

一方直撃を免れた雷精達と霊玉達も浄化されるまではいかないものの霊力の低下は著しくやはり霊玉で結界を張り霊力の回復を図った

そして運良く雷精達のリーダーらしき者がりタイヤしたらしく統率者の居ない群と化した敵

それはどれだけ数かが居ようとも烏合の衆に過ぎず散開する事もしないで無策のまま接近する敵に

ー清瀧大瀑布っ!ー

その呪文で残った雷精を一気に浄化するとその背後から飛雷蜥蜴が雷撃を放ってきた

ーウォーターウォールっ!ー

辛うじて張った障壁がその雷撃の威力を殺してくれたお陰で大ダメージこそ免れたものの決して浅傷では済まなかった

しかも後続の飛炎蜥蜴達が迫るのを見ていると

「命様、これは一体どういう事なのか後できっちりとご説明ねがえますか?

但し、春蘭の怒り様は尋常ではありませんでしたから彼女のお説教は免れないものとご覚悟される事ですね」

海斗の後ろに乗った忍がそう冷たく言い放つと

「それはみこに言ってやりなさい、私の関知する事ではありませんから…ですが良い所に来てくれました

遠距離攻撃用の呪文が主力の私には飛行能力値の高い飛雷蜥蜴や飛炎蜥蜴達はさすがにちょっと荷が重いと感じてましたからよろしく頼みますよ?」

そう言われて

「当たり前です、無事に連れ戻し春蘭の説教をたっぷりお受け下さいねっ!」

そう怒鳴る忍に対し肩を竦める命は

「私とてこの身体を傷付けるのはみこに対し気が退けますから出来うる限り遠慮したいのですけどね」

そうは言ったものの散開して全方位から襲って来る敵に攻撃力の低い水の鞭と水球だけでは対応できる筈もない

その小さな身体に裂傷や擦過傷、火傷が刻まれていく…

ー飛炎に飛雷の蜥蜴達か…本命は火怒雷(ヒドラ)辺りやろか?

阿はみこを庇いつつ応戦、瑞穂はボクに火力と魔力を吸われた飛炎蜥蜴と魔力の低下した飛雷蜥蜴を叩き落としたりー

翔の声に気付いた命が

「瑞穂、受け取りなさいっ!」

そう言って投げられた物を受け取

たるとそれは一対のカトラスに姿を変え瑞穂の手に納まるのを見た翔が

ーほないくで?瑞穂っ!ー

そう呼び掛けると共に大きく息を吸い込むとその先に在る大気の温度と共に飛炎蜥蜴の纏う火と魔力

飛雷蜥蜴の魔力と体温を奪い始るとそれに気付いた蜥蜴達が狼狽え始めたけど既に手遅れで蜥蜴達の間を縫うように飛ぶ翔の背に乗る瑞穂から繰り出される一撃で叩き落とされていった

ー本命が湧いて出た…うざっー

翔の言う通りに倒された火炎蜥蜴と飛雷蜥蜴の命を生け贄にして何者かが召喚したのだ

つまり飛怒雷を倒しその召喚者も倒すか追い払わなければ切りがないと言うことだ

ー飛怒雷の力を弱めるから忍と阿は頼むで

ボクと瑞穂は無駄なんは承知やけど放っても置けんから飛炎と飛雷を始末するさかいー

そう言って先ず火怒雷の魔力と火を吸い込むと周囲の火炎と飛雷の魔力や火、体温を奪い始めた

しかしそれに対し二体、三体、と現れる火怒雷

多少の魔力と火を奪われて弱る程柔でも無い厄介な敵でしかも翔の方も魔力と火を吸い込みすぎ既に飽和状態

その翔に進化の時が訪れた

命に持たされた数珠玉が翔の霊体に満ち溢れた火気と雷気を帯びた魔力を吸い始めると代わりに翔は眼下の海に向け息を大きく吸い込むと

ー竜氷連山っ!ー

翔の放った呪文により海水が氷竜となり火怒雷達を襲い始めた

一撃、二撃で何とかなるわけではなくても更に追撃が次々と襲って来るから始末が悪い

十体を越える火怒雷をあっという間に殲滅すると

ーえー加減に姿を表したらどうやねん、みこのストーカーっ!ー

翔が叫ぶと

「全く躾のなってないヒヨコは煩くて敵わん…」

そう言われて

ーあぁっ!誰が可愛いヒヨコやっちゅーねんよ?つか静かなヒヨコなんぞ寝とるか死にかけとるやろがっ!ー

そう喚き散らすと

「可愛いとはゆーとらんがの、全く…お前の親の顔が見たいものだ…」

そう言われて癇癪を起こした翔が

ーはぁっ?そないなボクも知らんのやから好きにすればえーやろっ!?

つか、何処ぞに居るんかもわからんモン達見に行ってそんまんま二度とみこの前に面そのを出すなやっ!ー

そう叫び

ー火錐衝っ!ー

翔が放った翔の最大級の火炎魔法にも拘らずあっさり払いのけたその男を悔しそうに見ながら

ーアカン…挑発に乗ってもーて魔力尽かしてもーた…

瑞穂には悪いけどボク等の出番は終わったから引き返すで…ー

そう言って陸目指して飛んでいった

それを嘲る笑みを浮かべその後ろで短剣を構える忍を見ると

「暫く見ないうちに随分と人がましい顔付きになったものだ

たかが人狼に飼われていた牝狗の分際で…」

そう嘲りを込めて言うと忍も恐怖と屈辱的な記憶を呼び戻され怯え始めた

その怯える様子は振り向かなくても海斗にも伝わりなんと声をかければ良いのか見当も付かない海斗は忍に声を掛ける代わりに

「忍様はお前が嫌いみたいだからさっさと逃げろよ?手下も皆居なくなったんだからさっ!」

そう怒鳴ると

「そう喚かずとも聞こえておるわ小わっぱが…だが、ひとつだけ教えておいてやろう…無知にして無垢なる少年よ

それにはお前が庇ってやる価値はないし如何に精霊の巫女達と共に在ろうとも一度闇に墜ちた過去を消せはしない

その事は本人が一番がわかっているはずなのだがな?」

そう言われた忍の怯え方は尋常ではなくもう一度海斗が

「そんなの余計なお世話だっ!僕にとって忍様に価値があるか無いかなんて僕が決める事で少なくとも敵のお前なんかにとやかく言われるのは筋違いだし無性に腹が立つ事だっ!」

いつの間にか意識を回復した命が左手を額に添え右の手刀を相手の胸に突き立てると

―八叉の黒炎竜っ!―

八首の黒炎竜を放ち神剣を握り締めた手は何故か震えていた

(今度こそ捉えたと思ったものを又も傀儡…)そう言われた忍の怯え方は尋常ではなくもう一度海斗が

「余計なお世話だっ!僕にとって忍様に価値があるか無いかは僕が決める事

少なくともお前なんかにとやかく言われるのは腹が立つ…」

いつの間にか意識を回復した命が左手を額に添え右の手刀を相手の胸に突き立てると

―八叉の黒炎竜っ!―

八首の黒炎竜を放ち神剣を握り締めた手は何故か震えていた

(今度こそ捉えたと思ったものを又も傀儡…)

その苛立ちを遅れて現れた大飛び蜥蜴に向けて

ー八叉の黒炎竜っ!ー

呪文を立て続けに放ち紛らしたもののその反動で再び意識を失い降下を始めた命を見て

「海斗、忍は私が連れて帰りますから貴方は命様を頼みます」

そう告げる阿に

「このまま皆の所に戻った方が良くないですか?」

そう聞き返すと忍を見てみなさい、今の忍は男の子の貴方には任せられる状態に有ると思いますか?」

そう阿に言われて

「無理…そうです…」

そう情け無さそうに答える海斗に忍の身体を抱き上げながら

「わかったのなら急ぎなさい、命様はかなり降下してますよ?」

その言葉に驚いた海斗が命の姿を探すとかなり海面に近付いていた

それに気付いたシーホースも慌てて命に近寄り海面すれすれで海斗が受け止め

(命…様?)

先程迄の峻烈な表情ではなく少なくとも自分の見知っている歌う人魚姫の物だったから

「命様、ご気分は如何ですか?」

そう聞くと弱々しく横に振るから

そう情け無さそうに答える海斗に忍の身体を抱き上げながら

「わかったのなら急ぎなさい、命様はかなり降下してますよ?その言葉に驚いた海斗が命の姿を探すとかなり海面に近付いていた

それに気付いたシーホースも慌てて命に近寄り海面すれすれで海斗が受け止めた

(命…様?)

先程迄の峻烈な表情ではなく少なくとも自分の見知っている歌う人魚姫の物だったから

「命様、ご気分は如何ですか?」

そう聞くと弱々しく横に振るから

「忍に合わせる顔無いから…」

耳をそばだてても聞き取れない位の小さな声で答え

「みこは具体的には知らない…でも忍の心に深い傷跡があるのは知ってる

身体の傷はすっかり消えたけど心の傷の瘡蓋を剥がされ苦しむ忍に何もしてあげられない

みこが守ってあげることも出来なかった…

だから皆の所には戻れない…忍の前には出られない…」

その命の独白を聞いた海斗は

(説得するよりそっと連れ戻しましょう)

そうシーホースに語り掛けるように思考するとシーホースも海斗の意思を汲み取り静かに陸に戻った

 

謎の男が撤退したのを見た精霊達が姿を消し春蘭達の前に現れた

雨の中、命の無事を祈る春蘭達の前に

ー私は雷精…春蘭、貴女に私の受け入れも求めますー

一人の雷精が言うと

ーライ、私の導きを受け入れ我が霊力を我が物としますか?ー

そう問われた二人は

「喜んで雷精様の導きを受け入れます」

春蘭そう答えると

「ぼ、僕も雷精様に導いて欲しいです…

こんな…離れた所に置き去りにされ命様の身を案じてるだけなんて辛すぎるっ!」

そうライが叫ぶと他の少年少女達も頷き

(又も連れて行って貰えなかった…)

そう感じるりんが一番強く感じていることだった

ーわかりました、左手を掲げなさいー

そう言われて差し出された左手を取り口付けを落とし契約を完了した

ーりん、私が何者なのかはもうわかってますね?

私も受け入れて大海原を目指しなさい…ー

そう言われて

「私を大海原にお導き下さい、海原の精様」

そう答え左手を差し出した

ーミナ、私は山谷風の精…貴女を導く雨水の精とは属性の異なる私を受け入れて新たな力を求めませんか?ー

その呼び掛けに今度は躊躇う事無く

「命様のお側に導いて下さい、山谷風の精様」

ミナもそう答え左手を差し出した

ー私は山風の精、つぐみ…私の巫女となり水の精霊の巫女と共に歩みませんか?ー

そう問われ皆が受け入れるのを見たつぐみに躊躇う理由はなかったから

「喜んで山風の精様のお導きを受け入れます」

そう答え左手を差し出しそして

ー私は霧の精、しずく…私と共に水の精霊の巫女にお力添えを致しませんか?ー

そう誘われたしずくは

「命様のお力添えが出来る力が欲しいです…霧の精様、私をお導き下さいっ!」

そう言ってしずくも左手を差し出した

新たに三人の精霊の巫女が産まれ更に四人の巫女の内の三人が更なる精霊の導きを受けることになった

「ミナさん、留美菜、りん…ライ、つぐみ、しずくの三人の身体を拭いて着替えさせてから休ませましょう」

そう言うと馬車の中から謡華が

「ミナさんの顔色も悪いですから着替えさせてから休ませましょう

留美菜ちゃんとりんちゃんも着替えて具合の悪い人の看病を手伝って下さい、私はつぐみちゃんとしずくちゃんの着替えを手伝って様子を見ますから…」

そう提案すると

「私は何とも無いですしつぼみちゃんが二人を心配そうに見てますから側に居させてあげて下さい

りんはミナさんに次いで一番の先輩なんだから謡華様のお手伝い宜しくね?」

そう言うと

「良くわからないけど僕も身体の調子良いから春蘭様こそ先に着替えて出発の準備をしておいてください

大樹と炎、ミナ様と春蘭様のお着替え覗いたら命は無いからねっ!」

と言われて

「あ、当たり前だろっ!?こんな時に洒落になんないんだよ、そんな冗談はっ!」

そう焦って言う炎に

「だってさ?蛍、こんな時じゃ無かったら覗きたいらしいよ?」

そう言われた蛍も

「まぁ炎のスケベさは今に始まった事じゃないからねっ!」

そう言って睨む蛍に

「兄貴に向かってそりゃないだろう?」

と、情けない声で言うとそれまで張りつめていた春蘭の緊張感もほぐれて

「わかりました、大樹と炎…命様が戻り次第雨宿りの出来る場所に誘導してください

そこで今日のこの後について話し合いますから」

そう言うとミナに肩を貸しつぐみにライが寄り添いしずくにはつぼみが寄り添ってりんと留美菜は最後について馬車に向かった

春蘭はまずミナの着替えを手伝いその後で自分の着替えをするとミナを寝台で休ませてからお茶の支度を始め同じく着替えを終えたりんに

「謡華さんのお手伝いをしてきなさい」

そう言われ手伝い向かった

謡華は二人の着替えを終えると二人にもう一つの寝台を二人で使うよう指示して休ませところだった

「春蘭さんはお茶の支度を始めましたから多分それを飲んで落ち着いてから出発するのだと思います」

そう伝えると

「雨に濡れて冷えた身体を温める為にも…ですね?さすが春蘭さん」

と、言うと

「それ程意識はしてなかっただろうけどライさんが春蘭さんに休むよう言ってくれたから春蘭さんも気付いたんだと思います」

そう言うと

「そうですね、春蘭さんの淹れてくれるお茶は心と身体を温めてくれますからね…」

そう微笑みながら言うと

「はい、低血圧で朝の苦手なユミ様も春蘭さんのお茶を飲めば快適な朝が迎えられるって仰ってましたから」

そう聞いて

(ユミ様…確かその名も美月のデザイナーはとして知らぬ者は無い方ですね?)

そう思いながら春蘭の背負う期待の大きさを改めて思いしる謡華だった

 

不時着と同時に意識を失い小さくなった翔を手の内に庇いながら馬車に戻った瑞穂に着替てもらい

熱いお茶を飲んでもらった春蘭は取り敢えず瑞穂が撤退するまでの話を聞いた

次いで戻ってきた阿と忍

阿に着替えてもらい忍の着替えを手伝って二人に熱いお茶を出し忍を見守る一同ではあるがさすがに春蘭も忍を見守るしかなかった

 

「海斗…何で陸の上にいるの?下ろして…みこゆったよね?皆の…忍には会えないって…」

そう言われて

「春蘭様やミナ様、阿様や瑞穂様に謡華さんだって心配してますから戻りましょう」

海斗がそう言うと命は

「ふんっ…」

と鼻を鳴らし

「お母様自らの手で産まれて間もないまこちゃんとみこは迷宮に棄てられた

だからそんなみこの事なんか心配する人なんか居るわけ無い

だから貴方もみこの事なんか放っておいて、貴方に災厄を招く前に…

疫病神なんかに関わらない方が貴方の為なんだからっ!」

そう言われて

「僕みたいなごく普通の平凡な人間に命様の様な特別な…」

「特別なって何なの?ごく普通の平凡なって…みこはその普通で良かったんだ

岬で留美菜ちゃん達のお母さんやお父さん達が漁から帰ってくるのを見てあの時はわからなかったけど今なら何と無くわかる…

みこもあんな風に迎えに来て欲しかった…

まこちゃんとみことお友達と遊びたかった…

ただそれだけなのにわからなかったまこちゃんとみこには迎えに来てくれるお父様とお母様も一緒に遊んでくれるお友達も居なかった

閉ざされた空間には昼も夜も無かったんだよ?

そんな特別の何処が羨ましいのさっ!」

涙を流しながら捲し立てる命は

「疫病神のみこの事なんかを心配してくれる人なんか居るわけ無い、放っておいてっ!」

そう叫んで黙り込む命を不安げに見守りながら手綱を持ち歩いていた海斗の左頬に痛みが走った

痛烈な平手打ちがバッチーんっ!と言う音を響かせ決まったからだ

「海斗、こんな大変な時に命泣かせて何してんのさっ!」

そう言われて蛍に叱られた海斗も何と言えば良いのかわからず

「うん、ごめん…」

と、謝ると

「海斗に悪気無いのはわかるけどもう少し考えて喋りなよ?

でないといつか取り返しのつかない失言をしかねないんだからさ…海斗は」

そう言われ何も言い返せない海斗に溜め息を吐くと

「命様を馬車にお連れしなよ

この先の雨宿り小屋で休憩するからついてこいって大樹が言ってたからね」

そう言って自分も馬車に戻っていった

命が馬車に戻り着替えを終えると謡華の膝枕で休ませることにして

雨宿り小屋に着くと一先ず食事の支度を始める春蘭と手伝いの留美菜、蛍と澪でライ、麦、美景は朝集めた草の実を仕訳することにした

馭者達は飼い葉を食べさせながら雨に濡れた馬の体を拭いてやっていた

先に役目をはたした馭者達に朝の残りの弁当と温泉卵を使ったサラダにお茶を出し先に食べてもらい休憩を取ってもらう事に

ただ…戻って来る途中意識を失っていた忍を一人には出来ずりんに見守らせていていたので瑞穂が弁当を分けると食欲が落ちるどころかいつもより旺盛な食欲を見せた

だから瑞穂も取り敢えずりんにしっかり食事を取らせるといつの間にか眠りに落ちていた

そんな瑞穂の元を訪れたのは海斗で

「瑞穂様にご相談したいのですが宜しいですか?」

そう聞かれた瑞穂は

「忍とりんが眠ってますから手短に頼みます」

そう告げると自分と翔が退却した後から話始め命を馬車の謡華に預けるまで話してくれ

「僕はもう命様に嫌われてしまったのでしょうか?」

全てを語り終えた海斗にそう聞かれた瑞穂は

「嫌いな者に身を委ねる命様ではありません

謡華さんに預けるまで貴方がお守りしてたのですからその心配は無用ですし良くも悪くもいつまでも引き摺らないのが命様です 」

そう言われた海斗が

「はい、取り敢えず今は早く一人前の騎士になって命様をお守り出来る男を目指します」

そう答えながら空の容器を纏め

「ついでですからこれは僕が洗い場に持っていきます、ありがとうございました」

そう礼を言って馬車を出ていった

 

「留美菜ちゃん凄い…」

そう澪が思わず呟いたのも当然でお手伝い程度にしか台所に立った事の無いライ達

それと鍋だけならほぼ毎日作っていたし祭の出店で高評価を得ている実績を持つ留美菜達岬の子達に敵うわけはない

「留美菜さん、りんさん…」

そう呼びたくなる二人だけどそんな呼び方しても喜ばないのもわかっている澪の当面の目標は二人を

「留美菜ちゃん、りんちゃん」

と、そう呼んでも恥ずかしくない自分になる事と決めた澪だった

春蘭は春蘭で母親のレシピは一通り厳しく仕込まれているのだから更に別格の存在だから引け目を感じるより春蘭に料理を習うのが楽しみな少女達だった

その留美菜の鍋と春蘭の野菜炒めが仕上がり謡華、命、ミナ、つぐみ、しずくの分を持っていき

すると命以外の三人は何とか起き上がり普段より少し多目に食べると再び眠りに落ちた

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。