今朝は朝食の時間がかなり早く胃の負担になら無いよう量を控えたこともあり昼食の時間にはまだ未々早いものの店を探す一行
その一行が無国籍料理の店と言う看板の店を見付けてその店に入ることにした
店内は昼時には少し早い為他に客は居らず給仕の女性も油断して大欠伸をしているところだった
「十二人ですが良いですか?」
そう春蘭が声を掛けると
照れ隠しで
「お昼の定食は未だだよ?」
そう言われたものの未だ半刻は有るのを見て
「構いません、もう皆待てる余裕はありませんから…」
「じゃ適当に座っとくれよ」
そう言うと奥の六人が卦のテーブルに別れ座ると人数分のお茶を用意して朝のメニューを渡し
「決まったら呼んどくれよ?」
そうそう言うと
調理場に
「団体さん入ったからねっ!」
そう叫ぶと
「おぉっ…」
とくぐもった声の返事があった
阿と瑞穂に忍の三人は朝のお任せ丼大盛りを頼みミナと春蘭は土鍋の雑炊で命にはそこから分ける事にし
留美菜とりんはパンケーキセットでつぼみ、つぐみ、しずくの三人はオムレツセットに決め注文した
給仕の女が気になるのは勿論命で小さな身体ながら周りの者達の態度は丸きり幼い主に支える騎士や侍女のそれ
それに雑炊を食べる匙を持つては小さくまるで日に当たったことなど無いかのように蒼白かった
阿もその視線が気にはなったけど逆に言えばそれが普通の反応だとも思い女を呼ぶと
「済まないがこの方は我々が主に任された大切な方だが初めての陸路の旅にお疲れの様子だから暫くは身元を隠したいがそんな宿は無いだろうか?」
そう言われて
(やっぱり何処かの御曹司かご令嬢なんだね…)
好奇心一杯の女は嬉しそうに
「この店の裏に店の親父の兄貴がやってる宿が良いよ
そこなら訳アリの男女が隠れて密会出来るは離れもあるから身元を隠したいならぴったりじゃないかい?
宿の親父を呼んでくるから待ってなよ?」
そう言うと裏口に消え宿の親父を連れてきた
「お前さん達が身元を隠したいお方はこちらの方かい?
だが宿の親父の立場上ワシ位は把握しとらんと不味いのは理解してくれるな?」
そう言われて阿は主を手招きしそっとフードをずらして主にだけその素顔を見せた
「成る程…確かに大層顔色が悪い…
うちの宿は天然温泉が売りで美人の湯とか疲れを癒す効能があると言われてるからお客さん達にはお勧めの湯だ
食べ終わったらさっきの女に案内させるがこの人数なら馬車は二台だろ?
団体客用の離れが空いてるから余裕で二台入るから今の内に馬車を入れておくと良い」
そう言われて一足先に食べ終えた瑞穂が二人に頷くと二人もそれに応じ頷き馬車に向かった
食べ終えた一同は店先に並ぶ弁当も買い求め支払いを終えると
「さぁ、行こうかい?」
と、陽気に言われて
「なんか申し訳ないのですが…」
そう阿が言うと笑いながら
「本当は渋ってた宿の親父をああもあっさり納得させたこの方の素性、気になってしょうがないじゃないか?
だからこの方がその素顔を見せる時になるべく近いとこに居たいってゆーアタシの好奇心が主な理由だから気にしなくても良いよっ!」
笑って言われてやっと納得し
「感謝する」
とだけ言う阿だった
宿の帳場で宿帳を持った親父が待っていて
「部屋に案内します」
と言われ他の離れより二回りは大きい部屋に案内されると
「一階は馬車の車庫と洗濯の出来る洗い場になっている他馭者が寝起き出来る休憩室になっとります」
そう言われて二階に上がり
「この部屋は芸妓…と、言ってもろくな芸も持たないのを呼ぶか流派の師範が金持ち相手の手習い教室を開く部屋だから防音対策済み
人魚姫様が心置き無く稽古ができます
奥には十二畳の座敷がありますから一面に布団を敷き詰めれば全員で眠ることも可能でしょう」
そう言われて成る程と頷く阿
「右手には簡易の調理場が有り湯を沸かし足り簡単なスープ位は用意出来ますよ」
そう言われて
「至れり尽くせりですね…料金の方は?」
そう春蘭が聞くと
「この離れは一泊十万kcで連泊すると割り引き料金になる」
そう親父が答えると
「なら七泊を予定してますからその割り引きの代わりに一日に一度貴方の自慢する温泉を貸し切りにして頂きたいのですが?」
そう春蘭が申し出ると
「そうですな、目立つその方が温泉で他の客と鉢合わせしたら身元を隠す意味が無い
わかりました、貸しきりの件承知しました」
と、答えると
「ただ…これだけの部屋で一泊十万kcは安すぎる気がするのですが…」
と、言う春蘭に
「うちは素泊まりの宿で飯は近在の飯屋で食べてもらうからさ
もっとも弟の店で食ってくれりゃ割り引きサービスはさせてもらうがねっ♪」
そう言って笑われて春蘭は
「温泉を貸し切りにして頂くのにですか?」
そう聞き返すと
「うちの温泉は宿泊客以外にも有料で開放してるからね
女神の祭典が近い今の時期に温泉を貸し切りにする者がいれば貸し切りにしているお人は何て方だ?
そう言う噂はすぐに広まり皆さんが旅立たれた後に
「実はうちの宿に人魚姫様がお泊まり下さり温泉を貸し切りにして下さってたんだ…
つまり人魚姫様御宿泊の宿を名乗る栄誉を賜り温泉はもし姫様がお気に召されたら人魚姫様が喜ぶ湯と銘打ちたいのです」
そう言われて春蘭は
「わかりました、命様の回復状況にもよりますが宿の宴会場の予約状況はどうなってますか?
と、聞かれた主は
「歌の女神の祭典が近いこの時期、うちに限らず泊客は勿論宴会場を貸し切る客はまず居りませんよ?」
そう聞いてた春蘭は
「わかりました、宿泊最後の夜に宴会場の予約する事にしましたから出発が決まりましたら知らせます」
そう言われて何故離れの客が宴会場の予約するのか不思議だったけど敢えて聞くことはせず
「わかりました、その日の訪れは寂しいがいつかは来る日、楽しみに待ちましょう」
そう話していると轍の音が近付いてきたので
「馬車を仕舞いましょう、それが済んだら温泉の説明をしますがどなたにしましょうか?」
そう阿に声を掛けると
「お店で食事をしていた馭者の方に聞いて頂きます
私は取り敢えずお茶の支度をしますからミナさんはその旨を瑞穂さんにお伝え下さい
阿さんと忍さんはお茶を飲んだら奥の部屋で休んでいてください」
春蘭のその言葉を聞き命が瞳を輝かせ
「みこもお風呂見たいから一緒に行くっ!」
そう言うと宿の親父が目を丸くするのを見て
「驚かれましたか?精霊の巫女である命様の素顔は従者の少女達より幼い子なんです」
そう春蘭に言われて
「驚いたが納得もしましたよ…精霊の巫女様と可愛いと言う形容詞が何故結び付くのかわからなかったがご本人を見てわかりましたよ」
と穏やかな目で命を見る宿の主に
「まぁそう言う訳ですから宜しくお願いします、りんはミナさんの荷物の整理を手伝って下さい
留美菜はつぼみ、つぐみ、しずくと一緒に命様を頼みますね
私は馭者の方に暖かいスープを用意しますから」
そう春蘭が言うと動き出す一同だった
宿の主の誘導で馬車を車庫に入れると
「宿の御主人が温泉の説明をしてくださるので聞いて欲しいと春蘭さんが言ってます
命様をお願いしますとも…」
最後の一言は苦笑混じりに言うミナに同じく苦笑いで返す瑞穂だった
「主、温泉の説明をお願いします」
そう瑞穂が声を掛けると
「わかりました、ご案内致します」
そう親父も応え
「つぐみとしずくは命様と手を繋いで留美菜とつぼみはその後ろからついてきなさい」
そう指示すると親父の後に続き温泉に向かった
湯殿は一部三階建てで基本的には土蔵の様だった
建物の中央に入り口が三つ有り主は躊躇わずに真ん中に入ると
ここは男女の共用スペースで左手に男湯、右手に女湯となっとります
この共用スペースでは一階は持ち込みで自由に食事が出来ますが飲み物はこちらで提供しとります
この扉を開けると女湯の入り口になりこの右手にある扉が貸し切りの要です」
そう言われて扉に触れると
「石作の様ですね?」
そう瑞穂が言うと
「一枚岩で出来たそれは二百貫有りまして中からこの滑車を使わねば開かぬ仕組みになっとりますし簡単に開けられても困りますが…」
そう言われて
(成る程…さすがに自慢するだけの事はあるな…)
そう感心しながら
「その前に共用スペースとの出入り口ですが内鍵があり外からは容易に開けられませんしこの小窓から様子が伺えますか仲間の方が後からお見えになる場合確認してから入ってもらう事が出来ます
親父の説明に頷き
「続きの説明を…」
そう言われて
「ここは脱衣所で食べる物は禁止ですが飲み物はそこの小窓で頼めるし給水器はそちらにと指差した
いよいよ温泉に入り左の扉を示し
「こちらは岩風呂…蒸し風呂になっとります」
今度は小さな泉の前で
「こちらは水風呂で蒸し風呂で火照った身体を冷ませます、そして…」
「焦らずじっくり考えなさい
私は貴女が精霊の巫女ではなくデザイナーとしての私のパートナーと考えてますがそう思えるのは貴女が初めて…
そう言う意味では私には貴女の代わりは居ませんよ?」
そう言われてより考え込むミナだった
「さて、皆戻りましたね?」
ユウが一同を見回しながら言って
「今から大切な話をしますからよく聞きなさい
謡華さんにも色々関わりの有ることですから聞いて頂きます」
そう言って反応を見ながら
「まず、この一団のリーダーはこの後も春蘭が変わらず務めますからミナ、貴女は基本的にはこれ迄同様に若月のデザインを優先で新しく入ってきた娘達を見守りなさい
それと私の事をユカ様と呼ぶのも禁止で妥協点でユカさんにしなさい」
そう言われて戸惑うミナには構わずユカは
ミナ、春蘭、留美菜、りん、ライ、つぐみ、しずくは命様のお祈りの時間は共に祈りなさい
踊りに関してはライ、つぐみ、しずくは私が基礎を教えますから他の四人は自習で行き詰まったら命様に相談なさい
明日は湯町に行き宿を取りそれ以降は明日決めましょう
ここまでで解らないことは?」
そうユカに言われて
「名前を呼ばれなかった私達はどうしたら良いのでしょうか?」
麦が代表して質問すると
「その辺りも適正を見て考える必要がありますから明日迄の予定しか考えてませんが…
その前に皆にお願いしたい事が有ります」
そう言って若月の服を取り出し
「この中から一人一着気に入った物を選んでください、プレゼントしますから」
と、言われたけどその真意が分かず二の足を踏む少女達を他所に留美菜とりんが物色中
「あ…これ、あの日りんが着てたのだね?」
そう聞かれたりんは
「うん、留美菜ちゃんのサイズのだね」
と、言われて
「私も欲しかったけどお店があったから諦めてたんだよねぇーっ…」
そう話す二人に
「留美菜とりんも遠慮は要りません、勿論ミナと春蘭もね」
そう言われて探し始める二人が選んだのはミナがデニムのワンピースに春蘭は空色のロングのワンピース
留美菜はレモンイエローのミニのワンピースにりんはピンキーエンジェルを選ぶのを見て他の少女達も選び始めた
「でも、何故この服を頂けるのでしょうか?」
そう麦がユカに聞くと
「若月の知名度が未々低いからです
貴女達にモデルになって着て貰う事によりより多くの人の目に触れる機会を増やしたいのです」
そう説明すると
「でも…モデルでしたら命様がいらっしゃるのに何故?」
麦が不思議そうにそう話していると
「だっ、誰か早く来てくださいっ!命様が、命様がーっ…」
切羽詰まった忍の声が響いたので慌てて一同も声の方に向かうと瑞穂と阿が青い顔をして部屋の入り口に立っていた
「ミナは子供達とそこに居なさい、ユカと春蘭だけ入りなさい」
そう言われて中に入ると自らの胸に手刀を突き立てて倒れていた
「一体何が有ったと言うのてすか?こんな事になるなんて…」
その春蘭の呻くような言葉に忍が
「私のせい、私が命様の前で死にたいなんて口走ってしまったからいけないんです…死にたいなんて…」
忍がそう呻くと
「一人で死ぬのは寂しいからみこが一緒に死んであげる…
と、いった感じですか?」
そう言われて
「は、はい…命様っ!後生ですからもうこの手を止めて下さい…もう二度と仇やおろそかに死にたいなどと申しませんから…」
泣きながら言う忍に
「ホントに?忍を守ってあげられなかったみこを許してくれる?」
息も絶え絶えの命にそう言われて
「それは命様のせいではありません私の弱さのせいですから…」
そう弱々しく言う忍に
「それはみこにはわからない事だから忍が一言赦すって言ってくれたらみこも自分を許せる…」
命のその言葉に
「赦しますから…お願いですからこれ以上ご自分を責めないで下さい
ご自分を傷付けるのは止めてくださいっ!」
忍のその言葉にそれ迄はびくともしなかった右手に力が抜け自ら抜き取ると大出血を恐れた春蘭が慌てて傷口を押さえよう手を翳すと傷口はみるみる内にふさがり命の胸には染みひとつ残ってない
しかも春蘭が命の呼吸を確かめるとそれまでは青ざめていた顔が真っ赤に染まり怒りに震えて
「これだけの大騒ぎを起こしておいて寝息を立てて寝てる?」
そう呟いていると
「おはよー、春蘭…泣いてるの?怖い夢でも見た?なんか悲しい事…」
そう言いながら春蘭の表情が怖くなり口をつむぐ命に
「命様、ジュースでも溢されましたか?
お洋服が汚れてしまいましたから男の子達が戻ってくる前にお着替えしましょうね?」
目が全く笑ってないひきつる笑顔でそう言われて恐れおののく命が阿と瑞穂を見て助けを求めたけど触らぬ神に祟り無し…
そう思わせる程の春蘭の怒りと二人もかなり怒っていたから助ける気もない
命の手を引いて温泉に向かう春蘭がミナとすれ違い
「ミナさん、ピンキーエンジェルお願いしますね?」
そう言われて溜め息を吐き日頃命には甘いミナでもさすがに少し怒っていたので庇いきれない
しかもどうやら春蘭は命が余りお気に召さないピンキーエンジェルを着せるらしい
「わかりました、脱衣所に持っていけば良いのですね?」
そう言って馬車に向かうミナを見送り
「澪は先程選んだその服に着替えてください
そうすれば麦の疑問も言葉で説明するよりわかりやすいですからね」
そう言って血で汚れた服を脱がせ洗い場で血を洗い流しミナが用意した肌着を着せてピンキーエンジェルを着せた
ピンクのローヒールにピンクのリボンカチューシャを着けて食堂に向かうと澪も同じ服を着て待っていた
「この服は通称ピンキーエンジェルで、見てわかると思いますが熱帯魚のピンキーエンジェルをイメージした物です
勿論二人の服の素材は同じですし体型の違いからくるデザインの多少の違いは有りますが同じ服です
その二人を見比べて正直な感想を言ってみすなさい」
ユカにそう言われて麦が
「澪が着てるのは可愛い子供服だけど命様のは余り子供服っぽくないです…」
新しく入ってきた娘の中でも一番ファッションに関心の高い麦にそう言われて命から感じていた違和感に気付いて頷く少女達
「そう、同じデザインの筈なのに命様の服は子供服に見えないので貴女達にも着て宣伝を手伝ってほしいのです」
ユカにそう言われて
「可愛い服を着るのがお手伝いになるんですか?」
麦が嬉しそうに聞くと
「服じゃなかったけど可愛いエプロンを頂きましたよ?
未だ見習いの侍女になる前の私達は…
あの時りんも含めてモデルをした方達はショーで着た服は四枚とも頂いたって聞いてますよ?」
留美菜がそう言うと
「まぁそう言うことですね
取り敢えず何度も着替えさせるのもどうかと思いますから澪はねるまでその格好で居なさい」
ユカにそう言われて
「でも、こんな可愛い服を汚しちゃったら…」
そう言う澪に
「今日はもう夕食の準備と後片付け位だから貴女は明日の朝食の支度と後片付けをしなさい
今夜は私と麦、美景、蛍で支度しますから後片付けは春蘭、留美菜、ライ、しずくで後片付けを
明日の朝食の支度は私、澪、つぼみで後片付けをミナ、りん、、つぐみ、澪の予定です」
そう言うと
「みこもお着替えしたい…」
春蘭にそう小さな声で訴えたけどものの見事に聞き流されて
「春蘭様、戦闘と今の騒ぎで傷付いた服はどうなりますか?」
麦に聞かれた春蘭は
「戦闘で傷めた服は何ヵ所も焼け焦げてますし今の騒ぎで傷付いた服は血が落ちるかわかりませんから…
どちらも命様のお気に入りの服ですけど処分するしか…」
そう言われて麦が嬉しそうに
「それなら、私に手直しさせて貰えませんか?リフォームって言いますが…」
そう言われて初めて聞く単語に
「リフォーム?」
と、聞くと
「破れた所や落ちない汚れを当て布で隠すんですけど麦や麦のお母さんはパッチワークやワッペンで可愛く作り替えてくれるんです」
そう澪が説明すると
「お下がりでお姉ちゃんから貰うときなんかも作り替えてくれるからお下がりに見えないんだよねっ♪」
と、美景も嬉しそうに言ったけど元々長女で弥空と深潮が双子の為どっちが着るかで喧嘩になった為劉家ではお下がりはせず知り合いの娘に譲ったり孤児院に寄付したりしていたので春蘭にお下がりと言う言葉自体馴染みがなかった
だからこの話に反応をしたのはユカで
「わかりました、麦…貴女に任せますから仕上がったら見せてください
それともし必要な材料が無く悩む暇が有ったら言いなさい」
そう言われて
「はい、頑張りますっ!」
その麦の返事を聞いて
(若月の服のバリエーションが増やせるかもしれませんね?)
そう考えると嬉しくなるユカだったから
「春蘭、ミナ、つぼみ、つぐみ、しずく、麦は食事まで創作活動
留美菜とりんは自習で澪は暫く見学し興味の有るものがあれば私に言いなさい」
そう言って自身は夕食の支度を始めた
ユカが用意した夕食は鍬焼きと呼ばれる料理で鳥肉がメインの大公領の郷土料理のひとつ
後はスープと山菜の佃煮を纏めて作りそのついでに蛍が
「朝採った草の実でジャムを作りたいんですけど…」
そう言われたのでそのための下準備も済ませた
大漁の大樹、山鳥を二羽仕留めた風華、篭一杯のこけももを背負ってきた海斗、同じく草ブドウをが一杯に背負ってきた炎の四人
「魚は俺達がちゃっちゃと捌きます」
と大樹が言うと蛍が
「炎、後でジャムを作るからそれも頂戴ね?」
と言われ美景は
「海斗、早速今晩のデザートにする?」
そう言われて
「勿論そのつもり」
と、答え
「私は鍋にするならともかくそうでないなら湯町て売った方が良いからその様に処理した方が良いと思いますが?」
そう言うと
「この人数ではその方が良いでしょうから任せます」
それと風華、大樹、炎の三人の見習い騎士の平服も有りますから食事の時に渡します」
そう言われて喜びの笑みを浮かべる三人だった
夕食の時に命が
「たいき達早く強くなりたい?」
そう聞かれた海斗は真っ先に
「はい、戦場に居ながら何も出来ない自分が情けなかったから…
もうそんなのは嫌なんです」
そう答えると大樹は
「俺達はそこにすら行けずどうなっているかもわからないで不安になって待つしかなかった…」
そう言うと風華と炎も頷きそれを見た命が考えながら
「わかったよ…じゃあ瑞穂にお願いだけど四人の座禅修業をみこのお歌のお稽古終わるまで見てあげて…
後、阿と忍に春蘭はお願いしたいこと有るから…」自分達に命が何をさせたいのかはわからなかったけど
「私達はどこで待てば宜しいでしょうか?」
春蘭がそう命に尋ねると
「春蘭と忍はこの後の予定あるの?」
そう聞かれた二人は
「私は特に有りませんから大樹達と座禅行を行います」
忍がそう答え
「私は洗い物の後刺繍を少しする予定ですが?」
と、答えるのを聞いたユカが
「春蘭、先程渡し忘れた観月様からの預かり物が有りますから洗い物が終わったら声を掛けなさい」
と、言われるのを聞いたりんが
「春蘭さん、洗い物は私達でしますからその分刺繍の時間に充てて下さい」
と、言われて戸惑う春蘭に
「丁度良いかもしれませんね、預かり物は絹のハンカチと絹の刺繍糸ですから観月様の期待の程がわかるでしょ?」
ユカが言うと驚くミナが
「さすが春蘭さん…」
そう声をあげると
「何を他人事の様に…
貴女の協力で完成させた若月の第一期の量販が始まると同時に完売してしまったんです」
そう言われて唖然とするミナに
「だからユカ様は禁止と言ったんですよ?
貴女も立派な美月のスタッフと言うより最早主力の一人なんですからね?」
そう聞いた少女達のミナを見る目が更に尊敬の念がより深い物になった
「じゃあ、春蘭が気にならないならここで刺繍したら良いよ…
後は留美菜、りん、ライ、つぐみにも協力して貰うからお願いね」
そう言うと食事を再開する命だった
食事の後ミナは新作の試作品作成、春蘭は刺繍、つぐみは竹細工、つぼみは組紐、しずくは編み物で蛍はユカとジャム作り
麦は命の服の補修で胸に裂け目の有る海兵隊風のシャツは裂け目の上に向日葵の花の柄のアップリケで隠すと
「縫い目もしっかりしてますがこのアップリケが可愛いですね?
もう一枚も期待してますから」
そうユカの高評価を共に喜ぶ少女達を見て
(若月期待の新人ですね…)
その出現を密かに喜ぶユカだった
「たいき達お風呂入って来て…儀式を執り行うから身を清めてほしーんだよ」
命が三人に告げると風華が
「命様、私にも戦士の力をお与えください」
そう訴えられたので
「んーっ…精霊の巫女じゃダメなの?みこ的にはそっちがお勧めなんだけど…」
命にそう言われた風華は
「アタシみたいながさつな人間には向いてませんよ」
そう言ってあっさり断られたので
「う~ん、そおかぁーっ…じゃあ、大樹達の後に入って来て
海斗は肌着だけ着替えて他の三人は海斗とおんなし格好でいーからね?んでみこは…」
そう言って春蘭を見ると
「はーっ、仕方ありませんね…水の精霊の巫女のドレスで宜しいですか?」
そう聞かれた命ホッとすると
「うん、じゃあこの服はもう終わり?」
そう春蘭に聞くと
「そうですね…また明日の朝着替えましょう」
そう言われたので
「いつまで着なきゃいけないの?」
更に聞いてくる命に
「私達が心配している事を命様がご理解出来るまで…
は、さすがにお洗濯もありますから冗談ですが今後はその服を優先的に着させて貰います
何でしたら今日の事を真琴様や観月様にご報告致しましょうか?」
そう言われたらもう何も言えない命に春蘭は
「命様はお嫌いでしょうが可愛い命様に良くお似合いなんですよ?」
春蘭にはお世辞のつもりは全く無く有りの儘の事実を述べているにも関わらず命の心には届かない
(そんなウソみこが信じるって思ってるの?)
春蘭から視線を反らした命の瞳は虚ろで目に写る物を拒絶し何も写してはいなかった
「ついてきて…」
阿、忍、春蘭にそう告げ向かった先は寝台付きの馬車
乗り込むと三人をキッチンの床に座らせ暫く考え込んでいた命が瞳をひらくと
「良く聞きなさい、今から貴女達にみこがさせようと考えたことを説明します」
その物の言い方がいつものみこでない事は春蘭でもわかり三人が頷くのを見て
これは常日頃私がみことは別に張っている警戒の為の結界を貴女達にやらせる為の方法」
そう言われて阿が
「そのようなことが私達に出来るのですか?」
そう問われた命は
「春蘭でも現状では無理、まだ実力不足で魔導師でない二人には更に不可能…
ですがそれを可能にするのがみこの考えたことで理屈を聞くまでは思い付かないと言うより考える必要もなかったのだが…
二人には魔力や霊力を感じ気配を読む事は可能ですね?」
そう言われてムッとした阿は
「瑞穂にも出来るっ!」
感情を圧し殺し答える阿に
「私もみこも瑞穂が二人に劣るなど微塵にも思わない」
ただ、幼い巫女達や見習いの侍女達にとり精神的支柱の瑞穂と春蘭の二人の不在は好ましく無いゆえ彼女を外したのはみこなりの気遣い」
そう言われて
「確かにまず私か瑞穂さんに相談しに来ますね…」
そう春蘭に言われて
「私は留美菜やりんにユカの事でからかわれているだけに一歩ひいてしまいますから…」
阿のその言葉に
「それが皆と離れさせた理由…だが時が惜しい故本題に入る
簡単に言えば貴女達の魔力や霊力、気配を感じる力を春蘭が触媒となり精霊の霊力で感知出来る範囲を広げるのです
遠眼鏡で遠くを見通すように」
そう言われて
「そうですか、私達の誰一人出来ないが協力し合うことで可能になるわけですね…」
そう言って納得する阿に
「今夜は阿と春蘭が組み忍は二人の映し身を守りなさい、術中を襲われたらすぐに対応出来ぬゆえ…」
そう言われて
「ならばやはり皆と一緒の方が良くありませんか?」
そう聞く春蘭に
「直にわかる亊…まず阿よ、その場で座禅を始め魔力や霊力、気配を感じ取りなさい…」
―私の魔力、春蘭の霊力、忍の気配を感じますね…―
そう聞かれた阿は
(命様の霊力は感じませんが…)
そう聞き返すと
―私はみこの魔力の根幹で魔力その物とも言えよう…
故に私が表に出ている今は精霊の巫女は一歩下がっている故に貴女には感じ取れぬだけ
次の段階に入ります―
阿にそう伝え
「春蘭、阿の組まれた脚の上に腰を下ろしなさい…」
何も考える亊なく命の指示に従い腰を下ろす春蘭を見ていた忍がアッと呻き目を覆うと
「りんが言うところのユカ様が妬きもちを妬く亊ですね?」
改めて言われて青ざめる春蘭と阿に
「みこに深い思慮は無いが見てないようで見て全てを心の奥にある引き出しに仕舞い込んでいる
余りに奥の方過ぎる故何を知り何を知らぬかすら本人も知らぬから何も知らぬと思い込んでいるが…」
命はそう言って溜め息を吐き
「そう言う訳故貴女達をユカから離したのだ…
春蘭目を閉じ風を感じなさい、その風に心を委ねなさい」
そう春蘭に指示すると
(風が…優しい風を感じたが…)
阿が頬に当たる風を感じた時
ーそれが貴女の持つ春蘭の印象ー
突然言われて阿が驚くの気にも止めず
「さあ春蘭、その手を目の前に有る阿の手に添えなさい…」
既に何も感じ無い春蘭が命の指示に従い自らの手を重ねた
するとそれまではまるで濃密な霧の中にでも居たように視界を遮っていた霧が吹き払われ一気に開かれた
(んっ!)
その強すぎる光に目をきつく閉じ一瞬息が詰まり身体が強張った
暫くして光に慣れて目を開けると三人はいなかった
命はその感じる魔力から命とわかるのに幼い少女では無く魔界の女王を思わせる姿をしていた
忍は阿が始めて見る戌の獣人の姿をしていたけど春蘭の姿が見当たらなかった
春蘭の…潮風の精と雷精の霊気はまるで自分を包み込んでいるかの如く感じるのに肝心の春蘭が居ない
(どういう事だ?)
その阿の疑問に
ー貴女を包む風、それが解放された春蘭の霊力
阿よ、その風を感じ風に乗りなさい…
そうする事により貴女の感知能力を風(春蘭の霊力)が刺激し拡大してゆくのだからー
そう言われて風に身(霊体)を任せ風に意識を集中した
馬車の壁をすり抜け宿の食堂で水を飲む大樹達の姿が見えた
温泉に向かう風華がこちらを振り返り首を捻った
風が川の流れの様に見え夜鳥や夜行性の獣達の息遣いが聞こえた
朝まで居た湯下の町まで意識が広がったのを見て
ー今夜はこの位で良いでしょう
さすが鍛えられた戦士の感覚ですね…
春蘭の霊力の制御の修行も兼ねるこの術
いずれ春蘭の修行に区切りがついたら他の者に変わらせましょうー
そう考えながら
「忍は警戒を怠る事無く寝台で仮眠を取りなさい、その為この馬車を選んだのですからね…」
そう言って一旦宿の食堂に入り
「留美菜、りん、ライ、つぐみはついてきなさい、大樹達は風華が一息吐いたら王家の馬車に来なさい
私達はそこで準備を整え待ちますから」
そう話すのを聞いて
「瑞穂様はつぼみとしずく、謡華さんは澪と美景、映見さんは麦と蛍を連れて寝室で休んで下さい
私とミナは四人の巫女達を待ちますから…」
そう言われて瑞穂達は各々に少女達を引率して休む事にした
「りんは見た事がありますね?鬼百合達が勾玉や霊玉を受け入れるのを…」
そう聞かれたりんは
「じゃあ大樹君達にそれを?そんな事して大丈夫なんですか?」
心配そうに聞くと
「本来ならば今のあの者達の身体では負
担が大きすぎる故無理でしょうが…
その無理を道理に変える為貴女達に力(霊力)を借りたいのです」
そう言われて
「私達に何が出来るのでしょうか?」
留美菜が聞くと
「貴女達は祈るだけ、貴女達の霊力を借り私が結界を張りますからそのまま祈り続けなさい
私はその結界の中で四人を守り導きますから頼みますよ
ただし、結界は私が張りますがその手順をしっかり目に焼き付けなさい
貴女達の身を守る技のひとつになりますからね」
そう言われて緊張の面持ちで待つ四人
暫くして四人の見習い騎士が揃って現れた
「まず最初に断っておきますが命に保証はありません
ですから無理強いするつもりは有りませんし心身への負担も決して小さく有りません
それだけは承知しておきなさい」
命にそう言われて
「普通に修行したって苦しいはずだし今すぐ力が欲しいって無茶を言ってるんだから仕方無いです」
海斗が言えば
「危険も負担も…」
炎も言い
「今のままじゃ遅かれ早かれ闇の者に一矢も報えず死ぬのは目に見えてます
それなら今ここで命を賭けて力を求めるのもありではないでしょうか?
勿論俺達は夢に向かって旅立ったばかりなんだから未々死ぬ気はこれっぽっちもありませんけどね」
そう言って右手の親指と人差し指を殆どくっついてる位の隙間を開けて見せると三人もうなずいたので
「わかりました、大樹は進行方向に背を向けその左の壁を背に海斗
風華は進行方向を見て座り、炎は扉を背に座りなさい」
四人が座り直すと
「りんは大樹の左に座りなさい、その向かいに留美菜でライは風華の左に座りその向かいはつぐみが座る」
そう指示し巫女達も席を移動を終えると
「これは三人の精霊の巫女の霊力が込められた霊玉と雷精の霊力を閉じ込めた霊玉と二人の魔導師の魔力を封じ込めた勾玉
これらを身に受け入れる事により各々に精霊やその巫女、魔導師の加護を得て力をえるのです」
そう言って四色の霊玉と二色の勾玉を巾着袋から出して見せると
「力を求める者達の元に行き力を与えなさい…」
命がそう命じると蒼い霊玉は海斗の元に行き碧の霊玉は風華の元に、朱い霊玉は炎の元に行き…
大樹が手にしたのは黒い勾玉で霊玉ではなかった
「それを心臓の上から取り込めば苦しく無い代わりに力の目覚めは遅く
呑み込めば苦しむ代わりに力の目覚めは早い
どちらを選ぶかは各人の判断に任せます」
命にそう言われた四人は迷う事無く呑み込み命に与えられた水筒の水を飲み次の言葉を待つと
「後は貴方達は目を閉じ心を落ち着けることです
巫女達も祈りなさい貴女達の為、見習い騎士達の為…」
そう言って四人の巫女達に祈らせて高まった霊力を引き出し結界を張ると
自らは霊力で見習い騎士達の身体を包み込み霊体に寄り添い四人の魂を導いた
四人の身体に霊玉や勾玉が馴染んだのは夜の闇が白み始める頃で一人馬車を降り宿の食堂に行くと椅子に座り内職をしているミナ