机に突っ伏して眠るユカの肩にはミナが気遣い毛布が掛けてあり命の気配で目を覚ましたらしい
「お早うございます…命様」
二人揃って命に声を掛けたけど命の顔は半分以上眠ったままで二人には全く気付いてなかった…
その命にミナがお茶を差し出すとコクりと頷き受け取ると一口飲み息を吐く命は少しだけ頭がすっきりしたので
「おはよ…ミナ、ユカ…」
そう声を掛けぽすっと音を立ててミナに抱き付くともう一口お茶を口にして今度は大きく息を吐き出し
「踊りのお稽古してくる…」
そう言って出ていった
見習い騎士の四人が意識を取り戻したのは命がお茶を飲んでいる頃で取り敢えず食堂に行くとユカが朝食の支度を始めていた
「お早うございます、ユカ様、ミナ様っ!」
そう四人が挨拶すると少年達のお腹が鳴りき
「命様の言われた通りですね…」
そう笑いながら饅頭と温泉卵を出すと貪り食う四人に
「成果は感じられますか?」
ユカが四人に聞くと
「気のせいかもしれませんが力がみなぎってるって感じです」
大樹がそう答えると
「身体が軽い感じです」
炎と海斗が声を揃えて言いただ一人風華だけが
「今の所特にこれといった変化は感じません…」
そう少し落ち込み気味に言う風華に大樹が
「まぁ俺達だって気がするだけで実際に何かが変わった訳じゃないから気にしても仕方無いよ?
それより炎に海斗、昨日仕掛けた篭見に行くぞ」
そう二人に声を掛けると風華も
「私は昨日見かけた大葉の群生地に行ってくる」
と、言って立ち上がり四人は出掛けていった
「夜が明けた…」
忍がそう呟くのと同時に阿が組んだ手に添えたの自分の手を離し阿の脚の上から降りると
「特に問題無かったがこちらは?」
阿が忍に言うと
「こちらも特に何も有りませんでした…」
と答えたので
「春蘭は身体の調子の方はどうですか?
私達は身体をほぐしてから宿の食堂に行きますが…」
そう阿に言われた春蘭は
「身体の調子は良いので食堂でお茶の支度をしがてら朝食の支度をしているだろうユカ様と今日の予定の確認をします」
そう答える春蘭の様子は確かに無理をしているようには見えない
「わかりました、熱いお茶を楽しみにしてます」
そう言って身体の筋を伸ばす二人だった
「おはようございます…」
食堂に入りながら声を掛けると調理場にはユカが澪とつぼみに指示しながら食事の支度をしていてミナは内職をしていた
(朝食の支度だけではないようですね…)
調理場を一瞥してそう考えながら
「ユカ様、お湯が沸いたら少し分けていただいても良いですか?」
そう声を掛けると
「それは貴女の為に沸かしているのだから遠慮は要りませんよ」
そう答えが帰ってきたので暫く見守っていた
湯が沸く頃阿と忍が食堂に顔を出しある程度支度を終えた調理場の三人とお茶を飲んでいる
「ミナさん、命様は?」
そう声を掛けると
「夜明け前に現れて踊りのお稽古をすると言って外に行かれました
後、見習い騎士の方達は昨日仕掛けた篭を見に行くと言って出掛けてます」
そう言われたので
「では留美菜やりん達は?」
そう聞くと
「夕べ命様と馬車に向かわれたままですから馬車で休んでると思いますが?」
そう言われたので
「わかりました、様子を見て命様のお稽古が終わったら汗を流させます」
そう言って食堂を後にした
「み、命様が居ないっ!大樹達の姿も…」
ライの叫び声が聞こえてきた
馬車の戸を開け中を見ると狼狽えている四人の視線が春蘭に集まり
「し、春蘭さん…命様の姿が見当たりませんっ!」
そう言われたけど
「ミナさんに踊りのお稽古してくるとそう言って出ていったと聞いてますから…
留美菜、りんは落ち着きなさい…命様の霊気がわからない二人ではないでしょ?
見習い騎士の四人は昨日仕掛けた篭をみにいったそうですよ?」
そう言われて
「えっ?」
っと言う表情の四人に構わず命の着替えの支度をしていると
「春蘭様は命様が居ないのに心配じゃないんですか?」
ライに言われて
「私は夕べ阿さんと忍さんの三人で見張りをしていましたがお二人からは異常なし、問題はなかったと聞いてます
何より命様の霊気はすぐそばから感じていますからね」
そう言われて顔を見合せる留美菜とりんは落ち着きを取り戻し
「た、確かに命様の霊気をすぐ側に感じるし弥空さんが姉さんが冷静なら問題無いって言ってましたね…」
そうりんがそう呟くと留美菜も
「確かに…」
と、言うのを聞いて
「この感じからすると命様は湯殿の前でお稽古されてますから私は着替えを持っていき…
命様と朝風呂で汗を流しますけど貴女達はどうしますか?」
そう聞かれたので
「私も着替えを準備します
でも、私がユカ様とミナさんを除いたら一番長く命様のお側に長くお仕えしてるのに…」
そうぼやくりんに
「だから私達は学んでいるんですよ?
失敗が笑って許される今のうちに色々な事を経験しておけば良いのです」
そう春蘭に言われて
「それで良いのでしょうか?」
と、聞いてくる留美菜に
「知らない事、出来ない事を学ぶ為の見習い期間です」
そう言われて
「そうですね…兄貴達や大樹達もいきなり馬に触らせて貰えた訳じゃなかったんだよね…」
ライが言うとつぐみが
「そうなんですか?」
と、聞いてくるので
「最初は馬小屋の掃除に昨日朝御飯食べた所で草を苅り飼い葉作りの手伝いで馬に触らせてもらえない…
って海斗は良く溢してた」
そう言われて始めて会った時の大樹達は既に馬借の手伝いで馭者をしていたのでつぐみには驚く話だった
「命様の霊気に乱れを感じますから様子を見に行きますが貴女達も温泉に入るなら支度をしてきなさい」
そう言うと着替えをもって湯殿に向かう春蘭を
そう声を掛けると
「つぐみちゃん、僕達も支度して朝風呂に入ろう」
そう言って四人で支度を始
湯殿の前で宙に浮き踊りの稽古をする命に向かい
「そろそろお稽古稽古を終わりにして温泉で汗を洗い流しませんか?」
多分命の耳には届かないだろうとは思いながら一応呼び掛けたが予想通りに反応はない
代わりに稽古を終わりにするつもりなのか命の身体は降下を始めている
その様子を見てホッとしたのも束の間で命の顔が青ざめ目を閉じている事に気付いて慌てて降下地点駆け寄り命の身体を受け止め
汗で濡れて張り付く服を脱がせると冷えきった身体を抱き上げそのまま温泉に浸かった
真っ青だった顔色に血の気か戻り身体の震えも収まりつつある
ようやく開かれた目は生気は感じられず虚ろで何も見えてないように思えた
「…喉乾いた…」
やっと発してくれた命の言葉を聞いた春蘭は
「お水のみますか?」
と、聞くと小さく頷き返したので自分と命の体にタオル巻き付け
浴場に備え付けのベンチに腰掛けると水の入った水筒を渡し命が飲むのを見守っていた
暫くして留美菜達が入ってきたけどベンチに腰掛ける命を見て
「命様…もう上がるんですか?」
そう留美菜に聞かれ弱々しく首を横に降り
「お水…飲んでただけ…」
そう言われたので掛け湯をして温泉に浸かると緊張で固まっていた身体が解れていくようだった…
「こんな亊…親父達に言っても誰も信じないだろうな…」
魚籠に入った早瀬鰻を見ながら大樹言うと海斗も
「僕だって狢に化かされてるって言われてもおどろかないんだからさ」
そう言って魚の入った魚籠を抱えながら歩く炎と魚取り用の竹篭を担ぐ海斗が興奮を隠しきれない
待ち合わせ場所に行くと既に篭一杯の大葉を背負った風華が待っていて四人揃って宿に戻ると丁度命達が湯殿から出てきた所で
「魚を調理場に持っていったら貴方達も温泉に入って着替えなさい
魚の臭いがしますからね」
そう春蘭に言われ微妙に春蘭と命から視線を反らした三人は苦笑いしながら
「わかりました」
そう答え調理場に魚を運んで行くとその漁果に呆れたユカが
「魚屋でも始めるのですか?」
と言うもので
「炎の荷馬車に積んだら温泉に入って着替えなさい
服に臭いが染み付く前にしなさい」
そう言われて調理場から追い出し風華の篭中身を見せてもらうと
「大葉といっても赤紫蘇なんですね?」
嬉しそうに言われ
「はい、中々これだけの量は採れませんからちょっと欲張りました」
そうちょっと得意気に言う風華に
「少し良いから欲しいと思ってましたから有り難いです」
そう言ってその訳を話した
大樹達が温泉から出て食事の後に阿、瑞穂、忍、ユカ、ミナが温泉にはいりその間に洗い物を済ませ出発準備を済ませた一行
出発の時を迎えると命が再び祈り始め空の彼方よりそれは舞い降りた
大きな翼を羽ばたかせたた純白の天馬が…
天馬は命の前に降り立つと鼻面を命に擦り寄せ風華に乗れと言う様にしゃがんで見せるので風華も遠慮はせずその背に乗り自分に向かい両手を伸ばす命の手を取ると一気に引き上げると歩き始める天馬
それを見て
「忍、海斗の後ろに乗せて貰いまた勝手なことをしないようついていきなさい」
阿にそう言われて
「海斗、お願いできますか?」
そう言われて
「承知しました」
そう答えシーホースに股がり忍の手を取り後ろに乗せると命達の後を追い掛けた
最初は普通に四足歩行をしていた二体だけど徐々に加速して行き結局飛行競争になっていた
風華が慣れ始めたのを感じた天馬が宙を駆け始めるとシーホースも追走した
その海斗の背中を見ながら
「昨日より格段に上達してますね
昨日の乗せて貰っていた状態から乗って居ると感じる状態になってますから」
忍にそう言われて嬉恥ずかしの海斗は
「僕にはそんな自覚無いけど忍様がそう仰るならそれは僕自身の手柄じゃなく…
夕べ命様から頂いた蒼い霊玉が僕に力を貸してくれてるんだと思います」
そう答える海斗に
「それならば天馬を追い越してみなさい」
そう言って海斗よりはシーホースを挑発する忍
勿論シーホースも真に受けた訳ではないけど試しに追い抜きに掛かると意外な程簡単に両者の距離は縮まった
その追い上げを見せるシーホースを見て命も風華と天馬を叱咤する
「頑張らなきゃシーホースに追い越されちゃうよっ!?」
そう言って…
風華と天馬を煽る命に応える天馬ではない
今自分に取り何が重要なのか…そしてまた、本気の走りでこの状況なら焦りもするし本気を出さざるを得ないがシーホースからも本気さは感じない…
「命様、そろそろ地上に降りましょう…余り離れすぎると春蘭様が心配なさいますからね?」
風華にそう言われ余り面白く無い命が
「かいとなんかに負けるのつまらないもん…」
そう呟くと黙り込む命に呆れる風華だったから海斗に地上に降りるよう合図を送り休憩する事にした
「海斗、ここからはシーホース様に歩いて貰いなさい
命様と忍様に海斗の三人を苦にするシーホース様でも無いでしょ?」
そう言われ何と言えば良いのかわからない海斗は取り敢えず
「そんなの当たり前ですっ!」
そう海斗が喚くと
「なら私は春蘭様を迎えに行きますからのんびりして先を目指してください」
そう告げると忍に命を渡し海斗の前に座らせると
「命様、余り無茶をされてばかりいては心配する春蘭様の身がもちません…
彼女の事を少しは考えてあげないとお可哀想ですよ?」
そう言って天馬を引き返させ馬車に戻るのを見「忍、みこってやっぱり悪い子?」
その忍への問い掛けに
「そんな事は思って…」
「思っててもゆいません?
かいとには聞いてないんだけど?」
不機嫌さを隠さないその言葉に悄気る海斗を見ながら
(いつにもまして不安定な命様…何がそうさせているのか?)
少なくともそれがわからない忍には海斗フォローのしようがないので取り敢えず話題をそらす為
「海斗…先程から崖にチラチラ見えるピンクの塊はなんですか?」
そう言われた海斗はそちらを見る事無く
「それならここらでは崖イチゴって呼んでる通称ピンクの奇跡と呼ばれる苺の一種
一部の食通達の間じゃ高値で取り引きされてます」
然程興味は無いけど取り敢えず
「美味しいのですか?」
そう聞いてみると海斗の答えは
「美味しいですよ…ただ命を賭けて取りに行く程じゃないしさっきの理由から僕等に手が出せる値段じゃ無いんです…」
そう言われて
「この崖位なら私でも登れそうな気がしますが?」
忍の言葉を聞いた海斗は
「途中まで…崖の色がかわってますね?
その辺りまでなら僕等も登れるからそこから手の届く実なら採った事なら有るけど…
その先からが無理何ですよ、僕も木登り崖登りは得意な方だけど…」
そう話していると
「ですがどうやら貴方より小さい男の子が登ってますよ?海斗」
そう言われて顔を上げると
「あ、あいつ…僕の…師匠の言い付けが何で守れないんだよ?」
海斗がそう言うのと同時に男の子の足場が崩れ掴まっていた突起も崩れると宙に舞い落ち始め忍も思わず顔を伏せ目を閉じた…
が、男の子の身体が宙に浮いたままゆっくりこちらに向かい始めた
命が水の鞭で受け止めたのに気付いた海斗は安心して
「色の変わった辺りから砂岩が多くて崩れやすいんです
それがこの崖が危険な理由…なのに何でだよ?たけ…」
そう呟くと
「命を賭けて取りに行く理由が出来たからじゃ無いの?
海斗だってただ命が惜しいからじゃなくって命を賭けて取りに行く理由が無いだけでしょ?
命を賭けてみこの為に霊玉を受け入れた海斗達だもん」
そう言われて真っ赤になりながら
「もしかしたらきみに何か有ったのかも?」
そう呟くと
「忍、シーホースの足下であの子を受け取って、みこがあれ採ってくるから」
そう言われて驚いた海斗が
「命様にそんな危ない真似させる位なら僕が行きますっ!」
と、叫ぶ海斗に
「宙に浮いてるみこにどんな危険があるの?」
そう言うの聞いた忍が笑いながら
「居るかどうかは知りませんが猛禽類が襲ってきたら海斗の出番でしょ?命様に任せなさい」
そう忍が言い
「それに危ないからもう登るのやめなさいってゆわれて諦める位ならおちてないよ?
なら、ごちゃごちゃ言って無いでみこがあれ採ってくれば早いし海斗達の友達だよね?」
そう言われて
「はい、僕達の事を師匠って呼んでくれる奴なんです」
そう答えると
「じゃあ行ってくる」
そう言って篭を受け取ると宙に浮き苺の実を集め戻ってきた
忍に膝枕されたたけと呼ばれる男の子がが息を吹き替えし
「俺死んじゃったのかな…天使が見える」
心配顔で覗き込んでいた命の顔を見てそう言うの聞いた命がたけの鼻を摘まむと
「たけ、痛いだろ?生きてる証拠だよ
まぁ天使に見えるのは…ひたひ、ひたひっひほほはは、はんへんひへふらはい
…」
そう言ってる海斗の口の端をつねる様に引っ張る命は
「誰が天使?天使がやってるなら痛くないよね?」
そう意地悪く言う命に気付いたたけが
「命様ってもしかして…」
驚いて命を改めて見るたけに命から解放された海斗が
「その命様だよ、歌う人魚姫のね
それにもう上る必要もない」
海斗にそう言われて
「きみが、妹が死ぬのを黙って見てろ、諦めろっ!って言うのかっ、師匠っ!」
そう食って掛かるたけに
「そうか…お前が僕の言い付けを破って迄この崖を登る理由はそれしか思い付かなかったけど…」
海斗がそう言うと
「はい…」
そう言って篭を差し出す命と
「お前が持ってた篭、悪いけど借りて命様が採ってきてくれた
それで足りなきゃ上る必要有るけどどうなのさ?」
海斗に聞かれたたけは
「何で王女様が俺なんかの為に?」
と、漏らすと
「海斗達はみこのお友達、貴方は海斗達の友達だよね?
なら、それで良いんじゃない?貴方がみこみたいなおばかは嫌いなら仕方無いけど…」
寂しそうに言う命を見て海斗を見ると
「僕達は騎士になりたいのだけど命様がそう言って下さるなら今はそれで良いんじゃないかな?」
そう言われてたけが
「きみが助かる…」
そう呟くと
「かいと、悪い予感がするから急いでその子のお家に連れてって
急がないといけない気がする…」
命にそう言われてたけが驚いて
「そ、そんな命様にわざわざお出で頂く…」
そう言い掛けるたけに
「街道からちょっと外れるだけ、命様が湯町目指すのはわかるよな?」
そう言われて頷くたけに
「なら急ぎましょう、私達には感知出来ないことを命様が気付いたのでしょうからね…」
忍がそう言うと海斗とたけも頷きシーホースに乗馬した
分かれ道でシーホースを止め
「海斗、これ…」
そう言って渡された命愛用の水筒を首に下げると
「忍とここで待ってるから…」
そう言われてたけが
「ここまで連れてきて貰えばすぐなのに…」
と、苦笑いするたけに
「気にするなたけ、言葉足らずな命様は僕にきみのお見舞いに行きなさいって言ってくださってるんだからさ」
そう言いながら歩く二人
その二人が視界から消え自分に向かい手を伸ばす命を見て頷くとその身体を抱き上げ
「行きましょう…」
そう言って気配を消して二人の後を追った
目の前の三人を信用できないのだけははっきりしていた
だからと言って娘の命が危ういのも悲しい現実
どう判断すべきか迷いに迷う男に
「急がないと娘さんの助かる可能性は刻一刻と下がって行きますよ」
そう言ってじわじわと追い詰められていたけど勢い良くドアが開かれ
「父ちゃん安心しな、っ!そのおっさん達の言った篭一杯の崖苺を採ってきたからよ」
そう言って篭を机の上に置くと
「さぁ確かめてもらって良いぞ?」
そうたけに言われて顔を見合せる男達に構わず
「たけ、その狢憑きが予想外の事態に対応出来る訳無い」
そう言って家の中に入ってきた海斗は親父を見て
「おじさん、きみのお見舞いに来たよ、たけ同様に妹みたいに思ってるきみが寝込んでるって聞いてね」
そう言って挑発的な目で眺めていると
「親父、なんだ?この礼儀知らずの小僧はっ!」
そう喚くのを聞いて
(海斗の顔も知らんのか…)
そう思っていると
「所詮その程度の狢憑き…お前達は知るまい、この水筒に入っているのが命様…
アクエリアス様の霊気に満ちた清浄なる水、なんなら頭から掛けてやろうか?」
そう言われて焦る男二人が海斗に殴り掛かってきたけどあっさり返り討ちにしもう一人はいつの間にか室内に現れた忍に加減してうち据えられていた
「良い動きをしましたね?海斗…」
忍のその声で今何が起きたのか理解したたけが
「す、すっげぇーっ海斗師匠、いつの間にあんな事が出来る様になったんですか?」
そう聞いてくるたけに
「わからない、気が付いたら身体が反応してたから…」
そう答える海斗を頼もしく思う忍に
「どうやら何も教えられてない愚者の捨てゴマの様ですね…」
現れた命がその三人の狢憑きを見る目は完全に見下して蔑んでいてその視線に気付いた忍にうち据えられた男が
「な、何だこのくそ生意気な小娘はっ!?」
そう喚く男に
「本当に呆れ果てた男だ、お前達の目的は私ではないのか?
差し詰めあの陰険な男に唆されて来たのだろう?」
その先程からは想像も着かない命の口調に目を見開くたけを気にする事無く
「海斗、その子はこの者の障気に当てられているだけだから貴方の考えた通りアクエリアス様の霊水で浄化できます
飲ませてあげなさい」
そう言われてたけに手伝わせて上体を起こし水筒水を飲ませると…
それまで高熱を出して真っ赤になって苦しそうにしていた少女の熱が下がり始め呼吸も穏やかになりホッとする父子を他所に
「おかしい、あいつは水の精霊の巫女は幼いから簡単に捕まえられるから俺達の手柄にすれば良いといってたのに何でだ?」
そう口にする男に
「闇の道化師なら既に二度程接触してきている
一度目は私夢の中で…
もう一度は雷精を操って来ている」
そう告げられて
「そ、そんな話しは聞いてないぞっ!?」
そう叫ぶ相手に
「だから捨てゴマと言ったのだ
あいつは自分より格下や取引相手と認めぬ者に情報は与えない」
そう言われて
「う、うるさい煩い五月蝿いっ!
俺はお前みたいな知ったかぶりの小生意気な小娘を従順なペットに躾るのが大好きなんだよ…」
そう言って劣情で醜く歪めた表情を見せる男に
「私はその様な持て成しは興味ない」
そう言って右手を高くあげスッと降り下ろすと水の塊が男の頭に落ち男の中の狢が祓われた
「済まないな…家の中を水浸しにしてしまって…」
そう言って軽く頭を下げる命に
「いや、貴女の清浄な水のお陰でこいつらが持ち込んだ邪気が祓われ清々しい」
と、言われ
「この埋め合わせは後でさせて貰うとしていつまで狸寝入りをしているのだ狢憑き?」
そう言われて仕方無しに起き上がる狢憑きの二人に
「お前達は先程祓った愚者と同列の愚者か?」
そう意外な問い掛けをされ
「俺は愚者じゃ無いとは言わんが少なくともアイツよりはましだと思いたい」
一人が言うともう一人も頷き
「失敗を許さない闇の道化師ならお前達から情報が漏れぬよう始末しに来る位は予想出来よう?」
そう言われて
「俺達は用済みって訳か…」
そう呟くと
「そうなるがお前達か取引に応じるならば守ってやらんでもない」
そう言われて互いに顔を見合わせ
「ワシ等に何をしろと言うのだ?」
警戒する狢憑きに
「何、大した事では無い…
お前達の知る限りで良いから情報が欲しい
私は今の闇の勢力分布が知りたい
その程度の事ならお前達でも知ってるだろうし然程守らねばならぬ秘密でも無かろうが私はしらない
それと闇の道化師に何と言われてこの計画に乗ったのだ?
どうせあやつの事だから真の目的は言ってはいまい」
そう言われて
「確かに…何でこんなずさんな話に乗ったのか我ながら呆れる
宜しい、今の闇の主要勢力は3つで最大派閥は人狼族を従えたバンパイアを頂点に頂く不死身の軍団
第二にトロルやひとつ目等の巨人属を操る魔物使いの一味
そして第三勢力は骨や腐った死体を使うネクロマンシーとゴーレムなどを操る傀儡師の連合軍
あいつが言うには見目麗しい精霊の巫女を生きて捕らえ何処の軍でも良いから献上すれば出世は思いのままと言っていたが…
そんなものは作戦でも何でもない、あいつの妄想や願望にすぎなかった
他に知恵も情報も与えられずただ間も無く水の精霊の巫女がこの地を訪れると教えられただけなのだからな…」
そう言われて
「成る程、ではお前達に試練を与えよう…お前達とて元からの闇の者ではない筈
お前達がこの霊玉を受け入れ無事乗り越えたらお前達の結界を用意するがどうするが?」
そう命に言われて
「そんな事をしてアクエリアス様のお叱りは受けぬのですか?」
逆に心配して言う狢憑きに
「今一度言う、私が赦すわけではない
アクエリアス様の霊気がお前達の試練となり許されるか否かを決める
故にアクエリアス様には不本意だろうが許されるたならばとりもなおさずあの方のお許しを得ることになる」
そう事も無げに言う命に
「で、ですがこれまで俺達が犯してきた罪は決して軽くなくアイツの様に問答無用で祓われてもやむを得ない身」
その問い掛けに
「多生の過去を持ち時に闇の側に与しもっと重い罪も重ねている私にはお前達の罪等私から見れば子供の稚戯にすぎぬ」
そう告げられて
「わかりました、暫しお待ちください」
そう言ってまず取り憑いていた人間の身体から抜け出ると二人に意識を取り戻させ