①王子様と騎士様
今回は最後まで付き合った翔に指定された広場に着地すると出迎えに来ていた翼を見た風華は
(この方こそ我が主人)
そう気付き
「我が運命の主人、翼様にお願い申し上げます
我が騎士の誓いを受け取り貴女の騎士の末席にお加え下さい」
そう言われて
「貴女の騎士の誓いを確かに受け取りました
ですが水の精霊の巫女の側に行けぬ我が身に代わり今暫くは彼女を守って下さいね」
そう言われて
「はい、翼様に代わりその任確かに承りました」
そう答えるのを聞いて
「まずは観月様にご挨拶なさい、案内します」
そう言って海斗には入る事を許されなかった王女宮最上階の観月部屋に通された
但し、早瀬鰻一尾については沙霧に頼み既に厨房に運ばれている
「観月様、風華をつれて参りました」
そう翼に言われ
「いい加減その観月様止めなさいと何度も言ってます」
そう言われて面白そうに
「では観月御姉様とお呼びしましょうか?」
そう言われて嫌そうに顔をしかめ
「せめて観月姉さんにしなさい
風華、まず預かっている報告書類から渡しなさい」
そう言われてまず預かった書類を渡し炭の見本を渡すと
「成る程、これは伯父様にも見せるとしてまずは公女たる私のお墨付きを作成しましょう
私はお墨付きを作成しますから翼は伯母様のサロンに風華を案内しなさい」
そう言われて
「わかりました、観月姉さん…行きますよ、風華」
そう言って連れだって行く二人を見て
「王女宮もそろそろ騎士団結成を考える時期かも知れませんね…」
そう言って書類を用意する観月だった
「未だ見習いの身ではありますが天馬様の背に乗ることを許された風の騎士、風華と申します」
そう名乗る風華に
「風の騎士とは?」
そう王妃に問われた風華は
「力を望んだ私達は霊玉や勾玉をその身に受け入れ力を得ました
私を選んでくれたのが翼様の碧の霊玉…即ち風の精霊の巫女の翼様の騎士ですからそう名乗り
翼様にも我が誓いを受け入れていただきました」
そう聞いて
「生身でその様な無茶を?」
そう驚く王妃に
「命様と四人の巫女達の加護を得た私達はそれほどの負担はありませんでした」
そう言われて
「なら良いのですが…
所で翼に誓いを立てたのなら貴女はこちらに残るのですか?」
そう聞かれ
「いいえ、私に代わり命様をお守りしてほしいと命ぜられましたから命様の元に参ります」
そう言われてガッカリする王妃に
「相も変わらず沢山の荷物を持たせますけど今日は何を預かりましたか?」
そう聞かれ
「まずこちらは海斗が集めた木の実で王妃様と観月様にも召し上がって欲しいとユカ様に願い出た物です」
そう言って出された実は野趣溢れる香りで食欲をそそる物だった
「次は兄の炎が集めた草の実を妹の蛍がジャムにした物で私達の町では評判の物です
後は四尺の早瀬鰻をもって参りましたがそちらは既に厨房に運ばれています」
そう答えると
「ユキ、早速ですがいくつか皮を剥いてきてください…味見がしたいです」
そう言われて
「承知しました、暫くお待ちください」
そう答えて二個掴むとサロンを出ていった
「風華に渡したい物が有ります」
そう言ってユウが風華に渡したのは観月の見立てた鮮やかな新緑のドレスで
「私にこの様な物は似合いませんから…」
そう言って断ろうとする風華に御墨付きを書き終えた観月と共に嵐が現れ
「鍛えられた騎士にドレスは似合いませんか?」
そう観月に言われて
「そのお方は?」
風華が聞くと
「和泉の女神の騎士団、団長の嵐です」
そう風華に紹介すると
「お初にお目に掛かります、嵐様…」
そう言って上官に対する挨拶をし
「確かには嵐様にはお似合いですがそれは嵐様がお美しい方だからで…」
「この為に私にドレスを着せたのですか?」
口ごもる風華を他所に不快感を隠さず観月に聞くと
「私としては有事の時以外はそうして貰いたいのですが?」
そう王妃に言われて更に表情を歪めて
「お戯れは大概に願います…」
そう話しているとユキが弥空を伴って戻り皿をテーブルに置くと弥空もお茶の支度を始めた
「所で…風華、報告書にあった媛とは何者ですか?」
そう観月が聞くと
「わかっている事は彼女が氷雨の精の巫女である事
彼女の背に生えた翼が飾りでなく空を翔べそうな事
顔立ちが命様に似ていて人見知りが強く同じ氷雨の精の巫女である留美菜以外は拒絶して居るのが現状です
因みに体長は約二尺前後で翼は広げれば四尺にはなりましょう…」
そう話していると
「美味しそうな木の実だね、頂いても良いかな?」
そう言って返事も待たず摘まんで食べると
「全くはしたない、私は貴女にその様な振る舞いを躾た覚えはありませんよ?
見習い侍女達ともう一度勉強し直した方が宜しいかもしれませんね?」
そう言われて危うく種を呑み込みそうになった真琴が顔を青くして
「貴女がこのサロンにお見栄になるのは珍しいですね?」
そうなんとか言い返すと男爵夫人は風華を見て
「乙女が夢見る天馬に股がりし騎士様がお見栄ですからね
私自身はその様な歳では有りませんが乙女だった事まで忘れた訳では有りませんから…」
そう言ってサロンの入り口を見ると数名の侍女達がこちらの様子を伺っているのが見えたので
「皆入ってきなさい…」
呆れながらも入室を許す観月に軽く頭を下げる男爵夫人
侍女達が風華を取り囲み
「観月様、こちらの騎士様は今夜のパーティーにご出席されるのでしょうか?」
そうマキに聞かれて
「そうしてくれたら私も嬉しいのですが風の騎士の風華は命の使いで来てるだけですから私にも要請しかできませんが真琴はどう考えますか?」
そう真琴に丸投げすると
「みこならきっと…」
そう言って命の考え事をする時の仕草を真似て
「ぅ~ん…みこわかんないからふーかが出てもいーならい~んじゃない?…
ってユーと思うよ?」
口調も真似て言う真琴に
「真琴様の言われた通りの返事を頂きました、鏡合わせの様に見えましたよ…貴女方お二人は」
そう言われても気にする事無く
「そう言う訳だから僕や観月姉さん
が言えば命令になってしまいみこに悪いから風華に出て欲しいなら皆からお願いしないとね?」
真琴が全く悪びれる事なくそう言うと観月も
「今夜はユイが男爵家の養女に迎えられたお披露目の…美月主催の物
ですから貴女がこの風華を招待するのなら喜んで迎え入れます」
そう言って男爵夫人を見ると
「嵐様、平時にこの様な期待に応えるのも騎士の勤めですね?」
そう半ば恫喝され半ばドレスを着るよりはましと考える嵐は
「期待に応えてはどうですか?」
そう嵐も言うと
「騎士様、今夜のパーティーにご出席ください…」
そう言って見詰められ断れなくなり力無く
「はい、慎んでご招待お受け致します」
そう答えると笑顔で
「そう、出てくれますか?
ではマキ、貴女に風の騎士風華の滞在中の世話を任せます
ユキは今夜のパーティーに着せる客分騎士の礼装を用意しなさい」
その観月の言葉に焦った風華が
「私達は未だ見習い騎士…」
そう言い掛けた風華に
「未だ修行半ばの四人が勾玉や霊玉の試練を乗り越えた事実、吽はどう考えますか?」
そう問われ
「さすがに未だ何の実績も無い現段階で正騎士は難しいが准騎士の称号なら差し支え無い
現に忍の話によれば海斗は狢憑き二人を一蹴したそうですから」
そう答えるのを満足気に頷く王妃と観月そして
「それに既に翔を大公家に飛ばせ貴方達を准騎士に昇進させる手続きを始めてますし…」
そう言って嵐を見ると
「非公式の女神の騎士団にはその様な手続きは不要、貴女達を喜んで客分騎士として迎え入れよう」
そう告げられて
「今は身に余る光栄ですが皆様に恥を掻かさぬ様、精進し期待にお応えします」
そう答える風華だったがユキが
「折角の機会ですから真琴様に例のあれ、お願いしてはどうですか?」
そう言われたマナが
「見習いの侍女の子達とも時々話題になりますけど真琴様に騎士様のお姿は似合うんじゃないかって…」
そう躊躇いながら言うマナに
「なんだ、そんな事なら大したことじゃない
大公領に居た頃は非公式のパーティーに出る時は客分騎士の礼装を着て出席してたんだよ?
だから今夜のパーティーも非公式なのだからお母様が良いと仰って下さるなら僕は一向に構わない」
そう真琴が答えると
「ユキ、真琴に騎士は勿体無いと思いませんか?」
そう意味ありげに聞かれマナ達が落胆するのを他所に
「そうですね、では非公式ながら真琴王子の社交界デビューと致しましょうか?」
そう答えると聞いていた侍女達が抱き合って喜び
「では、真琴王子…王子の振る舞いを少しばかりお教え致しましょうか?」
そう聞かれた真琴は苦笑いしながら男爵夫人に
「お手柔らかに願います…」
そう答えるのだった
「映見さんの馬車は春蘭、ライ、つぐみ、りん、つぼみ、澪、美景、蛍が…
みこの馬車は瑞穂が馭者で先生、ミナ、麦、きみでたいきが馭者の馬車は阿とユカに留美菜、しずく、媛
荷馬車は炎とたけが馭者でだいじょーぶだよね?」
そう珍しく仕切る命の考えは不明ながら従う事にした春蘭
走り出して暫くした後に霊体の命が春蘭達の前に現れ
ー春蘭、りん、こずえ、ライ…修行の時です
そしてつぼみ、澪、美景、蛍…貴女様の試練の時ですー
そう告げると八人をアクエリアスの結界内に導きいれた
ー春蘭は樹の精、りんは火の粉の精、つぐみは滝壺の精、ライは砂の精と修行なさい
後の四人は修行する者達を見守る事から始めますー
そう告げると一斉に巫女達に攻撃を仕掛ける精霊達に春蘭は熱い吐息と真空波で応戦しりんは命よりは劣るものの水の鞭と水球で防戦
だが…滝壺の精の霊力に取り込まれたつぐみと砂塵に翻弄されるライの情況は余り捗捗しいとは言えない
霊力が見せる水に等しい物に過ぎないので落ち着けば息も出来るのに奇襲で落ち着きを失っているつぼみには無理のようだった
同じくライの方も初心者のライに合わせ単調な攻撃を繰り返す砂の精の動きは落ち着きさえすればライが見切れないでも無い
「命様、こんなの修行じゃない二人が可哀想ですっ!」
そう非難する蛍に
ー蛍、何故貴女が二人の限界を決めるのですか?
まして実際の戦いの場に於いてそう言えば手加減してくれるとでも思っているのですか?ー
その手厳しい指摘に
「で、ですが火と風、水の精霊の巫女様達がいらっしゃるのに…」
そう声を詰まらせる蛍に
ー残念ながらアクエリアス様は封印される寸前でしたしウィンデイー様とフレア様は虜囚の憂き目を見たのですよ?
それでも尚私達が居れば…と、そう思えますか?ー
最早返す言葉の無い蛍に
―考えなさい、私が何故貴女達をこの場に連れてきたのかを…―
そう聞かれた蛍
「確かに私は水の精霊、アクエリアス様の巫女として他人に無い力を有しますがただそれだけ
おそらくは歌の女神、ハーモニー様を呼び覚ます鍵となるであろうそれを…ー
「つぐみ、落ち着いてっ!泳げるでしょっ!?」
つぼみが叫び
「ライ、砂の流れる方向や時間は単調だよっ!?」
澪が叱咤し美景が祈り始めた
(精霊様二人にお力をお貸したください…)、と
修行により扱える霊力が上がり始めた春蘭が真空波を放つも軽くいなされ弾かれた…
斬っ!
滝壺の精の霊力の水が切り裂かれ一瞬つぐみの顔が水から解放され意識を取り戻した
射程距離が延び始めているりんの水の鞭も威力はそのままだからあっさり弾き返されライを襲わせた…
つもりの火の粉精の考えはりんを甘く見すぎていた
りんの水の鞭はライを襲った訳ではなくライの目に入った砂を洗い流すのが目的だったのだ
冷たい水がライの意識を取り戻させた
―ライととつぐみに目覚めの時がきました
春蘭、りん、遠慮は要りませんよ?反撃にでなさいー
そう言われて春蘭が放ったのは真空波ではなく更に強力な真空刃
ー
りんの水球自体の威力は変わらないけど一度に放てる数が増えてきている
そしてつぐみの身体を包む水に変化の兆しがあった
対流?水が渦を巻き始めたのだ
美景の不安は大きく膨らみ二人の無事を願う気持ちは高まっていった
やがて渦でつぐみの姿が見えない程激しさを増した渦が水を弾き跳ばした
事態を理解出来ない四人が呆然とするのを見て
ー見なさい、つぐみがその身に纏いしつむじ風を
あの風が滝壺の精の水を弾き飛ばしたのです
そして何よりも大切なことは美景、二人を思う貴女の気持ちに山風の精が応えてくれたのです
決して諦めないつぐみ一人で力を目覚めさせたのではありませんよ?ー
そう言われて
「私の祈りがですか?霊力の無い私の祈りが…」
そう言って驚く美景に
ー友を思う気持ちに霊力の有無が関係ありますか?
たけは霊力等無くてもきみの…妹の為に命を賭ましたよ?ー
そう言われてやっと
「それが私達がここにいる理由ですね?」
その望む答えにやっとたどり着けた蛍に
ー私達だけが特別ではありません
無敵でも不死身でも無いのです
かなりしぶとくは有りますけど力尽き倒れる時が訪れる事は否定出来ません
勿論戦いの渦に貴女達を巻き込んでしまった責任がある以上あっさりと死んで闇の者を喜ばせる気は有りませんが…
それでも死ぬ時は死にますー
そう言われて
「そ、そんな悲しい事を仰らないでください…命様の居ない世界なんて…」
そう言って涙を流す蛍に
ー先程も言いましたがそう簡単には死にませんが…
今この場にミナ、留美菜、しずくが居ない様に常に貴女達と行動を共には出来ません
その時に大切な者を守る為に戦う力、生き延びる術を身に付けてほしいのです…ー
そう言われて
「わ、私は何て失礼な事を…」
そう嘆く蛍に
「良いのです…貴女は私の様に感性で生きるタイプではありませんから納得して貰うための重要な儀式(問答)でしたから」
そう言われて苦笑いしながらライを見るとライがその身体に雷を纏い砂の精を追い立て始めていた
そして降参した精霊達は
ー蛍、火の粉精である私と共に闇を焼き払いましょうー
そう言われて
「短気な私をお導きください…火の粉の精様…」
そう答える蛍
ーつぼみ…貴女と言う樹につぼみをつけ花咲かせましょうー
そう言われてつぼみも
「そのつぼみがどんな花が咲かせるかはわかりませんけど…」
そう答え
ー澪、私を受け入れてくれますか?ー
そう躊躇いながら言う滝壺の精に
「私の勝手な思い込みかも知れませんけど貴女様のお導きは人魚姫への道…じゃないですか?
もしそうなら私は貴女様のお導きを受けたい」
と答え
ーライを苛めた私を許してくれますか?ー
「別に貴女様はライを苛めて喜んでた訳じゃありません…
ライの成長を喜んでいる様には感じましたけど…だから私もお導き下さい、砂の精様っ!」
そう言って四人が左手を差し出し精霊を受け入れた
ー春蘭、貴女の中に居る潮風の精と雷精は無事融合を果たし風雷の精へと進化しましたー
そう言われて
「進化については良くわかりませんが融合して一人になられたのはわかります」
そう答えると
ー理屈ではなく感じる事…
そしてりん、貴女の中の二人の海原の精は融合を果たし大海原の精へと昇華しました
そしてつぐみ、ライ…貴女達の中の力が目覚める事は始まりに過ぎません…
この先どう変わって行くかは貴女達次第ですが今は休みなさいー
そう言って八人を馬車に戻した…
馬車の中、命は寝台で午睡で謡華は三弦の手入れにミナはいつもの様にエプロン作りを始める為に素材を出すと…
「ミナ様、宜しければ私に一つ頂けないでしょうか?
それを使って媛の服を作ろうって思うんです」
そう言われて
「それは言い考えですね?
この篭に有るのから気に入ったので作ってみて下さい」
そう言って本体の生地、ポケット用の端切れに括り紐の素材がそれぞれ入った篭を渡してもらい
ピンクの本体の生地をメインに作り始めた
それを見たきみは取り敢えず自分と預かっているたけの笛の手入れをする事にした
二人と違い未だ揺れる馬車の中で作業する自信がないからからでただ一つだけ言えるのは皆それぞれのしたい事すべき事を黙々とこなしていた
しずくを受け入れ馴染んでき始めた媛は取り敢えず留美菜としずくの間に座っている
進行方向に背を向け座る阿は瞑想中でユカは目を閉じて考え事をしている
その二人の顔を見ながら悪戯心が芽生え始めた媛は左右に座る留美菜としずくの二人に
ー私の手を握って…ー
そう言われて差し出された手を握ると
ー反対側の手を上げて…ー
そう言われて言われた通りに手を上げて
「これで良いの?」
そう聞かれ
ーうん、しばらく目を閉じて…ー
そう言って二人に目を閉じさせた
何をさせられているのかわからない二人に
ー降り下ろしてー
留美菜の正面に座るユカに雪玉が、しずくの正面に座る阿は水球をぶつけられずぶ濡れになり…
声無き笑い声をあげる媛とは対照に自分達がしてしまった事にやっと気付き青い顔をする二人を見て怒りが少し納まった…
(この三人の様子を見れば主犯各は媛でしょうけど…
留美菜はともかく昨日精霊を受け入れたばかりのしずくに可能なんですか?)
そう考えると怒りに任せて叱るより確かめなければならない事があると判断し
「媛、怒りませんから二人に何をさせたのか説明しな…説明は難しそうでしょうからもう一度やらせて私に見せて下さい
但し、また雪玉をぶつけられては敵いませんから今度はこれに入れなさい」
そう言って桶を二つだし二人の足元に置くのを見て
上手にやれば怒られないと理解して再び二人の霊力に干渉して雪玉と水球を表させ桶に投げ込ませた
「留美菜としずく、今度は自分達で意識してできますか?」
結果を見たユカが更に一段上の要求をし二人も媛程早く出来ないものの自分達で作れるのを見て
「媛、二人の修行を見てあげなさい
それとさすがにずぶ濡れにされた阿様には謝りなさいね?」
そう言われて
ーごめんなさいー
「ごめんなさい」
そう言って謝る媛としずくだけど今の一幕を見た後では怒るに怒れない阿だった
今の歌の国の陸軍の主力部隊は通称貴族騎士団と呼ばれる貴族の子弟の騎士で構成される大隊と将軍直属の中隊に国王と二人の王子の親衛隊で構成されている
将軍直属の中隊に所属する者は代々騎士として支えてきた家系の者やその家に支える家子朗党達で
中には功績を上げて騎士になった者も居るが貴族騎士団からは冷遇されている
当然と言うべきか賞金稼ぎの鬼百合や正体不明と言われる仲間の戦士達は騎士達にとり面白くない存在
鬼百合達の登場でパーティー等ではすっかり影が薄くなったし男尊女卑がまかり通る騎士社会において女戦士達が…
まして自分達より遥かに強いだろう彼女達は騎士達にとりまさに招かざる客に他ならない
その上に先日シーホースに乗って現れた小僧(海斗)に今日見習い騎士の服を着て現れた小娘(風華)は癪に触る存在
その見習い騎士である筈の風華が大公家の客分騎士のとは言え騎士の礼装を着ているだけではなく宝飾刀を侍女に持たせた真琴王子の登場で
「このパーティーは社交界の集まりではなく少女歌劇団の集まりなのかっ!」
そう聖騎士候の一人が叫ぶと怒鳴り返そうとする鬼百合を抑え
「鬼百合さん達には正面切って文句一つ言えない癖に僕や風華に食って掛かるとは情けないにも程がある…」
そう真琴が言い捨てると見計らった様に現れた翔が小さな篭を嵐に投げ付け
受け止めた嵐は観月に渡すと中身を確認した観月は目を光らせ
「陛下ご確認を…」
そう言われて渡された証書に目を通すと
「ほう、風華、大樹、炎、海斗の四名を准騎士昇任とし公女観月の名で昇任式を行う様にと書かれておる」
そう言われて悔しそうに顔を歪める聖騎士候に
「翼王女とその騎士の風華殿にお願い申し上げます
未だ此度の人事を承服しかねる馬鹿者共に身をもって納得させて頂きたい」
そう言われて再び癇癪を起こした聖騎士候が
「ご老体、その様な無責任な発言をして俺がその騎士殿を打ち倒したらなんとするっ!」
そう言われて情けない表情で
「風華殿の力を見抜けぬ者達の無礼を許してやってください、鬼百合殿?」
そう呑み達の老将軍に言われれば鉾を納めざるを得ない鬼百合が
「風華、一丁揉んでやれ」
と言い真琴も
「もし風華を打ち負かせるのなら僕もこんな格好は二度とせず貴方の事を騎士様と呼ぶ事にするよ」
そう言ってあからさまに挑発する真琴に
「年端のゆかぬ王女様だが祭典の優勝候補者である貴女ならば王家の血を引かずとも我が愚弟の嫁になって貰うのも悪い話ではない、良かろう受けて立つ」
そう答えてると
「ならばわしも万が一にも風華殿がお主に遅れを取ろう物ならわしも老いを認め明日からでも庭弄りを始めようが逆にそこまでほざいたお主等に拒否権はない
鬼百合殿達にしごいて貰うが良いわっ!」
そう言われて意気込んだものの後に精霊の巫女の騎士達と呼ばれる風華に常人…
まして家柄や血筋で騎士号を得ている貴族騎士の手に負える筈もない
見習い騎士の短剣に剣を弾き跳ばれ勝負は一瞬で着いた
その結果この夜の主役は真琴と風華に変わってしまったけど気にする男爵夫人でもユイでもない
弟の様に可愛い真琴は互いに血の繋がりは無くとも弟の様な妹になるし天馬の騎士風華はやはり気になる存在
それに天馬に乗って来た騎士が風華と言う人魚姫に支える騎士だと言う事はかなり広がっているらしい
だから凛々しい女騎士に会って喜んでる乙女は少なくないし男達の中にも風華の訪れを戦の女神の降臨と言う者も居たのだから
聖騎士候達も風華の実力を認めそれでも我等に並ぶ者と言ってとにかく下に立つ事は認めなかったが風華を謗ることばはなくなり
又、聖騎士候達に遠慮して鬼百合や仲間の戦士達と距離を置いていた下士官や兵士達がこの夜を境に集まりだした
歌の国の軍が纏まる日も近い
ただ一人困惑の表情を浮かべるのがユウで楊牧場での山賊退治の英雄譚がいつの間にか知れ渡り
ユウに対しても「ユウ様っ …」そう言って熱視線を送る娘もちらほら居て本人を辟易させているが鬼百合からしたら
「アタイの気持ちがちったぁわかったか?」
そうユウに言いたい位だから笑い話に過ぎなかったのだけど
②湯町で貴女の誕生日
「さぁ皆、今日はお茶ではなく冷たい物を食べましょう」
そう言って一同に配られたのは粉雪に蛍が作った煮詰めてないジャムを掛けた物で…
蛍自身この様な使われ方をされるのは驚いたけど喜んでたべた
「一体この様な物をどうやって…」
そう驚く春蘭に
「留美菜ちゃんと媛が霊力で降らせた雪です」
そうしずくが答えると謡華が驚いて
「力の平和利用ですね?」
そう言われて
「そうですね、人は新しい力を手に入れるとすぐに戦いで使う事しか考えないが…」
と、瑞穂が言うと
「鬼百合なら麦酒を冷やしてくれってユーよ?」
命がそう言うとその姿を思い浮かべた鬼百合を知る者達が吹き出して笑い
「確かに鬼百合もそう言う使い方を真っ先に思い付くでしょうね…」
阿も笑いながら言い明るい笑い声が響く中
「んーとね、風華だけど今夜のパーティーに招かれたから帰ってこないんだって」
命がそう言うと
「えーっ、風華さんだけズルいなぁ~っ!」
と、声を上げる蛍に
「えっ?蛍って…騎士になりたかったの?