「海斗、お嬢様とそちらのお嬢さんを頼むぞわしはお嬢様達が里に立ち入る事の許しと長との面会希望を伝えてくる」
そう告げて立ち去る男の後ろ姿を見ながら
「又私をお嬢様と呼んだけど何故?
一体どんな意味が…
ミナさんはお嬢さんと明らかに呼び分けています…」
そう考えていると子供達は好奇心丸出しの視線を自分達に注ぎ大人達は見てはいけないモノの様に…
あからさまに視線を反らし子供達に注意をするけど子供達にそれを聞く気はないらしく言う事を聞かないので仕方無く遠巻きに見守っている体はとっているけど好奇心は隠せていなかった
暫くして戻って来た男は
「里長はお嬢様、貴女との面会を希望している」
その言葉を聞いたミナは
「春蘭さん、どうやら私は遠慮した方が良さそうですから海斗君とここで待ちます、行ってください」
そう告げると
「失敬した、言葉が足らなかったようだが長は貴女達との面会を受け入れたが特にお嬢様との面会を希望しているだけだ」
そう聞いて
「それを聞いて安心しました…ミナさんは姉の様に頼りになり妹達同様に守らなくてはと思わせる不思議だけど大好きな人
そのミナさんを否定する方と会うのは遠慮したいですから…」
と、言われ苦笑いし
「わかる様なわからん様な…だが、確かにわしにお嬢さんと呼ばせる不思議な雰囲気はある」
そう答えると
「おじさん口悪いもんね」
そう海斗に笑って言われた男は三人をある屋敷の前に案内したがその屋敷が王都の実家に酷似している事に内心驚く春蘭だった
「長、お嬢様をお連れしました」
そう声を掛けると中から
「入って貰いなさい」
春蘭とミナの二人が聞き覚えの有る声で言われると中に入った二人は
「ぉ、お母さん…」
「………」
そう言って絶句する春蘭と驚きのあまり言葉の出ないミナ…
そしてそのミナの胸元から春蘭の声に驚いた媛がそっと顔を出すと今度は里長と案内の男が驚く番だった
もっともそれを表情に出す事はなく
「媛、大丈夫です…大きな声を出してしまってご免なさい、ビックリしましたか?」
そう聞かれて小さく頷くと里長の顔をじっと見詰めている
「お嬢様…その子は一体…」
そう聞かれた春蘭は
「私達も昨日会ったばかりで詳しくは知りません…
私達にわかっているのは記憶か無い為この子は自らの名前すら知らない事
この子が氷雨の精の巫女である事
命様がアクエリアス様から守って上げて欲しいと言われてお預かりした子の三点です」
と、説明すると
「そう、貴女達の主人はあの命様なんですね?
貴女達の疑問に答えましょう
私は美桜、貴女の母、美紅の双子の姉ですが貴女も妹に会った事が有るのですね?」
と、聞かれて
「はい、何度かお目に掛かる機会を得まして…」
そう答えるのを聞きながら
「ではお母さんはこの里の?だから薬草や香草に詳しい…」
そう呟く春蘭に
「そうです、貴女の父親劉啓吾と駆け落ちするまでこの里の薬師でした
ですがこの里の者…
特に薬師は絶対にこの里を出てはいけない…
と、言う里の掟を破ったあの子は私達の父親…当時の長から薬師の資格を永久剥奪されましたから薬草は扱えないはずですが…」
そう話す長に
「はい、ですから母は薬師の掟に触れない物だけを使って香草茶や薬草茶、火傷や怪我の傷薬を作ってます…
今日も少しだけですが王妃様も喜ばれるお茶の葉を持ってきてます」
そう答えると
「湯を沸かし茶器を用意して下さい」
そう言われて男が立ち上がろとするのを見て
「お手伝いします」
そう言ってミナが立ち上がろとするのを制し
「貴女は客人なのだから座ってなさい」
そう男が言うと長も
「それよりその媛と言う子を良く見せていただけませんか?」
そう言われて胸元に居る媛に
「良いですか?」
そう声を掛けると自信無さそうに頷くとモソモソと這い出してミナの膝の上に座り長の顔を見詰め続け
ふわっ…っと翼を拡げると長に向かいその胸に飛び込んだ
その姿を見て
「留美菜以外の初対面の人に身を投げ出すのを始めてみました…」
そのミナの言葉に
「貴女でも?」
そう聞かれて
「朝出会ったのですが私に心を許すようになったのは夕方で男の子達…
特にいきなり威嚇してきた大樹は毛嫌いしてますから目も合わそうとしません」
と、言うと
「大樹も悪気は無かったんだろうけどね…」
と、苦笑いする海斗に
「だからか、大樹が居る間は全く気配を感じ無かったのは…」
と、驚きの声を上げると春蘭の前に茶器と湯の沸いた茶釜を持ってきたので急須に茶葉を入れお茶を長と男、ミナと媛に自分の分を用意して配り
「どうぞご賞味下さい」
そう言われ香りを確かめてから一口含んでみて
(こ、これは…)
香りと味わい驚来ながら飲み干すと立ち上がり部屋の奥の箪笥の小さな引き出しから書類を取り出し
未だ息を吹き掛け冷ます春蘭に
「代わります、貴女も熱い内に…」そう言って湯呑みを受け取るミナに
「何故それ程までに冷まさねばならぬのですか?」
そう長に聞かれたミナは
「命様もですけど媛もかなり猫舌ですから…」
そう言って小さく笑うといつの間にかミナの前に立つ媛が頬を膨らませている
その様子を見た長が
「二人を見ていると丸っきり親子の様ですね?」
面白そうに言うと
「これに命様が加わると大好きなママを取り合う姉妹になるんですよ?」
と、言うのを聞いて溜め息を吐いて
「今、歌う人魚姫の呼び声高い命様が目と鼻の先にいらっしゃってると言うのに里を出られぬこの身が恨めしい…」
そう話す長を苦笑いで見る男に
「実は宿を出る時ご本人はこっそりのつもりで馬車に乗り込むのをユカ様に捕まり
後日あちらの許しがあれば訪問していただきますから暫くは舞台に専念してください」
と、キツく言われて諦めて頂きましたから長様がお許し下さるなら命様と何名かの供がこちらにお邪魔致しますが?」
そうミナが言うと
「それは真の話ですか?」
そう問い掛ける長にミナが苦笑いしながら
「私の胸元に居る媛に向かい小さな声で媛ばっかしズルい…
と、恨めしそうな顔でそう言われましたから…」
そう言われて
「命様をお招きする?長、宜しいのですか?」
男が驚いてそう聞くと
「水の精霊の巫女である命様をお招きするのにどんな差し障りがありますか?
そして貴女達の里入りを許したのも同じ理由です、精霊の巫女達よ…」
そう言われて
「お気付きでしたか?私達の事は話していないはずです」
そう言って驚く春蘭に
「この地は豊穣の女神の娘、薬玉媛神様の領ろしめす地
その地を預かりし長の私はそれ位の力は与えられています
そしてこの地がアクエリアス様の巫女を拒む理由はありませんよ?」
そう言われて
「そう仰っていただき感謝します…ただでさえ栄養の足りない命様に絶食されては敵いませんから…」
それを聞いて
「実年齢とは掛け離れた容姿と聞きますがそれ程までに酷いのですか?」
そう長が聞くと
「重度の貧血でアクエリアス様の救出の際生死をさ迷う大怪我をしたとかで不自然な体型をしています…
血も骨を形作る栄養も足りないからだとアクエリアス様から言われたと鬼百合様から伺ってます
それに生まれてからこの方まともに食事を摂らなかった命様のお腹の臓器は未発達でやっと離乳食を卒業出来た所なんです」
そう聞いた里の二人も溜め息を吐くと
「その様な事だとさぞ王妃様も頭が痛い事でしょうね…
これを貴女に預けますから王宮に持ち帰りなさい」
そう言って手渡された証書を受け取ると
「これは一体…?」
と、言う春蘭の呟きに
「それは劉啓吾の妻、在野の薬師美紅に薬師の里の長が与えし薬師の証です」
そう言われて
「永久剥奪なのでは?」
驚きを隠さずに聞く
春蘭に
「掟の抜け道です…
あの娘が里を飛び出して二十年近い年月が流れもう死んだものとして書類上では扱われてます
ですから先程も言いましたがこの証書はあくまでも里の長がその者一代に限り有効な証書で里の者以外の者に与えられるものなです」
そう教えられた春蘭が
「面倒臭い話ですね?」
そう言って溜め息を吐くと
「薬師にはそれ程の権益と共に重い責任を負わねばなりませんからこの程度の事を厭う者には任せられませんからね?」
そう言われて納得し
「それはある意味私達にも言える事でしょうね…
ホンの少しの手間を惜しむ者に王妃様や観月様が命様のお世話を任せてくださる筈が有りません…」
そう答える春蘭に頷くミナが子供達の声に気付き
「その…長様、里の子達が媛が気になっている様ですが…」
苦笑いで長に小さな声で伝えると媛に向かい
「子供達を入れても良いですか?」
そう問い掛けると一瞬身を強張らせた後に小さく頷くと
「皆入ってきなさい
但し、余り大きな声を突然出さないようにしなさい
とても繊細な子なのですからね、約束ですよ?」
そう言われてぶんぶん頭を振ると静かに入ってきた少女達を見た媛が突然一人の少女に向かい飛び付き抱き付いた
少女も一瞬驚いたもののしっかと媛を抱き止めその身体を優しく抱き締めた
その様子を見た春蘭が
「海斗、もし面倒でなければ取り敢えず私を宿まで送って貰いこの証書を持って王妃様の元に運んで欲しいのです
ミナさんと媛は戻って来た風華か貴方に迎えに来て貰いますから…」
と指示する春蘭に
「お嬢様、海斗の奴は腹が減ってるみたいだからお嬢様も一緒に食事を摂ってはどうですか?」
そう言われてミナ、媛、海斗の順番で見ると
「私が先に戻りますから春蘭さんは折角ですから薬草の事を聞かれてはどうですか?」
そう言われて
「旅の責任者の私が余り長く一行から離れるのはよく有りません
それに…ミナさん、子供達が困ってますよ?」
そう言われて媛に声無き訴えに
「ごめんなさい、私貴女の言いたい事解らない…」
そう言って途方にくれる少女と媛に
「媛、もう少しゆっくり言ってみて
貴女達は媛の口許を見て真似て動かしなさい」
そう言われて媛は一言ずつ区切るように口を動かし里の子達もそれを真似て口を動かすのを見て
「それで声を出してみて」
そう言われて
「あ、そ、ぼ、う、よ…遊ばうよ、なの?」
そう言われてやっと通じた事に満足の笑みを浮かべる媛の身体抱き締め
「お姉さん達にお願いがあります
私達この娘、媛ちゃんと遊びたいの…良いですか?」
そう言われて代わりに長が
「間も無く朝食の時間だから余り遠くには行かないようにしなさい」
そう答えると
「はーいっ!」
と、明るい声で返事して出ていった
「凄い、ミナさん…私はてっきり霊力で媛と会話しているものだと思ってました…」
そう言われて照れながら
「大公様の所で学んだ読唇術ですが当時はちょっとも覚えれなかったのに何故?」
そう言って首を傾げるミナに
「それだけ媛が貴女にとって大事な存在、媛への愛があるからですしそんな貴女だからこそ媛も貴女を慕うのでしょうね…」
そう長が言うと
「そう言う訳ですから媛を頼みますね、ミナさん」
そう言うとお腹の虫を鳴かせる海斗に呆れながら
「仕方有りません…私達も朝食をよばれましょう」
と、言われてばつ悪そうに苦笑いを浮かべる海斗だった
「わかりました、そう言うことなら今から媛を見守ってきます」
そう言って出掛け気配が無くなったのを確認して
「実は今日はミナさんの誕生日だからこっそりお祝いの準備をしよう
と、言う話になってますからミナさんはこちらでゆっくり過ごして欲しいと考えて私の同行者に選ばれました」
そう話すのを聞いた長が
「確かに不思議な娘ですね…
読唇術で声の出ない媛との会話の重大さより何故出来るようになったのかとそちらを不思議がるなんて…」
苦笑いを浮かべる長に
「お仕事はしっかりこなすのにそう言う抜けた所がありますから…」守ってあげたくなる妹みたいな人ですか?」
春蘭の言葉を思い出した男が笑いながら言うと
「放っておけませんでしょ?」
春蘭にそう言い返されて
「確かにあの様に良い娘さんに悪い虫が寄り付くのは好ましくない」
そう言うと
「命様にお仕えする姿を見て家の息子の嫁に来て欲しいと言う声が少なくないそうです」
春蘭がそう言うと
「それにも自覚が無いと?」
「全く気付いてません、命様と美月の仕事で頭は埋め尽くされてますから…」
そう言って溜め息を吐き
「肝心の命様の事でお願いがあります」
そう真顔に戻って言う春蘭に姿勢を正した二人に
「未だ王女で在る事に慣れてないと言うか理解していないところの有る命様は命様と呼ばれるのを余り好みません
ですが私達大人はそれをはい、わかりましとは言えませんが大人の事情を理解できない幼い子供達にまでそれを押し付けるのは?
そう考えて小さな子達がみこちゃんと呼んでも叱りませんから里の子達もそうしてもらえた方が命様も喜びます
実際私もでしたが見習いの侍女達は正式に王女様になられるまではみこちゃんと呼ばせていただいてましたから」
その話を聞いた男は
「長、今の話と命様の訪問を里の者達に告知してきて良いでしょうか?」
そう言って返事を待つ男に
「頼みますね」
長が答えると勇んで出ていったが
「今まで落ち着いていたのが嘘みたいに浮かれてますね?」
春蘭に言われ互いに顔を見合せ微苦笑を浮かべる二人だった
何故媛がその少女、美輝になついたかは誰にも解らない…
ただミナの膝の上に腰掛け美輝は右隣に来て貰い食事を手伝って貰っている
海斗の周りには騎士に憧れる男の子が群がりシーホースを操る海斗に白馬の皇子を重ねる少女が遠巻きに見ている
海斗は今日はゆっくり出来ないけど後日歌う人魚姫の命のお供で再び訪れると約束しその時にはシーホースに乗せるとも約束した
そして食事の時間が終わりミナと媛を残し春蘭を伴い海斗は命の元に向かうと
「海斗さんっ、約束ですよっ!」
そう叫ぶ少年に拳を付きだし親指を立てて見せる海斗だった
宿に戻りユカに長から預かった証書を渡し命の訪問要請に媛とミナを残した経緯を告げると
「海斗は春蘭の言う通り王宮に向かいなさい」
そうユカに指示され渡された荷物を持つと王宮に向かって飛び立った
早朝春蘭達についていけなかった事をひきづる命の機嫌は未だ宜しくない…
朝食の後の今は創作活動の巫女達に踊りの基礎を教えているところなので見物人相手に近所の菓子屋が菓子を持って売りに来ている
海斗が春蘭を連れて戻ったのは謡華の歌の指導を受けているところで昼食後の午睡の間春蘭、留美菜、りんが踊りの自習とそれ以外の巫女達の基礎をユカが指導
命の午睡の後お茶を飲んだ後に歌の自習を済ませると瑞穂に温泉に連れられると喜んで他の客達に世話される命
その間に留美菜とりんは川魚を使った鍋を用意し…
春蘭は以前作ってミナが喜んで食べた挽き肉の固め焼きソース掛け用意した
そしてユカは蛍に手伝わせある料理の支度を始めた
ミナが帰ってきたのは夜の舞台の準備が粗方すんでからで
「申し訳有りません…こんな遅くまで留守にして」
と、詫びるミナに
「仕方有りません、海斗と風華の手が空かず迎えに行かせられなかったこちらの責任ですからね」
そう言われても納得仕切れないミナの手を引いて舞台が終わった後の命の席に案内して本番を待った
いつものように奉納の踊りから始まる舞台
踊りが終わり
「今日はみこの個人的な話からするけどいー?
今日はみこの大切な人達の中の一人…ミナのお誕生日なんだよ…だから」
そう言うと瑞穂にエスコートされたミナが舞台に上がり待ち受けていた大樹が蔦の篭を渡し
「きみが作った蔦の篭に春蘭さんの刺繍、つぼみの組紐、麦のワッペン、つぐみの竹細工の箱、しずくの鍋つかみと鍋敷きが入ってます」
そう告げると続いて炎は
「三人の王女様と王宮の侍女の皆さんがミナさんの為にといって焼いたパウンドケーキと花の娘からは森のバター―煩い黙れっ!―…
真琴様からお預かりした命様の霊玉が埋め込まれた調理用ナイフです」
炎のその言葉に海斗は
「あ、蛍…このケーキ、お前が作ったジャムが生地に練り込まれてるって聞いてる
王宮に来たら一緒にお菓子を作りましょうと皆さんからの伝言な」
そう言ってミナでは抱えきれない様な花束を渡し
「僕達の気持ちです」
そう言うと受け取ったミナは
「誰かに誕生日を祝って頂けるなんて多分両親が生きていた頃以来です…」
そう言って涙するミナの荷物を三人が預かると自分の髪を飾る霊玉の釵を差し出し
「新品じゃないけどみこからの気持ちだよ…」
そう言われて涙するミナは瑞穂が肩を抱き席に案内されるとテーブルに用意してある料理を見て嗚咽するミナを見て
「私の用意したこの料理は大公領に生まれ育った娘達には特別な物
母親が娘の誕生日等の慶事には必ず作る母の味…
そしてこれは私達の生母ではなく守り育ててくださった亡き大公妃様とワイマール男爵夫人から受け継いだ大公邸出身の娘達の母の味なんです…
ミナ、言わば貴女は私達の妹…姉である私達にもう少し甘えなさい」
そう言われて苦笑い浮かべ
「その…自分には甘いけど人に甘えた事有りませんから…」
そう答えるミナに溜め息を吐くと
「何故?」
そう聞かれたミナの答えは明確で
「相次いで両親が亡くなった時に私の甘えて良い人は居なくなったからです…」
その答えを聞いて溜め息を吐くユカだった
再び訪れた海斗の出迎えに出たのはやはり吽で王女宮三階のサロンで預かった証書他ユカの手紙を渡し
「ユウ、マイとスーの二人に荷物を纏めさせて命の元に向かう様にと伝えなさい
海斗と風華は瑞穂から
青竜刀を貰っているんでしたね?
では風華はこれを貴女に預けますから青竜刀は大樹に渡しなさい
それと炎にはこの火炎剣を渡して上げる様に預けます
それからこれはたけの短剣と制服にきみの制服です」
観月がそれぞれに渡すと
「これは料理用のナイフにみこの霊玉を埋め込んだ物、ミナに渡して」
真琴がそう言って渡し翼も
「これは皆で焼いたパウンドケーキです、ミナにお願いしますね」
と、言いチサも
「このケーキには蛍ちゃんのジャムを練り込んでありますからね
いつか一緒にお菓子を作りましょうと伝えて下さい」
そう付け加えると
「そう言っていただいたと聞けば蛍も喜ぶと思います」
海斗もそうケーキも受け取ると支度の終わったマイとスーの二人を命の元に案内する事になった
翌日からマイの主な仕事は命と共に舞台に立ち
春蘭、ミナ、留美菜、りんには大漁祈願の踊りの指導
他の巫女達には航海の安全祈願を教える事でそれ以外は命の側付きを担当するスーのサポートを任される事となった
日に日に求人の張り紙を見て人が集まりまず大樹達准騎士達が稽古時間が取れる様になり
十日目の晩には最後のりんの手伝いも不要になり
「明日の公演をもって命様の興行も千秋楽となりますので明日の晩は更にお客さまが増えるでしょうから留美菜、りん、蛍と力仕事に准騎士達を回します」
そう言われて
「そうですか…いよいよ明日の晩で最後ですか、寂しくなりますね…」
と、言う女将に
「明日の夕方には北の町に居ると言う謡華さんの妹弟子が来て命様と交代で歌う事になってますし…
板長の腕も上がってますし食通揃いの美月のユカ様もほめてましたからね?
女将もユカ様の料理をアレンジして女将さんの一品に仕上げたし
初めてお会いした時の自信無さげな雰囲気が消えて笑顔が輝いてますよ?
なにより何も見もしないで大樹と海斗の二人を追い返した他の宿とこの宿のどちらに泊まれば良いかはお客様もおわかりのようですしね?もっと自信をもって良いと思いますよ」
そう言われてもすぐに変われる質でないのは自分でもわかる女将はこれからも地道に努力を重ねればいつか自信が持てるかもしれないと考えていた
翌日海斗に薬師の里に使いを出し明日の朝訪問する事を連絡させた
「風華、炎、海斗に忍、春蘭、ミナ、媛にみこが里を訪れるメンバーだから皆支度してね」
朝食の際の命から発表された事で残りのメンバーは一足先に北の町の宿で待つ事になっている
そして最終公演準備を始める一方で若月の服とエプロンの即時販売も行われた
侍女の仕事をしてない為創作活動のグループメンバーは若月の服を着てエプロンをしていたから話題になっていたのだ
だからユカは宿の周りをリサーチして若月の服を店をさがした結果が今の販売を担当している者達だ
顔馴染みも多いらしく用意した分」
はあっという間に売り切れて再入荷待ちになりますます増産体制を整える必要がある
そして最終公演の幕が閉じ命の本格的な初公演を無事終えることができた
「だ、だから何故こうなるのですか?」
宿の者達が持たせてくれた朝食の弁当はわかるとして泊まり合わせた客達に持たされた土産物、町の者達の命への貢ぎ物の野菜やらのな何やらで結局馬車は荷物が満載になっている
薬師の里の麓で
「炎、口笛吹けるなら思いっきり響かせて」
そう言われて思いっきり鳴り響かせると空から火の玉が降ってきた…様に見えた
「焔魔だよ…炎に力を貸してくれる霊獣焔魔…
風華は春蘭とみこ、炎はミナと媛、海斗は忍で行くね、海斗…案内して」
命がそう告げ宙に浮く霊獣達が里を目指して飛んでいくのを見送り
「いつまでもここに居ても仕方有りません、大樹…北の町に案内して下さい」
そうユカ言われて大樹が走り出すと他の馬車もその後ろをついて走りだした
前回同様に里の入り口で待つ命達だけど今回は命の訪問が予告されていたこともあり里の目は大人達すら好奇心が隠せてない
長の補佐役の男も三体の霊獣達揃い踏みは圧巻で息を飲んでいた
「水の精霊の巫女様、まずは長に挨拶をお願いします」
そう告げられた命は
「それはみこと春蘭、ミナだけで良いよね?
海斗、約束有るんでしょ?風華と炎も手伝ってね、忍はこれ握って翼よっ!って叫んで」
そう言われて渡された蒼い霊玉を握り
「翼よっ!」
そう言われた通りに叫ぶと蒼い霊体の翼が現れ忍の身体を浮かせた
「これは阿も隠し持っている翼てすね? 」
そう聞かれた命は
「うん、別に隠してる訳じゃないけどね…
その状態で皆を見守ってあげて」
そう告げると
「承知しました」
そう答えた忍に対し
「焔魔様は魔力霊力の類いがないと乗れないのでは?」
そう心配そうに聞く海斗には構わずいつの間にか媛の身体を抱き締める美輝を見て
「貴女、媛のお友達?」
そう命に聞かれた美輝は
「はい、そうです」
頷いて答える美輝に
「じゃそのまま媛の身体を抱き締めて燃えるお馬さんに近付いて」
そう言われた美輝はそろそろと近付くけど一向に炎の熱を感じない
「熱くない…」
とうとう焔馬の馬体に触れたにも関わらず熱くないその炎
「媛が無意識に張っている結界が貴女を炎の熱から守っているんだよ
媛と一緒になら霊力の無い子でもへーきだから宜しくね」
そう言われた里の子達は三人に群がり霊獣に乗る順番待ちになりそれを見た春蘭が
「では命様、長様に挨拶に行きましょう」
そう言われて中に入ると
「えっ、あれっ、えっ?何でここに?」
そう混乱する命に
「貴女も妹をご存知なのですね?」
そう聞かれたけど未だ状況を理解出来ない命に代わり
「命様に同行して私と騎士の忍様は妹様とお会いしましたから」
そう答えると
「じゃあ長様と春蘭はママと観月お姉ちゃんみたいな感じ? 」
そう命に聞かれた春蘭は