「大体そんな感じですね、長様は母の姉である方ですから…」
そう説明され
「そうなんだ…」
そう呟き
地の精霊への踊り、豊作祈願、豊作の感謝の気持ちを奉納する踊りを覚え
明日の夜奉納せねばなりません
ですから滞在も明後日の朝までお許し願いたいのですが…」
と、頭を下げると
「貴女達の訪れが今日なのは偶然ではなかった…
踊り手が生まれず絶えて久しい豊穣の女神に五穀豊穣祈願する奉納の儀式を行える…
こちらこそ宜しくお願い致します、水の精霊に選ばれし舞姫様よ…」
そう言って貰えた命は
「私は本格的な稽古を始めてきます…」
そう言って長の屋敷を出る命と三人に向かい頭を下げて命の後を追って出ていくミナを見ながら
「命様は又無理をなされるんでしょうね…」
そう言って溜め息を吐く春蘭に
「そんなに無理を?」
そう聞かれた春蘭は
「正確には無理をするのではなくご自分の限界を忘れます
それこそ眠り就くか体力の限界迄か…と、そういっても過言ではありません」
そう聞いて長も溜め息を漏らし
「王妃様の心痛お察しします…」
そう言わずにはいられない長だった
暫くして
「長様、朝食の支度が整いました」
そう呼ぶ声が室外から聞こえてそれまで妹…春蘭達の母の事を色々聞いて居た長も
「一緒に食事にしましょう」
長がそう声を掛けるとそれまで乾燥した薬草を擂り潰していた男が立ち上がると
「春蘭お嬢様、これを持って行けば良いのですね?」
そう言って弁当の包みと茶葉と茶器の入った包みを持つと室外に向かってしまった
「申し訳有りません…」
そう詫びる春蘭に
「その様な他人行儀な遠慮は無用に願います」
そう言って笑う男になんと言えば良いのかわからず曖昧に笑う春蘭だった
風華達も里の子等に手を引かれ戻ってきたの見て春蘭が弁当を配ると
里の子等は見慣れない行楽弁当を羨ましがり
「え、一緒に食べようって?」
媛を見て言う美輝に笑いながら
「食べさせて…でしょうね、媛の場合は…」
そう春蘭に言われてむくれる媛を見ながら命が一人の少年を手招きし
「みこ、あんましお腹減ってないから食べて…」
そう言って渡され弁当を持って戸惑っていると長が
「命様には今茶粥を用意してますから有り難く頂きなさい」
そう言ってもらい喜んで弁当を開けると
「スッげぇーっ、皆で分け合おうぜっ♪」
その少年が言うと忍も
「私達の分も分けあいましょう」
そう言うと准騎士達も頷き
「私達には朝から食べるにはボリュームがありすぎますから助けて頂きたい量ですね?」
春蘭に言われて苦笑いを浮かべ頷くミナだった
「所で長様、命様はいつまでゆっくりなされるのですか?」
一人の老婦人にそう聞かれ
「残念ながら明日の夜までに地の精霊への奉納の踊りから豊作祈願、豊作の感謝の気持ちを奉納のする踊りを覚えねばならぬ命様はゆっくりとする暇は有りません…」
そう言われて
「長様…い、今なんと…」
驚きのあまり声の出ない老婦人に
「明日の夜、演舞台にて踊りを奉納せねばなりません命様は今この地に住まいし草の精様が一人の指導を受け奉納の踊りを会得中です」
そう聞いて
「ならば明日の夜は久し振りに奉納の儀式が執り行える?」
その言葉に反応し
「明日の夜までに完璧に舞えるよーになるから…」
そう言ってニコッと笑う命を見て既視感の様なもの感じ考えたものの長が何も言わないので何も言わない事にした
賑やかな朝食も終わりに近付き
「海斗さん、炎さん、この後一緒に釣りに行こうよ?
里の者しか知らない穴場に案内しますよ?」
と、言うと
「二人も釣りは苦手じゃ無いが海斗は里の外の者の中じゃかなりの木登り崖登りの名人だからあの木に案内してやれ
炎は草の実に煩い…と、言うかジャム作りが趣味の妹の為探して集めてるからな」
と、言われて何と無く照れ臭い二人の代わりに
「炎の妹蛍のジャムなら少し持ってますから後で味見をしますか?」
それまでボーッとしていた命が春蘭の言葉に反応し
「媛、またあれ作ってくれるの?」
そう言われて美輝の顔を見て考え込む媛に
「媛、お願い出来ますか?」
そうミナに言われては嫌とも言えない媛が渋々頷くのを見てホッとする春蘭はミナに感謝の意をすとミナもお互い様と返すミナ
「そっか…ありがと、媛…じゃあ、みこお稽古にもどるから…」
そう言ってフラッと立ち上がると広場に向かって歩き始めそれを見ながら溜め息を吐いて
「風華、そう言う事になりましたからユカ様に連絡をお願い出来ますか?」
そう聞かれた風華は
「はい、お任せください」
そう答えて立ち上がると天馬に股がりユカ達の下に向かって飛んでいった
食後、海斗は少年達に連れられて甘酸っぱい香りのする果実を実らせた大木達の林に案内された
「俺達には未だ上れないんだよね…」
そう自嘲気味に言うのを聞いて
「うん、確かに手掛かりが殆ど無いから厳しいね…」
そう言ってポーンと飛び上がると一番低い枝に掴まりそれを手掛かりに高く登り熟した実だけを撰んで篭に入れると半時程で大きな篭は一杯になった
「海斗さん、凄い…」
感嘆の声を上げる少年達に照れながら
「そ、そうかな?」
と、答える海斗だった
媛と少女達の大半が花摘に興じ一部の少女は炎と草の実を摘んでいたけど…
「あっ…」
と呟いては時折木の根方を掘ってはお宝を発掘していた
その成果を昼食を摂りに戻るまでに小さな篭一杯にそのお宝達が集まり長を呆れさせた
その大量の茸類に…
勿論里の子達と集めた草の実や薬草の量も半端無く
「又手伝いに来て欲しいくらいですね…」
そう長に言わせて溜め息を吐かせた炎だった
続いて戻ってきた海斗達も難易度の高い木の実を篭一杯に摘め他の実もその量からしたらかなりの努力を要した筈にも関わらず笑って戻ってきた少年達と海斗達を見て
再び溜め息を何度も吐く長だった
昼食をお腹一杯食べた炎と海斗を含めた少年達
あまり食欲の芳しく無い命
命の供の中で最も苦手とする大樹の居ない媛はいつもの倍近い食欲を見せ楽しい食事の時間とそれぞれに過ごした
デザートは媛の用意した粉雪のジャムソース掛けと翔に手伝わせたアイスフルーツ
で、最初は
「翔、良い所に戻って来ましたねちょっと手を…これ、どこに行くつもりですか?」
忍の言葉に悪い予感の翔が聞こえない振りして飛び去ろうとするのに気付き
「ち、ちょっと待ちなさい…」
焦る忍の声に気付いた命が
ー翔、いー物あげるから忍のユー事きーてあげて…ー
そう言われた翔は
ー良いもんて何やねん?ー
翔に聞かれた命は
ーこれ、翔の槍とでも言う翔の魔石の槍…ー
そう言われた翔は
ーはぁ?ボクにそないなもんどないせーちゅうんよ?ー
そう言われた命が
ー魔力で操るんだよ、雷精達が霊玉を操ってたみたいにねー
命にそう言われて
ー…………ー
と、考え込む翔は暫く考えてから
ーわかった、ボクに出来る事ならやったる…ー
そう言われて
「翔は確か冷却系の魔法が…」
ー交渉決裂、ボクの魔法は似て非なる物、冷却魔法は使えんで?ー
そう答えると
「冷却魔法が使えない?では貴方が以前使って見せた竜頭氷連山は何ですか?」
そう不信感も露に聞く忍に
ーあれはゆーてみれば青竜大瀑布の一形態、低温の青竜大瀑布とでも言うべきもんでボクの魔法は吸熱魔法
熱と魔力を吸い取るから凍結したりするだけで氷雨の精の巫女達みたく冷気を操るわけちゃうー
その説明についていけてない忍に
ー媛や留美菜は雪降らせられるけどボクは水や水分無いと気温が下がるだけやー
そう言われた忍は
「それでは雪玉を作れませんね…」
と、聞かれ
ー天気次第やね、霧雨が降っとれば霧雨から熱を奪えば雪になる
つまりボクの持っとる力は中途半端なんよー
そう話していると
「なら翔ちゃん…この草の実を凍らせますか?」
そう春蘭に聞かれ
ーそれなら出来るけどそんなもんでえーんか?ー
と春蘭に聞き返すと
「取り敢えずこの草ぶどうを凍らせてください」
そう言って差し出された草ぶどうに向かって息を吸うと徐々に凍り付き完全に凍結すると
「有り難う翔ちゃん、忍様…」
そう言って草ぶどうを一粒もいで渡すと受け取った忍が口に含むと驚いて
「こ、これは…」
と、感嘆の声を漏らすのを見て
「翔ちゃんには簡単でも私達には出来ませんからお願い出来ますか?」
そう言われた翔は
ーそれでもさっきのくれるんならやるー
そう翔が答えると
ー勿論あげるからお願いね、翔ー
そんなやり取りの末に用意された物だった
冷やされ凍結した草の実は余分な水分も奪われ自然な旨味と甘味が凝縮されている
「なんと贅沢な味わい…」
そう言って恍惚の表情を浮かべる長だった
命の午睡の夢世界…アクエリアスの結界で槍の扱いを習う翔
―先ずこの宙に浮く槍の止まり木みたいな突起に止まりなさい―
そう言われて相手が魔女の命である事に気付いて黙って言うことを聞く翔に
―槍の穂先に意識を集中しなさい―
言われた通り穂先に意識を集中すると何と無く奇妙な感覚に陥った
(なんやろ?例えてユーなら槍が身体の一部にでもなったみたいな?)
考え込む翔に
―ならば吸熱魔法を使うつもりで精神を集中なさい…―
言われた通りに集中すると槍の穂先から熱を吸い石突きから熱を吹き出し推進力にして動き始めた
―な、なんやこれ?―
翔のすっとんきょうな叫びに
―それが翔の槍の最大の特徴です―
そう言われて訳のわからない翔が
―はぁっ、意味ちぃーともわからへんのやけど?―
そう声を上げると
―翔の吸熱魔法は言わば変換魔法
熱、魔力を奪い自分の使う魔力へと変換しています―
そう命に言われ
―だからそれがどないしたんやちゅーねん?―
そう聞き返すと
―槍も穂先から熱を吸い石突きから熱を吹き出し推進力にして飛行可能となる
消費魔力が小さく大きな力を操れる可能性の高い…
それが翔であり翔の槍です―
そう説明されて
ーなんやよーわからへんけどボクの力てめっさセコいんちゃう?ー
翔のぼやきに
―何故その様に考えるのです?―
そう問われた翔は
―竜頭氷連山かて大量の水とみこ、アンタの霊玉が無けな放てん呪文
ゆーたら借り物の呪文やろ?
まぁその程度の小者なん位は自覚しとるからえーねんけどな…―
そうぼんやり呟き
―これ…使いこなせるんかな?ボク…
まぁええか…所でこっから出る出口はどこに有るんよ?―
そう命に聞くと
―みこが出る時を待つか自ら作るかのどっちかだよ、翔―
そう言われて
―はぁ?何ワケわかんないことゆーとるんよ?
ボクにアクエリアスの結界破れる訳無いやろ?アホな事ユーとらんでさっさと出口教えんかい?―
そう文句言うと
―なら、みこのお稽古終わるの待ってて―
そう言うと歌と踊りのお復習をこなし新しい踊りの稽古をこなす間
ただボーッとして待ってても仕方無いので翔も槍の修業をしながら待った
夕食は春蘭とミナも手伝いいつもと同じはずの食事の準備を楽しい時間に変えた
翌日も各々に許された時間を有意義に過ごし夕方近い頃
「長様、奉納の儀式の前に禊を済ませたいのですが相応しい場所はございませんか?」
命にそう問われた長は
「演舞台の裏に在る小さな滝が相応しいでしょう…
演舞台の演者達もそこで禊を済ませ舞台に望んできましたから」
そう教えられると
「わかりました、春蘭、ミナ舞台の支度を始めます
それと本日の進行について説明しますからメモを取りなさい」
「聞いた話じゃ大抵高い所から舞い降りる登場の仕方をするそうだ」
が舞台の床を指差し
「何かが現れたようですよ?」
そう言われて皆が見守っているとそれは大きな大きな蓮の蕾でやがてそれはゆっくりと花開き始め
「命様がいらっしゃる…」
その言葉通りに蓮の花の中央で命が踞っていた
長が鼓を打ち始めると命がスーっと立ち上がり地の精霊への奉納の踊りを舞い
続いて豊作祈願と豊作の感謝の気持ちを奉納する踊りを舞い未だ慣れない踊りに命が一息ついた
長も鼓を打つ手を止め合図すると一部の女達が下がり料理を運んできたのを見て命が舞台に居るのに?
そう考え戸惑う男達の反応を事情を知る女達がにやにや笑いながら見ている中
「奉納の儀式は終わり今からは歌う人魚姫の歌と舞いを見ながらの懇親の宴
精霊の巫女達とその騎士達とのこの出会いに感謝し充分にこの宴を楽しみなさい
それが水の精霊の巫女にして歌う人魚姫様のご意思です」
そう長が一同に告げると再び踊り始める命は水の精霊への奉納の踊りを舞い
航海の安全祈願、航海の無事を感謝する気持ちを奉納する舞い踊り続いて大漁祈願、大漁の感謝を奉納する踊りを舞い竪琴を受け取り…
アンコール二曲を含めた全十曲を歌い上げ舞台を降りた
舞台を降りるとミナの膝は既に媛が占拠しており春蘭は長達と難しい表情で話し込んでいる
「ぁ、ありがとね…どうだったかな?みこの新ー演出は?」
裏方をつとめてくれた男に声を掛ける命に
「久し振りの舞台の出番を与えての頂き感謝の言葉も有りません
演出は妖精の様な命様に相応しい物でしたよ」
そう答えて貰い嬉しそうに
「えへへ、そーかな?」
そう照れ笑いしながら
「又踊りに来るね」
そう言って忍の下に向かう命とその忍に
「やはり戦士の貴女にはお酒がないと物足りないのでは有りませんか?」
香りの良いお茶を差し出しながらそう話し掛ける女性に
「呑めない私は命様の供として王都を出て以来宴の時はいつも裏方の手伝いに逃げてましたから…
始めてなんですよ、酒を断る言い訳を考えなくても良い宴は」
そう答えると
「そう何ですか?まぁこの里には薬用に使う酒しか有りませんから望まれても困りますけど…」
苦笑いで話すのを聞いた命が
「うん、忍ってば甘酒ってゆーの?あれ飲んでお顔真っ赤だからお酒呑めないんだよ」
そう言いながら忍の膝に腰を下ろす命を見て
「命様、宜しければこちらにいらっしゃいませんか?」
忍と話していた女性が自らの膝を指し示すと首を傾げながら
「良いの?」
その女性と忍の顔を見比べて聞く命に
「勿論命様が座ってくだされば良い思い出になりますからね」
そう言われて忍もうなずくのを見た命はそっと立ち上がりその女性の膝に座ると
「さぁ命様は何をお召し上がりになりますか?」
そう聞かれてテーブルに並ぶ料理を見て
「あれが良い」
そう言って指差したのはこの辺りではありふれているものの他所では余り見掛けない根菜の煮物―
そう答えると美輝がそうしている様に命にも一人の少女が寄り添い甲斐甲斐しく食事の手伝いを始めた
「長様、こちらのお嬢様はどちら様でしょうか?」
そう聞かれた長は笑いながら
「この娘の顔を良くご覧なさい
髪と瞳の色に惑わされてどうするのですか?」
そう言われて改めて春蘭の顔を見て考え込む女性達の一人が
「えっ?」
と呟き長の顔を見て
「長様の若い頃に似ておいでですが…」
そう呟き首を傾げるその老婦人に
「私に娘は居りませんが決して他人のそら似ではありませんよ?」
そう言われてやっと気付いて
「もしや美紅様の?」
そう長に訪ねると
「そう、私の妹美紅の娘ですよ」
愉快そうに告げ
「今私達が味わっているお茶も美紅が調合した物をこの春蘭が淹れてくれた物です」
そう答えると
「確かに髪や瞳の色の違いだけで貴女達姉妹の若い頃に良く似た面差しに気付けないとは…歳は取りたくないものですね…」
そう言いながら改めて春蘭の顔を見詰める老婦人
宴の終わりの時を迎え媛を抱き抱えた美樹が長の前に来て
「長様…いえ、叔母様…私、媛の側に居たい…命様のお側でお支えしたい」
そう声を上げると他に四人の少女と三人の少年達も僕も私達もと声を上げ
「海斗さんに聞いたんだ
准騎士の皆さんが騎士の家柄の生まれじゃないって
だったら僕達だって夢見ても良いですよね?騎士になりたいって…」
少年の一人が言うと
「私達は親の許しを得ぬ者を連れてはいけませんしまして私の母がしたように貴女達に里抜けの罪を犯して欲しいなど考えません」
そう答える春蘭の肩に手を起き
「この子達の親の了承なら得てる筈ですね?」
そう長が問うと後ろに控えた両親達が頷き
「美輝、里の掟を言いなさい…」
そう言われた美輝の表情が曇り
「光輝く者が導く日までこの地に隠れ棲むのがこの里に生を受けた者の定め…」
そう辛そうに答える美輝に笑顔を浮かべ指差し
「貴女達にはあの方の放つ輝きが見えませんか?」
そう長が指差した先を見ると眠りに落ちそうな命が居て
「では…長様は命様がその?」
と聞かれ
「四人の若き騎士や巫女達を導く命様は導く者だと思います
今更里を出たい等とは考えませんが命様の訪れこそがこの里の戒めを解くもの判断し貴女達が里を出る事を許しましょう
ただし、今は未だ幼い故貴女達の弟や妹達の同行は許しません」
そうきっぱり言われてがっかりする幼い子達に
「西の大公家が再興しますから焦らなくても機会は未々ありますよ」
春蘭に言われて長を見ると
「今回は諦めなさいと言ったまでです」
長の言葉にホッとする幼い子達
「春蘭、この子…美輝に色々教えて上げてください
何故ならこの子は貴女の従妹で私達の亡き弟の忘れ形見なのだから…」
そう言われた春蘭は驚いたものの
「わかりました、美輝は末の妹として扱いますが…雪華が一番喜ぶでしょうね
幼い頃は妹か弟を欲しがってお父様とお母様を困らせてましたから…」
そう笑って話し
「そして貴女達は妹のお友達も喜んで迎えましょう
ですから旅の支度と別れの挨拶はしっかり済ませなさいね」
そう言われた少年、少女達は一斉に
「はいっ!」
と、答えて夜の宴は幕を閉じた
翌朝旅立つ我が子達に自分達には叶わなかった里を出る夢を乗せ晴れやかな笑顔で見送っていた
海斗は少年二人に炎は少年と美輝に媛のを乗せ風華が少女二人に巨大化した翔が残り全員を運ぶ事になった
里の麓に降り立つと大樹が馬車で既に待機して居りそれを見た命は
「炎…今度は炎の番だよ、翔も荷物お願いね…」
そう言って送り出し
「風華、忍をお願い…春蘭とミナは馬車の寝台で休憩皆は馬車で座ってねみこは海斗と行くからね」
そう言って久し振りにシーホースに乗る命を溜め息をついて見る忍と春蘭だった
暫く走らせた後海斗に
「海斗、皆に話し有るから休憩にしよう…」
そう言ってシーホースに止まってもらうと
「大樹はこのまま皆を連れて先に戻って、風華も皆を頼むね
忍はみことシーホースに乗ってみこを呼ぶ声に導かれそれが何なのかを確かめに行く」
そう言われた春蘭とミナは
「なら私達の同行もお許しくださいっ!」
そう言われたけど命の返事はつれなく
「生まれて始めて里の外に出た皆にいきなり夜営させる気?妹なんでしょ?ちゃんと見てあげなきゃダメだよ
それに敵の気配は無いし忍と海斗に草の精も一緒だから大じょーぶだよ」
そう答えると余り信用できないのが常日頃の命の言動だけどこの場合の命の言葉を疑うことは忍も当てに出来ないと言っているにも等しい
そう考え忍を見ると忍も春蘭を見て互いに頷き合い
「ならば命様、くれぐれも単独行動は慎んでくださるようお願い致しますね!?」
春蘭にそう言われて
「うん、草の精も闇の気配は感じないけどみこの警護に忍がいた方が良いってゆってる」
そう言われて溜め息を吐くと
「だそうですから忍さん、命様の事宜しくお願い致します」
そう言って渋々ながら大樹の案内で北の町を目指す春蘭達を見送り
「じゃあ、みこ達もいこか?海斗お願いね」
そう言ってシーホースに再び騎乗し先に進む事にした
旧街道らしく余り整備されていない路面はかなり荒れていて普通の馬にはかなり厳しい行軍になっていたのは間違いない
「命様、この先はもう少し行くと行き止まりの筈だけど…」
そう命に告げる海斗に
「問題ないよ…そこにみこを呼ぶものが居るんだからね…」
そう命に言われ何も言えなくなる海斗と命を見て考え込む忍
(命様を呼ぶものとは一体何者?)
その答えは程なく姿を現した
―私の名はスピカ、麦の穂とも麦の精とも呼ばれ豊穣の女神に支えし者でした
我が呼び掛けに応えし舞姫よ…
自ら光を閉ざし眠りに就きし我が主人
豊穣の女神を今再び目覚めの時を迎えさせる舞いを奉納する事を頼めませんか?―
そう言って頭を下げるスピカに
―舞って下さい、我が友スピカの為…この地に再び豊穣の女神の祝福が与えられる為にも…―
「忍、闇の気配は有りませんが奉納の踊りを舞う間の警護を任せます
海斗は一旦春蘭達の元に向かい事情を説明して食糧を分けてもらってきなさい」
そう指示を与えると地の精霊への奉納の踊り、豊作祈願、豊作の感謝の気持ちを奉納する踊りを舞いそれを何度も繰り返した
忍と海斗が見守る中夜通し続いた奉納の踊りが日の出を迎える頃
―何故私を呼び覚ます?驕れし人間達が私達を見失い敬いの心を忘れた故私も眠りに就いたのです
私達を必要としない者達に干渉すべきではないはず?―
そう言われて
「そんな昔話しみこ知らない
みこはスピカと草の実の精が貴女を起こして欲しいっゆーから奉納の踊りを舞っただけ」
そう豊穣の女神に答えると
―では貴女には私の目覚めの必要は有りませんね?―
そう問われた命は
「考えた事無い…
大漁祈願は留美菜やりんのお父さんやお母さんが喜ぶって分かりやすい理由が有ったけど…
豊作祈願はそれ自体が良くわからない…
喜ぶ人を知らないだけかもだけどおバカなみこには具体例が無いと理解しきれない」
そう答える命に
―我が主人よ、私が望だけでは足りませんか?―
そう言われて考え込む豊穣の女神に草の精も
―この時代に貴女を呼び覚ます理由はもうひとつ
依り代…貴女様の器になる乙女が生を受けたからに他なりません
目覚めの時を迎えたのですよ、我が主人…―
そう言われて
―そうですか…わかりました、シーホースの騎士よ私を依り代の元に送って欲しい―
そう海斗に告げるとシーホースの中にスピカと共に消えると