「りゅう達の番は未だなのでしょうか?」
その春菜の呟きを聞いたユカは
「それは人の子に過ぎない私にはわかりません…
未だこれと言って目立つ功績の無い四人が准騎士に抜擢された事自体異例の事なのですからね…
ですが遅くとも女神の祭典の際の活躍次第で准騎士の昇任は可能でしょうから残りの時間でどれ程己れを鍛えられるか…でしょうそう教えられ頷く春菜だった
裏庭に行くと丁度一休みしている春蘭達が見えたので
「春蘭様、炎が春蘭様のお母様からお預かりした茶葉と庭先の木の実です」
そう言ってその二つを差し出すと
「お茶は今受け取りますが木の実は調理場に運んでもらえますか?」
そう言われて
「海斗君、そんな重そうな物春蘭さんにどうしろってユーの?」
と、りんにまで言われて頭を掻きながら
「確かに言われ無くても気付くべきだよね…」
そう言って苦笑いの海斗は
「取り敢えず調理場に置いて来ますね
後、大樹の准騎士の認証式をするとユカ様が仰ってましたから多分昼食の時に詳しい説明があると思います」
そう言って再び調理場に向かい木の実を置くと町役場に向かった
久し振りに寝覚めの悪い命は特製の茶粥を食べて目を覚ますと早速午後からの予定を説明され…
「うん…大じょーぶ、ちゃんとやるから」
そう答えると、着替えを任せ仕度する命
町長以下数名の町の有力者が参加する中認証式が始まった
「大樹、命様の前に…」
春蘭に呼ばれた大樹が命の前に立つと
「私、水の精霊の巫女の命は和泉の女神の依り代たる大公家公女観月に代わり大公家公女宮の准騎士の称号を与え…
その証しにこれを与えましょう」
そう言って浮き上がると大樹の襟元に記章を着け
「以後も変わらず精進し私達に力を貸してくれるようお願いします…」
そう言って微笑むと
「以上で簡単ですが認証式を終わります」
そう春蘭が告げると
「今夜、宿の前の広場で大樹と海斗の准騎士の昇任を祝う宴を開きます
一応私達も料理を用意しますが可能な方は料理等を持ち寄り参加して頂けるのなら歓迎します」
そう呼び掛けて解散となった
そして夕方になり魚釣りから戻ってきた大樹と海斗に見習い騎士の四人と二人の取り巻きの釣り好きの子達を連れて宿に戻り
「ユカ様、料理じゃなくても魚を持ってきたからこの子達も参加して良いですか?」
そうユカに聞くと
「魚を捌くのを手伝ってくれるのなら…
今暫くはこちらは手が放せませんからね」
そう言われて少年達も顔を紅くしてユカを見ながら
「はい、喜んでっ!」
そう返事して魚を捌き始めた
「あ、そうだ…ユカ様、媛か留美菜の力を借りたいんだけど良いですか?」
そう言われて手に持つ鯉を見て
「洗いにするんですね?わかりました、裏庭で踊りの稽古をしてますから留美菜に頼みなさい」
そう教えられて裏庭に行くと留美菜に
「悪いけど鯉を釣って洗いにしたいから力を借りたいんだけど良いかな?」
そう言われて命と媛を見ると頷く二人は
「春蘭、ミナ、留美菜、りん、媛が今日のお稽古は終わりだって…
春蘭とミナは、ユカに聞いて…留美菜とりんは大樹と海斗と海斗に代わって魚を料理したげて
大樹と海斗は修行を兼ねて薪割りだよ、頑張ってね」
そう言われてユカの元に行き春蘭は瑞穂と買い出しに行きミナは指導を兼ねて見習い侍女達の料理を手伝った
夕暮れ近くになり未だ公務の時間内であろう町長がユカの元に訪れ
「歌う人魚姫の呼び声高い命様にお願いが有って参りましたが宜しいでしょうか?」
そう言われてユカは
「この一行の責任者は私では有りませんから代表の者を紹介します」
そう言われた町長は
「その様なお戯れを…美月のスタッフの貴女を差し置いてその様な事は信じられません」
そう言われたユカは微笑みを浮かべると
「後進を育てる為の人事、それだけの期待を観月様がかけている子ですからね」
そう説明された町長は
「成る程…流石は観月様…
私共ではそこまで思い切った人事は出来ません…」
そう言って感心する町長に
「私達の方からも町長の貴方に頼みたい事が有りましたから…
丁度良いところに春蘭が戻ってきました」
そう言って
「春蘭、町長がお見えになってますから例の件をお願いしてはどうですか?
町長、彼女が観月様の眼鏡にかなった春蘭と言います」
そう紹介された春蘭を見て
(成る程若いながらも落ち着いた物腰とたたずまい…)
そう考えていると
「春蘭と申します、宜しくお願いします」
そう言って頭を下げ
「早速ですが町長さんに今夜の宴の来賓代表の挨拶をお願いしたいのですが引き受けて頂けないでしょうか?」
その意外過ぎる申し出に一瞬で頭の中が真っ白になってしまった町長が固まっていると
「すいませんけどこちらに町長がお邪魔して…
居た居た、町長…何をなさって…」
説教を始めようとしたその来客…
年の若い女性が町長の異変に気付き春蘭に向かい
「あの…町長は一体…」
と不安げに聞くと
「今夜の宴の来賓代表の挨拶をお願いしたらこうなってしまい私にも何が何だか…」
と、春蘭が答えるとそれまで笑いを噛み殺していたユカも我慢の限界で
「町長さんにその様な場の挨拶をする経験は?」
そう町長を訪ねてきた女性に聞くと
「多分町長就任以来の晴れ舞台だと思います…」
と、答えると
「やはりそんなところだと思いました…
所で、肝心の町長がこの有り様では町長からの依頼が聞けませんが貴方からは聞く事は出来ますか?」
そうユカに問われ
「はい、越権行為かも知れませんが町長の秘書役を勤めてますから内容は把握しております」
そう答えると
「では、春蘭…話を聞きましょう」
と、言われたので
「承知しました…それでは私からご説明させていただきます」
そう前置きし
「私達の町に限った事ではありませんが女神の祭典が近いこの時期に豊作祈願の夏祭りをする所は例外無く賑わいません…
ですが今年は数日後に夏祭りを控えた今…
世界中から注目を集めていると言われる歌う人魚姫の命様がこの町にいらっしゃいました
私達はこの訪れを天恵と考え是非とも命様に祭りで歌って頂きたいのですが…」
そう祈るように言う女性に
「歌だけ等勿体無い話し、草の精様から指導を受け地の精霊への奉納の踊り、豊作祈願を覚えた命様に踊りを奉納していただきませんか?」
そう思いがけない申し出に
「その様な事をお願いしても宜しいのですか?」
恐る恐るそう聞くと
「それこそが本来の精霊の巫女の務めのはず?
勿論、命様も喜んでお引き受けしますよ」
そう拍子抜けする程あっさり引き受けて貰い思わず隣に固まったまま立っている町長の頬をつねり
「あいたっ…」
と、うめく町長の声で現実だと理解する女性に
「私は春蘭と言いますけど貴女は?」
そう春蘭に聞かれて
「私は稲…町長の姪です」
そう答えると
「わかりました、稲さん…明日から役場に伺いますから夏祭りを成功させましょう
勿論、命様が歌い踊られる事を発表して沢山の方に集まっていただきましょう」
そう春蘭に言われて
「はいっ、どうぞ宜しくお願いしますっ!」
そう言って春蘭の手を握る稲の目は感動から潤んでいた
役場の者達が飲み物や料理を持って来たのを皮切りに町の者達が集まり始めたが稲を見付けた同僚が
「例の件…お引き受けして貰えた?」
と、聞かれて
「喜んで、歌だけで無く踊りを奉納してくださるそうです」
そう答えると話を聞いていた他の者達に「本当なのか?」と聞かれて
「精霊の巫女の務めと仰って頂きましたからね」
そう話していると役場の者以外の者達もその話を聞き付け「本当なのか?」と騒ぎ出したので
「ホントだよ、みこお祭り終わるまで居るからね」
姿を表した命がそう告げると
喜んでその話しは次から次へと広まっていった為皆口々に
「今年は祭りが楽しみだ」
そう言って喜びあった
そしてその賑わいの中命が
「未だ早い時間だけど今から踊る水の精霊への奉納の踊りと地の精霊への奉納の踊りはあくまでも大樹と海斗にアクエリアス様とガイア様に踊りを奉納して祝福してもらう為の踊りなんだよ」
そう告げると二つの奉納の踊り舞うと
「さぁ、今から宴の始まりだよ…皆も二人の准騎士の昇任をお祝いしたげてね」
そう命が宴の始まりを宣言すると
「ではこの町を代表して町長からのお祝いの言葉を…」
そう言われた町長は手と足が揃うぎこちない歩きで皆の前に立つと
「魚釣りの名人の大樹と木登りの達人の海斗はこの町の有名人
今日は居ない炎を合わせた三人は子供達の人気者で親達からの信頼も厚い三人が准騎士になりこの先立派な英雄になってくれる事を信じている
そしてこんな喜ばしい宴を共に祝える事に感謝して…乾杯っ!」
そう言って乾杯の音頭を取ると一仕事を終えてヘタリ込む町長に
「お疲れ様です」
そう声を掛けて酒を注ぐと
「命様の到着が一日遅れたのは豊穣の女神様を目覚めさせてきたからなのだそうです
その女神様を依り代の元に案内した海斗の話では依り代は第二王子の婚約者で西の大公家の再興を望まれたそうですからいずれはこの町にも訪れるでしょう…」
そう教えられて
「昨日から作物が元気な気がすると言う声をよく聞いていたが…」
と、言って「う~ん」と唸る町長に
「関係性ははわかりません…
ですが命様が踊る姿を見て喜ばぬ者は居りませんからね…」
そう話している間も人々は次から次へと詰め掛け二人に祝辞を送った
「そう言えば町長さん、この辺りも魚影が戻ってきたみたいだね?
今日の釣果は結構久し振りの大漁だったよ?」
そう海斗に言われて
「そうなのか?最近余り釣りをする者は居らんし釣れたと言う話しも聞かんが…」
そう言って寂しそうに笑うと二人の取り巻きの中の一人が
「二人の姿を見て僕も竿を取りに帰って一緒に釣らせてもらったら初めて二桁釣れたんだよっ!」
興奮気味に話すその男の子は得意顔で別の女の子は
「私は尺上の鯉を初めて釣ったよっ♪」
と、嬉しそうに言うと
「町長さん、お魚釣り競争しようよ?
お舟や岬で兵隊さん達はいつも釣った数を競ってたよ?」
と、言われたので
「う~ん…」
と、考え込んでいると
「取り敢えずみこが歌ってる間に考えて…」
そう言っていつもの様に全十曲を歌い再び宴の輪に戻る命に
「命様に因んだ名の大会名にしても宜しいでしょうか?」
先程の提案にそう答えると
「うん、みこは全然平気だけど…」
そう言って春蘭をチラッと見ると春蘭も命を見て頷き
「人魚姫杯で如何ですか?
因みに大樹と海斗は参加させずに釣り教室を開いて小さい子達に教えてあげなさいね?」
その提案に喜びの声を上げる小さい子達と日頃釣りを教えてとせっつかれる父親達が喜んだ
「町長、湯の街に売りに出せる魚をワシに買い取らせてくれればそれを予算に回せるだろう?」
と、一人が言えば
「私達からも入賞商品を提供いたしますがこの件も明日からの話し合いで決める事に致しましょう」
と、春蘭も言い夏祭りと釣り大会と言う楽しみで町の活気は一気に高まった
その高まりをさらに高める為命は大漁祈願と豊作祈願を舞うと町長は
「確かに因果関係はわからんが…期待を抱かせる不思議な魅力がある踊りだ…」
そう呟くと大樹と海斗が
「命様と出会って以来釣果はいつも良いんだよな?」
と、大樹が言うと
「炎は薬師の里であれだけお宝をたくさん堀当てるなんて初めて経験したっていってたよ」
と、話すと
二人に釣りを教えて貰いながら初めて釣りをした子が
「僕も大樹さんに教わって初めて釣りをしたんだけど八匹も釣れたんだよ」
と、父親に言えば別の子は
「僕九匹」
と、言って父親達を驚かせると
「命様が私達の前に姿を現して以来漁港の市場が活気付いて来たってお父さんが言ってました」
留美菜がそう言えば
「海軍や海兵隊の方達も最近は良く釣れて釣りにも張り合いがあるって笑っていってるよね?」
りんもそう言って笑ってる
やがて夜も更け命を始め子供達の寝る時間になり町の達も帰り始めると汐が引くように皆帰り始めた
こうして二人の昇任を祝う宴は楽しいうちに幕を閉じたのだった
②朱鷺色の髪の少女
海斗達が命達に祝ってもらった様にチサや鬼百合達に祝ってもらった炎と翼の供の騎士として社交界で紹介された風華
勿論風華が天馬に股がる騎士なのは一部ではかなり有名な話故に皆…特に女性の風華を見る目は熱いものだった
純白の天馬を操る騎士様っ♪と…
その分翌日からの修業は激しく見ている一般兵達が顔を蒼くする程で
「俺達がしてきた訓練なんか二人の訓練と比べたらお稽古と言われても仕方無い…」
そう呻く様に言うと兵達が今まで以上に真剣な顔付きで訓練に励むようになり陸軍将軍を喜ばせた
そんなある夜の食事が済み各々の部屋で部屋付きの見習い侍女の小明とスエの三人で過ごす就寝前のお茶の一時の事…
チサの朱い霊玉で戯れていた翔がうっかり呑み込んでしまい鬼百合の腕を媒体にした時同様に朱い霊気の結界が翔の身体を包み込み…
その結界が解けて中から現れたのは裸の小さな女の子で背丈はおよそ二尺有るか無いかでおそらく媛より小さいのだろうけど媛を知らないチサ達には何とも言えない事で
「ボ、ボクの体…どないなってもーたんや?
ち、力が入らへん…
か、隠れなアカン…逃げな………に捕まったら……………迷惑掛ける…」
そう譫言を言いながら倒れるとそのまま意識を失ってしまった…
「私の責任ですから取り敢えずこの事は伏せておいて下さい」
チサに言に頼まれ見習い侍女達はこの事はチサが命に直接話すまで秘密にする事にした
その頃翼の部屋でもまた変化が起こった
雷精が目覚めて霊玉から抜け出ると弥空に向かい
ー弥空、私が風の精霊を主人とするように貴女もその巫女の翼を主人としその御心に従いなさい
そして…互いの主人と共に水の精霊とその巫女の為に生きませんか?
その意志が有るのなら私を受け入れ私の霊力を受け取りなさいー
そう言われた弥空は躊躇わず左手差し出し雷精を受け入れると力尽き倒れ込むのを見て
「サキ、沙霧か風華に来てもらってください
なみは観月姉さんにこの事を報告して弥空を休ませると伝えてください」
と、言う指示を聞いて起き上がれもしない弥空が
「いいえ、私は遅番で未だ仕事が残ってますから…
それに翼様にその様に気を使わせては申し訳有りませんし…」
そう言われた翼は
「弥空はりんの事をどう思ってますか?」
その意外な問い掛けに疑問に思いながらも
「真面目で頑張り屋の妹の様に思ってますが?」
そう答えると
「りんと同じくみこちゃんに命を救われた私とチサはみこちゃんや真琴の力になりたいと願い生きてます
つまりその意味では私とチサは貴女達の仲間なんですからね、遠慮はいりません」
そう話していると深潮が翼の部屋に現れて
「精霊の巫女になったばかりの貴女に無理させてまで片付けねばならない仕事は有りませんから休みなさい
これは観月様のご命令ですからね」
そう言われた弥空が
「貴女にだって悪いから…」
と、渋る姉に深潮は
「機会が有れば酔仙亭のランチで手を打つから心配しなくて良いからね」
そう笑いながら言う妹に苦笑いで答える弥空だった
その弥空の身体を呼ばれた風華が従者の弥空のベッドに運ぶとすぐに寝入る弥空の様子を見て安心する一同だった
秘密にされた変化、観月や王妃に知らされた変化…
歌の女神救出に向け確かに色々な事が動き始めていた
人の…女の子の姿の翔は一切の魔力を失っていた
思うように動かない手足に苛立ちは募り
魔力と翼を失い翔べなくなった翔に出来るのはただ空を日長眺めるだけでぼんやりと日々を過ごす翔の耳にはチサの声も届かず
「魔力も翼も無いボクに価値なんか無いんやからはよほかしてんか…」
時折呟いてはベッドから降りようともがくけど身動ぎも出来ない状態の翔を見捨てられるチサではない
「みこちゃんか真琴ちゃんに相談してみては?」
そう言ってはみるのの翔の答えはいつもたったの一言で
「いやや…」
で、食事も摂らず眠っている気配すらない…
かと言って別に拒否してる訳でも無いけど食事を摂ろうともしないしない翔
どうすれば良いのかさっぱり解らないチサがもうひとつ悩んでいるのが翔の着替え
当然ながら合うサイズの服等は有る筈もなくどうしたら…
と、悩んでいたら小明が
「チサ様…これ何かはどうでしょうか?」
そう言いながらチサに見せたのは小明が妹の小夜によく人形の服を作って上げてた特技を活かし作った服で
「命様の好きな服を真似て作ってみましたけど…」
と、言って渡されたそれは確かに命が好んで着ている海兵隊の制服で見た感じかなりしっかりしている
「有難う…ちょっと試しに着せてみますね」
そう言って着せてみるとサイズは合っているようだけど心を閉ざした翔の反応は無い
ただ…やはり観月や王妃、真琴や翼に美月のスタッフ達はいつまでも誤魔化せず
「チサ、それは何?」
いつもの様に口を開けない翔に小さく千切ったパンを食べさせようとしても反応の無い翔に気を取られ真琴に全く気付けなかったチサは
「ま、真琴ちゃん…何で…?」
そう言って戸惑うチサに
「何でじゃないよ、チサ…
微弱とはいえ魔力を持つ…得体の知れない者と二人きりでいるなんて一体何考えてるのさっ!」
と、叱りつける真琴に
「そ、そんな…内緒にしてたのは謝りますけど…」
チサの言葉を遮り
「ほれみてみぃ、真琴もゆーとるんやからボクの事なんか風華に持たせてどこぞにでもほかしてくるか…
あーっ、もっと簡単な手ぇが有ったわ…
真琴の黒炎竜に食わせてもーたら綺麗さっぱり無くなるやん、真琴ちょい頼むわ…」
抑揚感の無い声だけど
「その変わった訛り…翔ですね?チサ、一体どう言う事なのかキチンと説明しなさい」
真琴続いて現れた観月がそう問い詰めるとその後ろで見守る王妃に向かい
「この子は翔です…お母様もご存知のみこちゃんの使役獣の翔ちゃんだった子が誤って私の霊玉を呑み込んでしまいこの姿に…」
そう聞いた真琴が改めて翔を改めて見ると
「…確かに翔の魔力を僅かに…
そう、まるで翔の魔力はチサの霊力に封じ込められているように感じますね…」
翼がそう言うと
「大公領に居た頃のみこの状態と重なるよ…
魔力も霊力も涸渇していたあの頃とね」
考え込みながら言葉を選ぶ真琴に
「ボクのちっぽけな魔力をみこと一緒くたにされたらかんなんわ…堪忍したってんか?
ほれ、真琴…別にボクなんか居らんかて誰も困らんのやからさっさと始末しいや」
そうせかす翔に
「確かに困りませんけどみことチサ、ユカとユウは泣きますよ
まぁ、困ると言えばその四人を宥める者達が大変でしょうけどね、鬼百合?」
そう話を振られた鬼百合が苦い顔で観月にむかって
「確かにな…」
と、言って目だけでユウを見ると溜め息を吐く鬼百合
「ともあれ貴女の主人はみこなんですからみこが帰って来るまでは大人しくチサの言う事を聞きなさい
何ならユウに貴女の躾役を任せても良いんですよ?」
観月がそう言うとユウの眼がキラーンと光り翔の顔から血の気が引き
「ち、ちさ様のユー事をちゃんと聞きます…」
そう小さく呟くとユウの舌打ちが聞こえ
「本来ならもっと大きな声でと言いたいところですけど今はそれで許しましょう
所で翔に着せている服はどうしたのですか?」
そう観月に言われて小明がおずおずと
「家に居た頃妹達の人形の服を作って上げてた特技を活かし私が作りました…」
と、答えると
「その様な特技を持っているのならもっと早く教えなさい…
チサの身の回りの世話は他の者にさせますから貴女は翔をモデルにしてファッションの勉強をしなさい…ユウ、任せますよ」
観月に言われて
「承知しました」
翔を見てにこりと笑いユウが答えると首を竦める翔を見ながら
(翔にゃ悪いがユウが翔を構ってくれてりゃアタイが気楽だぜ)
等と思われてるとは気付かぬユウと翔に
「明日からの予定は明日の朝食の時指示しますから翔も連れてきなさい」
そう言われて
「無理、ボク起きとれへんし食べモンも咽通らへんから…」
と、翔が言うとチサも
「もう何日も水の一滴も飲んでません…」
そう言い足したので
「構いません、顔見せに呼ぶだけですし具合が悪く動かせない訳でも無いのでしょ?
ユウ、貴女が翔の迎えに来なさい」
それで決まりだった
その夜はそれで解散になり眠れず身動きもままならない一夜を過ごす翔だった
③人魚姫杯
昇任の宴の翌日から早朝は命と媛は踊りの稽古ので霊力を高める修行をして過ごしその後他の巫女達と朝食迄の間お祈りをした
朝食の支度はユカの指揮の元にマイとスーが中心になって見習い侍女達と作業し勿論後片付けも彼女達の仕事
大樹と海斗は釣り教室を開いて小さい子達に教えながら食材の調達をして朝食前までに帰り食事の後修行を始める
食事の後各々の指導者の元で修行を始める二人と見習い騎士達は昼食まで激しい修行を受けた
主に体力作りの見習い騎士達と右手、左手、両手での素振りを繰り返す大樹と海斗
くたくたの身体は食欲が減るどころか倍増し昼食は追加で作らねばならない程だった
勿論疲れ果てた彼等は昼食の後は午睡で指導者達は自らの稽古時間に当てた
命の午前中は謡華の指導を受け歌の稽古で媛はミナ、春蘭、留美菜、りんの踊りの指導で残りの巫女達の指導はマイが受持った
昼食の支度を始めるまで見習い侍女達はユカの指導で勉強時間になり
昼食が済むとミナと春蘭以外の命と媛他の巫女達も午睡でミナと春蘭は各々に創作活動でライは見習い侍女達と礼儀作法の指導を受ける事に
午睡が終わると命は歌の自習で媛は数珠の山の前で霊力を高める修行をしていた
ミナと春蘭は引続き創作活動で留美菜とりんは朝大樹達が釣ってきた魚を捌き夕食の支度を始め…
見習い侍女達と巫女達は礼儀作法の指導を受け大樹と海斗は薪割りで見習い騎士達は風呂の水汲みを夕暮れ前後に魚釣りする為の時間調整をした
日暮れ近くに命を始めとする巫女達は入浴を済ませておき大樹達は帰ってすぐに入浴…そして夕食
夕食後命は竪琴の手入れをしながら同じく三弦の手入れをする謡華と過ごしミナと春蘭達はそれぞれの創作活動
美輝は春蘭にお茶の淹れ方を習い春蘭達が習って作ったお菓子のレシピ帳を写し残りの巫女達は午前中してない勉強をして過ごした
二日目は歌の稽古と自分の踊りの稽古はアクエリアスの結界で済ませてから結界の外に出て
媛と踊りの稽古をして いると
ー何のつもり?自分の稽古は結界で済ませたから私の稽古を着けてる気で居るの?ー
そう媛に言われて
「そこまでは言わないよ、手本見せてるだけ」
そう言われてムッとしなからも
ーなら明日からは私もアクエリアスの結界でお稽古させて、精霊の巫女としての修行と共にー
媛にそう言われて苦笑いを浮かべ
「うん、わかったよ…それで媛が納得するのなら…