前夜祭、そして決戦の時は間近
前夜祭、そして決戦の時は間近
①ただいまっ!
命の帰還で賑やかさを取り戻した朝の王宮
日の出より遥かに早い時間から駆け回る命とその後をついて飛ぶ媛の姿が至るところで目撃されたけど声を掛ける間もなく走り去っていた
二人が真琴の部屋に向かう中、翼の部屋から漂うお茶の香りに誘われた二人は風通しを良くする為少し開いたドアの隙間から中を覗いていると
「みこちゃん、お行儀悪いですからそんな所から覗いてないでちゃんと入ってきなさい」
翼にそう言われて
「はい、おねーちゃん…」
そう神妙に答える命をクスッと笑う媛にも
「行儀悪いのは貴女も同罪、何他人事みたいに笑ってるんですか?」
そう言われてシュンとする命と媛が見たのは未々思う様に身体が動かない翔が顔をひきつらせてユウの膝の上に座る姿だった
王妃の寝室を黙って抜け出したのは寝間着を着たままの二人を見れば一目瞭然だから命も翔を笑えず
媛も最近頭が上がらない美輝がいるから笑えずにいると
「おはよう、みこ…」
そう声を掛けられびくびくしながら振り返ると目が笑ってない笑顔の王妃に朝の挨拶をされたけど当然の事ながら黙って王妃の寝室を飛び出した命が王妃の顔をまともに見れるはずもない
そんな命の様子に呆れたた翼が
「みこちゃん、お母様はみこちゃんに朝の挨拶をされたのだけど?」
そう言われて
「おはよう…ママ…」
その一言にやっと溜飲を下げた王妃は命に
「みこと媛ちゃんのこれからの予定は決まっているのですか?」
そう聞くと
「踊りの稽古とみこのお歌のお稽古はすんだし今朝はお稽古はお休みにしますって先生がゆったからこの後の予定はないよ」
との命の答えに
「ではユウ、予定通りに媛ちゃんのお洋服頼みますよ
取り敢えず朝食用のに着替えさせ食後に本格的に」
そう言って命を見ると
「みこはご飯の後先生をみこのお稽古場に案内したり皆に紹介したりしたいから…」
そう言われて
「スー、口下手なみこの代わりに謡華さんの事…任せますよ」
そう言われて苦笑いを浮かべ
「承知いたしました」
そう答えるスーの旅での成長を見た王妃だった
食卓に現れた媛はまさしく可愛らくしい天使の様でこの日の為に準備してきた美月のスタッフ達の表情も誇らしげで六花を愛でる国王の目は優しい父親のそれだった
食後の謁見の場で正式な命の帰還報告がなされ今夜は王女達四人揃っての公式の御披露目のパーティーが開かれると発表があり国中が沸き返った
当面の体制として
観月の部屋付きにこずえ、つぼみ、しずく、麦、きみ、小明、鬼百合、ユウ、翔
ユイの身辺警護に千浪
翼の部屋付きに弥空、ライ、沙霧、風華
真琴の部屋付きはマユ、白浪、美潮
チサの部屋付きにスエ、蛍
命の部屋付きに春蘭、ミナ、阿、忍、瑞穂、留美菜、りん、澪、美輝、雪華に決まり…
マイ、留美菜、美輝、雪華が媛の担当になりミナはその三人の指導役を兼任することになっている
又侍女ではないものの謡華も命の部屋に滞在してもらうことになっている
これが現段階の人員配置と国王からの発表で後日精霊の巫女以外の見習い侍女達の配置と命月影の国訪問の同行者も発表する発表があった
もっともその性質上王女の正装で出席せねばならない真琴と自由な空気を吸った命には苦痛以外の何物でも無かったのだけど
それでもこの夜社交界デビューを果たすライ、麦、澪、美景、蛍、七人の精霊の巫女達
美輝達四人の見習い侍女達がお披露目のドレスを身に纏い社交界デビューを果たし…
その間は二人も我が儘を言わず王女の務めは果たした
命や真琴、チサが妖精なら翼と媛、翔は天使と呼ばれこの時ばかりはユウから解放される翔が一息吐けるとき
未だに身体が思うように動かない翔は依然ダンスが得意でないご婦人方の格好の玩具
翔の噂を聞き付けた貴婦人、令嬢達に招かれる王妃や翼が翔の同行を請われ方々に出向いているためかなりの有名人
既に噂が先行する媛と四人の王女達と共に歌の国の六花と呼ばれ始めている翔は王女達に負けない人気を博している
皆がその手を求める王女達や手は取らなくても共に踊りに興じたい媛と異なり世話を焼きたい構いたい…
そんな女性達が翔の周りに集まっているのはいつもの光景で訪問先でも社交界デビューが未だ先の娘達が喜んで迎えたのは言うまでもない
特に最近は掴まり立ちが出来る様になりよたよたっと歩き始めてるからその様子を見ては皆騒いでいる
その社交界らしからぬ賑わいも皆それぞに楽しんでいたがまぁ当の翔本人はユウから逃げ出したい一心で歩く稽古してるから面白いはずもないのだけど
二人の女神の依り代に四人の王女達と精霊の巫女達に翔、そして美月のスタッフ達とおそらくは今世界でもっとも華やかな王宮なのは間違い無く来賓達が皆思うことだったろう
その席で正式に命の歌の指導者の要請を受け畏まる謡華に王妃の言葉は
「この国の歌を命が歌う事に重要な意味があります
その歌を命に教えて下さる貴女を私達は最大の敬意をもって迎えましょう」
だったので更に畏まる謡華に
「これからも王女様ではなくみこちゃんと呼んであげてください」
との直接の言葉に
「それこそが私にとっての最大の栄誉ですから…」
その言葉に微笑みながら頷く王妃とユイだった
夜の早い翔が真っ先に眠りに落ち伯爵夫人が翔の退出迄膝枕で寝かす権利を獲得しついで媛が眠りに落ち…
幼い巫女達の退場時間になり翼の挨拶で退場する事になり
精霊の巫女で最後まで出席するのは春蘭、ミナ、弥空の三人だが若い男達にはやはり恋愛対象のその三人が残ってくれれば良いとは決して口には出来ない本音ではあるのだけど
いよいよ明日は女神の祭典の前夜祭
あらかじめ宣言されていた通りに命をモデルにしたファッションコンテストが開催される日だ
既に明日の本選出場作品も決まり本番の命の着替えの手順も命以外は皆把握している
命の今日の予定は翠蘭太夫の踊りの師を訪ねる事で謡華も己の師とも親交の有る彼女に挨拶に行くことにして同行する事になった
供をするのは鬼百合と忍で翔を抱きかかえながら指揮するユウは一瞬同行する事が出来ない事を恨めしそうな表情を見せたけど
翔の身体を抱え直して気分を変え作業に打ち込むことにした
「こんにちは、お姐さんの先生っ!」
命が元気よく挨拶し謡華も
「ご無沙汰しております」
そう尋常に挨拶すると
「師と和解したのですね?」
そう問われ
「はい、その節は皆様にもご心配お掛けして恥ずかしい限りですが…
縁有ってみこちゃんに歌の指導をする機会を得まして師匠の気持ちを考えてみようと思えるようになりましたから…」
そう答えると
「そうですね、とても不思議な娘ですからね」
そう言って苦笑いする鬼百合と至極真面目に頷く忍を見る水蓮に
「今日はみこの踊りを見てもらいたくて来たんだ…(次に会える保証はないのだから)」
命のその思いはみこ本人すら気付かないものでみこの表情に陰りはない
途中食事の休憩を挟み九つの踊りを舞い終え水蓮に
「貴女なら私が敢えて言わずとも実践できてますが自ら楽しんで踊りの精進をなさい」
とのお言葉をいただき王宮へと帰っていった
そして夜が明け前夜祭が始まった
前回の命に代わり媛が屋台の受け付けに座り噂の天使の姿を見て既に会場は大盛況
そして留美菜とりんは仲間達の鍋の店に来ていて
「母さんこれ…」
「おばさんこれ」
そう言って渡されたのは未々真新しい若月の服で
「私達にはもう小さくて着れないから皆に着てもらおうって持ってきたの」
そう言って渡す二人は確かに命の供で旅立つ前より背も伸びていたが
「良いのかい?こんな高そうな物を貰っても?」
そう聞かれた二人は
「大丈夫だよ、この事をユカ様に話したら今のサイズの新作を頂けた上に
未だそれ程時は経ってませんが私達は新作に力を入れたいから…
岬のお友達の皆が今日の前夜祭で着て屋台の仕事を頑張ってくれたら良い宣伝になりますから着てもらってね
そう言って頂きましたから」
留美菜がそう言えば
「着れないからと粗末に扱われたら服だって可哀想でしょ?
サイズが合わないだけなら着れる娘に譲ってあげてね
そう言って頂きましたから」
そう言われて
「さすが美月のスタッフ…言うことが違うね…
ほらっ、アンタ等もぼーっと見てないで取りに来な
それと二人は仕事に戻らなくても良いのかい?」
そう聞かれてかおを見合わせてクスッと笑い
「私達の今日の仕事は屋台のお手伝いで前夜祭を盛り上げる事だから
鍋は私達が見てるから着替えてきて」
留美菜にそう言われても躊躇う少女達に「少々のほつれや汚れは何とかしてやるから着替えてきな
りんはこの間頂いたばかりの新品を着てやってたのにお下がりのアンタ等がビビってどうするんだい?」
そう言われてやっと
「着替えて来る」
そう言って銘々に服を選び着替えてきて屋台を始めた
今日は朝から握り飯やまんじゅうやらをセットで販売しているし蕎麦屋は王宮の許しを得て人魚姫も大好きな蕎麦
と銘打って営業し事実岬で蕎麦を楽しんでるのを見たものは少なくないのでその一角は群を抜いて大盛況
その為前回より多く準備したにもかからず夕方まで持った者は居なかった
つぼみ、つぐみ、しずくの三人は親達の手伝いに行き
麦、小明、スー、スエ、スズは若月のお手伝いでその一角で蛍はジャム、きみは蔦細工を売っていたけど
きみの作品は若月のブースのレイアウトを見て欲しいと思わせ蛍のジャムは美月のスタッフ達が交代で休憩する際これ見よがしに蛍のジャムをお茶に落とし香りを撒き散らした
その効果で用意した分はあっという間に売り切れた
嬉しい誤算は留美菜やりんから服を貰った少女達達が着ている服
前回より割り引いて売ってはいるものの販売の手伝いをする巫女達の着る新作ほど目立つ扱いをしてないにも関わらず
「漁師の娘達の屋台の方でお前達の服の問い合わせが凄いことになってるぞ」
と鬼百合に言われミナが対応に向かい
(何かしらのお礼を考えましょう)
と、思うユカだった
春蘭は観月の指示で会場の総指揮をとり朝からてんてこ舞い
命の今日の担当はマイで三人の王女は王妃と共に他国の大使のガイドを務め
午前中は何かと予定が遅れがちながらも何とかこなせ昼食時間にずれ込み遅い昼食になった
更に食欲の無い命的にはフレッシュジュースだけでも良いのに
「飯を食え飯をっ!」
そう口喧しく言う鬼百合のお陰で今だ屋台巡りになっていたが間が悪く売り切れか丁度次の料理の仕上がり待ち状態でなかなか見つからないまま休憩時間が終わりそうだった
そんな命達に「命様っ!」と、声を掛けたのは留美菜で彼女が手伝う店を見て
「アンタ等どっから来たんだい?」
そう聞かれて思わず身構える出店者達に構わず
「月影の国から歌を学びに来てるって聞いてます」
そう聞いて目を光らせる鬼百合に益々怯えたのだけど
「月影の国のハムならアレは有るのか?侯爵領の辛炎ハムは?」
そう聞かれて恐る恐る出すと
「アタイにゃ分厚く切ってその二人にゃ蜂蜜漬けを薄切りで軽く炙ってくれ」
その注文通りに出すと
「うめえっ、やっぱうめえぜっ!留学生だってな?異国じゃ何があるかわからねえから金に困ったらこいつ持って王宮の…鬼百合ってゆーんだがアタイん所訪ねてきな、力になってやるからよ」
そう言われて
「良かったねお姉さん達、鬼百合さんは国王様も一目置く方でその方に気に入ってもらえて」
そう話しているのとは別に旨そうにハムを食べる鬼百合に
「姐さん、そいつはそんなに旨いのかい?
」
そう聞かれた鬼百合が辺りを見回して
「マイ、済まねぇが握り飯を買ってきてくれ無いか?」
そう言って小銭を渡し
「辛い物好きならこれだけでも十分旨いが握り飯一緒に食えばなお旨いっ!」
そう言って右手に串焼きのハムと左手に握り飯を持って交互に食らい付く鬼百合の姿を見て生唾を飲み込み
「俺にもそのハムをくれないか?」
そー言ってハムを買い握り飯買いに走り鬼百合の様にかぶり付くと苦笑いの鬼百合が
「握り飯も良いんだがやっぱアレだな?」鬼百合の言葉に男達が頷くと不安気に見守る留学達だったけど
「だな、やっぱ一杯やりたくなるんだよなぁっ♪」
そう笑って言うと男達も
「やっぱり姐さんもそー思うかいっ!」
そー言われて
「あぁ、みこの休憩時間が終わって控え室に送ったら又買いに来て一杯やるつもりだぜっ♪」
そう言って笑う鬼百合に
「今更じゃ無いですか?そんな事を気にしたって…」
と、留美菜が言えば命も
「お風呂上がりくらいしか鬼百合からお酒の臭いしない時無いからね…」
命に迄ぼそっと言われ苦笑いの鬼百合に
「大丈夫、お酒の臭いさせない鬼百合は偽者ってわかりやすいから…」
そう言われた鬼百合もさすがに微妙な表情になり少しだけ考え込んだが
「そうか、軽く引っ掻ける程度なら構わんのだな?」
そう命に聞くと
「みこをちゃんと時間までに送ってくれれば問題ないよ
少々の酒で任務を忘れる鬼百合さんじゃあないよね?
それと飲みすぎて観月お姉さんとユウ…それと春蘭に怒られてもみこ知らないからね…」
勿論忘れるつもりは更々無いが…それに関しては想像もしたくない事態だから
「時間が無いから二杯が限界だな」
そう話していると
「ほれ、姐さんっ♪」
そう言って徳利瓢箪を投げて寄越すと受け取った鬼百合に
「人魚姫様のお許しも出たんだから軽く一杯いきましょう」
そう言って自分達も徳利瓢箪に口を付けグイッと煽りハムをかじると
「う~ん、旨いっ!」
と、異口同音に唸る男達につられて鬼百合もグビグビッと酒を煽りハムをかじって
「侯爵領の爆酒との相性が又合うんだぜっ!」
そう言って暫くの酒談義後
「じゃあ、アタイはみこを控え室に送ったら又来るからよっ♪」
そう言って命を肩に担ぐと颯爽とその場を立ち去った
午後の衣装はカジュアル部門で御法もエントリーしている部門で命も楽しみにしていた事のひとつだ
そして受賞式になり人魚姫部門とカジュアル部門の入選作と佳作共に三作品が選ばれ特別審査委員長賞が選ばれ
明日の女神の祭典が終わりその翌日、すなわち明後日の午前中に契約を結ぶので大公宮に集まるようにとの事
そして閉幕の挨拶に観月は
「これ迄の宮廷ファッションはそのままですが若月を始め新しく芽吹いた新芽を大切に守り育て…
更に芽吹く新芽に期待し今回のイベントを企画しました
この先この様なイベントを度々行いますから今回選に漏れた方にも光るものを感じました
ですからこれからも精進を重ねて頂くと共に次の企画の為皆さんの得意ジャンルなどを問うアンケートに協力をお願いし新しい美月の力になる方を随時募集して行きます
我こそ美月に新風を巻き起こすのだっ!の気概で次の機会を待ってください」
それが閉幕の挨拶で選に漏れた大抵のデザイナー達は得意ジャンルではなかったからだと自らも納得し次の構想に思いを馳せた
②女神の祭典
一日モデルをこなした命は出番終了後眠りに落ち朝を迎え本格的な実戦が初めての翼とチサに准騎士を初めとし見習い騎士達に王家の騎士、戦士達は眠れぬ一夜を過ごした
無論真琴とても今なら唄う人魚姫と称えられる命と代わり魔剣士の自分こそ歌の女神の救出部隊に加わりたい真琴も眠りに付くまでは思い悩んだ
それでも水の精霊と和泉の女神の要請であり何より命には今年の出場権が無いのだ
持回りで審査員を行いその年の審査員の弟子は参加できない決まりが有り命の師のアリア女史が今年の審査員であるからだ
だからやはり根っからの戦士である真琴にどうしようも無い事をいつまでもグダグダ言う気はないから早めに眠りに就き万全の体調で挑むのが今の自分が為すべき事だから…
そして祭典同日の朝緊張する翼やチサの心を解きほぐしたのは思わす脱力するほどの寝惚けた顔で
「お姉ちゃん、お腹すいた」
そう言われて苦笑いしながら
「春蘭かミナに用意させますね」
そう言って二人に伝えようとしたら春蘭はお茶、ミナはお粥を持って現れ翼やチサにさすがと唸らせた
人員配置はロイヤルボックスに媛と翔に春蘭、留美菜、りん
部隊周りにミナを始め精霊の巫女達と大樹率いる見習い騎士達
会場外壁に千浪は命から預かった魔弓黒炎竜で吽、モリオンが真琴が錬成した黒い勾玉の弓…魔弓焼炎竜を持ち待ち構え
会場周辺に騎士団も弓を装備
迎撃部隊に翼、沙霧、斬刃、炎と海斗
救出部隊一班は命、忍と瑞穂
救出部隊二班はチサ、鬼百合、修羅
救出部隊三班は嵐、阿、喧火
救出部隊後詰め班風華と騎士団で海軍は海上警戒
出発の支度をする救出部隊を不安気に見守る春蘭達巫女とマイ達侍女に真琴が
「二人共、そんな顔しないの…鬼百合さん達じゃあ頼りないってゆーの?
ボクはみこがちゃんと女神様を解放して帰えってくるのは当たり前だって思ってるけど?
それに貴女が不安そうにしてたら下の子達の不安が大きくなるんだよ?」
そう言われて畏まる二人に
「春蘭、水筒に茶を頼む
時間との戦いでもあるこの作戦…お前の淹れてくれ茶で頭を冷やさにゃならん事もあるだろうからな」
そう言われて
「わかりました、弥空…お茶の支度、手伝ってください」
姉にそう言われて給湯室に向かう姉妹を見送り
「真琴に不安はないのですか?」
観月にそう聞かれ
「全く無い訳じゃ無いけど…みこが又無茶するんじゃないかってね
でも、僕は不安より不満の方が大きいのだから…何で戦士のボクに歌を…みこと一緒に戦えないのさっ!て不満の方がね」
そう言って溜め息を吐くと
「祭典の優勝候補に名を連ねているのに?」
笑いながら面白そうに問う観月に
「それ自体が滑稽なんだけど?歌の経験の浅い僕なんかがさっ!」
そう吐き捨てる様に言う真琴に
「確かに歌自体はそうかもしれませんがレムに聞きましたよ?
魔導戦士の貴女に幼い頃から呪文の詠唱をさせていたと…
貴女に女神の祭典出場が託された時点で既にちゃんと下地作りはされていたのかもしれませんね…とも」
そう言われて苦々しい表情で
「そんな事を言われても少しも嬉しく無いけどね…」
真琴はそう言って溜め息を吐くと憂鬱そそうに
「鬼百合さんだって立ちたく無い戦場くらいあるでしょ?尻尾巻いて逃げはしなくても…ね」
そう言って再び溜め息を吐く真琴に
「選ばれし乙女にのみ生涯にただ一度きり立つ事の許された特別な舞台なのを忘れないようにしなさい」
観月がそう諭すとユカも
「来年以降…命様と同じ年に出る子達が可哀想なんですよ?
女神と共にをソロで歌いこなせる命様に叶う者などそうそう居ないはず」
と、言えばユウも
「そう言った意味では命様が出られては祭典自体が盛り上がりませんから歌の高まりでハーモニー様の救出が叶わなくなりましょう」
と、漏らすと
「だな、何でもそーだが強すぎる奴の居る武道大会は白けるからな…
まぁ歌と躍りの稽古以外の全てをうっちゃらかしてるみこに練習量が叶うわけ無いからなっ♪」
そう笑って言う鬼百合に
「笑い事では有りませんよ、鬼百合様っ!最近は謡華さんのレッスンや巫女達に着ける踊りの稽古以外はアクエリアス様の結界に籠ってなさってますからどれ程の無茶をなさってるのか…
そう言って春蘭やミナと頭を抱えてるのですからねっ!」
そう言って睨むと観月が
「やはりみこは甘やかし過ぎたようですね?伯父様」
と、命に一番甘い国王を睨むとばつの悪い国王が姪から目を反らすのを見て溜め息を吐く王妃だった
そんな和やかな時も終わりを告げ
―持っていけっ!―
とばかりに花の娘から突き出された乾いた木の実を入れた袋を持たされ救出部隊が旅立った
隠れるように口を開く洞窟内に入るといきなり通路がよっつに別れていて取り敢えず右から命班、チサ班、嵐班と探索することにし先に進んだ
鬼百合の肩に乗るチサと瑞穂の肩に乗る命は微妙ではあるけどそんな命に
「命様鬼百合さんではなく私で良かったのですか?
瑞穂さんは未だわかります、貴女の霊玉を…修羅さんはチサ様に呼ばれた戦士なのだから…
ですが…何故命様が選んだのは私なのですか?」
そう聞かれた命は
「忍はみこ以外のチサちゃんやお姉ちゃんと親しくなれる時間有った?それにチサちゃんは初陣なんだよ?
そんなチサちゃんを託せるのは一緒に過ごした時間が一番長い鬼百合じゃない?
それに鬼百合ならいざとなったらチサちゃん抱えたまま戦えるよね?」
そう笑って答えると
「ならば嵐様のチームは?」
それまで黙って聞いていた瑞穂にそう聞かれた命は
「救出部隊で一番賢い嵐お姉さん、外にいる吽と連絡取れる阿と徒手空拳の喧火は狭いとこを苦にしない」
「臨機応変を求めたチーム編成?」
そう忍に聞かれた命は
「うん、みこ達はまこちゃんの出番に合わせなきゃいけないんだからね?
ただ敵をやっつければ良いって戦いじゃないからそれなりの対策立てとかないとダメだし接近戦を得意とする瑞穂と忍は逆に接近戦がペケなみこの側に居てみこを守って欲しいんだよ」
そう命に言われて
「運命は又しても私達に命様の側で戦えと言ってるんですね?」
そう言われてやっと納得出来た忍、誰が優れ劣っているではなく全体の戦略…おそらくは公女観月の発案だろうが命が嫌なら入口で勝手に再編してるはずなのだから
改めて気合いのはいる瑞穂と忍だった
忍が露払いを務め奥へ奥へと進む三人の前に現れた分岐点
暫くは通路の奥を睨んでいたものの溜め息を吐くと水球を飛ばし
「右に入って…」
とだけ告げる命に
「命様…今のは一体…」
そう呟く忍に
「あの水球は何も無ければ一里程飛んで消滅行き止まりならぶつかり破裂し又分岐点ならその場で暫くは漂ってるんだ
で、左は破裂して右は消滅したから取り敢えず右に行く事にしたんだよ」
と言ってる本人も余り理解して無さそうだからそれ以上の質問は止めて
「何故最初の分岐点では使わなかったのですか?」
その質問には
「迷宮を簡単に複雑化するならどうしたら良いかわかる?」
質問を質問で返され顔を見合わせる忍と瑞穂に答えを待つことなく
空間をねじ曲げて別の迷宮をくっつけちゃえば良いんだよ
そしてハーモニー様を封印する魔力に満ちたこの迷宮の中はみこでも元からの付け足された迷宮の区別が着かないから多分間違いなく四個とも消滅したか漂ってるかだよ
だって相手は救出のタイミング逃せば…時間稼ぎすれば良いんだからその為の工夫をしてあるんだろうからね
そー言って口をつぐみ見えない闇を睨むように視る命が
「おかしい、変…」
と、呟くと瑞穂も
「一本道の筈なのに同じ所をぐるぐる回ってるような…」
瑞穂のその言葉にやっと合点のいった命が
「歓迎のお出迎えも来たみたいだよ?」
そう言われ周囲に気を配る二人が同時に声を上げた
「黄泉蜂っ!」と…
だから命も
「近寄らせたら面倒だから…」
そう呟き
―八叉の黒竜炎っ!―
命の外見にそぐわない禍々しく凶悪な呪文を放つと
黒炎竜に喰らわれた通路の壁?に穴が開きさっきまで無かった道が見えた
「先にすすもー…」
そう呟くと忍と瑞穂も頷き進路を変えることにした
「あれは歌の国に生息するものではないはず?」
忍のその言葉に
「今のこの迷宮に外の常識なんか関係無いよ…忍」
そう言われて思い出し詫びる忍に