闇と影   作:春の雪舞い散る

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歌の女神の封印を解くために人々は持てる力を尽くし有るものは新たな力に目覚める、寝不足なだけですから


歌の女神の封印解きし時

「そんな事より周囲に気を配って、反省会は女神様を救出してからで良いからね」

そう命に言われて気を引き締めて歩く忍だった

しばらく三人が先を進むと命が溜め息を吐き

「又面どーなのが来た…」

そう呟くと

「忍、瑞穂…止まって」命の指示を不思議に思いながら立ち止まって様子を見る忍と瑞穂

すると自分達が今まさに踏み込もうとしていた所に泥人形達が湧き出て来るのが見え

「囲まれると面倒だから…」

―八青龍神っ!―

一気に泥人形達を浄化した命が難しい顔をして考え込んで居るのを見て瑞穂が

「浮かない顔をしてどうなさいましたか、命様?」

そう尋ねると

「どうやらハズレ引いたみたいだね?このルートは…」

そう言って目を閉じると霊気で周囲を探り始めたのを漠然と感じたから黙って見守っていると

ー八叉の黒竜炎っ!ー

と、呪文を放ちその先の通路に大きな空洞が現れると

「最後の通路、探索を始めよう…」

命にそう言われ先に進むことにした瑞穂と忍の二人に

「調査報告の通りこの迷宮にハーモニー様が封印されて居るのはわかりましたがそれが何故かわかりますか?」

その命の問い掛けに暫く考えてみたものそれでわかるのなら命に問われるまでも無い事

「黄泉蜂と泥人形、もう少し通路が広ければ良いですが本来黄泉蜂はホールにたむろし迷い込んだ獲物を襲うもの…

おかしく有りませんか?わざわざ自分達が不利になる狭い通路を飛び回るなど…

そして泥人形達不意を突かれ取り囲まれれば厄介な敵でも決められた範囲しか動けないし然程強いわけでも有りません

では、両者の役割はなんだと思いますか?」

再びの問い掛けにやはり答えられない二人に命は

「それは耳障りな音、黄泉蜂の羽音や泥人形達が動く時に発する泥が蠢く音

それらがハーモニー様のリズムを狂わせひいては神力の低下を招いたのでしょうから…」

そう言われて

「では、黄泉蜂と泥人形達が封印の鍵なのですか?」

そう逆に問い掛けると首を横に降り

「いいえ、そこまでの力は有りませんがいくらでも補充の効く両者は厄介な存在

封印の施術者の封印の一助に過ぎませんがたかが黄泉蜂たかが泥人形と言う油断で足元を掬われたのでしょう…」

命の話しを聞きながら歩く瑞穂と忍に

「どうやら番人らしい歓迎のお出迎えの登場の様ですね…」

嘲笑うように言う命に気分を害したその者達が

「精霊の巫女だかなんだか知らんがこんな小娘の相手を押し付けられるとは随分舐められたものだ…」

そー言って鼻を鳴らす土竜達に

「お前達の様に無自覚の愚者共にその様な事を言われる私は尚悲しい…と、しか言えぬ…」

そう言われていきり立った土竜が命に飛び掛かったけど

「私の拳は見てもらえたか?」

忍にそう言われた土竜は殴り飛ばされ白眼を剥いてるから勿論返事はないが言葉の出ない他の者達が目で捉えきれなかったのも言うまでも無いだろう…

怖じ気付く土竜達に苛立ちを隠す事無く

「鬱陶しい…」

と、吐き捨て睨むとさすがの土竜達のプライドも傷付いたらしく

「適当にあしらってやるだけのつもりがもう容赦せんっ!」

と、喚く土竜達とは対照的に

「私はお前達の相手をしてやるほど暇ではないのだから逃げるなら今のうちだ…」

そう声を掛けてから今日二発目の八叉の黒炎竜の高まりを感じる忍にも命の焦りが感じられ

(それほどまでに時間が無いのですか?命様…)

その忍の問い掛けに命も言葉ではなく

ー八叉の黒炎竜っ!ー

呪文の発動で答えた

黒炎竜の八首が絡まり合うように土竜達を平らげたけど浮かない表情で周囲の警戒を解く事はない

命の背後の空間が揺らめき中から現れた土竜に背後を取られたものの振り向くことなく右腕を突き出し

ー黒炎竜っ!ー

その呪文の発動が僅かに遅れた為命の右腕は土竜に噛み千切られ血を流していたけどそれには構わず勾玉を使い応急措置しながら

「囲まれた…」

命のその呟きに周囲を見回すと再び現れた土竜達に取り囲まれていたが更に土竜達の身体に変化が起こった

額に角が現れより凶暴に…より醜悪に姿が変わっていったのだ

「み、命様…あ、あれは一体…」

そう瑞穂が呻くと

「あれは土竜鬼、土竜が心の中の闇を解放した狂戦士

一度あの姿になると二度と元には戻れず命尽きるまで破壊の衝動にに突き動かされ荒れ狂う哀れな姿

それを哀れと感じるならば闇に囚われた肉体から魂を解放してあげなさい…

少なくとも私には現世であの者達を救う術を知らないのだから」

そう言って

ー八青龍神っ!ー

八首の青龍が土竜鬼達を呑み込み押し流して行き削り取られた壁面が崩れ落ち隠し部屋の様な巨大ホールが姿を表した

地を覆う泥人形達飛び交う黄泉蜂の群れを見て躊躇うことなく八青龍神の連射で間髪入れずに青竜牙を放ち

「その角に掴まると掴まりなさい、一気に飛び越します」

そう言ってホール中央の社前に降り立つと

「私はここで女神と共にを歌いハーモニー様の目覚めを促しますから後の事は任せます」

そう言って歌い始めた命は全くの無防備な状態を晒しているから泥人形も黄泉蜂も容赦なく襲い掛かってきた

無論瑞穂と忍もただ手をこまねいていた訳ではないが元を叩かねば無限に再生する泥人形とどれ程いるのか不明な黄泉蜂の前には多勢に無勢

頑張って何とかなるレベルの戦力差ではない命の身体に容赦無く食らい付く黄泉蜂の牙

守ろうと足掻く忍と瑞穂を遮る泥人形達を前に傷付いていく命を守れない己達の無力さを呪いながら戦い続ける二人だった

 

 

 

 

③媛と翔…花の娘とメイプル

 

祭典前の予想通りに優れた歌唱力を見せる雅の歌声にハーモニーも微睡み揺り動かされた

そして真琴の出番が訪れると闇の者達が動いた

ロイヤルボックスに現れた邪鬼達は王族達の護衛を見て鼻で笑うと

それを見て媛と翔も鼻で笑い返し

「王妃ハン、任しときアホなボクから見てももっとど阿呆な連中、ボクだけで十分やけど媛怒らしよったからちょチョイのチョイやわっ♪」

そう陽気に言って先頭に立つ邪鬼に一気に詰め寄るとその胸に左手を添え

「アンタら呼ばれとらんくせに何黙って入ってきとんねん?

人様んち入るとき入るはちゃんとお邪魔しますゆえてお母ちゃんにゆわれてへんのか?」

その翔の物言いをへらへら笑って聞いていた邪鬼達は気付けなかった

春蘭達が翔の喋くりで緊張感から解放された事を

「味噌汁で面洗って出直してこんかいっ!」

そう叫ぶと邪鬼の身体は一瞬で凍り付き砕け散ると媛の氷の矢を受けた邪鬼達も砕け散りそれを機に春蘭達の反撃が始まり形成は一気に逆転し邪鬼達を駆逐し始めた

その引き金を引いた翔が媛を見て

「媛、まさかたぁ思うけどさっきの技…あれが限界ちゅー笑えん冗談は言わへんやろね?

せやなかったら今歌っとる真琴の景気付けにでっかい氷の花火打ち上げたろやないの?

祭典を盛り上げたる為にもっ♪」

そうおどけて言う翔に頷くと窓の外に飛び出し魔力を高めると氷の大豪弓を錬成し翔も小鳥の姿に代わり媛の前で息を吸い込み始め…

それにより急激に低下した媛の前の空気により媛の魔力の高まりは加速して氷の矢はミサイルの如く巨大化していった

ーほなボチボチかましたろか?ー

翔の呼び掛けにーうんー媛がそう返事すると音も無く放たれた矢

巨大な矢ではあるけど愚か者達は容易にかわせるつもりだった

目前迄迫る矢が炸裂する迄は

そう、翔が花火と言った通りにまるで花火の様に炸裂しその破片が闇の者達を襲い触れた者達を凍結し砕け散り雪となって舞い落ちた

それを見て迎撃分隊が一斉に動いた

黒炎竜黒い炎を纏った矢を矢継ぎ早に矢を放つ吽、モリオン

先陣を切って敵の群れに飛び込む海斗と炎の火水コンビ

その若き騎士達のバックアップの翼、沙霧、斬刃

それでも敵の数は多かった

個々の戦力差を引っくり返す程の数の違いが有った

ーアカンな、あっちもそっちも

ボクは迎撃部隊の応援行くさかい媛は真琴のほー頼むわっ!ー

そう叫ぶ翔に向かって

―駄鳥…許す、けものを濃き使えっ!獣、駄鳥のゆー事ちゃんと聞いてたまには役に立てっ!―

そう言われて

―馬花の娘煩いっ!―

そう笑いながら返事を返す翔だった

そう言いつつ翔が向かった先は大樹の元で

ー大樹、ボクの背に乗れる度胸あんなら迎撃部隊の所案内したる

ボクと一緒に戦えるかっ!?ー

その翔の呼び掛けに

「逆に俺の方が頼む事じゃないのか?海斗と炎の居る所に連れていってくれっ!とね…ヨロシク頼む、翔」

そう言ってその背に飛び乗ると迎撃部隊に合流した

更なる進化を遂げた翔と騎乗の修行と剣の修行を平行してこなさければならなかった海斗と炎に比べて剣の修行に専念した大樹

まして手綱を持たねばならぬ二人に比べ両手がフリーの大樹の加勢で形成は逆転した

翔の参戦は翔の槍の参戦も意味し自在に飛び回り敵を切り裂き魔力や熱を奪い時にはその蓄えた熱で敵を焼き払った

そうなれば数を頼みの団結力の無い軍に耐性はなく一気に態勢は逆転し侵略者達は散り散りに逃げ始めた

勿論油断は禁物でも一応舞台を守りきれたようだった

しかしそうなると問題は真琴でやはり時間が足りなかったのは門外漢の媛にも女神を揺り起こすどころか雅にも敵いそうになかった

真琴の魔力、歌の…祈りの力が高まりを見せず既に歌の後半に入っていたけど作戦が失敗する…そんな焦りに支配される真琴

ーどうすれば…どうしたら…あっ…ー

有ることを思い出し雅の元に行き

ー歌って、貴女の歌声を響かせてー

そう頭の中に響く声を聞き

「私が歌えば彼女は失格になってしまいますよ?」

雅のその言葉に

「そんな事っ!」

何の前触れもなく発した自分の声に驚きつつ

「そんな事、と言っては申し訳ないけど真琴達の目的は祭典による歌と祈りの高まりの力で歌の女神、ハーモニー様を解放する事

勿論優勝を狙えるだけの力が無きゃ女神様を揺り起こせないけどここに来て経験不足が出てしまいこのままじゃ…」

納得仕切れない雅の説得を諦め真琴の頭上を舞い

ー今こそ歌の女神、ハーモニー様の復活の時

戦士達も封印されし地に赴き闇の者との戦いを繰り広げてるはず

私達は今ここで歌の力、祈りの力を集結しハーモニー様を縛る闇の者の封印を打ち破る時

だからお願いっ!皆祈って、祈りの力を巫女達に貸して、ハーモニー様の為に、この国に守り神が帰ってきてくださる為に

皆自身が祈らなきゃダメなんだよっ!ー

その媛の訴えにロイヤルボックスに居る花の娘が…春蘭達が、舞台周りのミナ達が…見習いの侍女や見習い騎士達が祈り始め徐々に会場全体に広がり祈りの力が高まりつつあった

 

(来たっ…)

歌の力、祈りの高まりを力に変えハーモニーを縛る封印を打ち破ると解放されたハーモニーの力により迷宮内の闇は払われ

ーアクエリアスとその巫女…そしてその従者よ感謝しますが私は急ぎ私のせねばならぬ事をしにいきます

従者よこれを預けますから巫女に渡しなさい、頼みますよー

そう言って慌ただしく消え去ると同時に崩れ落ちた命

ハーモニーが残したドレスは長く日の目を見ることはなかった

 

真琴、媛、雅の三人の歌姫の声が響き渡る会場に奇跡が…女神がついにその姿を人々の前に現した

ー雅、真琴、媛、三人の歌声と皆の祈りの力が私を封印から解き放ってくれました、感謝すると共に雅よ…我が依り代となりて歌声を響かせなさいー

その突然すぎる女神の指名に戸惑いを隠せない雅が

「わ、私にその様な大役務める自信は有りません…」

呟く様に答える雅に

ー人は自信が有るから使命に挑むわけではありませんし同様に真琴は命を守る自信が有るから守るのですか?ー

そう問われた真琴は首を横に降って

「違います、私が命を守りたいから守るんです」

そう答える真琴を見詰める雅に

ー中途半端な自信は慢心の元、私はそれが元で闇の者に封印されると言う憂き目を見たのですからね?

ーそう告げられた雅が考え込むと更に

ーそれに雅、貴女は決して一人ではないのですよ?

そうですね?二人の依り代達よ?ー

その問い掛けにロイヤルボックスから降りて来た観月とユイが

「私達は勿論精霊の巫女達やその守護者の戦士達も貴女を守る力になってくれますよ、そうですね?」 観月の問い掛けに舞台周りの巫女達や見習い騎士達が頷くと

「勿論私達も…」

そう言って舞台に降り立つ翼と戦士達に凖騎士達に翼に抱かれた翔に一同の視線が集まるの気付き

「ぼ、ボクみたくどんくっさいのんが守るとかゆーたらめっさ嘘臭いやん?

まぁゆーてくれたらパシり位ならしたるでゆーてや」

その翔の言葉に

「ぷっ、ヨチヨチ歩きの翔にお使い?」

吹き出して笑う真琴に

「華やかな舞台に野暮やから翼…お姉ちゃんに抱っこしてもろてるだけで…チョイ来てんか?」

そう言って呼び出した槍に横座りしてまるで魔法の箒の様に宙を滑って見せる翔に

「えーやろ?みこ…お姉ちゃんにもろてんねんで?」

そう言われて溜め息吐く真琴と異なる溜め息を吐くユウとユカ

「まぁそーゆー訳やからボクの事は翔って呼んだってや、歌のお姉さん」

そう言って笑うと

ーわかりましたね?皆、貴女を既に依り代として受け入れてます

それに貴女の歌声にはそれだけの力があると認めての判断だと言う事を忘れるのではありませんよ?ー

その言葉に観月が

「私とて依り代としての自信などありませんよ?」

そう話し掛けるとユイも

「それを言うなら私はもっとありませんよ?観月様の様に生まれた時からの宿命を持った者でも無ければ雅様の様に特別な才能を持ってもいません

そんな私でも必要と言ってくださる方達や守ってくださる方達もいます

ですから貴女もその一人になれば良いのです

歌による祈りの力を感じませんでしたか?

歌の女神の依り代…要するにリードボーカル…そう思えば良いのではありませんか?難しく考えずとも」

その言葉に雅も

「私の才能とて特別な物ではありませんが…廻り合わせとしか言い様が無いのでしょうね…

ハーモニー様の依り代として私を         お導きください

観月様、ユイ様、先輩の依り代として私のご指導をヨロシクお願いします

そして皆様の力を私にもお貸しください」

そう言って頭を下げると

ー我が依り代となり運命を受け入れた乙女の為に祈ってください

雅、歌いなさい…真琴と媛も共に…お願いできますね?ー

ハーモニーの言葉に答え会場に三人の歌声が流れる中人々の祈りが再び高まりを見せると

ーさぁ左手を高く掲げなさいー

そう言われて差し出す手に口付けを落とすと雅の中に吸い込まれていったハーモニー

ー受け取りなさい依り代と私の認めし歌姫達よ、私の祝福のドレスをー

そう言って舞い降りてきたドレスを三人の歌姫が受け取るとアリアが舞台に上がり

「今より審査を始めますから歌姫達は今頂いたドレスに着替えて来なさい」

そう言われて一旦退場する三人の歌姫達だが話し合うまでもなく結果は決まりきっていた

ただ単に祝福のドレスを着た三人の姿が見たいからそう言っただけで三人の再登場を待ち発表された

女神の依り代の雅が優勝、真琴に最優秀賞が与えられ他人事の媛が吽の頭にもたれ寛でいると舞台に呼ばれ

「出演者では有りませんがこの歌姫の呼び掛けがあればこそのハーモニー様の復活、違いますか?」

そう真琴に問うと真琴も

「その通りです、私一人ではまだまだ実力不足でしたから…」

そう答えるのを聞き

「今回は特別審査委員賞とし声が本調子に戻り出場する日を楽しみに待ちますよ」

そう言われて目をしばたかせる媛を優しく見守るアリアだった

 

 

 

 

④後夜祭?

 

守護神、歌の女神の降臨と依り代と女神の祝福を受けた二人の歌姫達の誕生により大盛況の内に幕を閉じた女神の祭典の表舞台

その一方で一般の国民には全く知らされる事の無い闇との真の闘いとその闘いで命が大ケガを負ったこと等知らせる訳にはいかないことだった

極秘裏に王宮に運ばれた命は王妃の部屋で寝かされている

国王への帰還報告を終え戦士達を労う王妃に少々気掛かりなことがあり一同を集めていた

嵐と忍、瑞穂の三人の様子が気になったからで自ら口を開くのを待つ王妃を見て三人は頷きあい

「このみこの状況で報告をすべきか迷いましたが私がぐずぐず言った所でみこの状態が良くなるわけでも無いので報告を致しますが…

基本的には公女宮の騎士ですから観月様への報告となります

私は先程の闘いの最中に鋼の精様の巫女に選ばれ精霊の巫女となりました

私の場合どちらかと言えば精霊の騎士、巫女達の騎士に近い存在かもしれませんが…」

その報告を聞いた王妃は

「精霊の巫女ならばもっと積極的にドレスを着るよう依り代様よりご指導願えますか?」

王妃の言葉にこもる皮肉が勿論嵐に向けられてる事位わかる観月もまた

「これまでの巫女達と異なるタイプの巫女ゆえモデルをしてもらう機会も多いでしょうからご期待ください」

そう言って嵐に頭を抱えさせた

そして忍と瑞穂の番になり

「本来であれば真琴様も私達からより命様ご自身の口から聞きたい話だとは思いますが…」

躊躇い言葉の途切れた瑞穂に代わり

「特に口止めされた訳では有りませんから私達の判断でお話しします

皆様も気になっていた媛の正体…それは二人に別れた命様の片割れで言われてみれば…ですね?」

忍の言葉通りで記憶喪失の媛には隠す意図がないから少し見ているとわかる程に命と同じ癖を持っている

それに歌の踊りの才能も媛の出現した時期を考え合わせれば命の時に習得しているのだから何の不思議もない

ましてや真琴が感じた他人とは思えない親近感もやはりそう言うことかと納得するだけの事

「命様が仰るには媛はまこちゃんと共に育ったオリジナルの命であり黒魔導師の前世を持つ魔女

だから媛の記憶が戻ると言う事はまこちゃんのみこが帰ってくる事なんだから楽しみにしてと言われました」

ここで一息忍と代わり瑞穂が

「みこは精霊の巫女として在るべき存在でありみこはみこなんだよ…

と、命様ご自身の事は余りよくわからない説明しか聞いてませんが媛についてはこうも仰いました

闇の者達の中には私の前世の黒き魔女の霊と血を欲していると

ましてや吸血鬼共からしたら今の私はあれらの好む穢れを知らぬ生娘にして精霊の巫女

事実はともかく私達を精霊ごと喰らえば精霊の力を得られると信じる等とふざけた思想が広がっている今魔女の霊と血を隠す必要があります…」

その説明に頷き

「その為の氷雨の精…なんだね?」

そう聞かれて二人は頷き

「氷雨の精の冷気で閉じ込めましたが結果は媛から記憶と声を奪ってしまい何と詫びればよいのかわかりません」

その言葉に真琴は

「そんなこと謝られるよりせめて僕にだけは教えて欲しかった、僕にだけは…

理屈はわかる、アクエリアス様も交えて話し合って決めたんだろうしね…」

そう言ってキツく拳を握りしめ肩を震わせる真琴に

「命様は話の最後にこうも仰いました

最悪でも巫女とアクエリアス様は逃げて頂きますから二人もそのつもりで頼みますよ…と

それが私達に話してくださった全てであり命様をお守り出来なかった私達の懺悔です」

そう言って俯く二人に

「誰も二人を責め無いから気にしないでむしろ責められるべきはみこで貴女達には詫びるべきかもしれないんだからね…」

そう済まなそうに言う真琴に

「反省も大事ですが真琴に問いますがこの先の媛の扱いをどうするつもりなんですか?」

そう王妃に問われた真琴は

「僕はこれからも変わらず媛と呼ぶけどそれは媛を否定するからじゃなくその方が混乱しなくて済むからでどっちも僕のみこであるのは間違い無いんだからね」

その真琴の答えに笑顔を浮かべ

「では私達ももう貴女達同様に一人の娘として扱いましょう」

そう言って観月を見て

「貴女はどうしますか?観月」

王妃の言葉に考え込む観月は

「飛べるからといつまでも裸足でいさせるのは可哀想ですから靴を何とかしてあげたいですね」

そう答えるのを聞いた真琴が

「観月姉さん、そう言う問題じゃ無いはず…」

そう責めるような口調の真琴に

「真琴、観月は媛を媛として受け入れるからこそ媛の靴…ファッションを気にするのですよ?」

そう笑って言うとチサも

「十六夜お兄さんとユイお姉さん達の婚約披露宴や婚礼の儀の際にまた今回のように媛のファッションコンテストを開いてはどうでしょうか?」

そのチサの提案を聞いて

「特注品が必要なのは翔も同じであの娘も一緒に募集してはどうですか?」

その二人の意見を聞いた観月は

「そうですね、今回も有望なデザイナーがいましたし未々この先の成長を期待できそうな者もいましたからね」

そう笑顔で答える観月に

「だけどみこ以上に不器用な翔が服貰っても仕方無い気もするんだけど?」

そう笑って言う真琴に

「それはユウさんの前で言っちゃダメだよ、真琴ちゃん…

翔ちゃんベッタリのユウさんはまるっきり翔ちゃんのママみたい振る舞ってますからねっ、鬼百合さんっ♪」

そうチサに振られた鬼百合は苦々しそうに

「みこにとってのミナ以上に甘いからな、真琴が心配しなくてもユウの奴が喜んで世話するさ…」

と、鬼百合が呆れて言うのを聞いた観月が

「翔のお陰でユウから解放されてる貴女がそれを言いますか?」

そう笑って言われて益々苦い顔の鬼百合だがその一同の目線の先を命の診察を終え帰る医師と宮廷医の見送る春蘭が歩くのが見え暫くの後に命の元に急ぐ春蘭を見掛けた観月が春蘭を呼び止め

「先生はなんと仰いましたか?」

そう問い掛けると

「相変わらずの自己治癒力で怪我自体は問題有りませんが右手の完治は時間が掛かるかもしれないと…

ですがそれ以上の問題は皆様もご承知の貧血の悪化で出血や傷の再生で又多くの血を失ったみたいだと言っておられましたから…

後はやはり怪我から来る発熱の為の解熱剤を処方して頂きましたので飲ませるのと水分補給をこまめにするように言われました」

そう報告を受け

「伯母様は公務にお戻りください、何かあれば連絡します

真琴、翼、チサは晩餐迄休みなさい

特に真琴には雅さんの接待役を任せますから頼みますよ

春蘭はミナと晩餐迄休み今夜は二人でみこを頼みますよ

熱については媛に協力してもらいなさい」

そう指示を受け真琴と春蘭は

「はい、わかりました」

そう素直に答えたのに対して翼とチサは観月を見ながら

「疲れて居るのは観月姉さんも同じ…いえ、観月姉さんこそが一番お疲れのはず…」

そう言われて

「私もみこの様子と雅さんの受け入れの指示を出してから休ませてもらいますし夜も早めに引き上げさせてもらいます

明日こそ私が抜けるわけにはいきませんから今夜は翼に私の代理を任せますし媛と翔の事はチサに任せます」




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