闇と影   作:春の雪舞い散る

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戦いの爪痕は決して小さくなかったけれども水の精霊の舞姫の歩みは止まらない


後夜祭、戦勝祝い

そう言われても未々納得はしきれないけど観月なりの譲歩はわかったので二人も承知して「わかりました」そう答える二人だった

「後、伯母様…いえ、王妃様にお願いと言いますか歌の女神の依り代の雅さんの専任にマサミをしたいのですが?」

そう言われて

「その辺りのことは貴女の判断に任せますが貴女にそう言ってもらえる成長をしてくれたんですね?マサミも…」

その王妃の呟きに

「マイやマキ達を羨ましがりいじけるより自分だって…そう言って頑張った結果ですからね」

そう答え春蘭を見て

「私も王女宮に戻りますからついてきなさい」

そう言って春蘭を伴いその場を後にする観月の後ろ姿を心配そうに見送る翼とチサだった

 

「命が眠る王妃の部屋の従者の控え室には雪華が自習しながらなみと美輝の勉強を見ていた」

観月の入室に気付いた雪華が

「命様の容態は落ち着いてますから待機の私達は自習しながら待ちなさいとマイさんが…

ミナさんも翔ちゃんのエプロン作ってますし」

そう言われて

「翔のエプロン?」

そう聞き返された雪華は

「お手伝いの為ではなく食事の時に着けさせたいってユウ様が言ってましたからってミナさんに話してたら

マイさんが命様は私が見てますからミナさんは私達の出来ないことをお願いします…って」

そう話を聞いていると完成品を持って現れたミナが観月に差し出したそれは麦が媛に初めて作ったワンピースの発展系

洒落たデザインのレースで縁取られた可愛いくお洒落な物で

「赤は翔に青は媛に渡しなさい、それと命の分も頼みますよ

勿論若月から出して良いですね?」

そう問われたミナは畏まって

「はい、それは勿論です」

そう相変わらず固い口調のミナに

「貴女はもう立派な美月の一員なのだからもう少しくだけなさい…」

溜め息を吐きながらそう観月が言うと

「その生真面目なところがミナさんの良い所ですから…

旅の途中ユカ様にも敬語を何度も指摘されてましたから…」

と、春蘭にまでも苦笑いしながら言われるミナ

「取り敢えずミナは春蘭と晩餐まで休憩を取り今夜はみこを頼みますよ」

そう告げるとなみが

「観月様にお願いがあります」

そう言って頭を下げるなみに

「なんですか?頭を上げ言ってみなさい」

そう言われて頭を上げたなみが

「今日の晩餐は祭典の成功と女神様の無事解放出来たお祝いであり慰労の物って聞いてます

なら精霊の巫女として頑張ったミナさん、春蘭さん、媛ちゃんが出席できないのは変です」

そう一気に話すなみに感謝しながら

「私達見習いの侍女は晩餐の間は自習ですから勉強しながら命様を見守りますから三人も晩餐の出席をお許しください」

そう言って頭を下げる三人に

言葉に詰まる春蘭とミナに

「姉さん、ミナさん、私達は仲間…なんでしょ?」

その雪華の言葉に

「良く言ってくれました、二人の成長を嬉しく思います

私には指示を待つだけの者は必要ありません

状況は刻一刻と変わるもの…

私が最善と考えた物がいつまでも最善とは限りませんからその時々に応じ正しいと思う事を提言しなさい

ミナ、媛と翔のお揃いの姿を楽しみにしてますからね

それと美輝は媛に付き添い春蘭は美輝をミナは媛を見守りなさい

翔は王妃が手元に置くでしょうからね

春蘭とミナは留美菜とりんに手伝わせ精霊の巫女達のドレスを用意し手伝いなさい

みこの事は晩餐が終わってから任せますし媛と留美菜の二人の氷雨の精を控えさせるようにします

今日は兵達の労をねぎらいますから侍女達の手も空いてませんから貴女達に期待します、みこの事頼みますよ

私は王女宮に行きますから後は任せます」そう言って部屋を出る観月だった

 

観月が王女宮の五階の茶室に入ると雅が翔の頭を撫でながらお茶を飲んでいた

「あ、観月様…」

そう言って立ち上がろうとする雅に

「観月はんはそないケチ臭ないし、本人かてお茶の一杯も飲みたいからお姉さんにここに来てもろてんで?」

そう言われて

「そう言う事ですからお掛けください今新しいお茶が来ますから」

そう言うとの自らも腰を下ろし

「翔は宮廷に慣れない雅さんのガイドの役目を頼みますよ?」

魔力が戻り翔べるようになった翔が大人しく晩餐に出るわけ無いから雅には悪いがダシになってもらっている

「お姉さんもボクが居った方がえーて思う?」

そう聞かれて話しやすい翔が側に居てくれた方がありがたいから

「ええ、居てくれたら嬉しいですよ?」

そう答えられたから

「ボク皆とちごてお行儀悪いんは勘弁したってや?」

と言われ驚く雅と

「だから…小さな貴女は気にしなくてよろしい、本当に気にして欲しい方は他に居ますからね

まぁ、言うだけ無駄でしょうから言いませんが…」

そう話しているとお茶を持って来た深潮と化粧箱を持って来たユキが部屋に入ってきてついで部屋の支度を終えたマサミが入ってきた

「観月様お茶の支度が整いました、雅様もお代わり如何ですか?」

深潮がそう二人に尋ねると

「ユキとマサミ…それに自分のも淹れて一息入れなさい」

そう言われて雅にも

「よろしくお願いします」

そう言われて五人分のお茶を淹れると暫しのティータイムで飲み終えた観月がまず

「ユキ、用意した物を雅さんにお渡ししなさい」

そう言われて化粧箱を渡すと受け取った雅が箱を開けて中を見ると明らかに美月のイブニングドレスが入っていて

(このドレス、私の何年分の収入になるのでしょうか?)

そう考えながら

「このドレスがどうかしましたでしょうか?」

そう尋ねる雅に観月は

「今夜の晩餐で貴女に着ていただくため用意した物でこれは貴女であって貴女ではない

女神の依り代に贈る物なんですから遠慮は要りませんから是非着てください

それがこのドレスの製作者の喜びでも有り願いでも有るのですからね」

そうあらかじめ断りの言葉を封じておき見せられたのは小さな女の子用の袖無しのワンピースらしくその元は白かっただろうその一着

持ち主が余程気に入っていたらしく無作為に貼られたワッペンは補修の跡らしいけどそれを差し引いてさえ宮廷には不釣り合いな地味なデザインで…

観月の意図が見えない雅が首を捻っていると

「これは命が未だ水の精霊の巫女である事を伏せ又若月が計画段階だった頃に試験的にユカが命の為に作った物のひとつ

それを気に入っていた命が踊りを習い始めてからは練習着のひとつとして着ていた物で恐らくみこが一番よく着ていた物でしょうね…

勿論これを着て王宮内を歩き回ってたんですから雅さんも…」

その言葉に慌てて

「観月様、私が王宮内を歩き回るとか意味がわかりません…」

狼狽えて観月に訴える雅だけどユキが笑いながら

「観月様、ちゃんと順序だててお話ししなければ雅様もお困りのようですよ?

雅様に王女宮のご用意致しましたから今日より王女宮の最上階の一員として生活していただきたいのです

そうしていただく事により女神の依り代の貴女の身の安全を確保したいのです」

そのユキの説明についていけない雅が

「祭典も終わりましたから王都を離れ郷里にでも帰ろうかと思ってましたのに…」

そう答える雅に

「郷里に帰らねばならない理由をお聞きして良いですか?」

そう聞かれて特に理由はなく

「物価の高い王都の滞在で貯えも底を尽きそうだから田舎で歌の指導でも始めようと漠然と考えていただけですから…

両親も既に他界してますから特に郷里に拘りはありませんが…」

そう答えると

「貴女に仕事の依頼を致します、王女宮代表の私と王妃より要請しますが見習いの侍女および幼い精霊の巫女達の歌の指導をお願いします…特に見習いの侍女達に」

そう言われて更に焦る雅は

「ま、真琴王女様がご指導なさらないのでしょうか?」

その予測の範囲内の問い掛けに

「雅さんがそう仰ってますが王女の考えを聞いて良いですか?」

そう観月に言われて苦笑いを浮かべ部屋に入ってきた真琴が雅を見て

「本来の僕は魔剣振るって戦う魔導剣士で祭典が終わった今は剣の修行を再開したいし前から興味の有った踊りの修行も始めたい

僕の中では歌は既に一区切りついてるんですよ

それにね、雅さん…貴女が教えることに意味が有るんですよ?女神の依り代の貴女が教えることにね

だってこの国は歌の女神の部の民が住まう地なのだからね」

そう言われて女神の依り代と出会い共に歌う事を夢見た幼い頃を思い出し

「わかりました、歌の指導の経験はありませんが私なりに頑張ります

ですが、未熟な指導者の私は…」

そう言って顔を曇らせる雅に観月は

「精霊の巫女達は皆美月のモデルスタッフですから勿論貴女にもモデルを務めてもらいますが

命も他国への訪問行脚が始まりますから公式行事の歌の奉納などの歌姫の仕事もこなしていただきますから心配無用ですからね」

そう言われて

「最後にこのマサミが貴女のお世話担当する者です、マサミも頼みますよ

早速部屋に案内し部屋の説明の後に晩餐の支度の手伝いをしなさい、よろしいですね」

そう指示を受け

「雅様、未々至らぬ所はありますが誠心誠意お仕えしますのでどうぞよろしくお願いします」

そう頭を下げるマサミに

「私も新たに学ばねばならない事が急に増えましたから共に成長して行きましょう」

そう言われて感激し声をつまらせるマサミに

「雅さんの荷物は僕が持つから案内よろしくね」

そう言って退出を促し観月も暫しの休憩を取ることにした

 

自室に戻る観月を見送り雪華達の元にユキが現れ

「観月様が貴女達の事を喜んでましたよ、ユウとユカも喜んでましたしね

ですから今夜はそのご褒美に私達四人が貴女達の夕飯に腕を振るいましょう

四人でフルコースとまではいきませんが私達の気持ちです」

と、言われ

「私達は皆様の教えて頂いたことをなんとか頑張ってみただけですから…」

そう答える雪華に

「それでも出来ない者は出来ませんし貴女達もいつの日か指導をする側になれば今の私達の喜びが理解出来ます

ですから今夜は深く考えずに料理を食べ又明日からの勉強を頑張りなさい、よろしいですね?

私達は王女宮の四階厨房に居ますから何かあったらそこに連絡しなさい」

そう言って部屋を出ていったユキの足取りは軽かった

 

「歌の女神の依り代と女神の祝福を受けし二人の歌姫に乾杯」

命の負傷を苦にする戦士達を気遣い国王がそう乾杯の音頭を取ると

「風華、ちと付き合いな」

鬼百合にそう声を掛けられ何事かと身構えるのを見た陸軍将軍に

「下士官達が貴女が来るのを待っているだけだ」

笑って告げると

「爺さん、そいつは秘密の約束だろうが?」

そう言って肩を竦め

「言っちまったもんはしょーがねぇ、天馬に跨がり戦うお前の姿は下士官や兵士達の目にはまさに戦の女神なんだからよ

今日頑張った奴等にとり今夜の宴にお前が顔を見せる以上の褒美はねぇ、だな?爺さん」

そう言われた将軍も笑いながら

「背を預け共に戦える程若くないこの身が恨めしく若い者達が羨ましい

が、翼王女様…貴女の騎士殿を我が兵達にお借りしてよろしいかな?」

そう尋ねられた翼は笑顔を浮かべ

「勿論、兵士の皆さんを労ってくださいますね?」

そう告げると真琴も

「僕達がみこの笑顔の為に戦う…その思いが彼等にとり貴女の笑顔がそれならそれ以上の褒美は確かに無いだろうね」

と、言い

「うむ、私に代わり皆を労って欲しいからよろしく頼む」

国王も告げたから

「ほれ、国王も言ってるんだからここで尻込みしてちゃ女が廃るぜ?」

そう笑って風華を連れて退けする鬼百合が出て行くと暫くは静かだった晩餐

何処からともなく白銀の光が現れ

ー美輝、可愛い媛の為に霊力(ちから)が欲しいとは思いませんか?

もし霊力(ちから)を望むのなら私を…霊力(ちから)を受け入れなさいー

ー留美菜、可愛い媛の為私も受け入れ更に強力な冷気を身に纏いなさいー

二人の氷雨の精が受け入れを求めて現れたが勿論迷う理由等何も無い二人の返事は決まっていて左の手を掲げ

「お導きください、氷雨精様…」

そう言って受け入れの要請に応える留美菜の手を取ると契約を交わした氷雨の精は留美菜の中で融合し氷精へと進化

それに触発された媛の氷雨の精も氷の精へと進化を遂げた

その一方で左の手を上げながらも不安は拭えない美輝を勇気づけたのは媛の小さな手が自分の手を握ってくれたから

その手の温もりを失いたくない、守りたい…そう思ったからその手を握り返すと

「媛を守りたい、媛と共に居たいから私に霊力をください

媛と居られるよう私をお導きください」

そう言って強く願って目を閉じた

氷雨の精は微笑を浮かべ契約を交わすと美輝の中に入っていき氷雨の精の巫女が又一人誕生した

 

時を同じくして料理を作るユカ達の元に菜月駆け込んできた

「命様に何か?」

その落ち着いたユカの問い掛けに菜月も深呼吸を数度してから

「いいえ命様にではなく潮溜まりの精と花の精と名乗られた精霊様が深潮さんとはなちゃんの前に現れて…」

泣き出しそうな顔で話す菜月に

「二人が巫女に選ばれたんですね?」

そう聞かれて頷くと

「二人ともそのまま倒れちゃって意識も無いみたいだから私心配になって…」

そう訴えるとやはり落ち着いた声で

「雪華はなんと言ってるのです?」

そう聞かれて

「雪華さんは脈拍は正常だし呼吸に乱れも無いから大丈夫って…でも…」

そう涙ぐむ菜月に

「わかりました、私が様子を見て大丈夫でなかったらお医者さんを呼びますから落ち着きなさい

ユキはこの事を王妃様に報告して、その間料理を頼みますよ、ユウ、ユミ」

そう言って菜月を連れて出るユカと王妃の元に向かうユキが王妃の元に来たのはようやく美輝が落ち着けた頃で王妃にそっと近付き

「ご報告します」

命の容態の急変を懸念する王妃に微笑みながら

「いいえ、命様の事ではなく深潮とはなが潮溜まりの精と花の精の巫女に選ばれました

ユカが二人の様子を見に行ってますから私も未だ詳しくは存じませんから必要なら後程ユカに報告させますが?」

と、言われ

「貴女達の判断に任せます」

そう観月に言われ

「たった今ユキから重大な報告が有りました

未だ詳しくは聞いてませんが春蘭、弥空、貴女達の妹の深潮

そしてりんと留美菜、貴女達のお友達のはなの二人が精霊の巫女に選ばれた…と」

そう発表すると国王も興奮し

「なんと更に二人の巫女が遣わされたのかっ!」

そう叫ぶほどで

「更に?」

と、呟くユキに観月が

「こちらでは留美菜が二人めの氷雨の精を受け入れ氷の精の巫女となり美輝が新たに氷雨の精の巫女に選ばれました」

そう説明されたユキは

「それで美輝が腰掛けていたんですね?休ませるために…」

そう言って納得すると

「わかりました、ユウに言って精霊の巫女のドレス急がせます

モタモタしてたら私が代わりにデザインしてあげようか?ってハッパ掛けときますねっ♪」

そう笑って言い

「では私は戻り見習いの子達の料理を作りますから失礼します」

そう言って頭を下げると国王と観月が頷き王妃が

「頼みますよ」

そう声を掛けるともう一度頭を下げて退出した

 

 

 

⑤二人の人魚媛

 

医師の見立て通りに深夜近くになる頃熱が出始めかなりの高熱になったものの春蘭とミナの献身的な看護と媛と留美菜が交代で熱を冷ましたお陰で明け方にはすっかり回復した命

春蘭とミナには休ませマイに手伝わせて服を着替えると

「お兄ちゃん誘ってお散歩しよっ♪」

そう声を掛けると二人で出掛けた

そんな二人が真琴の部屋に着いたのは部屋に未だ佐馴染めず落ち着けない雅を部屋に招き入れる所で

「ふーん、お兄ちゃん誘って散歩しようって思って来たけどお邪魔みたいだから二人でいこ、媛」

そう言って方向を変える命と媛に

「ばっ、バカっ!僕は鬼百合さんじゃない

だからね」

(今お兄ちゃんって?)

命の言葉と真琴の反応に驚いた雅が二人をそっと見守っていると

命の顔をじっと見詰めながら心配そうに

「そんな事よりもう起きても平気なの?」

そう言葉を続けると

「春蘭とミナ、媛と留美菜のお陰だよ…」

そう言って固定された腕を見る表情は寂しそうで

「治るのに時間掛かるんだってね?」

そう言われて

「ちゃんと治るのかな…手の感覚全然無いんだけど…」

そう呟く命に

「そう感覚が無いんだ…」

そう言われて

「うん…こっから先が無いみたい感じなんだよ」

そう言って命が指差したところは土竜鬼に噛みきられた所で土竜鬼の呪いとでも言うのか神経組織の回復がはかばかしくないからだ

医者は怪我その物は問題なく完治するだろうが見た目とは裏腹に冷えきって反応が無い右手の機能が回復迄は確信が持てない

人智を超えた精霊の巫女の事を決めつける程愚かでも傲慢でも無いからだ

例え無責任だと言われようと治るだろうが時間が掛かるかもしれないと言うのは医者としての経験からくる勘としか言い様が無いのだ

そんな訳だから右手を見る表情は暗く悲しみに満ちていた

だから取り敢えず気分を変えようと

「みこ、この方は雅さんと言って歌の女神の依り代になられた方だよ、ご挨拶は?」

そう真琴から紹介された命は

「真琴お兄ちゃんの妹のみこです、よろしくお願いします」

そう言ってペコリと頭を下げたのだけど雅の方は

(真琴お兄ちゃん?)

と益々混乱したまま

「お初にお目にかかります、命様」

そう言って頭を下げる雅だったけど何故か命は不機嫌そうで訳がわからない雅が

「如何なさいましたか命様…」

そこで雅の言葉は遮られ

「雅さんは観月お姉さんとおんなし女神様なんだからみこ、でいーんだよ?

まこちゃんの事も真琴様ってゆってるの?チサちゃんや翼お姉ちゃん事も?」

そう命に聞かれ

「いいえ、まだお二人とはお話ししてませんし真琴様の事は真琴さんで言いと仰っていただいてますから…」

そう答えると真琴が笑って

「みこ、いきなり呼び捨ては難しいから僕も真琴さんで妥協したんだからみこも先生や姐さんが呼んでるみたいにみこちゃんなら良いんじゃ無い?」

そう言って雅を見て

「雅さんもみこちゃんなら大丈夫でしょ?」

そう真琴に聞かれ命も期待の眼差しで自分を見詰めているから

「みこちゃん…」

そう呼んでみたら

「なぁに、雅お姉さんっ♪」

今度はちゃんと笑顔で答えてくれその笑顔がとても愛しく

(命様が人から愛されるのは王女様でも人魚姫だからでも無く私でも守りたいと思わせるこの笑顔なんですね…夕べの真琴様のお言葉、今ならよくわかる気がします…)

そう思ったもののふと気になったのが

「真琴さんの仰った先生や姐さんとは?」

そう聞いてみると

「みこ、散歩なら先生にも会稽古も兼ねて」

そう聞いてみると

「うん、昨日はお稽古してないから…」

そう答えたから

「もしかしたら名前くらいはご存じかもしれないけど民謡歌手の謡華さんでみこの民謡の先生

姐さんは酔仙亭の翠蘭大夫でみこの踊りの師で僕もその方に踊りを習う約束なんだ、昨日話した通りにね」

そう教えられ

「確かに面識は有りませんが名前は存じ上げております

私も四六時中讃美歌を歌う訳じゃ有りませんから謡華さんは注目してましたよ

翠蘭さんの事は芸処と言われた歌の国の芸の発展の為に日夜研鑽に励む方と伺ってますから尊敬に値する方と思っていましたが…」

そう答えると

「なら話は早い、みこが王宮に来て以来のお気に入りの練習場所で謡華さんも三絃を持って出掛けるのを見掛けたからもう居るはず

みこ、雅さんを先生に紹介してあげてね」

そう言われて命も

「先生にも雅お姉さんの事紹介させてね」

と嬉しそうに答えたから二人も嬉しくなり

「なら早速行こう、お茶は?」

真琴に聞かれた命は

「マイにゆったら今日はチサちゃんが支度してくれるってゆってたよ?

春蘭は寝てもらってるし深潮はチョーし悪いから弥空がママに用意するからなんだって」

そう言われて成る程と思いながら

「みこ、雅さんと手を繋いで…雅さんもみこの歩くペースわからないだろうから手を繋いでみこに合わせてください」

そう言われて成る程と思っていると命もその小さな手を差し出してくれているからその手を握り三人で歩き始めた

 

手入れされた美しい庭園を歩き池の畔が見えてきて東屋から三絃の音色と歌声が聞こえてきた

張りがあり力強い歌声が…

「センセーっ!」

命が叫ぶとこちらを見て歌い続けたまま微笑んで見せたのはさすがだな…

そう感じる雅は歌の最中に声を掛けられても反応出来ないし調子が狂って歌い続けられない

曲の区切りがついた謡華が命を見て

「みこちゃん、起きても大丈夫なの?夕べお熱出たんでしょ?」

そう聞かれた命は

「春蘭とミナの看病と留美菜と媛の冷気のお陰でもーへーきだよっ♪

今日は岬に…出来たら泳ぎたいしね」

そう寂しそうに言う命に真琴は

「大丈夫だよ、水の精霊の巫女であるみこが海に入れば霊力を高める事に繋がり怪我の回復が早まるんじゃないの?

みこの今霊力、今かなり低下してるんじゃないの?」

そうズバリ言われた命が

「う、うん…」

と口ごもるの聞いて

「取り敢えずみこは岬に行くんなら今のうちにお稽古しておいたら?謡華さんもよろしくお願いします」

そう真琴に言われてレッスンを始めた

(不安定だった霊力が安定してきた…)

歌を聞きながらそう感じているとお茶の支度…道具などはマイが持って来たが支度を整えたチサと翼がユウ、ユカ、ユキ、ユミと風華を伴い現れてチサがお茶の支度を始めた

命のレッスンが終わりお茶の時間となり

「先生、翼お姉ちゃん、チサちゃんにユカ達…歌の女神の依り代の雅さんだよ

雅お姉さん、みこのお歌の先生の謡華さん、翼お姉ちゃん、チサちゃん、ユウ、ユカ、ユキにユミ…これで全部じゃないけどみこの大切な人達…

皆、雅お姉さんは真琴お兄ちゃんと親しいみたいだから皆も仲良くしてね」

と、言われて焦る真琴と意味のわからない雅の二人を見てふーん…と言うような視線を真琴に向ける一同だった

 

お茶の一時を終え一旦部屋に戻り着替えを済ませ朝食に集まった一同を見た観月はまずチサに

「翔はどうしましたか?」

そう聞くと苦笑いのチサは

「日ノ出と共に翔の槍で翔んでいきました…お土産楽しみにしとってやーっそう叫んで…」

そう言われて

「何か手を打つ必要がありますね…誰かと同じで目を離すと何処に行くのかわかりませんからね」

そう言って命を見るけどそれが自分の事だとは思わない命

食事が始まりいつもより積極的に食事を摂る命に観月が

「そんなに食べてお腹は大丈夫ですか?」

そう聞かれ命は

「うん、このスープ飲んだらご馳走さまだから平気

今夜はちゃんと観月お姉さんのゆー事大人しく聞いてお着替えするから岬に行って…泳いでいーい?」

観月の顔色を伺いながら聞く命に観月は拍子抜けするくらいにあっさりと

「良いですよ」

と、許可は出したけどその後に

「但し又漂流しないようりんを見張りにつけますからそのつもりでいなさい」

と、言われてしまい

「みこ、漂流って何の話し?僕は何も聞いても無いんだけど?」

と、真琴に聞かれたら不味い事をばらされ

「え、えっと何の事?みこわかんない…」

そう辛うじて答えたものの命の目はまともに真琴を見れないばかりか完全に泳いでいたから溜め息を吐いて

「いつかちゃんとみこの口から聞かせるんだよ、わかったね?

でも何故?僕もみこも反対されるとばかり思ってたけど…」

そう言われて溜め息を吐いて

 

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