ー私を縛る戒めから解き放ってくれたアクエリアスの巫女とその従者達よ… 感謝します… フレアも手間を掛けさせましたねー
「つまりアタイは火の杖を火の精霊の巫女に渡すまで預かっていれば良いってことなんだな? 」
そう確認すると
「 察しの良い貴女ならこの程度の事一々言わなくても良いと判断してますから 」
と告げるのみで
「 火炎剣と業火の盾は千浪が焔の爪は吽が熱の槍は沙霧が左右炎剣真琴が各々に預かってください」
そう告げると
「 じゃあアタイは真琴で阿は命に沙霧が観月を連れて嵐は吽に頼めるな? 」
そう言われた三人が頷きその言葉通りに行動する一同
嵐だけは嫌な顔をしたのだけど皆にスルーされた
④ 火の精霊フレアは巫女と出会い、その手を求めた
結局一同が大公邸に帰り着いたのは夜明け間近い頃で事態を知った重臣達が待ちわびる謁見の間に帰還報告をする事になった
愛娘の表情に違和感を覚え見詰める大公に
「 司祭の里の血を受け継ぎし王国の王子よ… 今そなたに語り掛けしは汝の娘に非ず…
我は和泉の女神… 泉美です」
そう聞いた父大公は何も言わず方膝を付くと
「話を御続けください、我等の女神よ」
と応えると集まっていた重臣達も大公に倣い方膝を付き頭を垂れると泉美の次の言葉を待った
「賢明な卿等は我が公女観月を依り代に選び観月も我を受け入れた事は推測していよう…
その上で更に皆に協力してもらわねばならぬ事があるが頼めるか…」
そう問われ考え込む大公に
「閣下、泉美様は我が大公領の守り神」
「依り代に選ばれし観月様は貴殿方の愛娘ですが我等にとっても愛する公女殿下様…」
そう大公領の文と武の要の二人が言えば二人の次官も
「我等を女神様とその依り代様と共に歩ませてください…」
声を揃え進言され二人の息子を見やると穏やかな笑みを浮かべ頷くのを見て
「我等に進むべき道をお示し下さい」
そう言って頭を垂れる大公に
「その言葉感謝します
まずアクエリアスから聞き及んでいる通りにこの地に封印された精霊達の解放を頼みたい
そして…司祭の里無き今、舞の女神の降臨の儀式にに必要不可欠な歌の女神の解放をお願いしたいのです…」
そう告げられた大公は
「歌の女神様が封ぜられているのはやはり…」
言葉を選びなから問い掛ける大公に泉美は辛そうに
「歌の女神のハーモニーより先に封印された私には歌の国だろうとしか言えません…だが…かの地より連れ去られたのであればその痕跡まで隠すのは無理な話ゆえに次の女神の祭典に照準を合わせ…」
そう言って真琴に視線を合わせ
「貴女は出場者となり封印解除の一翼を担いなさい、よろしいですね」
それは真琴に対する要請ではなく事実上の命令ではあったけどアクエリアスの霊気を放つ命が泉美の隣に立ち頷いて真琴に反論する事を許さなかった
「委細承知いたしました、我等にお任せ下さい」
そう応えると恭しく頭を垂れる大公とその家臣達の様子を見ながら満足そうに頷いて
「以後は依り代に任せますから皆の助力に期待します」
そう告げるとその気配を消した為力なく崩れ落ちそうになる娘の身体を慌てて抱き止める大公は
「公私混同の謗りを受けようともお前を守るつもりだ…愛しい娘よ
お前がいつか私の元を巣立つのはわかっていた…嫁に行く等とは異なる何かだともわかっていた
それが女神の依り代になる事だとは思わなかったが私達の娘に生まれてきてくれたことに感謝している」
そう大公が告げると二人の兄も
「勿論私達も泉美様と依り代たる貴女に誓いを捧げよう」
「依り代として…そして妹として
お前が依り代として振る舞うのなら我等はお前を守る盾として大公家の務めを果たすのみだからな」
そう言って観月の肩に手を乗せる二人を見て重臣達は男泣きし侍女達は互いに抱き合い涙した
そんな人達の中一人状況についていけないチサは
(感動的な場面なのは解るけど何故私が…翼ちゃんは呼ばれず私だけなの?)
そう考えるとどうしても他の人の様には感動の波に乗れないチサに
―確かに依り代の従者を使者に立てましたが…私の呼び声に気付いていたのでしょ?―
いつの間にか火の杖から抜け出した火の精霊フレアがチサの前に現れていた
火の杖である程度の霊力を回復していたフレアの姿は霊力を持たぬ者にも見えており
―私は火の精霊のフレア…
私が何故貴女の前に現れたか分かりますか?―
勿論チサには全く見当が付かず怯える表情で首を横に振るだけで精一杯だったけどアクエリアスとの邂逅
観月が女神の依り代に選ばれた瞬間のそのどちらにも立ち合っているレムと鬼百合にはピンときていた
―私の願い…それは貴女に私の巫女になってもらいご迷惑をお掛けした泉美様…
陳びに助けてもらったアクエリアスとその巫女と従者達の力になりたいのですがその手伝いを頼めますね―
そう告げられると
「それをお引き受けしたら私は命ちゃんや真琴の力になれるんですね?
翼ちゃんやご恩ある観月様…大公様やお兄様達
その他大公家の皆様をお守りできる様になれるんですね?なら私を導いて下さい、フレア様
街の人達が私達の様に泣かなくても良い様街の人達の幸せを守る力を…大切な人達を守れる力をお貸しください…」
膝ま付き祈るチサに
―では左手を私に差し出しなさい―
そう言われたチサが素直に掲げるとフレアも泉美同様にその手を取り口付けを落とすとチサの中に吸い込まれ
―私は今暫くは巫女の中で休みますからアクエリアスの巫女よ…後の事を頼みますよ―
そう告げ命が頷くのを見届け気配を消した
それを汐にチサの身体が崩れ落ち
それ迄表面に出ていたアクエリアスも自らの結界に戻ったため命が意識を失い…観月の身体も完全に力を失っていた
チサを抱き上げた鬼百合は
「アタイはチサを、阿は命を…沙霧は観月をそれぞれ寝室に運ぶからレムはみこの代理で嵐は観月の代理として…真琴は当事者としてこれから行われるであろう会議出席してくれ、大公殿もそれで宜しいか?」
そう問われた大公が黙って頷くのを見て今度はユイとユウに視線を向けると
「ユイにユウだったな?
ユイは嵐と共に議会に出席し後で観月に報告
ユウは観月が目覚めるまでの指揮は任せて構わねぇな?」
そう聞くと二人も声を揃え
「承知いたしました」
と応えるとのみで後は傍に控えていた部下の侍女に指示を与えユイは嵐と共にユウは沙霧の後についていった
会議で大公は開口一番
「真琴の出場手続きはこちらで行うゆえ講師の手配は美月の方に任せてよいか?」
と大公が問うと
「観月様の目覚め次第…無論候補者のリストアップはすでに始めております」
とユイが応えるのを満足そうに頷いて
「うむ、よろしく頼む」
短く応え
「和泉の女神の依り代については我が一存で公表しようと思うが水と火の精霊の巫女様達については本国の判断に委ねるべきだと思うが異議の有るものは?」
そう大公に問われたが特に異議の声は上がらず
「依り代のお披露目についても美月中心で準備を頼むことになるが?」
ユイに向け大公が問うと
「私の一存で決められるものではありませんので観月様にその様にご報告します」
と応えると
「私達に出来ることはお手伝い致しますとお伝えください」
大臣が言うと他の重臣達も頷くのを満足そうに見つめる大公だった
「後一番肝心なことだが歌の女神の封印されている場所が判らぬ以上女神の祭典の前までに見つけ出さねばならぬと言うことになる
その使者を誰に任せるか人選を急ぐ必要があるが皆の意見を聞きたい」
と問うとユイが控え目に手を挙げ大公が発言を許すと
「依り代の観月様に使者に立って頂くべきだと思います…事は既に私達人間だけの問題ではありませんしついでと言っては失礼に当たりますが二人の精霊の巫女様達に…お二方からもお願いしていただくのがよろしいかと存じますが?」
とのユイの進言に感心しながら大公は
「いずれお二方には本国の方に訪れていただかなくてはならんのだからな…わかった、水の精霊の巫女様の回復を待ってこちらも観月の判断に委ねるべきだと思うが?」
と一同に問うと異議は無かった
「大公閣下、以後は実務協議になりましょうから私達は遠慮して退室致しましょうか?」
そうレムが大公に訪ねると
「いや、嵐はこの先観月の身辺警護を頼みたいしレム殿達には引続き精霊の探索を行っていただきますからそちらの代表者としてご参加下さい
ユイは取り敢えずお茶の支度を頼みたい…がその後も会議の手助けをしてくれると助かるのだが?」
そう言われたユイは
「承知いたしました、では巫女様の容態が気になる真琴様は退室してもよろしいですね?」
と尋ねると頷いて
「急いで行ってあげなさい」
と言われた真琴はお辞儀をして駆け出していくその後ろ姿を微笑ましく見送る一同だった
その後会議は夜更けまで続いたけど途中観月が目を醒ましたと伝えられ美月に関わりのある議事録を渡した為観月の対応策も素早く決まった
日柄も良いので翌日の午後に市民に公表
更にその一月後に
観月の生まれて二度目になる女神の依り代としてのお披露目のパーティーとを行うことを宣言すると決まったと発表した
翌朝目覚めた命は女神救出の際の命ではなく再び舌っ足らずな喋り方の命に戻っていたので歌のお稽古が再開されることになった
しかし当の命はと言えば食事を摂る事すらも面倒臭がりミナが手伝わねば一切手を付けようとはしないばかりか食べる量も殆ど小鳥よりも食べない状態で一同を悩ませていた
それでも唯一ミナが勧めれば他の誰が言うよりも多くの食事を摂る命だったが当のミナ自身はその事を自覚が無い為未だ表面化してない
その為観月の女神の依り代としてのお披露目や真琴の歌の指導者の選任者の選定等優先順位の高い案件から取り組んでいる現状では中々気付かれないことでも有るのだが…
公邸一般市民公聴用テラスに珍しく大公家一家が勢揃いしていた
既に一部政務については長男睦月が引き継いでおり公都一般市民向けの政策発表なども彼の役目になり久しい
その為通常睦月が発表内容に関連する政務官を従えているだけなので人々の関心は否応なく集まっていた
「突然の事ではありますが私公女観月は大公家及び大公領の守り神である和泉の女神、泉美様に女神の依り代となるよう求められそれをお引き受け致しましたことをご報告致します
またそれに伴い美月の発注で女神の神殿の再建、美月と大公家の主催でお披露目の式典を執り行う事も併せて発表いたします」
そのあまりにもの衝撃的な告白に一瞬思考が停止した市民達が我に返りその静寂を打ち破り大歓声が沸き起こった
皆口々に女神の再臨と依り代の誕生を喜んだ何よりも領民から敬愛されている大公家の…公女観月がその依り代と選ばれた事を事の他喜んだ
真琴達三人の美少女の出現で彼女ら目当ての旅行客や商人達の訪れが増えて経済に明るい兆しの見え始めていた領内
朽果てた神殿の再建はほぼ新築になるため建設業界に落ちる額は半端無い上に税金で賄われない事も人々を喜ばせた
そして何より人達の好奇心を駆り立てたのは観月の御披露目当日のドレスが如何なる物か…更には観月の警護に当たる騎士やそば近く使える侍女達の衣装は?
美月のお膝元の大公領の領民達にとり観月のファッションに関心の無い者は居ないと言っても過言ではなかった
養蚕や綿花、麻の栽培及び製糸等美月に関わる業種が基幹産業の大公領の経済界
それに従事する者達にとり美月の浮沈は傍観してて良いものではないのだから…
その意味でも感心の無い者等一人として居なかっただろう
真琴、翼、チサの三人もそれまでの勉強に加え真琴は歌、チサは精霊の巫女になるための修行…
その為通常は長子である睦月が発表内容に関連する政務官を従えているだけなので人々の関心は否応なく集まっていた
「突然の事ではありますが私公女観月は大公家及び大公領の守り神である和泉の女神、泉美様に女神の依り代となるよう求められそれをお引き受け致しましたことをご報告致します」
またそれに伴い美月の発注で女神の神殿の再建、美月と大公家の主催でお披露目の式典を執り行う事も併せて発表いたします
そのあまりにもの衝撃的な告白に一瞬思考が停止した市民達が我に返りその静寂を打ち破り大歓声が沸き起こった
真琴達三人の美少女の出現で彼女ら目当ての旅行客や商人達の訪れが増えて経済に明るい兆しの見え始めていた領内
朽果てた神殿の再建はほぼ新築になるため建設業界に落ちる額は半端無い上に税金で賄われない事も人々を喜ばせた
そして何より人達の好奇心を駆り立てたのは観月の御披露目当日のドレスが如何なる物か…更には観月の警護に当たる騎士やそば近く使える侍女達の衣装は?
美月のお膝元の大公領の領民達にとり観月のファッションに関心の無い者は居ないと言っても過言ではなかった
養蚕や綿花、麻の栽培及び製糸等美月に関わる業種が基幹産業の大公領の経済界
それに従事する者達にとり美月の浮沈は傍観してて良いものではないのだから…
その意味でも感心の無い者等一人として居なかっただろう
真琴、翼、チサの三人もそれまでの勉強に加え真琴は歌、チサは精霊の巫女に相応しくなるための修行…
そして未だ道の見えない翼はユイと共に観月に付き従い秘書見習いとなりユイから秘書の勉強学ぶことになったがその観月の目論みはそれだけには止まらなかった
観月自らが妹達と宣言した少女達の一人を連れ昼食間近いこの時間帯に観月をランチを誘うも
「この後も色々と予定が立て込んでいますので」
と、一蹴に臥されが誘った者にとっては予想通りの返答に過ぎ無いので全く意に介さず
「ならば差し支えなければ翼嬢だけでもご臨席願えませんか?」
と懇願すると今度は
「翼は未々幼く勉強中の身なのですから大公家や美月に対する要請等は口にしない事を守っていただけるのでしたら色々経験を積ませたい私も喜んでお願いしますが?」
滅多に見せない優しい笑みを浮かべて観月がそう答えると喜んで観月に約束を守ると誓い翼をランチパーティーに誘う事になった
命達の訪れ以来元々忙しかった観月が更に多忙を極めそれを理由に社交界から足が遠退きがちだったのだがそんな観月の代わり招待を受けることになった翼
この新しいヒロインの登場によりこれまで観月に向けられていたパーティーへの招待がこの瞬間を境に翼へと向けられるようになった
それにより観月には商談などの実務的な会談以外の面談申込が無くなり観月を喜ばせたのは間違いなく
また、それは同時に巫女の修行をせねばならないチサと歌のレッスンを始めたばかりの真琴にとっても有り難くその二人に比べ何も出来ないと悩んでいた翼自身も
「私に出来る事なんて何も無いって思ってたから観月様のお役に立てて嬉しい」
そう言って喜んでいたから翼付きを任されたユマも心底喜んでいた
その一方で人見知りの対人恐怖症傾向が強い命もようやく真琴達や鬼百合逹、ミナとユカに観月以外の美月スタッフや公女宮の侍女達が側に寄るのも拒んでいたのだが…
ようやく大公父子を受け入れたのを皮切りに美月スタッフと公女宮の侍女逹もなんとか受け入れられ様にまで回復してきた
だが…そんな命に新たなる問題浮上した…
夜泣きとでも言うべきなのか眠りに付き暫くすると一晩中涙を流している命にミナが気付いたのだ
声も出さず表情も一切変えること無くただ涙を流している命に…
そんな命の寝顔見ている内に切なさで胸が押し潰されそうになり気付くと命の手を握り締めていた
するとそれまで流れ続けていた涙がピタリと止まり離すと再び涙を流す命の為その夜以来夜を徹して握り続ける事になったのだった…
夜明けには未だ遠い時刻に目覚める真琴が隣のベッドに目をやり
「ミナさん…」
そう呟き命の手を握り倒れ込むように眠るその身体にもはやミナの必須アイテムと化しているブランケットを掛け静かに部屋を出て走り込みに向かう真琴
走り込みに素振りをこなして精霊の巫女の修行として祈りを捧げるチサの隣で魔力を高めるべく瞑想行に励む真琴
唯一四人揃っての食事である朝食を済ませ午前中は学問に当てられ昼前にはその日の昼食会に出掛ける支度をする翼
真琴は歌のレッスンを受けチサはユキに付き従い侍女見習いの仕事をこなし夕食後にダンスのレッスン
そんな日々を送っていた
そして領民逹は勿論歌の国の本国や噂を聞いた他国からの旅行者逹が待ちわびた女神の依り代のお披露目の日が来た
⑤女神の降臨と依り代のお披露目
いよいよお披露目の日がやってきた
パレードの露払いを勤めるのは客分騎士の正装を纏った阿吽の二人
お披露目の馬車には主役の観月とそれに付き従う翼にその左右に華を添える真琴とチサ
後続の馬車にはユキが馭者を務めユイ、ユウ、ユマ、ユミが控えていた
観月逹が乗る馬車の馭者を務めるのは正騎士の礼装を身に纏った嵐で馬車の周囲を固める鬼百合、レム、沙霧、白浪の四人が四方を固めた
皆が期待した観月のドレスは一言で表現するなら女神の依り代に相応しく荘厳なものだった
不用な飾りは無いにも関わらず決して地味にならず美しい観月の容姿に負けることの無いものだった
勿論付き従う三人のドレスも清楚な妖精を思わせるもので四人を神々しく演出していた
通常なら一刻もあれば足りる距離に有る大聖堂ではあるがその二倍の時間を掛け惜しみ無くその姿を人々に披露する観月
沿道の大歓声を一身に浴び手を振ってその声に応えた
そして大聖堂で祈りを捧げた後大聖堂のテラスに観月が姿を現すと泉美もまたその姿を表し
ー我が名は和泉の女神の泉美
今この場に於いて大公家の公女観月を我が依り代に選んだ事を宣言します
これより多難な時を迎えねばならぬこの世界を導く者の一人として立ち上がった依り代に力を貸して欲しいー
そう言って反応を見守ると
「泉美様万歳っ!」
「観月様万歳っ!」
「大公閣下万歳っ!」
歓喜の声があちこちから上がり紙吹雪が舞う沿道
泉美に頷かれた観月は
「未々未熟者の私には世界を導くとは申せませんが生まれ育った故郷
私の愛するこの地とここに生きる貴方逹を導く存在で在りたいと思っています
これまで同様大公家陳びに美月に皆様のお力添えよろしく賜りますようお願いします
私も公女として美月の代表として…そして何よりも女神の依り代としてこの地の安寧に力を尽くすと今ここに宣言致します」
そう告げると感極まった民衆の興奮はピークを迎えた
大聖堂で昼食を済ませた一行は帰りは行き以上の時間を掛けて大公邸に戻り夜のパーティーの支度を始めた
今度のドレスは昼間のそれとは異なり派手さは押さえたものの華やかさは欠かさぬよう注意して作られた物で三人にはダンスの邪魔にならぬ軽やかな仕上げになっていた
パーティーが始まり観月を誘ったのは父大公と兄の公子逹に重鎮の年寄り逹で後の若者逹は取り巻きになっていた
元から社交界でも一、ニを競う美人の呼び声の高い観月が女神の依り代となりますます手の届かぬ高嶺の華となった観月を誘えるものはない
仕方無いのでその後の観月のバートナーを務めたのは嵐にレム、鬼百合逹だった
その一方で観月の代理人を勤める翼
美少年めいた容姿の真琴は男女を問わず
前回のお披露目の時はただただおどおどして真琴の背に隠れていたチサ
火の精霊の巫女になりその事は伏せていても漆黒の黒髪が赤味を帯び神秘的な雰囲気は隠せず人々の目を引いた
その為パーティーの主役は観月ではあってもホールの華、主役は三人で次いで美月のスタッフ達も華を添えていた
この魔物や海賊逹が跳梁跋扈する世界で安全な市街地を出て…
況してや公海上に出るのは死を覚悟せねば出来ぬ事故に船乗りや商人は勿論海軍の兵士とて無事航海を終える保証の無い時代人の行き来は少なく物流も減少しており世界的の不況状況だ
そんなご時世でも…いや、そんなご時世だからこそ一攫千金を夢見る商人、冒険家逹が旅に出る
そしてそんな勇者逹の訪れを待ちわびる乙女逹との一夜限りの恋を楽しみにする者が居るのもまた自然な事でもある
そんな世界だからこそ噂の美少女逹に会いに来た者も少なくないし最近連日の豊漁で賑わう大公領の紐の緩んでいそうな経済を当て込んで多くの商人逹も訪れている
勿論、最近続々と発表された新作ドレスの買い付けに来た者も居る
そのお陰でかなりダブついていた木綿の糸や生地、絹糸や絹織物がかなり捌けますますの好景気に沸く大公領
そんな喧騒とは無縁でひっそり暮らす命と花の娘はようやく公女宮の裏庭に出られるようになりミナと花摘を楽しんだり歌を歌って過ごしていた
ミナが作った華冠を頭に飾った命は華の精と呼んでも差し支えなく…
ぱきっ…地面に落ちた小枝を踏む音に身を強張らせる命と姿を眩ます花の娘に
「みこ…花の娘、驚かせてごめん、僕だから安心して…」
ばつ悪そうに頭を掻きながら現れる真琴の姿を見て小さく息を吐き
「まこちゃんは全然悪くないよ…みこが悪いの…こんな事くらいにいちいち怯えてるみこが…」
悲しげな表情で言う命に何て声を掛ければ良いのかわからず黙り込む真琴に
「どうしたの?いつもならお勉強の時間なのに…」
そう話題を変えてもらった真琴は
「今日はお休みだから体術の稽古をしてたんだよ
そしたらみこの歌声が聞こえてきたから嬉しくなって側に近寄ってみたんだ」
そう言われ
「ごめんなさい…みこの歌声が耳障りだったんでしょ?
もう歌わないからお稽古に戻って…」
消え入りそうな声で言われた真琴は
「何でさ?みこの可愛い歌声が耳障りな訳ないよ、もっと近くで聞きたいから来たのに…」
そう言われてさえそうは思えない命が思案して居ると命の歌声に導かれた者がもう一人その姿を表した
観月逹の従兄で歌の国の第二王子の十六夜で真琴は勿論彼を認識しているがいつも上の空の命は紹介されているにも関わらず未知の存在に過ぎない
その未知の存在の出現に命は固まってしまいひきつる顔は完全に血の気を失い大きく見開かれた目、握り締めた両手で隠された口は大きく開いていても声を出せないくらい驚いている
「えーっと…参ったね、これは…」
第二とは言え王子で容姿にも恵まれた自分を見て恐怖でひきつる娘と敵意を剥き出しにする少女が居るなど夢にも思わなかったその男は真琴に向かい
「如月や観月に聞いてたレベルじゃない人見知りだったんだね…」
そう言って溜め息を吐くと
「申し訳有りません、十六夜様…みこの重度の人見知りの原因は解りませんけど特に男の人に対する拒絶反応が酷く大公様や睦月様、如月様になれるのにもそれなりの時間が必要でしたから…」
そう言われた十六夜は
「その様だね…どうやらこの様子じゃ命ちゃんの社交界デビューは未々無理っぽい様だね…」
苦笑いを浮かべながらそう真琴に確かめると
「ホントにそうですね…十六夜様には申し訳有りませんが全く知らない人達が集まるパーティーは今のみこには未々無理だと思います…」
そう言って詫びる真琴に対し
「だよねぇーっ…」
と言って溜め息を吐く十六夜に
「申し訳ありません、十六夜様」
と再度詫びる真琴に十六夜は
「観月にも言われてたから知ってはいたんだけど結構諦めの悪い方だからね…だから君が謝る理由は全然無いから気にしないで…」
そう言って寂しそうに笑う十六夜に
「未だ極限られた人…僕と翼にチサ、観月様にミナさんとユカさん逹日常的にみこの側にいる人以外聞いた事の無いみこの歌を聞いてあげて下さい
夜までに何とか説得して歌わせますから…」
真琴にそう言われた十六夜は微笑みを浮かべて
「命ちゃんに無理はさせなくても良いからね?いつか本人から聞かせてくれる日を楽しみに待つからね?