闇と影   作:春の雪舞い散る

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異世界で意識を取り戻したとき翼を失い別人と化した媛歌…彼女の目に映る水の精霊の舞姫は別人で姉と呼んでいた


囚われ人

①大人の事情

 

 いつまでも領地を留守には出来ない侯爵は、命の一時帰国に併せ領地に帰るが堅苦しい王城の暮らしを厭う翔を見ながら

 

 「セレナ、祖父殿に翔ちゃんと供回り二人が泊まる宿を紹介して欲しいと伝えてもらえないだろうか?」

 

 そう言って頭を下げると

 

 「ソウさんとミチさんですね?そのお二人なら翔ちゃんと共に家に泊まっていただいても良いって思いますよ?

 

 と、言うより翔ちゃんが家に泊まって欲しいのが私の希望です」

 

 そうセレナが答えると

 

 「その場合も考慮してご相談しなくてはいけないだろ?」

 

 そう侯爵に言われて

 

「わかりました、帰ったらお祖父さんに聞いてみますね」

 

 そう言って、帰っていくセレナを見送る翔は今朝目を覚ました命と媛歌に感じる違和感がどうにも気になって仕方なかった

 

 微妙に異なる二人の雰囲気に…

 

 だから、命の一時帰国に同行しなくて良い事を知ってホッとして昼過ぎにウルズ、ヴェルサンディと大樹と謡華と映見と共にスクルドとアリスを連れて王城に戻っていった

 

 鬼百合は明日の出港に併せ侯爵夫妻を翔はユウを連れ見送る予定で見送った後は侯爵とユウは王城に向かい翔は夫人を連れて公邸に戻る予定…

だけど命と媛歌の二人にどんな顔をして会えば良いのかわから無くて頭を悩ませる翔

(なぁ馬花の娘…彼奴等一体何者や?)

そうぼんやり考えていると

―駄鳥、煩い…頭悪いお前は考えるだけ無駄だしいずれわかるからきにするな、後もう呼び出すな―

そう苦々しそうに言われたので

取り敢えず翌朝もアクエリアスの結界で修行…勿論忍達も呼んで彼女達は踊りの稽古をして朝食の後予定通りに見送りに行きなるべく二人と顔を合わせず逃げるように公邸に戻った

霊獣とは異なる空の旅を楽しんだ夫人は乗る前にいだいた命に対する翔の態度への疑問はすっかり忘れ去り迎えに来ていたセレナに引き渡して虫取に行かせた

虫が減ってきたある日の事、臭いを嗅いだことの有る草を見付けた翔が公邸に戻り雪華に話し案内するように言われて雪華を案内すると

「翔ちゃんの言う通りで母さんのお茶に使われてる香草ですけど…

一旦お屋敷に戻り姉さんにお使い頼めますか?」

そう言われて手紙を預かると春蘭の元に使いに行くと手紙を受け取って女王に

翔が野生の香草の群生地を見付けた事を告げると翔に案内させ採取に行かせる事になり

採取され持ち帰られた薬草と翔がその付近で集めた木の実も持ち帰ると喜ばれ女王に褒美を渡したいと言われ最初は要らないと断っていたけどミナの姿を見掛けた翔が

「せやったらちょこっと我が儘ゆーてもええかな?

ピンキーエンジェルゆーたっけ?あれ欲しいんやけど…セレナとお揃いで着てみたいんよ」

そう言われてあらかじめ用意してあったそれを見せられた翔が顔を曇らせ

「それボクの持っとった奴ちゃうやん?高い方なんやろ?そんなんボク貰われへんしセレナももろてくれへんよ?」

そう言って断る翔に

「ユウママが用意した物ですがそれでも断るんですか?」

ひっと小さな声をあげ声と共に息を吸う翔は小さく震え

「は、はい…お母ちゃん、ボクちゃんとゆー事聞くえーこしますからそないに怒らんといてください…」

そう訴えると小刻みに身体を震わせる翔になんと声を掛けたら良いのかわからない春蘭だった

「この手紙をセレナのお祖父さんにに渡しなさい」

そう言われて受け取ると公邸に戻るとセレナがいつものように待っていて

「その…あんな、セレナ…荷物とセレナの爺さん宛の手紙を預かってきとるんよ…」

そう言って風呂敷包みをセレナに渡すと

「?」

と首を傾げたものの受け取り

「丁度良いから家に寄って行きましょう」

セレナにそう言われてホッとして息を吐き出した翔がセレナにドレスを渡し祖父に手紙を渡すとそれを読んだ祖父は溜め息を吐き

ドレスを手に申し訳なさそうに俯く翔と同じく困り顔でシルクのドレスの受け取りを拒むセレナに

「セレナ…受け取ってあげなさい

翔ちゃん自身絹のドレスを受け取り出来ないしセレナだって受け取ってくれないと断っていたけどユウ様に逆らえず渋々持ってきたのだから…」

祖父にそう言われて

「…そうですね、物を貰って喜ぶ翔ちゃんじゃないのに人にこんな高そうなドレスを平気で人にあげられるわけ無いよね…」

セレナのその言葉に

「ごめんやで、セレナ…ボクがアカンかったんよ…

おんなしデザインの安い方のつもりで欲しいゆーたらこっちの高いのをくれよったんよ…

ボクもーパーティーなんか出た無いんやからね…」

そう嫌そうに言う翔だけど

(多分命様の一時帰国中は嫌だじゃすまないでしょうね…)

そう思うと切なくなるセレナだった

 

ヴェルサンディの初めての船旅は快適だった

気さくな鬼百合仲間達に必要最低限の物は装備された船

出される料理は味付けが異なるもののどれもとても美味しいのはやはり魚の鮮度が違うからか?

大樹と鬼百合は釣果を競い合い釣れ過ぎた魚は入国前に顔見知りの漁師に出荷して貰うことにして鬼百合、大樹、ヴェルサンディと見習い侍女二人が王宮に向かい残りの者達は前衛基地で待機することにした

王女宮で謁見迄の時を過ごす間に王妃宛の侯爵の手紙を渡し書いてはあることだけど自らの口でヴェルサンディに恋をして婿入りを条件に結婚を許されたことを話すと

「わかりました、私も姉がそう言う立場でしたから全くの他人事とは思えませんし…十四夜は未だウルズの事を気にかけてます」

そう言い切る王妃に

「何故そう言い切る事が出来るのですか?」

そう王妃に聞くヴェルサンディに

「私があの子の母親だからですよ」

そう笑らって答える王妃

真琴は大樹に

「黒炎竜は進化したみたいだね?」

そう問い掛けると

「はい、未だ全貌は明らかにしてませんが命様は黒煙熔岩竜…そう呼んでました」

その二人の会話を聞きながら

「真琴様は王女様と言うより王子様って感じで大樹も王子に対する感じなんだ…」

そう思っていた

王女達も手紙を読み終え

「話しはわかりました、最終的には十四夜兄さん次第だけどお父様の説得には私達も応援しますし修行頑張ってヴェルサンディさんを実家に案内しなさいね?」

そう言われてホッとして大樹に抱き付くヴェルサンディの頭を撫でながら慈しむ様に見る大樹に

「あまり見せつけないようにお願いしますよ?僕達はそう言うのは見慣れてないんから」

そう真琴に注意されその後謁見の間にて国王に報告と要請を行うと暫く考えた後に

「あい、わかった…ならばその想いとやら口先ではなく態度で見せてもらう事にしよう…誠の気持ちと共にな」

そう答えたので

「アタイが一角獣で使いに行こう、みこの一時帰国の船に間に合いそうだからな…」

そう言って大股で出ていくと堅苦しい話しは終わりで命の様子を二人に聞きながらお茶を飲むことになり手の空いている者が集まってきた

「伯爵領の慰霊祭では…」

命と翔が大いに盛り上げミサのアクセサリーや若月の服が評判だった事を話し侯爵夫妻は命と翔の二人を孫のように可愛がり特に翔に対する夫人は…

「こんな感じです」

そう言っていつの間にか入ってきた観月が見せた絵は例の鬼百合と侯爵が酌み交わし夫人の膝に座り何やらを摘まんでいる翔の絵で

「鬼百合に酌をしているのがウルズです」

そう言われて

「これは丸切り里帰りした娘夫婦と孫娘ですね…奥様が孫を愛でる様子が伺えますね…」

そう言ってヴェルサンディを見ると

「大丈夫です、父の部下もそう言ってますし母自身気にしてませんから」

そう言って苦笑いするヴェルサンディ

こうして大樹の修行が終わるまで滞在が許される事になった

 

鬼百合のもたらした朗報により命の一時帰国に同行する事になったウルズ

今回謡華と映見は同行せず書き溜めた構図を元に絵を描き進め謡華は月影の国の酒場で歌う事にした

同行者は、ユウ、媛歌、春菜、菜月、秋菜、こうめ、紗綾、小絵、小夜、アリス、鬼百合に見習い騎士のさい、シン、千、そらの15名に五名の侯爵家の小姓が同行することになった

命はいつもの様に振る舞っていたけど翔の感じた違和感を拭えない鬼百合

だからと命と媛歌では無いとでは言えず最近翔が命の事を避けているみたいだと瑞穂が溢していたがその原因がわかった気がした

命の予定外の一時帰国に沸く王都市民

謁見の間にて期間報告の後に精霊の巫女となったスクルドを紹介して次いでウルズの紹介…緊張の一瞬の後に

「そなたの想いが誠のモノであるのを期待する

観月、二人の令嬢の世話係に誰を…」

その王の言葉にスクルドは

「お言葉を返すようですが陛下…私は命様の導きを受ける巫女の一人ですから特別扱いはご容赦願います」

それに触発されたウルズも

「まず身の回りの事もこなせぬ者が認めていただけるとは思えません…」

そう言って辞退する二人に穏やかな目で

「ウム、承知したが第二王子の婚約披露宴等の為の正装の手伝いは付けて良かろう?」

それに対しては

「はい、よろしくお願いします」

そう答えるウルズに対してスクルドは私は短いとはいえ色々好みの話をしたこうめさんがお手伝いしてくださいますからご安心ください

そう言ってあくまでも他の巫女達と同じ扱いを望むスクルドの決意も又好もしかった」

 

 

 

②囚われ人

 

ーみこ、ここはどこ?ー

その問い掛けに対する答えを残念なが持ち合わせていない命には答える事は出来ないから取り敢えず

「何者かの張った結界としか言い様がないよ、今んとこね」

そう言って

水球を四方に飛ばし様子を見たけどの方向も手応えを感じることなく消滅した

ー動くモノの気配も感じないね?ー

媛のその言葉に

「今度はこれ…」

そう言って姿を表したの翔の槍そっくりな槍で唯一の違いは無地の数珠玉が飾りとしてついてくる位

そしてその数珠こそが吸収した熱や魔力を蓄える蓄熱の勾玉と吸った魔力、霊力を錬成するものでくすんだ黒い勾玉が錬成されたけど変化はない

少なくとも媛歌の目にはそう見えたけど翔の成長を見続けてきた命の目にははっきりとその違いが見てとれたから

命が巾着袋から出した物を見て

ー折り鶴と翔の羽根に翔の勾玉?そんな物をどうするの?ー

媛歌にそう言われた命は笑いながら

「こーするんだよ」

そう言って折り鶴に翔の羽根と勾玉を埋め込むと

「少し時間掛かるから」

そう言ってリュックから水筒を取り出すとお茶を一口飲み媛に渡して先程のとは別の巾着袋から砂糖菓子を取り出し頬張るとお茶を飲み終えた媛歌にも渡し

ー様子を見れば良いんだね?ー

そう言って砂糖菓子を頬張るのを見て暫く待っていると

「始まった…」

命のその言葉通りに折り鶴は仮初めの命を吹き込まれ見たこともない二羽の鳥になりそれを見て頷いた命は

ー八青龍神っ!ー

呪文を放ち神剣はその姿を変え

「この先何が有るかわからないから持ってて」

そう言って霊刀雪媛と吸魔刀を渡し自らも霊刀水切と黒魔刀を腰に差し

「それに乗って…直に塞がるのだから」

そう言って八青龍神があけた孔をみるとじわじわと塞がり始めていたから

「さぁ行くよっ!」

そう声を掛けると確める事無くその魔鳥?霊鳥に飛び乗りそこから飛び出すと媛歌もそれに続いて飛び出した

 

(意識を失っていた?それにしても今日も暑い……私は暑さ寒さを感じない筈?)

そう思い焦って

「ここは何処?」

そう声が出たことにさらに焦り辺りを見回すと自分の隣には命に良く似た少女が眠っていて更に混乱していると

「絃刃…寝付け無いの?でも身体の弱いアンタは私でも辛いこの日差しの中の移動は無理なんだから昼間は寝てないと夜が辛いよ?」

そう言われた媛歌?は

(仕方無い…眠れるかわからないけど…)

そう思いながら横になると目を閉じて今の訳のわからない状況を考えることにした

(あ、暑い…一体どうなってるの?

南国の歌の国は暑かったし夏真っ盛りの月影の国も暑かったけどこの暑さは狂気だ…私の体力を徐々に削ぎ落としていく凶器以外の何者でもない)

私がそう考えていると

「食欲はありますか?絃刃」

(絃刃?さっきも私をそう呼んだけど…)

そう考えながら首を横に降り

「琴羽姉さんは先に食べてください、私は出発前に軽くつまむ物で良いですから…」(琴羽…姉さん?)

自分の口から出た言葉に驚いていると

「相変わらずの食欲だね?まぁ自分から食べると言ってくれたんだから今はそれで由としよう

取り敢えずお茶だけでも飲んでおきなさい」

そう言われて渡された水筒のお茶は春蘭達が淹れてくれるお茶よりは苦かったけど美味しく気分をスッキリしてくれた

日が暮れて少しは暑さも和らいだ気がする頃オアシスを後にした私達にお約束の様に姉さん?を口説いてくる男達の視線を釘付けの姉さんに対し

路傍の石みたく顧みられる事の無いぺったん娘で血色の悪い発育不良の私は全くとは言わないけどそう言った男達に見て欲しいとは思わないけど…

「仕方無い…私は私、姉さんは姉さんなんだ…」

そう言って諦めるのは悲しいけど慣れているし慣れるしかなかったのだから今更うだうだ言ってもね…

そう考えながら見守もっていると

「お前達見慣れない格好をしてるがこんな夕暮れ時に何処に行くつもりだ?」

そう下碑た笑いを浮かべ舐め回すように姉さんの身体を見る目はおぞましく自分が見られてる訳じゃ無くても鳥肌が立ったけど

「お前達に教える必要はないし義理もない、目障りだから消え失せろっ!」

そう声を荒げる事無く言い捨てる姉さんに顔色を変えたが別の男に肩を掴まれ

「えらく自分達に自信を持っているようだが階層を言ってみな」

そう言われて鼻で笑いながら

「この世紀末とも言うべき世界で未だそんなものにしがみつくお前らに答える必要はない」

そう言って深紅の羽根飾りの付いた扇子をひらひらさせると掴まれていた肩の手を振りほどいて姉さんに掴み掛かったけどその手を叩き落とし両頬を何度か知らないけど打ち据えると

「これでも手加減してやったんだからこれ以上絡んで来るなら次は急所に入れるから覚悟するんだね…行くよ、絃刃」

そう言って絃刃の手を取るとその場を立ち去る二人を呆気に取られていたが我に帰った男達が二人の後を追おうとするのを

「止めておけ、あの女は激流の舞姫琴羽…俺達の手に負えるような玉じゃないしその女が絃刃と呼んだあの娘…

あれは幼い見掛けと裏腹にもっと恐ろしい紅い霧の妖絃刃(ようしじん)…その名を知らんとは言わせんぞ?

それの本名が絃刃と言い足元を見ろ」

そう言われて男達が足元を見ると編み上げのブーツの紐が左右の紐同士で結ばれており言われずに駆け出していれば無様に倒れていたのは間違いない

「絃使いは自ら持つ絃に限らす紐状の物全てを操るから髪の毛も例外じゃなく見ろ」

そう言って失神している男の髪の毛は海中の海草の如く畝っていた…

 

「全く鬱陶しい…」

吐き捨てる様に言う琴羽を見ながら

(魂の形はみこなのに真琴とみこの違い以上に別人のこの人は…

それになぜ私は翼を失い声が出るの?背丈だって普通の人間の…まぁ小柄な部類じゃあるけどみこよりはある

多分雪華より少し高いだろうけど…それにあの鳥は…)

わからない事だらけの媛歌は取り敢えず琴羽について行く以外どうしようも無いので状況に身を任せることにした

店仕舞い間近の店で食料を買い取り敢えず今夜のの宿を捜すと姉さんは食事の支度をして私は絃を使い防御の結界を張り巡らせると

「絃刃はこれを食べなさい」

そう言って刻んだ木の実を渡してくれ姉さんは燻した肴をかじりながら酒を煽って…いる

「明日手持ちの薬草や薬を売って部屋を借りるけど何か希望はありますか?」

そう聞かれたけど特に無いから首を横降り

「姉さんに任せます」

とだけ答えると後は静かに食事をとる二人

一組しかない布団に

「結界を張っているのだから身体は休めなさい」

そう言って飲み続ける琴羽が絃刃を見る目は優しく絃刃を安心させるモノで暫くする内に穏やかな寝息を立て眠る絃刃

二人で生きてきた二人にはそれが当たり前の夜だった

翌朝私が目覚めた時には既に朝食の支度を終え荷物の整理も終えた姉さんはじっと私の寝顔を見詰めていた

私が目覚め二人で朝食を取り夕べ姉さんが言って言ってた通りに薬や薬草を売って暫くの間の拠点にする部屋を見付けると

姉さんはこれだけは取っておいた薬そばの実を挽いて粉にしている

「蕎麦、打つんだ…手伝えること有る?」

そう私が聞いたら

「明日早朝から薬草取りに行くから貴女は身体を休めてなさいこれは私の酒代を稼ぐ程度にしかならない量しかないか無いのだから心配要らない」

その言葉通りに夕方前には打ち終わり再び薬蕎麦を売りに行き酒と肴と私のご飯を買ってきてくれた

吟遊詩人のスキルを持つ私は久々に気分と体調の良いから姉さんのリクエストに答え歌を披露した

私自身は余り歌が得意でないのは自覚してるから滅多に人前では歌わない

魔導舞踊家(武踊家)で舞姫ともアダ名される姉さんとは違い私のレベル位の歌い手はいくらでもいるのだから

こうして私達は暫くは薬草を採りに山に入り薬草を加工して薬や薬膳料理の食材を作っては卸し

姉さんは時々酒場で踊ってるけど私は酒場に行く事自体が嫌いだから一人部屋で寝ている…

そんなある日の夜の事…明日情報屋の報告が有るけどその報告によっては股旅に出るからそのつもりでいなさい

そう言われて頷いて眠ることにしたけど言葉足らずな姉さんは聞いても答えてくれないし理解出来ないことが多いから何も聞かなくなっている

何日振りかに外の空気を吸う私の顔色は相変わらず悪い

薬蕎麦、黍団子、茹でると挽き肉みたいな肉擬きの実、疲労回復、解毒剤、痛み止、傷薬、怪力の薬、加速薬等を卸し代金と欲しい物のリストを受け取り店を出ると

「待ち合わせの時間には未だ早いから団子ても食べながら待つ?」

そう言われて私が頷くと待ち合わせの団子屋に入り一皿二本の串団子を二皿頼んで一皿分を分けあって食べ…

もう一皿は持って帰って午後のお茶の時に食べる予定で包んでもらうつもり

私がお団子を食べ終わる頃情報屋の男が現れ姉さんに報告書を渡すとその情報量の多さに溜め息を吐いて

「持ち帰り用の肉饅頭とお茶のお代わりを頼みます」

そう言って出されたお茶を飲みながら二人の話が終わるのを待ったけど結局話が終わったのは私がお昼ご飯の代わりにお団子をもう一本食べ終わってから

店を出るとすぐに姉さんは

「やはり股旅にでなきゃいけない」

そう言って

「私は部屋の解約と借りてた道具を返しに行くから貴女は部屋で休みなさい」

そう言われて二人で部屋に戻り

私は一人待つ間染めていた糸を干していた

 

 

 

③得られなかっもの

 

翌朝早く駅馬車の駅にいる私達は間が良く姉さんが薬膳の店に旅に出る話をしたら

「アンタ等の最初の目的地の街に有る店に荷を運んで欲しい」

って頼まれ個室を取ってくれたんだ…勿論必要経費だから私達はお金を払ってない

そんな私達が荷物を運び込んでもらってると騒がしい声が聞こえてきたから駅員に

「どうかしましたか?」

そうお節介焼きの姉さんに聞かれて

「個室が空いてたら乗りたいと言われてた客人に空いてないからと断っているようです…」

そう答えるのを聞いて

「女性のようですけどどんな方ですか?」

そう重ねて聞かれた駅員は

「何でも屋の女で頼まれて孤児を協会につれて行くそうです」

それを聞いてしまった私は溜め息を吐いて

「私に構わないなら…」

そう小声で姉さんに言うと

「荷物を積み込んでも余裕がありますからこの娘、私の妹を構わないならその何でも屋込で受け入れます」

そう伝えるとその人達に伝えに走り連れてきたから

「私の妹は他人に構われるのが嫌いだから構わない約束を守れるなら一緒に行きましょう」

そう説明するのを後ろに聞きながら荷物の積込が終わったと告げられた私は先に馬車に乗り込む姿を見ながら

「わかりましたね?約束を守りなさいせっかく明日を待たずに乗せてもらえるのですからね…

まぁお前達も余り人と関わるのが好きじゃないから心配はないとは思うが…」

そう言われて

「はい、約束を守ります」

姉が言うと頷く妹を見て

「宜しくお願いします」

そう言って頭を下げる何でも屋に

「何か有れば私に言いなさい、それがお互いの為ですからね」

そう姉さんが言うと

「理解有る言葉に感謝する」

そう話を終え馬車に乗り込む四人に気付かない振りで窓の外を眺めていた

馬車がゆっくり走り始め暫くすると豪快な虫の鳴き声がして頭を掻く何でも屋と余り顔色の良くない二人の子供を横目に見て

「姉さん、アレ良いから」

そう小さく言うと何でも屋には黍団子を渡して

「貴女はこれで飢えを凌ぎなさい」

そう言って子供達には堅焼きのパンを渡し

「貴女達はこれを食べたら少し休みなさい」

そう言って水筒と共に受け取ると

(焼いた私がいうのもなんだけど余り美味しいは言えないけどあの堅焼きパンを貪る様に食べるなんて…

さすが協会に送られるだけはある、ろくな扱いを受けてこなかったんだろうな…)

「姉さん、二人にはあれも良いから」

私がそう言ったら驚いて

「アレは貴女の…」

そう言葉を詰まらせる姉さんに

「確かに中々手に入らない…でも、協会に行ったらその二人にはその機会は当分無い…食べさせてあげて

その代わりにお礼は要らないからどうしてもっていうなら姉さんが聞いといて」

姉さんにだけ聞こえる小さい声でそう私が言うと頷いて鞄から取り出すと餡豆を渡すと二人の目は真ん丸に開いて何でも屋を見るから

「大丈夫、確かに売れば良い金になりますが私達は魔導薬師と薬膳魔導師で自分達で山に入り取ってきたのだからただですから気にしなくてもよいです」

そう言われて小さな声で姉さんにお礼を言っているが私はそれに構わず外を眺めていた

轍の音に紛れて聞こえてくる寝息を聞きながら私は思っていた

六歳違う姉妹の私にとり記憶に無い両親などでも良く姉さんが全てで姉さんさえ居ればそれで良かった

だからそんな人と関わろうとしない私にお節介な者達は必ず言う

「今は一緒に居るから良いけど琴羽ちゃんがお嫁に行っちゃったらどうするのさ?あんだけ別嬪さんなんだから引く手数多だろうにねぇ~っ…」

(このこぶさえなきゃーね…)

そう思っているのがみえみえな目で見る者を見て育った私が他人と関わりたい等と思う筈も無いしそもそも長生き出来無いくらい私にも理解出来ていた

夜中胸の奥がざわざわし意識的に息を吸っても息苦しく日頃から迷惑掛け通しの姉さんに申し訳無い私…

だからどんなに苦しくても姉さんを起こせず一人苦しみに耐え涙する夜の寂しさを知らぬ者に話す言葉は持たない

最初の内は怖い夢を見たと嘘を吐いてたけどすぐにバレて泣きながら叱られた夜の事は忘れられない

でもゴメン、姉さんより先に逝かない約束だけは守れない…

私には15歳以降の未来は見えず姉さんは40歳までは確実に生きるのが私の占いで解る未来…

だから努力はしてみるけどまず望みはない神話の悲劇の王女程ではないけど悪い占い結果ほどよく当たるのだから…

私の15歳の誕生日まで既に百日を切って居るのだからソコから先の未来はもう見えない

そう考えながらぼんやり過ごす内に最初の休憩場所に辿り着いた

私達は取り敢えず寝てる子達を置いて一旦馬車から降り身体を伸ばし大きく息を吸ってゆっくり吐き出していると抜け目無い姉さんは

 

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