そろそろ今日の夜の停車場に着く頃にそれは姿を現した
ーほぉーっ、すっかりその姿が馴染んだ様だな?ー
そう言われたサキナが
「余計なお世話っ!」
そう低く唸ると
ーもそっとらしく振る舞える様になったら可愛がってやらぬでもないわー
そう言って喉で笑う陰険爺いに
「私達はそう言ったサービスは受け付けないし少なくとも仲間に無理強いする事もしない
ましてやアンタみたいなエロ爺いにヴァニラとミントは渡さない」
その言葉を聞いて互いの身体を抱き締め身体を強ばらせ怯える二人に私は笑顔で
「殺られちゃったらゴメンだけど命有る限り二人を守るからね」
そう言うと
ーわしに異論はない故精々気を付けてやる事だ
わしには二人の命を断たねばならん理由はないでの…主等の命と共に娘達の命、預けようー
そう言われて考えながら
「わかった…つまりアンタの用は別件な訳なんだね?ヴァニラとミントを諦めても良い位のさ?」
私のその言葉に
ー主なら気付いていよう?わしの言いたいことは?ー
そう言われて私は薄く笑い
「多分ね…でも余り賢いとはお世辞にも言えない私はアンタが納得する答えを返す自信はない」
笑顔で私にそう言われて
ー既にアレと接触しておるのだろう?ならばもちっと真剣に考えよっ!ー
そう非難するのを聞いた姉さんの
「絃刃っ!アレとは何ですか?隠し事はしない約束したでしょ!」
そう怒られたから
「アレと接触したのはその変態が現れるホンの少し前で姉さんに何て説明したら良いのか悩んでたんだよ?無い知恵絞ってね…」
そう言って大袈裟に溜め息を吐いてみせたらヴァニラとミントの二人がクスリと笑ってくれたから
「可愛い笑顔だね…」
そう言って爺いを見て
「私は絃でアレに接触してみたけど何の反応も無い…私は趣味でないらしく全く反応がなかった」
そう言って肩を竦めて見せたら
「アレとは何なの、絃刃っ!」
又しても怒鳴られたから
「知らない…私に言えるのはかなり大きい障壁でその先が見通せないし私の絃では突き破れなかった…
まぁ、それに関しては然程珍しくはないけど付け入る隙も無いのは恐れ入った…」
おどけて言う私を睨む姉さんに
「辛気臭く言ったって事態は変わんないんだよ?姉さん…」
私にそう言われて渋い表情で言葉に詰まる姉さんに
ー姉であるお前さんはそう言って納得する事は出来んだろうが一理あるのだから妥協せよ
確かに大きな障壁だろう…町ひとつをすっぽり包む結界のようだからの…ー
そう言われて
「やっぱり…」
そう溜め息混じりに呟くと姉さんが
「なら何故そう言わないんですかっ!?」
そう言われて
「言えなくしたのは姉さんでしょ?私の直感を常々否定されてちゃもっと確証を掴むまで言えるわけ無いでしょ?
直感に理屈付けなんてバカみたいな事要求してきたのは姉さんなんだよ?」
私は堪らずにそう声をあげ
「まぁ良い…今この状況でそんな事言っても意味無いんでしょ?」
私は爺いを見ながらそう聞いたら
ーわしが他人事に口を挟むのもなんだがもそっと姉の意を汲んでやろうとは思わんのか?ー
爺いのその言葉に鼻で笑い
「アタシだってその努力はこれ迄してきたさ…でもその結果がいつも予感が有っても事前に話せなくなったんだ
特に牙を抜かれた状態のアタシには姉さんに反論なんか出来やしないんだからねっ!」
苛立ち紛れに私がそう叫ぶとやれやれ…と、言った表情で溜め息を吐くフィー
の顔がみえたけどアタシには関係無い
「で、結局何が言いたいのさ?爺いさんはさ
少なくともアタシが見える範囲の見透しじゃアタシには何の関わりもないんだけどね?」
鼻面にシワを寄せた私の問い掛けに
ー当たり前じゃ、この世界その物に影響を及ぼすモノなのじゃ…
直接的に関わりを持つ個人等どれ位居ると思うね?ー
そう言われたアタシは
「そんなモノアタシにはどうだって良い…私が気にすれば良いのは姉さん、ヴァニラとミント、フィーとサキナにサトナこの六人だけなんだからさ」
そう言って爺いさんをせせら笑ってやったら
ー主には目上の者を敬う気はないのか?ー
爺いにそう言われたから
「目上だからってだけで敬う気は更々ないね、敬う事の出来る人にはちゃんと態度で示すけどアンタを敬う理由は微塵もないんだけど?」
そう嫌味っぽく言ってやったら
ー全く親の顔が見たいわ…ー
とか抜かすから
「どうぞご自由に、姉さんすらおぼろげにしか覚えてないのに私が知るわけ無いんだからさ
まぁ良い取り敢えず馬車はその結界に向かってるんだから何かわかったら報せるで良いんでしょ?
それがアンタの役に立つか立たないか迄は知らないけどさ」
そう言って溜め息を吐いて見せると
ーよかろう、わしも取引出来る者とは取引して少しでも娘に危害が及ばぬ様働き掛けよう…では又のー
そう言って気配を消したんだ
「そろそろ次の停車場がある町が見えてくる頃だけどどうなってることやら…」
そう思っていたら再び大型の肉食爬虫類が現れて…
(あれ?何かと闘ってる?)
私がそう思っていたら
「変わった装備ですがアレはどうやら人間の男の様ですね?」
誰に聞くともなく呟くフィーに
「アイツ何やってるんだろうね?」
呆れてそう呟く私に
「さぁ、狩りの様にも見えますが…どうやら今の一撃が脳を貫いたようですね…」
そのまま様子を見ている馬車に気が付いたそいつが馬車に接近してきたので私達から肉を買い取った男が馬車を停めさせるとそいつも地にさざ降り立ち
「おっちゃん、ボクに何の用や?今メッチャ腹ペコで機嫌悪いんやけど?
あのど阿呆のせーで狩りの獲物逃げられもーたんやから又まんま食いそびれそーやねんからな…あー腹へった…」
そう言いながら上げられた面頬の下に隠されていたその素顔は予想以上に若く幼さを残した少年…
そう思っていたら嫌な顔をして睨まれたからふんっと鼻を鳴らしてやったら
そいつが何かを言う前に腹の虫が盛大な鳴き声を上げたから顔が真っ赤に染まりヴァニラとミントに笑われているのを見て
「あ、あんなーっー…こーゆー時は気ぃ付かん振りすんのがレデイーの嗜みっちゅうもんやで?」
そう情けなそうに言ったら益々二人に笑われている…バカなヤツ
そう思っていたら
「君はアレはどうするのかね?」
そう聞かれたそいつは
「どうするもなにもあないなモンどないせーちゅんよ?」
そう聞き返すから商人は目を光らせ
「アンタさえ良ければわしが買い取る(名一杯安く買い叩いてやると言った目で)がどうするよ?」
そう言われて
「別にかまへんで?」
そう言って姉さんを見て
「アンタ薬膳魔導師やろ?良かったらこれとなんか食いモン交換してくれへん?」
そう言って隠しから取り出したの小さな巾着袋一杯の餡豆で
「もろたはえーんやけど一個食うて見たら苦手なんよ…この味…
せやからはっきりゆーて要らんのやけど食いモン粗末にしたらアカンけど食う気なれへんしどないしたらえーんかわからへんのよ…」
そう言って姉さんに巾着袋ごと渡すと受け取った姉さんも
「取り敢えずこれを食べてなさい」
そう言って渡したのは温か草を練り込んだ堅焼きのパンで結構苦くて辛いにも拘らず平然と食べてるから
「それ、辛くないわけ?」
アタシがそう聞いたら視線を逸らして
「別に…ボク、辛いの好きやし魔女に食わされとったもん食うとったボクがゆーのもなんやけど人間の食いモンや思いた無いもんやったから…
まぁちょい苦いかな?思わんでもないけど久し振りの人間らしい食いモン食えて涙出てくる程嬉しいて敵わんわ…」
ってマジ涙出てるしヴァニラとミントも笑ってる…
「はーっ…食うた食うた、ごっそさんやな」
呆れた事に普通の人間なら一個で一日分に匹敵する堅焼きパンを四個も…
しかもあの残念な味は薬膳魔導師としても名の通った姉さんのファン達すらダンジョンの外で食いたいとは思わない…
そう言わしめるモノで慣れない者だと臭いを嗅いだだけで食欲を失うのに…
私がそう思っていると
「ほたらボク先急ぐさかいアレ、アンタらが処分しといてやっ♪」
そう言って私から逃げる様に立ち去ろうとするから
「フィー、捕まえてっ!」
そう言われて首根っこ押さえてくれたから
「アンタ、何企んでるの?私に対し何か疚しい事でも有るの?さっきから私を視界に入れない様にしてるけどさ?」
そう詰問されたそいつはあからさまに私から視線を逸らして
「やや、そないハズい事等言いとおないっ!昔苛められてた近所のお姉ちゃんに似とるなんてゆえるわけ無いやろ?」
そのそいつの無意識に発した独り言を聞いた姉さんが…
「トラウマになった訳ですね?」
そう聞いたら
「と、トラウマってなんやねんな?いきなし…な、な、な、何の事かわからへねけど?」
そう言って顔を真っ赤にして焦りまくってるし…
(それになんだろ?姉さんに話し掛けられて照れた表情浮かべてるの見てたらムカつくんですけど?)
そう思ってる私にフィーが私にも聞こえる様に
「君の装備は変わってますね?」
そう言われて気を取り直した奴が
「まあね…元々異世界から来たボクの世界の物をこの世界風にアレンジして魔法具ちゅーかマジックアーマーっちゅーかそんなとこやろ?
メインパーツのシールドに吸魔の槍に吸熱の槍に可変取り外し可能のウィングソード
ガンヘルム、鉤爪とハンドボウガン付手甲に鉤爪スパイクシューズ
これらを駆使して魔力と身体能力の劣るボクがなんとかかんと一人前のフリしとるんよ…」
そう苦笑いで答えるそいつに
「君の目的は何?」
フィーの質問に
「いや、そない大袈裟なモンはないで?魔女のパシりやらされとってこの塩の入った魔法のツボを食肉加工場に持って行くんがボクの用事やねんけど…
自分でゆーのもなんやけど迷子になってもーたみたいで…なんぼ探しても工場が見付かれへんのよ、どないしたらえーんやろ?」
溜め息を吐いて悄気るそいつはやっぱり私には視線を向ける気はないらしくその態度が私をムカつかせる
「まぁ、ここで愚痴っとったかてしゃーないからそろそろ探しに行くわ…ほな皆さんお達者で、ほなサイナラ」
そう言って飛び立とうとする遠くに見える土煙にそいつも気付き
「あ、アレてメッサヤバイんちゃう?」
そう言って初めて私を見ながら聞いてくるから
「飛んで逃げられるアンタには関係無い」そう言ってやったら
「はぁ~っ…そう言われてはいそーですかほなさいならって逃げられるんならとっくに逃げとるわっ!
ってまぁえぇわ…これ持っとったってや…」
そう言って姉さんに魔法のツボを渡すとヴァニラとミントの頭を撫でて
「そない顔せんで宜し…ボクが何とかしたるさかい…」
そう言ってフィーに
「二人を守ったり、大切なおひいさんなんやろ?ちゃんと守ったるんやで」
そう言ってそいつは
「行くでフライングアーマーっ!」
そう言って手甲鉤に手を突っ込み飛び上がると爬虫類の群れに向かい一旦上昇し霧揉み状態で急降下すると砂塵を巻き上げ再び急上昇
何処までかは知らないけどかなりの高層迄上昇したそいつが何をするのかわからない
ー大気に潜みし魔力を糧に熱を夢を、希望を奪え吸魔吸熱の槍よ?大空から自由と光を奪い全てを闇に閉ざ最終氷河っ!ー
霧揉み状態で急上昇して巻き上げた地表の熱い空気と砂塵を巻き上げる上昇気流を作りそれらから一気に熱を奪い上昇を終えた砂塵がゆっくり舞い降り始めた
砂塵はやがて雪を纏い荒野に雪が降り始めると静かに降り積もりやがて低温に弱い爬虫類達の足を止めやがて全ての爬虫類を覆い尽くした
「…」
その代わりに朝飯はごちゃごちゃ言わず食べさせなよ?
身体自体は未々思う様に動いて無いんだからさ、良いねっ!?」
今度は私の意見に頷くアタシと翔は二人に言い様に操られている事に気付けなかったんだ…
私達を下ろし荷物を渡すと
「琴羽姉さん迎えに行ってくるさかいおひいさんの事は姉さんに任せるで」
そう言って飛び去るのを見送ってから私達は木陰で休みながら皆を待つ事にした
姉さんを乗せ荷物かり連れて来たから食事の支度を初めてもらい商人、サキナ、サトナ、フィーの順に連れて来たからフライングアーマーを解除させて休ませる事にして座らせてたら
「翔ちゃん喉乾いて無い?」
「翔ちゃん汗拭いてあげるねっ♪」
そう言って甲斐甲斐しくお世話する二人の翔の扱いはほぼ同世代の男の子…と言うかヴァニラはどうも年下の男の子の扱いでお姉さん気取りに見えるから思い切り笑えたアタシは
「両手に花、モテモテだね?翔ちゃん」
そう皮肉って姉さんの手伝いをしにいきながら三人を気にするアタシはやっぱり素直じゃ無いんだろうね…
これからの善後策は姉さんとフィーに任せ昼寝する三人を見ながら魔力を高め再調査に備える事にした
その後目を覚ました翔に案内された私は町の在るはずの場所に飛んでもらいその間は姉さんにはヴァニラとミントを見守りを頼み
他の四人は廃屋の手入れで当面の拠点にする準備をしてもらう事にした
絃を展開して周囲を探る私に負担にならないようホバリングで空中停止する翔の息は大分荒くなってきてる
私とミントの何とか二、三日日分位の食事の分位は確保できたから皆の元に戻る事にして…
無理をさせた翔は食事中にうとうとし始めあっという間に眠りに落ちてすっかりなつかれたヴァニラとミントに挟まれ寝ている…
「絃刃…朝から翔と組んで再調査…頼めますか?」
そう言われて
「私は別に構わないけど翔が嫌がるんじゃないの?」
私がそう言うとフィーが面白そうに
「ベストカップルに任せりゃ私達も安心できるんですけどね?」
そう言われて
「私はアンナ馬鹿アタシは大嫌いだっ!」
そう答えると
「良いのかい?そんな事言っててヴァニラとミント…特にヴァニラは本気で翔に好意を寄せてるんだからね?」
そう言われたけど自分の気持ちがよくわからなくなってきてる私は
「物好きな…それに翔なら琴羽姉さんに気があるみたいだけど?」
そう言ってやったら
「そうかね?私の見る限りじゃ翔が琴羽を見る目めは大好きなお姉ちゃんなんだけどね?」
そう言われてさえ
「そうだとしてもアタシには何の関係もないことのはず?」
そう答えると溜め息を吐く姉さんとフィー
「仕方無い…そちらはともかく飛行能力を持つ翔と高感度の感知能力を持つ貴女の組み合わせが調査活動向きな事までは否定しませんね?」
そう言われればさすがに否定出来ないから渋々頷くと真剣な顔で姉さんが
「アレって一体何なのかな?」
そう呟くけどアタシにはその呟きには答えられそうもなかった…私もそれをずっとそれを考えていたのだから
それに忘れていたけど私の誕生日がいよいよ間近に迫って来ている終わりの時が近付いてきた…
翌日の調査中襲撃を受けた私と翔はその火蜥蜴の火の息を浴びかなりのダメージを負ったけどただではやられてない
火蜥蜴が吐く火の熱や魔力を吸った吸魔と吸熱の槍は巨大化し翔は…意識が朦朧としている
多分これ迄扱った事の無い魔力の量と熱量を扱ったせいだろうけどやっぱりバカだ…
アタシなんか庇わなくても良いのにさ…
翔の火傷も私を庇った結果なのにこのバカの説明は全部自分のせいだと言い張っている…
半死半生の大火傷を負ってるくせに私の火脹れ程度の火傷を姉さんに死んでお詫びする…そう言って聞かなかった
もっとも…そこ迄話せたこと自体が奇跡的な事で侘びを繰り返すうちに意識を失ってしまっていたのだから
私ですら感知出来なかった敵襲だから誰のせいでもないでもないのにさ…
わかってる翔の気遣いなの位は…ヴァニラとミントが不安にならないようにって考えての事なの位はね
気が付いたら私は長らく封印していたカード占いを始めていた…堪らなく嫌な予感がしたから…
そしてその予感は私を裏切らない…悪い予感は悪い占い結果同様に決して外れない…
私の寿命が延び翔が間も無く死ぬ…全てを生け贄にし何一つ残さず私の前から消えてしまう…決定事項だった…不可避な近未来の…終わりが見えた
そして占い通りに翔だった物は私達の目の前でフライングアーマーごと塵ひとつ残さず燃え尽きた…
ヴァニラとミントの絶叫がいつまでも耳から離れなかった…