闇と影   作:春の雪舞い散る

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降誕した和泉の女神の依り代と観月の代理で大公領の社交界を賑わす翼だけど自分に閉じ籠る水の精霊の巫女と自分に自信の持てない火の精霊の巫女がその身分を明かすのはいつ?


火と水と女神⑤

 

 「 それじゃあ僕は命ちゃんが我に返った時、未だここ僕が居たら不味いだろうからここは一旦退散する事にしよう 」

 

 そう言って笑顔を残し立ち去り、その後暫くして我に返った命に

 

 「 あれ? まこちゃんはいつから居たの?みこ、全然気が付かなかったよ… 」

 

 そう苦笑いを浮かべて言う命を見ながら真琴は

 

 「 少し前だけど一生懸命お歌の稽古してたから気付かなかったみたいだね 」

 

 そう言いながら

 

 ( 十六夜様と遭遇した前後の記憶を削除して心の安定化をはかることにしたんだな… )

 

 そう考えて内心苦笑いする真琴だった

 

 

 何故、自分が同席しなければならないならないのか?

 

 それを理解出来ない命にとっては苦行に等しい晩餐も終わりに近付き

 

 「 みこ、最近観月様にお歌聞いてもらったこと有る?

 

 今朝のお稽古聞いたけど大分上達してたから大公様や睦月様に如月様にも聞いていただいたらどうかな? 」

 

 そう言われてビクッと震え弱々しく首を振り

 

 「 まこちゃんみたくお上手じゃないみこのお歌聞かされたって誰も喜ばない、迷惑なだけ… 」

 

 消え入りそうな声で言う命に理由はわからなくても真琴が今この場で命に歌わせたがってる事に気付いた翼とチサは

 

 「 そんな事ないよ、みこちゃんの可愛い歌声を迷惑な人なんて言う人なんて居るはずないよ?

 

 未々社交界に慣れない私はいつもみこちゃんの歌に癒して貰ってるんですからね 」

 

 そう翼が言えば

 

 「 お勉強の後にみこちゃんの歌を聞くと、午後からも頑張ろうって思えるんだから自信持って 」

 

 そう言いその理由は十六夜の為だろうと推測した美月のスタッフ達は

 

 「 みこちゃんの側に居て沢山聞いてるミナとユカの二人が本当に羨ましくてたまには代わって欲しい位ですよ? 」

 

 と、ユイが言うと同調して頷くユウ、ユキ、ユマ、ユミ達

 

 そして優しく包み込むように命の身体を抱き締めながら

 

 「 私も命様のお歌を聞くのは大好きですからいつものように歌ってください… 」

 

 そう囁くように言われて

 

 小さく頷くと静かに歌い始めた

 

 最初の曲はミナと花摘をしてる時をイメージしながら歌い ( イメージ曲は松任谷由美の守ってあげたい )

 

 次いで二曲目はしっとりとした曲を歌い ( イメージ曲は帝国歌劇団奇跡の鐘 )

 

 そして三曲目は軽快に歌い ( イメージ曲はパリ歌劇団ボヤジュー )

 

 そしてラスト四曲目はおもいっきり弾ける曲で盛り上げた ( イメージ曲は激、帝国華撃団 )

 

 普段は落ち着きはらった大公、穏やかな睦月、観月の前では大人しくしている如月も大いに盛り上がった

 

 観月の指示で大公家の使用人逹が集められ時ならぬミニコンサートに沸き上がった夜になった

 

 聞いていた人達が喜んでくれたのが余程嬉しかったのか笑顔で涙を流していたけどそんな命に観月が

 

 「 まもなく私はチサを連れて歌の国の本国に向かわねばなりませんがみこもついて来ますか? 」

 

 そう問われてそれまで真琴と離れるなど夢にも思わなかった命は

 

 「 行かない、まこちゃんの側に居る…離れ離れはヤっ! 」

 

 小さい声では有るけどハッキリと拒絶すると

 

 「 みこ… 僕達だっていつまでも子供でいられるわけないんだから大人にならないとね… 」

 

 そう諭すように告げられた命は

 

 「 みこは大人になんかなれないしなりたくもないもんっ! 」

 

 そう言って目をつぶり下を向く命の肩を震える肩を抱きながら

 

 「 …うん、確かにそうだね…大人になったみこの姿は僕にも想像できないよ… でもね… だからこそ僕は早く大人になってみこを守って上げられるよう大人にならなくっちゃダメなんたよ… 」

 

 真琴にそう言われて

 

 「 生まれてきちゃダメな子のみこにはまこちゃんの側以外に居場所は何処にも無いから…なんにも出来ない要らない子のみこは誰も用は無い 」

 

 歌っていた時の輝きを失っている瞳は暗く淀んでいて、居たたまれなくなったミナが

 

 「 そんな事有りません、私は命様の事が大好きですし私にとって恐らく最後のご奉仕が命様のお世話になって幸せな時を過ごさせて頂きました 」

 

 命にとりその告白は衝撃だった

 

 側に居てくれるのが当たり前で、身の回りの全てをお世話してくれるミナは既になくてはならない存在になっていた

 

 そのミナが自分の前から居なくなるなど考えたくもない事なのに命のその様子に気付かない鬼百合が

 

 「みこ、お前の事が好きなのはミナだけじゃない…な、大公?」

 

 そう声を掛けられた大公は穏やかな笑顔で

 

 「観月達の様に妹と呼ぶのは無理があるが、娘や姪を見る様にお前達を見守っている」

 

 大公はそう答えながら命と真琴の二人を連れて初めて言葉を交わした時の鬼百合の台詞を思い出していた

 

 「それにね、みこ…一緒にはいけないけど僕や翼だって後から行くんだよ?

だからほんの少し離れるだけなんだから我慢できるよね?」

 

 真琴のその言葉を聞いて

 

 「 ホントに来てくれるの? 離れるのはホントにちょっとだけ? 」

 

 そう確かめずには居られない命に笑ながら

 

 「 僕だって余り長く会えないのは嫌だし女神の祭典に出なきゃいけない僕はどうしたって行かなきゃいけないんだかからね 」

 

 その言葉を聞いた命は

 

 「なんかまこちゃんて、お兄ちゃんみたい…

やっぱり妹はお兄ちゃんのゆー事聞かなきゃダメなんだよね?」

そういきなり話を振られた観月は逆に兄達に言うことを聞かせていたから

「ええ、まぁそうですね…」

と言葉を濁し三兄妹の事を知るも者達は笑いを噛み殺していた

そんな事を知らない命は小さく頷くと

「分かった…自信無いけどちょっとだけ頑張ってつよくなる」

そう呟き

「観月ちゃま、みこも連れてってね…チサちゃんも一緒なんだから多分大丈夫…だよね?」

そう言いながらミナを一瞬見たけど命の決意を喜んでるだけなのを見て目を伏せる命だった

その様子を見ていた大公父娘は互いの顔を見て頷き合っている事は勿論命は気付いていない

そして十六夜が嬉しそうな顔で真琴に頷きかけていることも勿論気付いていない

「命様のお床の支度をしに参ります」

そう観月に告げ退出するミナの後ろ姿を切なそうに見送る命だった

その後暫くしてから阿に抱かれ寝室に向かうみこを見送り

「ミナを命付の侍女として連れていけるか?」

と言われた観月は

「折角行くと言ってくれた命の気が変わらぬように是非とも連れていくべきですしそろそろ公女宮に呼んでもよい良いくらいですから何ら問題有りません

ただこの慌ただしい中わざわざ所属変更せずとも大公邸所属のまま命付で私の預かりとすれば良いと思います」

そう聞いた大公は

「分かった、そのように処理しておく」

大公がそう告げるとその夜の晩餐はお開きとなり使用人達は仕事をしに各々の持ち場に戻った

ただその事を未だ知らない命は真琴とミナの二人と別れる不安からミナに手を握られても涙が止まる事が無く…

その様子を見た真琴が

「ミナさん…みこに添い寝して抱き締めてあげて

それ程に不安なんだからね、僕と貴女が一度に自分から離れるって事はさ…」

そう言いながら溜め息を吐く真琴に

「私なんかがその様なことしても宜しいんでしょうか?」

そう言うミナに

「精霊の巫女であるみこに遠慮してるならそんな必要はない

今ミナさんが手を握っているのは精霊の巫女の命じゃない、本人が言った通りに貴女に甘える事しか知らない幼く弱いみこなんだからさ

それともみこなんかと添い寝なんてしたくないの?」

そう言われ慌てて命の布団に入り頭を抱き締めると命の涙は止まりミナの胸に顔を埋めて微笑んでいた

真琴すら初めて見た嬉しそうに微笑む寝顔

日頃の疲れがたまっているミナもすぐに寝息をたて始めたのみた真琴は事の次第を観月に知らせると

「ミナをこのまま命付きにして本国に同行する様に手続きしてますから安心しなさい」

そう言われさすが観月様と思って安心して部屋に戻り眠りに就く真琴だったが

「やはりミナは常に命の側近く控えさせる必要がありますね…」

微笑みなからそう呟く観月だった

 

翌朝その事を知らされた命が喜んだのは言うまでもなく玄関迄ではあるけど十六夜の見送りに現れる程だった

勿論ミナの背中に隠れてでは有るけど昨日の朝は自分の姿を見て意識が跳んだ事を思えば格段の進歩

本当の笑顔はこの次会う時の楽しみにすれば良いと思える十六夜だったから

「チサちゃんとの再会を楽しみにしてる、みこちゃんはその時に本当の笑顔を見せてくれたら嬉しいな

翼ちゃんは母上のお供で社交界に顔を出してくれたら喜んでくれるよ?

娘を連れて歩くのが母上の夢だったからね

真琴ちゃん、女神の祭典については役員に名を連ねる僕が受け付けた

だから後は観月が書類を持ってくれば良いようにしておくから来てくれるのを楽しみに待ってるよ」

と言われた真琴は

「泉美様と観月様に恥を掻かせない様に頑張ります」

そう答えると

「阿とミナは命を頼みます

真琴とチサは朝の勉強を、翼は今朝の勉強は休みで私と港まで十六夜の見送りに向かいます」

そう宣言するとユマは翼に同行し吽が警護役で同行する事になった

その夜正式に出航日がきまり観月の秘書にユイ

命の世話役にミナ

ミナのサポートとチサの指導にユカが選ばれ

全体のサポート役としてユウが選ばれ女神の騎士団を名乗る嵐と部下の内の三人に鬼百合と阿が同行する事になった

そしてまたしても命にとっての難題発生

「みこ、出航前日の壮行会を兼ねたパーティーで貴女の社交界デビューを飾って欲しいのですが勿論出席してくれますね?」

そう言われ青ざめた顔で

「みこにはまだ早いよね?」

そう言ってミナに救いを求めるとミナより先に

「まぁ確かに体力的には未々無理があるかな?」

と真琴が言えば

「未だまともに歩けませんしね」

と阿も言い

「真琴が歩き始めても何をするでもなく日長膝を抱えて踞ってましたし歩き始めたのもこちらに来てからですからね…」

とレムも言うと

「阿には申し訳無いけどその夜はみこの側から離れずミナに手を貸してもらえますね?

勿論入退場のエスコート(抱き上げて)も任せます」

そう言われホッとする阿と複雑な表情のユカだった

「取り敢えず今回は顔見せだけでも果たして欲しいのですから宜しいですね?」

そう言われてさえ言い訳を考え言葉の出ない命に

「みこ、僕達より年下のチサちゃんだって出てるし翼は観月様に代わって社交界に参加してるんだよ?

それにね、みこ…大勢の人達がみこの登場を待ってるよ…」

その背中を押すように

「確かに早すぎることはない、アタイの知る限りじゃあ観月が社交界デビューしたのはチサよりもさらに早い六歳だと聞いている」

その言葉を聞いて逆に

「人は人、真琴…貴女は大事な事を忘れている…

貴方達は鬼百合と出会う前に話をした事のある人間がいますか?対人恐怖症にも等しい命様にとって見知らぬ人間が多く集まるパーティーに出ることが恐怖以外の物でしかない事を?

逆に言うと同じ環境で過ごしてきたはずの貴女が真逆の反応をしている事の方が私には驚きですからね?」

そう言われ頭を掻きながら

「そうなのかな?そう言われても余りピンとこないんだけど…」

レムにそう言われて苦笑いの真琴に

「芯の強い貴女には今の命様は理解出来ないでしょうし私自身理解できるとは言えません…ですが真琴、貴女が初めてのパーティーで踊る気になった気持ちを教えてあげてはどうですか?」

そう言われた真琴が命の顔を見て頷き

「みこ、今の大公様のお屋敷に敵なんか居ないんだから安心して…仮にいきなり襲ってきたってレムや鬼百合さん達がみこに近付かせなんかしない

それにね、みこ…今の僕達を守ってくれる人はもっといるんだよ?

大公様、睦月お兄さんに如月お兄さん観月様にユカさん達美月のお姉さん達やその方達にお仕えする皆さんもいる

僕や翼、チサちゃんだっているんだから辛かったら辛いって言えば良い……

それにね、みこ…何よりも皆がみこの事を愛してるんだから…ね、ミナさん?」

笑って言われたミナが慌てているのを見て笑いの渦が巻き起こる一同だった

勿論命と当のミナ以外ではあるけども……

そんな訳で渋々出席を了承した命だった

そしてパーティー当日

分厚いベールの影に隠された真琴の妹の命がついにその姿を現す時が来たそのセンセーショナルな発表は社交界に縁の無い者すら好奇心を掻き立てられる物だった

しかし期待が大きかった分人々が命に対し落胆するのも早かった

阿に抱かれたままの姿で会場入りした命のその貧弱とも言える体つきはダンスに耐えられそうに無い様に見え何よりも阿にしがみつくその姿は母親から引き剥がされまいとしがみつく幼子のそれに見えたからだ

それ故にそれを不満に感じたのは一部の男達だけで多くの淑女達の母性本能をくすぐったし

老紳士の目には友人知人の孫娘の様に映りその命の容姿から妖精之様ではなく妖精その物とおもえた

観月に似てなくもない命が実は睦月の隠し娘と言われても不思議ではなく感じられたが真琴と命の年齢からはさすがに有り得ない話

と、言うか27歳の睦月が推定年齢12歳の二人の父親等洒落にならないから未だ大公の隠し娘の方が…

まぁ未だ無き妻を想いパーティーでも踊らない大公には有り得ない話だが

翼、真琴、チサの最初のパートナーは観月の推薦した者を選びユカ以外の美月のスタッフは各々の判断でパートナーを指名

それを見てその他の淑女達も各々思い思いに指名して各々カップルになり紳士達のエスコートでホールに向かった

如月はミナに向かい目配せするとミナも頷き「僕にはシャンパンと命の飲み物は任せて良いね?」

そうミナに言うと軽く頭を下げミナが取りに行くのを見送り窓際のベンチに命を下ろすとユカが隣に座り如月は向かいのシートに腰を下ろしその脇には人の目にはブーケとしか映らない様にして花の娘を控えさせていた

そこに飲み物を持ってきたミナが如月の前にシャンパン、命の前にはほんのり甘いノンアルコールのカクテル

ユカの前にはユカと阿の為の冷たいお茶を置き

「観月様の指示ですので…」

と言われてミナに抗議を封じられたユカだった

そんな一同に一人の青年が近寄ってきて

「おいこら如月っ!こんな可愛いお姫様独り占めたぁどうゆー了見だぁっ?

全くぅーっ…相変わらず良い根性してやがるなぁ~っ?」

そう言われた如月はにやりと笑いながら

「兄が可愛い妹にお前みたいな悪い虫が寄り付かない様に警戒するのは当然の事だろ?」

同じくにやりと笑いながら応えると互いの肩を抱き合いながら

「長い航海演習ご苦労さん、いつ戻ってきたんだ?」

と聞かれた青年は

「今日の昼過ぎだが急遽明日の早朝出航が決まって直前まで出航準備でバタバタだったから本当の所来る気にならなかったんだが…」

と渋い表情を見せると

「なんだお前、観月が女神の依り代になった事を未だ聞いてないのか?

その観月がお前がさっき踊っていた赤毛の娘、チサとこの命を連れて本国に向かうんだ

それ位の事情がなければ我が大公領が誇る海兵隊旗艦にそんな無理はさせない」

そう誇らしげに言うと

「公女殿下についてはそれで良いとして…」

そう言って命を見る青年に

 「お前の疑問は解るが今は未だと言うより僕の口からは答える事はできない

 

 その問題は後日本国より発表されるべき重要機密でこれは父大公の決定事項だからな

 

 だから、先日訪れた十六夜にすら明かしてない程の重要機密だ…と、のみこたえておこう」

 

 その答えを聞いた青年は溜め息をひとつ吐き

 

 「そうか…お前と違い一士官に過ぎない俺はそれはそれと置いとくとして…

 

 今、最大の問題はいつになったら二人の可憐な姫君達に俺の事を紹介してくれるのだ? って事だな… 俺としてはそっちの方が余程重要な問題なのだがなっ♪ 」

 

 ニヤリと笑みを浮かべながら言われた如月は、苦笑いしながら観月に目配せすると命の手を握る真琴を挟んで並ぶ四人を見ながら

 

 「二人等と遠慮しないで四人とも紹介させろっ♪ 四人とも、この男は帆風と言って僕の士官学校時代の悪友でね…

 

 特に命とチサは明日乗る船の一等航法士だから面識が有った方が良いと思って紹介することにしたんだ 」

 

 そう言われて

 

 「四人の中では年長の翼です、宜しくお願いします帆風様」

 

 そう言ってドレスの裾を摘まんでお辞儀すると

 

 「僕は真琴でこの子は妹の命です、宜しくお願いします帆風様」

 

 そう言ってドレスの裾を摘まんでお辞儀すると命も慌てて頭だけペコッと下げる命の様子に苦笑いの観月

 

 「チサって言います、宜しくお願いします帆風様」

 

 そう言ってドレスの裾を摘まんでお辞儀すると

 

 「君達は如月の事を何て呼んでるのかな?」

 

 その意外とも言える問い掛けに翼とチサは

 

 「如月お兄さん」

 

 真琴と翼が

 

 「如月にいさん」

 

 命は

 

 「キーにいちゃま」

 

 そう答えると

 

 「そうか、なら俺にも “ 様 ”は要らない 」

 

 公女殿下や如月…睦月さんもだろ?」

 

 そう言って如月が頷くのをみて

 

 「なら俺は君達を友人の妹として扱うし君達も俺の事は兄の友人って思ってくれれば良い、って訳で宜しくね」

 

 そう言われて面食らう三人と事態に全くついていけない命を他所に

 

 「 帆風、貴方はツイてますね? 十六夜が望んでいた命の社交界デビューに立ち会えたのですからね 」

そう言われて会場内に流れる微妙な空気を読み一言

「 それは俺に命姫の為に社交界のドアを開けと言うフリなのかな? 」

そう観月に軽口を叩くと

「 私はそう宣言してますし美月のスタッフ達もそう考えてます 」

表情を余り変える事の無い命の顔が戸惑いの色を浮かべるのに構わず

「命は踊らないんだね? 」

帆風のその言葉にビクッと反応し

「 出来ない…」

そのか細い呟き…囁く様に漏れた言葉に

「大丈夫、踊りなんかすぐなれるから気にしないで…」

ふるふると首を左右に振る命に代わって真琴が

「対人恐怖症の傾向のあるみこは特に見知らぬ男の人が駄目で十六夜様の姿を初めて見た時も衝撃から意識を跳ばしましたから…

踊る踊れないじゃなく手を繋ぐのは勿論近寄るのだって…」

そう言いながらあれっ?と思い命の顔を見る真琴に

「大丈夫ですよ、阿の陰に隠れてはいてもみこは帆風の事を拒絶してませんからね

みこ、生粋の武人である帆風は怖いですか?」

そう聞かれた命は右左右と小さく首を振り

「そんな事言ったら鬼百合達だって怖い事になる…」

命のその言葉を聞き

「普段はお調子者ですが優しくて頼りになる男なのは分かりますね?」

首を小さく縦に振り

「王子ちゃまの時はいきなしだったから…」

そう口ごもる命に

「みこ、帆風さんなら稽古もしたこと無いみこの相手も優しくしてくれるから踊ってきなよ?」

観月の言葉の端々から感じるその思いを命に告げると口を閉ざした命に向かい

「みこ、踊ってきなさい」

静かに…しかしきっぱり言いきる観月に言い返せる命ではない

その命に右手を差し出し

「麗しの命姫の映えある社交界デビューを飾る最初のパートナーになる栄誉をお与え下さい…」

そう告げられた命が返事に窮していると

「みこ、帆風様の差し出した手を取って喜んでって答えてその甲に口付けすれば良いんだよ」

真琴にそう言われてその通りにすると帆風に導かれホールに向かう命の姿を見て驚きと落胆の溜め息が広がった…命のその覚束無い足取り故に

ホールの中央に立つと溜め息を吐き目を閉じると大きく息を吸い込み流れて来る音楽に耳を澄ませ…

目を開くとそれまで枯渇していた魔力が一気に高まり命の身体を宙に浮かせた

勿論その事に気付いたのは命の事を心配して見守っていた者達だけで差し出された帆風の手を取るとやっと命の社交界デビューが始まった

そして次第に宙を舞う命の姿に気付き始めた人達が現れ始めホールに居る者全てがその事実を知った

宙を舞う命と踊る帆風の姿はまるで神話か童話の中で妖精と踊る主人公の一場面の様に見え後は老若男女を問わず命の手を求めて踊りに誘った

命が踊り始めたのを見て安心した観月はユカと阿に目配せをするとユカは嬉しそうに微笑み阿は苦笑いでユカに手を差し出すと命の近くで踊り始め真琴たも新たなパートナーの申し込みを受け入れ踊り始めた

ー鬼百合に頼みが有ります…貴女の腕を譲ってほしいのですー

直接頭に響くその声に反応し命の顔を見ると

ーみこは預かり知らぬこと故にみこの顔からは何も読み取れないー

そう告げられた鬼百合は溜め息を吐き

ーお前は女神の救出の時にアタイ等を仕切ってたみこだな?

頼みってのは一体何だ?ー

そう聞くと

ーみこに同行する者、真琴達を守護する者、精霊達を捜索する者、真琴達が去った後のこの地を守護する者、国境を守護する者…

手駒不足は否めませんね?ー

そう告げられた鬼百合は

ーそれはその通りでアタイの腕を触媒にして戦士を召喚したいんだな?ー

そう聞くと

ーその通りです、勿論お礼は勾玉と霊玉をと考えてますが頼めますか?ー

その要請に

ーそれはアタイも気にしていた事だから異論はない

分かった、お前達が退場したらちょっと抜け出し受け入れようー

そう答えると

ー私もミナに言って勾玉と霊玉の入った鞄を控え室に持ってこさせます

それと大公と公女とユウとユカにも立ち会わせますー

そう告げると次のパートナーである大公の元に向かう命だった

 

命達の退場時間になり命達と共に控え室に入った観月とユウに

「間も無く大公と鬼百合もここに来ますから暫く待ちなさい」

その聞き覚えのある威厳に満ちた命の声に命の顔を見る翼以外の者達

その言葉通りに二人が現れるとミナから鞄を受け取り

「大公と公女、これより召喚儀式により鬼百合の腕を触媒にして戦士を召喚します

それにより呼び出した者の力を借りこの地の守護や精霊の探索を進めたいのだが宜しいかな?

そしてユウにユカ、貴女達の想い人が何者で有るのかと言う事実を知りなさい」

そう告げられ息を呑むユウとユカに対し静かに頷くだけの大公と観月を見て

 

 「 鬼百合、お願いします… 」

 

 命にそう言われて隠し腕を取り外し命の前に置くとそのひとつひとつひとつに勾玉と霊玉を埋め込み結界に包まれた

 

 「 みこ… この他に後十個くれりゃ寝る前に後四人呼び明日の朝、腕とこの鞭を置いていくんだかな?

 

 真琴、そん時手伝いに来てくれるな? 」

 

 そう鬼百合に言われて静かに頷く真琴を見ながら

 

 「 鬼百合様、私もお側に居ても宜しいでしょうか? 」

そう震える声で聞くと

 

 「怖いなら無理するな」

 

 そのユウの言葉に勘違いした鬼百合が言うと

 

 「 怖い… 『普通の人間に過ぎないお前が近付くのは許されない領域なのだから駄目だ 』 と、そう言われるのが怖いのです… 拒否されるのが…」

 

 そのユウの切ない言葉に

 

 「悪ぃ、勘違いした…恐らく勘づいてんだろうが残りの手足にも埋め込み手足の再生促進のためアタイ自身も受け入れるつもりだ

 

 だからこれ等を見て分かる通り、事が終わるまではアタイの身体にゃ指一本触れねえがそんで良いなら側でみてな」

 

 鬼百合のその答えを聞いてやっと安堵の溜め息を漏らしたユウに聞こえるように

 

 「 分かった、お礼はみこの勾玉と霊玉を五個づつと僕の白い勾玉の一番大きい方から四個で良いかな? 」

 

 そう問い掛ける真琴に

 

 「今のアタイにゃそれに勝る物はねぇからなっ!」

 

 そう言ってにかっと笑う鬼百合だったから真琴も残りの分は預かっておいて僕の白い勾玉の分と合わせて後から持っていくよ」

 

 と、鬼百合が答えると

 

 「 真琴と大公にはもうひとつ頼みが有ります

 

 まず真琴ですが小さめの勾玉と霊玉を真琴に預けますからそれを使って一般兵士にも使える武具を錬成してください

 

 そして大公、それを貴方に仕える騎士達に託しても構いませんか? 」

 

 そう問われた大公は

 

 「 泉美様の治めるこの神聖なる領地と愛する我が領民達を守る力、有り難く頂戴致します 」

 

 そう聞いて安堵の溜め息を吐き阿を見て

 

 「 私からの話は以上で終わりましたから少し休みます

 

 ただ、既にみこも既に眠ってますから寝室まで頼めますね? 」

 

 そう告げるや否や返事を待つことなくくたっ… と崩れ落ち慌てて抱き止めた阿にそのままベッドへと運ばれた

 

 パーティーに戻った一同は、その後も何事もなかったように振るまいやがてパーティーも終わりの時を迎え…鬼百合が部屋に戻り

 

 仮眠から目を覚ました真琴が待っていて、恐らくは不要になるだろう胴丸を預け

 

 新に霊玉に召喚されたバイキングの姿をした二人の戦士には鱗気と飛沫と名付け

 

 勾玉が召喚したスピード重視タイプ格闘家の二人には黒豹と黒狼と各々に名付けた

 

 胸当てと胴丸に関しては真琴に任せると言うことになりそれは明日以降で良いかな

 

 そう判断し、最後に鬼百合の残った手足と胴に勾玉と霊玉を埋め込みそれらが結界に飲み込まれるのを見届けると真琴は部屋に戻り再び仮眠を取ることにした

 

 夜を徹して鬼百合を見守るユウの前に、新たに現れた水竜と黒竜に翠湖と睡蓮の四人万能タイプの戦士達が姿を表した




次はより新展開です
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