ソードアート・オンラインーEverlasting oathー 旧バージョン、1、2話欠損   作:ゆぅ駄狼

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第12話

「茅場………!?」

「茅場……晶彦……!」

「俺達はずっと茅場の為に戦ってたと言うのか……!」

 

 誇りある血盟騎士団、その団長がこのソードアート・オンラインのゲームマスターである茅場晶彦だと知ると回りが騒ぎ始める。

 

「俺達の忠誠を………」

 

 皆が騒いでいる中、一人の血盟騎士団の団員が自分の持っている大剣を握り締め、団員はエリアの中心で立っている茅場晶彦、もといヒースクリフに向かって走っていった。

 

「よくもぉぉぉおおおおお!!!!!」

 

 団員がヒースクリフに向かっていくとヒースクリフは右手で空中をスライドし、何やらメニューを開いている。

 メニューには数々のプレイヤーの名前が載っており、団員の名前をタッチし、麻痺と言う項目にチェックを入れると団員はヒースクリフに辿り着くこと無くその場で倒れてしまった。

 そしてヒースクリフはユウキ以外の俺を含めその場にいる全てのプレイヤーを麻痺状態にしていく。

 

「ユウヤ………皆!」

「な………!?」

「くっそ……ゲームマスターと言う事がバレてしまったからその場で隠蔽する気か?」

「私達を殺すの……?」

「まさか、ここまで育てた血盟騎士団を放棄するのは勿体無いと思うが……私は第100層にて君達の訪れを待つことにしよう、なぁに……君達ならきっと辿り着くことが出来るさ」

 

 ヒースクリフはそう言うと盾と剣を構え始めた。

 

「その前にキリト君には私の正体を明かした褒美を与えたい……と思ったのだが、面白いことになったのでな」

「面白い……?」

「ふむ、今からユウキ君には私と決闘をして貰う。無論、不死属性は解除する。それに私に勝てばゲームクリアで全てのプレイヤーが解放される」

「ボクがヒースクリフ団長と決闘……」

「そしてユウキ君が負けた場合にはユウヤ君がすぐに私と決闘してもらおう」

「くっ………………」

 

 ヒースクリフは神聖剣を持ちながら指でメニュー画面を操作し、メニュー表示されている《NAVIP-1》を指でタッチすると人間の女の子の様な物がオブジェクト化する。

 オブジェクト化された女の子は空中から地面に着地するとゆっくりと目を開く。驚く程美少女で碧色のワンピースを纏い、美しいブラウンの瞳を持ち、髪はロングで髪色もブラウンだった。

 

「決闘の前に紹介しよう、ナビゲーションプログラム正規型一号………《スズナ》だ」

「スズナです。以後お見知り置きを」

 

 スズナと呼ばれる女の子は自己紹介をするとその場でお辞儀した。

 どうやらメンタルヘルスカウンセリングプログラムと呼ばれるセイやユイとは違い、ナビゲーションプログラムとして生きているようだ。

 

「彼女は主に私のアシストの様な事をしてもらっている、それにしてもユウヤ君とキリト君には驚いたよ。黒鉄宮の地下迷宮区にあるシステムコンソールからシステムに侵入し、試作型の一号と二号をオブジェクト化するなんて………いやー……実に驚いた」

「ご用件はなんでしょうか茅場晶彦様」

「ああ、そこにいる女性プレイヤー、ユウキ君が私に倒されたらすぐにユウヤ君の麻痺状態を解除してくれたまえ」

「………承りました」

 

 スズナは何処か悲し気に了承すると数々のメニューウィンドウを体の回りに出現させた。

 この場にいるプレイヤーの全ての情報……ステータスや装備、誰が誰とパーティを組んでるか、などの情報………。

 

「それでは始めようか」

「団長さん………」

 

「剣を握りたまえユウキ君、君ならもしかしたら私に勝てるかも知れないのだよ……"メディキュボイド被験者"の君ならね」

 

「……………知っていたんだね」

「あれは私が提供した物だよ。勿論、被験者の名前も知っているとも」

「……………」

「なんだよユウキ………"メディキュボイド被験者"って……なんだよそれ…………!」

 

 俺がユウキに向かって叫ぶとユウキは俺の方を向く。

 

 俺の方を向いたユウキの瞳からは涙が溢れ出ている。

 

 ユウキは俺から目を逸らさずに口を開き、

 

 

 ーーーーごめんね。

 

 

「ユウキ……?」

 

 ユウキはそれだけ言うとヒースクリフの方へ走っていった。

 愛剣の《リュクスシュエル》を右手に握り、左手で涙を拭い、少年の方を振り向かずに。

 

「ユウキーーーーーー!!!!!!」

「ユウキ!」

「ユウキ……!」

 

「「ユウキちゃん!」」

 

 キリトやアスナ、クラインとエギルが叫んでも戻ってくることはなくーー。

 

「てやああああああ!」

「む…………」

 

 ユウキはジャンプからの縦斬りを繰り出すとヒースクリフは左手に持つ大盾で受け流し、右手に持つ神聖剣でユウキに向かって突きを繰り出す。

 

「………!」

「ほう………」

 

 ユウキはその突きを最初から見切っていたかの様に回避した。だが、ヒースクリフも最初から避けられるのを分かっていたかの様にニヤリと笑い、余裕を見せつけている。

 

「流石……と言うのかね」

「団長……貴方は此処でボクが倒す!」

「ふむ、それなら剣で私を貫きたまえ」

「皆はボクが守る!」

 

 ヒースクリフの不死属性はナビゲーションプログラムであるスズナが解除し、HPは黄色ラインであるユウキに合わせ、どちらとも突きを一度でもまともに受ければ一撃だろう。

 

 俺はユウキとヒースクリフの戦闘を黙って見ることしか出来ない。

 ユウキの言った"ごめんね"と言う言葉が俺の頭の中の脳を痛めつけてくる。

 何故謝ったのだろうか。

 ユウキの口調からして死にに行くと言う感じでは無い。

 皆を守ると言う事はユウキがヒースクリフを倒すと言うことだ。

 なのに何故だろう。

 

「なんで"ごめん"なんだよ……」

 

 不甲斐なかった。

 光の勇者なんて言われてる俺は大切な女の子に守られている。

 ついさっき守ると言う約束をしたのに麻痺状態と言うだけで俺は立ち上がることすら出来なかった。

 本来なら俺がユウキのいる場所にいてヒースクリフと戦っている筈なのに……

 

「こんの!」

「まだ甘い……」

「硬すぎる……!」

「だが、中々の反応速度だ。流石は"メディキュボイド被験者"紺野木綿季君だ」

「…………」

 

「キリト君の二刀流の反応速度も早いが、メディキュボイドの処理速度は他のプレイヤーが被っているナーヴギアとは違い、処理速度が数倍も違く、もしかすると二刀流の反応速度をも超えるかもしれない」

 

「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!!!!!!!!!」

 

 ユウキは頭を抑えて叫ぶとヒースクリフの方をキッと睨み、そして剣を握りしめ、ヒースクリフの心臓部を狙った。

 

「はぁぁぁあああああ!」

「…………ほう」

 

 ヒースクリフの心臓を捉えたユウキの剣はヒースクリフの神聖剣に弾き返されてしまう。

 ユウキの剣は弾かれ、手から離れてしまった。

 

「何!?」

 

 明らかに先程のユウキとは違う。

 そんな事が出来るのかと言う速さで動いていた。

 何故かと言うと、ユウキの剣は剣から離れていったのでは無く、ユウキが剣を離したのだ。

 剣が完全に手が届かなくなる前に空中で左手に剣を逆手持ちにし、ヒースクリフに振りかざし、追い打ちを仕掛ける。

 ヒースクリフはギリギリで回避出来なく、ユウキの剣先がヒースクリフの胴体を掠り、後退りする。

 

「流石に月日が経つとメディキュボイドにもなれてくる様だ」

「ユウヤの前では………ユウヤの前ではメディキュボイドの事も被験者のことも言わないでよ!」

「……これは失礼した」

「なんで……ボクの命を救ってくれた貴方が………こんなデスゲームを始めたの……?」

「何故、か」

「命を救った貴方がどうして命を奪うの?」

「もし、私に勝つ事が出来ればそれを知りうる事が出来るかもしれないな」

「分かった……」

「しかし、君は分かっているのかね?」

「………………?」

 

 ヒースクリフの言葉にユウキは疑問を抱いた。

 

「君がもし私を倒したとして、君とユウヤ君はどうなるのだろうか。君はユウヤ君に会うことができるのかね?」

「あ………………」

「さっきから何話してんだよ………」

 

 戦闘を見ているだけの俺には何も理解出来なかった。

 先ず、何故ヒースクリフはキリトや俺では無く最初にユウキに決闘を挑んだのだろうか。

 そして、俺が一番疑問に思い、不安に思っている事がある。

 "ユウキが俺に会うことができるのか"と言う疑問だ。

 

「ユウキ、お前は俺の所に戻ってくるよな?俺にまた抱きついてくるよな…?俺に大好きってまた言ってくれるよな……?」

 

 気が付くと俺の瞳からは涙が出て来ている、仮想世界といえど温かさを感じる。

 ユウキとは一生会えなくなる気がする。

 俺がユウキに聞くとユウキは俺に笑顔しか返さないじゃないか。

 俺の聞きたい言葉は返してくれなかった。

 

 ユウキはヒースクリフの方を向くと右手に持つ愛剣《リュクスシュエル》を手放した。

 

「………そちらの道を選ぶと言うのか」

 

 ヒースクリフはそう言い、目を閉じると神聖剣を天高く振り上げる。剣の根元から剣先までソードスキル発動の為に紅くなっていった。

 

「何やってんだよ……おいユウキ、何とか言えよ!そのままじゃやられちまうだろ!?早く剣を拾えよ!!おい!!何とか言ってくれぇぇえええ!!!」

 

 天高く振り上げられた神聖剣はユウキの体に命中し、皮肉にもユウキを斬り刻む音が俺の叫び声を消した。

 ユウキのHPは一気に無くなり、HPバーが消えてしまうーーHPバーが消えるということは死を意味していた。

 

「ユ……ウキ…………?」

 

 

「 大好きだよ 」

 

 

 結晶体となり、ユウキが消えた。

 消えてしまった。

 助ける事も出来なかった。

 俺は手を差し伸べる事も出来なかった。

 …………最愛の人を見殺しにしてしまった。

 

「プレイヤー名《ユウヤ》の状態異常、麻痺を解除……します」

 

 スズナがそう言うとメニュー画面で操作し俺の麻痺状態を解く。

 

「ユウキ君には期待していたのだがね……まさか諦めるとは」

「………こ………ろ…………ス」

 

 突然エリア内を制圧する様な勢いでノイズが走り始めた。

 

「ユウヤ………!」

「ユウヤ君………!」

「なんだこりゃ……頭がクソいてぇ………」

「うぐ…………」

「ユウヤ、セイに言われた事を覚えてないのか……感情を暴走させるとお前のナーヴギアが処理落ちするかもしれないんだぞ……!」

「ほう………やはりこうなったか………」

 

 ヒースクリフの体の回りには何やら報告メッセージの様な物が出現している。

 

 

  バグの報告

 

  プレイヤー《ユウヤ》による不正ツールの使用

 

 バグの処理実……k

 エラー

 ERROR

 

 ウイルス発生

 

 

 ERROR

 G……報k

 ウイル………ssssss

 

 不正ツール使用

 バグb ERROR

 

 バグの報告

 エラー

 《yーya》

 

 

 ERRORERRORERRORERRORERRORERRORERRORERRORERRORERRORERRORERRORERRORERRORERRORERRORERRORERRORERRORERRORERRORERRORERRORERRORERRORERRORERRORERRORERRORERROR

 

 

「ふむ………スズナ君、頼めるかね」

「承りました……」

 

 スズナはメニューを操作し、ヒースクリフの回りを囲んでいる報告メッセージを全て自分の所へ移した。

 

「ユウヤ君の持つ神聖槍、それは私がデザインした物なのだが……ナーヴギアに多大な負荷をかける事やゲームバランスを崩壊させかねないので処分したのだが試作一号がバックアップするとは……こんな事もあると言う事かね………」

「コ殺……ぶっ殺ス………」

 

「本当は二刀流を持つキリト君が私と戦う筈だった。二刀流を持つ物は"魔王を倒す勇者"として私を倒して貰いたかったのだがな………まさか"魔王に裁きを下す神"が出るなどとは思っても見なかった。私は神聖槍の出現に気づいてはいたが……これはこれで面白いものでな」

 

 ユウヤの中の光は完全に消えている。心は完全に闇に飲み込まれ、ユウキの事を思い出せない程怒り狂い、何の為に戦っているのかすらわからなくなっていた。

 だが……ただ一つだけ殺らなきゃいけない事があるのは分かっている。

 

「コォオ…!……殺シs………!テヤあhル………!」

「やれやれ……光の勇者と言われた君は今じゃ悪魔にしか見えない」

 

 ユウヤから発しているノイズが酷すぎて槍はバグっているらしく、所々がポリゴン化し、纏っているオーラは真っ黒になり、言語機能は全く働いていなかった。

 現実世界では多大な負荷をナーヴギアにかけているのだろう。

 悪魔の様な姿のユウヤを回りのプレイヤー達が見ると恐怖を抱いた。

 

「やめろユウヤ!ナーヴギアが処理落ちしたらお前も消滅するぞ!」

「ユウヤ君が死んだらユウキだって悲しむよ!」

 

「「ユウヤ!」」

 

「………………」

 

 皆がユウヤの名前を呼ぶ中、スズナは哀れんだ目でユウヤを見ていた。

 

「ヒぃsすくrsりフゥァアアウアアウアア!!!!!!」

 

 ユウヤはバグった神聖槍を握り締めるとヒースクリフの方へ全力で突っ込んでいき、力任せに振り回すとヒースクリフは盾で受け流さずに後ろへと下がる様に回避した。

 

「神聖槍の威力は私の神聖剣よりも数段と強くてね……盾で受けても致命傷になるかもしれないのでな。それにしても……実に興味深い。やはり先にユウキ君と決闘をして正解だった様だ」

「どういう事だ?」

 

 キリトがヒースクリフに聞くとヒースクリフは話し始めた。

 

「神聖槍は持ち主の感情によって進化するのだよ」

「進化?」

「生きてると言うの?」

「確かに、生きてるに近い。彼の持っている神聖槍は彼の感情に反応して体に変化を来たし、更には神聖槍の元々の破壊力も上がるのだよ」

 

 ヒースクリフは話しながらユウヤの方を身構えていた。

 ユウヤは神聖槍を振り回しながらヒースクリフの名を叫び、暴れ回っている。

 

「しかし……彼の場合、負の感情が神聖槍を強化しているがナーヴギアに多大な負荷をかけ、言語機能が破壊され始めている。彼のナーヴギアはもう持たないだろう」

 

 ヒースクリフはそう言うとユウヤに反撃して行くのだが、ユウヤの神聖槍を一撃でも直撃すれば危うい様であり、完全に野獣化しているユウヤの行動が読めずに苦戦していた。

 

「中々手強い物だな………」

「殺ス…!…殺こっsj……!ブっこロスr殺す……!!」

「………会話もままならないな………」

 

 ユウヤは神聖槍を片手に握っているが、両腕が脱力しているかの様に神聖槍を地面につけ、引きずっていた。

 体がバグに侵食され始め、顔の左半分がポリゴン体となり始めていた。

 その姿を見たキリトは自力で麻痺から立ち上がろうとするーー大切な人を忘れた親友の為に。

 

「気を保ちやがれ……お前が死んだらユウキが悲しむだろうが………!」

 

 キリトは必死に立ち上がろうとしながらユウヤに叫んだ。

 その叫び声は届くことが無かった。

 

「ガウアゥアsj殺す殺kろす殺す殺す」

 

 そこにはかつての親友は居なく、いたのはバグに侵食され、左半分がポリゴン体となり、左目がバグで紅くなり、一人の男を殺そうとする悪魔ーー。

 

「ユウヤぁぁぁあああああ!!」

「キリト君!?」

「自力で麻痺から抜け出しただと!?」

「馬鹿野郎、今のユウヤは危険だ!止まれキリト!!」

「あいつを放っておけるかよ!」

 

 キリトはそう言ってユウヤの方へ向かって行った。

 ヒースクリフはユウヤと戦っているが防戦一方、盾で受けても致命傷になる攻撃を回避しながら反撃していた。しかし、神聖槍の方がリーチが長く、上手く反撃が出来ない様である。

 

「ほう………」

「邪mすうナこsロス殺ス!!!!!!」

「ユウヤ落ち着け!!」

 

 キリトに神聖槍の重い一撃が降りかかったがキリトは二刀流でユウヤの神聖槍を受け止める。ヒースクリフとは違いHPに余裕のあるキリトだったが一気に赤ラインへと突入していった。

 二刀流で受け止めたキリトはユウヤを正面から強い眼差しで見ると叫ぶーー。

 

「お前は何の為に戦ってるんだよ!!!お前が暴走すると処理落ちで消滅するかもしれないんだぞ!!此処で消滅したらユウキが悲しむだろうが!!!!!!」

 

 キリトがそう言うとユウヤの動きが止まった。

 

 

 ユ……ウ…キ…………………………?

 

 オれは何の為に戦っテる…………?

 

 暗イ……

 

 

 俺は何故か暗い空間にいた。

 きっと俺の心の中なのだろう。

 凄く寒い………孤独な空間だった。

 暗い空間の中、一人の少女が近づいて来た。

 その少女はユウヤの目の前に立つと語りかける。

 

 

 ーーー君はどうしてこんな所にいるの?

 

 ーーーワからない………

 

 ーーー君、死のうとしてるでしょ?

 

 ーーー……………

 

 ーーー君、忘れようとしたでしょ?

 

 ーーー忘れル………

 

 ーー 一人の女の子を、君を好きだった女の子を忘れようとしてる。怒りに身を任せようとしてる。

 

 

 …………………そうだ。

 俺は忘れようとしてた。

 大切な人を失った悲しみを怒りで紛らわそうとしていた。

 どうせ悲しむならいっそのこと女の子も忘れようとしていた。

 何があっても忘れてはいけない筈なのに………

 

 

「ユウヤ大好き!」

 

「ユウヤぁ………」

 

「にゃぁー……」

 

「似合ってるかな……?」

 

「ユウヤってば!」

 

「ユウヤはボクが居ないと駄目なんだから………!」

 

「神様は私達に耐えられない苦しみをお与えにならない」

 

「ユウヤはボクと皆を守ってくれるもん!」

 

 

「ボクはユウヤを守る。だからボクがユウヤをずっと守れる様にボクを守ってね!」

 

 

 少女は俺を優しく抱きしめ、そして優しい声で囁いた。

 

 

 ーーー皆を守ってあげてね。

 

 ーーー…………………分かったよ、ユウキ。

 

 

 俺がそう言うと少女は笑顔を見せ、遠くへと、手が届かない所まで離れていった。

 

 

 

 

「おい、ユウヤ………?」

「待た……セた……な」

「たく………やっと戻ったか」

 

 意識が戻ってもバグは侵食し続けていた。

 体はポリゴンの様な物を纏い、オーラは光輝き、右手に持つ神聖槍は結晶になりかけている。

 その姿は勇者か、それとも天使なのか。

 右半身と左半身の背中から光と闇で出来た、そんな感じの結晶体の翼が生えてる様にも見えた。

 

 俺はキリトの肩に手をおいてヒースクリフの方を向いた。

 

「終わラせ……よう……ぜ」

「これは驚いた。悪魔の様な姿から人間に戻れるとは……本当に君は面白い」

 

 俺はヒースクリフに向かって歩いて行く。

 

 死んだらユウキ怒るかな……

 でもこれが一番手っ取り早いし、皆が無事で済むんだ。

 許してな、ユウキ。

 

「俺が死ぬ……時、あんタも……死…ぬ……ぜ?」

「面白い」

 

 ヒースクリフはそう言うと神聖剣を俺に向かって振り下ろしてくるが、その剣を俺は避けようとせずに、神聖剣を左手で"受け止めた"

 受け止めると神聖剣がジジジと耳障りな音を立て、バグり始める。

 

「一かバ……チか……だった…俺はもう普…通…のプレイヤーじゃないみ…たい……だ」

 

 俺は神聖剣を、ヒースクリフを逃がさない様に思いっきり握りしめた。

 

「ユウ……キと……約束した……から……………!」

 

 俺はヒースクリフを力強く睨みつけた。

 

 

「ユウキが………皆を守れって言ったから!!!!!」

 

 

 そして、神聖槍をヒースクリフに向かって突き刺した。

 突き刺す瞬間、ヒースクリフが笑った気がするが………。

 

「………全く、君は存在自体が不正ツールだよ」

 

 ヒースクリフは結晶体となって消滅する前にそう言った。

 俺のHPはバグっていてHP残量が確認出来ないがナーヴギアの限界が来たらしく、俺の体が光だす。

 ヒースクリフのHPは無くなり、HPバーが消滅し、俺と一緒に結晶体となり消滅した。

 

 

 ーーーーキリト、皆、サンキューな。クッソ早いけど先に行くわ。

 

 

 長い年月をかけたデスゲームはこの日に終わりを告げる。

 全てのプレイヤーが解放され、約6000人がログアウトすることが出来た。

 

 一人の勇者がソードアート・オンラインの世界を破壊することを成し遂げた。

 

 

 ーーーー今そっちに行くよ、ユウキ

 

 

 

 

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