ソードアート・オンラインーEverlasting oathー 旧バージョン、1、2話欠損 作:ゆぅ駄狼
「うあああ"ぁぁああ"あ"ああああああああ-"あぁぁああ!!!!」
「………………優也の頭の中が吹っ飛んでから二日目………何にも変わりゃしねぇじゃねぇか」
「ユウキィキイイ"ィイイイイイ"うあああ"ユウキィイイイイイ!!!!!」
「……………………」
優也が狂い始めてから二日が経った。
狂ってからはずっと鎮静剤を打ち、狂い………また、鎮静剤を打つ作業をずっとしている。
それを傍らからずっと監視するのが照の役目。
ずっと、苦しんでいるのを見ている役目。
「SAO事件のせいで精神異常者なんて腐る程出て来てる。お前もその一人、か」
照はベッドの上に固定され、暴れ続けている優也を見て呟いた。
「おっと…………今日も見張り御苦労さん。照君」
「…………須郷か」
「おいおいおいおい、僕は歳上だぞ?須郷さん、だろ?」
「何の用だよ」
「今すぐにでも君みたいな糞犬をしつけたい所だが…………今日は君にビッグなニュースがあるのさ!」
「…………へぇ」
須郷は照に指を指し、下僕を見る様な顔でニュースがあると言った。
けれど、ニュースなんてことは照にとってはたかがしれている事だった。
「また、脳味噌弄りの手伝いってか?」
優也が狂い出した日以来、照はアルヴヘイム・オンライン関係で須郷の手伝いをさせられていた。
ただ、手伝いといっても普通のことでは無かった。
一日数時間は照は"脳"を須郷に提供していた。
「物騒な言い方はやめてくれよ。あの実験はこれまでに無い素晴らしい物なのだからククク………………」
「鬱陶しいから早く言えっつってんだろ」
「やれやれ………後でたっぷりしつけないとな………まぁいい!今回は君をある女の子に合わせてあげようじゃないかぁ!」
「!」
照は目を丸くし、驚いた顔で須郷の言葉を頭の中で脳内再生した。
照にとっては重要なニュースだった。
ビッグニュースというのはあながち間違ってはいない様だ。
目を丸くしている照を見て須郷はフフっと笑った。
「生意気な糞ガキにも褒美はあげないといけないと思ってね…………ほら、これが彼女のいるルームキーさ」
そういい、須郷は赤色のカードキーを照に投げ渡した。
カードキーには"地下一階 禁止区域"と書かれていた。
「禁止区域ねぇ………怪しすぎんだろ」
「んんん?気に入らないなら別に返してくれてもいいんだよ?」
「…………………ふん」
須郷に背を向け、照は目的地である地下一階へと向かっていった。
「取り敢えず、エレベーターか」
この二日間でレクト本社を大体把握して来た照は迷うことなく、足早にエレベーターへと向かっていた。
照のいた優也監視室からはエレベーターはそんなに遠くは無く、エレベーターに乗り込むとB1と記されているボタンをポチッと押し込み、エレベーターの扉を閉めた。
「…………鈴菜………………」
二つ、心配な事があった。
照からすれば須郷は異端者だ。
そんな須郷が照の心残りである鈴菜を保護しているとなると心配でしょうがない。
これが一つ目の心配。
もしも、もしもだ。
二つ目の心配は心に関する問題だ。
意識が覚醒していたとしても頭の中が優也の様に狂っていたとしたら…………。
「…………面倒な事になっちまったじゃねぇか、あのクソ女………」
エレベーターが地下一階に辿り着いた時、チン!という到達音を出すとエレベーターの扉が開いた。
「あの部屋か」
目的の部屋は遠目ではあるがすぐに見つかった。
エレベーターからその部屋までは一方通行の様だ。
照はその部屋へと歩み出した。
「(きっと………あいつは大丈夫だ)」
何の根拠も無しに何がきっとだ。
本当に………この時、"俺"はそう思った。
照は巨大な扉の前に立った。
そして、カードキーを扉のカードキー差込口へと差し込んだ。
すると、少しずつだが巨大な扉が開き出した。
だがーーーー。
ーーーー瞳に映ったのは鈴菜では無かった。
巨大な扉の中にはもう一つ、隔離された部屋があった。
"メディキュボイド被験者 ー紺野 木綿季ー"と隔離された部屋の扉には記されていた。
「………少なくとも此処にいるのは鈴菜じゃねぇよな」
照は隔離された部屋に近付き、中がどうなっているのかをガラス越しで確かめようとしたが…………。
ガラスの中は機会のランプの光しか無く、中に何があるのかまでは分からなかった。
照は"騙された"と思い、舌打ちをして来た道を帰ろうとしたーーーー。
………………………………………………ユウ………………ヤ………。
「な!?今、女の…………声…した………よな?」
声は隔離された部屋からだ。
照は先程まで眺めていた隔離された部屋に再び近付いた。
ガラスに頬をペタっとくっつけ、耳を当ててみると。
ーーー…………………ユウ…………ヤぁ…………。
やはり声がする。
しかもかなり幼い女の子の声だ。
中の人物に興味を持った照は声をかけてみることにした。
「おい?大丈夫か?」
「…………………………」
「寝言…………みたいなやつか…………?」
「………ユウヤ………?」
「…………ユウヤ…………か。お前はユウヤと一緒にいた………………ユウキか?」
「ユウヤじゃないの……?」
「俺はユウヤじゃない」
「…………君は……誰?」
「俺は…………照……藤林照だ」
「………ねぇ、照君」
「なんだよ」
「…………ユウヤっていう人…………知ってるかな……………?」
「………………あぁ。知ってる」
「やっぱり無事に帰って来れたんだね…………良かったぁ……………うぇ………ふぇぇ…………」
「お前の知ってるユウヤなんて…………もういねぇよ」
「………………え………?」
「SAO事件に巻き込まれ、無事に戻って来れたのは約6000人。その内の半数はSAO事件のせいで後遺症みたいなもんを患ってるんだってよ。何つーか………精神病みたいなもん?」
「………精神病」
「お前の言ってるユウヤもそうだよ。間違いなく、ユウヤに関してはアンタの事が一番関わっているんだよ。今のユウヤは廃人同然だよ」
「ボクが関わってるって言っても…………」
「ユウヤはアンタの事を死んでると思っているんだよ」
「はぁぁぁぁぁぁぁああああああい!!!!面会は此処までにしてもらおうかぁ!」
突然、大きな声が部屋中に響き渡った。
声の元を辿って行くと、そこにいたのは須郷だった。
照は須郷を見るなり舌打ちをし、苛立った表情をした。
「おい、須郷。此処に鈴菜はいねぇけどよぉ?」
「うん。その様だね」
「はぁ…………?」
溜息をついた須郷はカチャっと自分の眼鏡を持ち上げ、照を見下す様に見た。
「誰がお前を鈴菜に会わせてやると言ったんだい?」
「………………っ」
「会いたければ僕を倒すなりなんなりしてみなよ。あっ。そんなことしたら君の愛する鈴菜ちゃんがどうなる事か…………ククク……………クヒヒヒヒヒ…………」
「てめぇ…………絶対に殺してやる…………!」
「おー怖いなぁ…………怖いなぁ!でもお前は僕に手を出すことが出来ないだろう?糞犬は黙って御主人様の言うことを聞いていな!!!」
「………………じゃぁよぉ………何で此処に"コイツ"がいんだよ?何ですか。嫌がらせですかぁ?」
「"コイツ"?…………ああ、ユウキちゃんか…………君に会わせた理由ねぇ…………さぁ?何ででしょうか?」
「…………貴方は誰ですか?」
「おーっと。もう目覚めていたんだねユウキちゃん。僕の名前は須郷伸行。いきなり騒いじゃってごめんね」
「いや…………えっと………大丈夫です」
「そうそう、その機械の調子はどうだい?音声機能に異常とかない?」
「あ、大丈夫ですけど……………」
「………………けど?」
「…………ユウヤは何処にいるんですか?」
「ユウヤ君ねぇ…………まぁまぁ、彼は大丈夫だからそんなに心配しなくてもいいよ」
「え?だってユウヤは精神病じゃ…………………」
大丈夫、大丈夫とユウキを言い聞かせようとしている須郷に照はキレた。
須郷の顔を見れば誰でもならなかったとしても照はキレる。
優也が狂った状態でユウキを探しているにも関わらず、須郷は笑顔でそう言うからだ。
そして照はーーーー。
「てんめぇぇぇぇぇえええええ!!!!!ブッ殺す!!!」
「んぐ!?」
「照君!?」
須郷を殴り倒し、その上に馬乗りになった。
不良の喧嘩なら"フルボッコ"の体制と言う奴だ。
照は拳を握り、須郷を殴り、殴り続けた。
「テメェの行為が優也をあんなんにしちまった!!そして今!!!テメェのクソみてぇな嘘でまた優也を更に殺そうとしてる!!!!」
「くは………………お………ぃ…………殺人………鬼………の言うこと………かぁ?」
「うるせんだよッ!!!なら!殺人鬼として今、俺がテメェをブッ殺す!!!!」
「………………クハ………ククククク………………チェックメイト………だ」
負け惜しみの様に須郷が捨て台詞吐くと禁止区域の扉が開き、スーツを着た大勢のレクトの人間が入ってきた。
すぐに照は取り囲まれ、拘束された。
口から垂れていた血を須郷は自身のポケットからハンカチを取り出し、拭った。
そして、照の前まで行き、勢い良く足で頭を地べたに押し付ける様に踏みつけた。
「がぁっ!!」
「此処は禁止区域。流石に誰も入って来ないと思っていたのかい?」
「クッソが…………」
「防犯カメラ。この言葉だけで十分だよね?」
「……………悪りぃな………ユウキ……………」
「え?」
部屋にはユウキの不思議そうにしている声だけが響いた。
「…………アンタの探してる優也は……………俺にはどうもできねぇ………もう元通りになんねぇかもしれねぇ………仇う…ガッ!!!!」
「おや?ちょっと喋りすぎだなぁ糞犬。お前ら、この糞餓鬼を彼処に連れて行け」
スーツ姿の男達は無言で頷くと照を部屋から引きずり出して行った。
残ったのは須郷と機械で喋っているユウキだけとなった。
「……………いやぁ、君を病院から此処に移すのは大変な作業だったんだからね」
「…………………ユウヤは………」
「倉橋先生を説得するにはかなりかかったよ………」
「ユウヤはどうなってるんですか」
「ああー!そのことね!ユウヤ君は大丈夫だよ!今度会わせてあげるから、その時までゆっくり休んでおくんだよ?」
今までの事は無かった様に振る舞いながらそれだけ言うと須郷は靴をコツコツと音をたてながら部屋を後にした。
………どうやらユウキは"ユウヤは大丈夫"という言葉は信じ切れていない様だ。
隔離された部屋に設置されたカメラアイで須郷の後ろ姿を見続けながらユウキはさっきの照の言葉を思い出していた。
ーーーもう、元通りになんねぇかもしれねぇ。
「……大丈夫……大丈夫だよね……………ユウヤ………」
二時間四十二分後。
「ユウキ………………ユウキが呼んで………る………」
「おはよう。優也君。グッスリ眠れて…………はいないか」
「須郷さん………どうして俺はベッドの上に拘束されているんですか?」
「あぁ、君は仮にもSAO帰還者だから異常な行動をとったときの為にね。今、その拘束具をとってあげるからね」
「ありがとうございます………でも、俺………照に会って………そうだ……ユウキ…………!」
「それはSAO事件の後遺症だよ。君といたのは琴葉だよ…………あ、琴葉の心配はないよ。君は君の仕事をすればいい」
須郷は俺の寝ていたベッドの横にある紙袋らしき物を俺に渡して来た。
渡された紙袋の中を確認して見ると錠剤がたんまりと入っていた。
え…………。
俺の体、どうなってんの?
「なんすかこれ」
「念の為ね!気分が悪くなった時にこれを飲めば落ち着くから。さぁ!お家に帰って手伝いをしてきてくれ!」
「(キメ顔で言われても困る)」
「送りの車は用意してあるから宜しくね」
「はい」
優也家 ー玄関前ー
須郷が手配してくれた車に乗り、俺は自宅に着いた。
なんだか……久しぶりに帰って来るみたいな感覚だな……。
起きた時にも思ったんだけど、体が少し思い気がするな………。
体が重い、と微かな違和感を覚えたまま俺は自宅のドアを開けた。
するとーーー。
「優也ぁぁぁぁああああ!!!」
「汚いから近づくなよ」
「何それ酷い」
気持ちの悪い叔父さんが出迎えてくれました。
すっごい泣きっ面で。
「優也君〜帰ってくんの遅いぞ〜。二日間も留守にしやがってこの、須郷さんが数日借りますって言うから了承はしたんだけどね」
「二日間?」
「おうよ。それとさ…………優也。琴葉、どうなってんだ?」
泣きっ面から突然、真剣な顔付きになった叔父は琴葉の事を訪ねてきた。
「琴葉………確か……保健室に一緒に居て、それから暗いからって学校から出ようとして…………あれ?なんで俺………須郷さんと……………?」
考えれば考えるほど混乱する。
琴葉と保健室から出た後、その先から全く思い出せない。
起きたらベッドの上に拘束されていたという事だけ。
なら、一緒に居た琴葉は………?
「…………琴葉なら部屋にいるよ。でもさ、様子が変なんだよ。あの子が居たところもおかしかったけどね。優也と一緒に居る筈の琴葉ちゃんがなんで一人で、しかも夜中までずっと学校近くの道端で座っているんだろうね」
「夜中までずっと?」
「全く………喧嘩は程々にしてくれよ………帰りが学校に寄ったから良かったものを…………」
「どうなってんだ……?」
「でも様子が変なんだよー。ご飯の時間になっても出てこないし………部屋の前にご飯を置いといても食べた痕跡はないし……はっ………反抗期?」
「ちょっと見てくる」
何かがおかしい。
俺は二日間も留守にしていて、何故か二日間の記憶がない。
更には一緒に居た琴葉が一人でずっと夜中まで放置されていたとなると………俺は何かやらかしたのか?
取り敢えず、今は琴葉に会ってみることが優先だ。
琴葉の部屋の前に着き、俺はノックをする。
…………返事はない。
もはや、いるのか?と思う自分がいる。
「おーい、琴葉。いるか?」
…………返事はない。
えーっと………どうしようか。
「琴葉大丈夫か?」
俺はドアノブに手をつけ、何と無く回してみる。
ガチャリ、という音を立て、少しだが部屋が開いた。
「(開いてるじゃん………)」
「おい、琴葉。いるならいるっ……………て………」
ーーー衝撃的だった。
中に入って見ると部屋は元々部屋にはあった本やらクローゼットの中の物が荒らされ、ベッドの上にはずっと窓の外に映る月を見つめている琴葉がいた。
「琴葉?」
「………また……独りになっちゃうのかな…………」
「何言ってんだよ。それに何だこの部屋は、泥棒でも入ったのかよ」
俺は琴葉の方へ近寄りながら服やら本を拾い上げながら元の場所に戻していった。
「ゆぅ………君?」
「今更気付いたのか?何やってんだよ。声も弱々しいし飯もちゃんと食べてないんだろ?」
「…………うん」
「んじゃ、食べるぞ。俺も腹減ったしな」
俺はそう言い、琴葉に手を伸ばした。
だが、琴葉が口にした言葉で俺の手は止まった。
「そうやって………また……私を………ユウキちゃんの代わりに…………するの?」
「何でお前がユウキの事……………!」
「私は………独りが嫌………だけど………代わりにされるのは………もっとやだ!!!!」
普段大人しそうにしている琴葉が俺に向かって叫んで来た。
琴葉は俺を睨みつけ、俺はそれを見て何も言えなくなった。
何がなんだか分からなくなって来た。
俺は琴葉をユウキの代わりだなんて思ったことなんて無いのに。
その前に………何で琴葉がユウキの事を知ってるんだ?
「待ってくれよ…………俺は琴葉がユウキの代わりだなんて………」
「もう………あっち行ってよ……………」
「……………っなんなんだよ!」
俺は琴葉に背を向け、ドアを勢い良く閉めた。
涙が出て来た。
だってさ、まただよ。
またユウキの事で。
「なんなんだよぉ…………」
全身の力が一気に抜け、ペタンと琴葉の部屋のドアに寄っ掛かりながら座り、右腕で顔を覆った。
一人で静かに泣き続けた。
誰にも声を聞かれない様に、自分の存在をこの世界から消す様に、そっと静かに。