ソードアート・オンラインーEverlasting oathー 旧バージョン、1、2話欠損 作:ゆぅ駄狼
俺のいたインプ領からは世界樹までの距離はそう遠い訳では無い。
半日か、それよりもう少し短い時間で着くことが出来る。
それで、央都アルンまで来たのだが………巨大な門、入り口の前には人集りが出来ている。
早く中に入りたい、と思うのだが人集りが邪魔すぎて通る事が出来ない。
その原因を見ようと人集りが見ている方を見てみると。
「ノーム風情が調子に乗るんじゃねぇ!」
「調子になんて乗ってねぇだろうが!」
喧嘩の様だ。
全く……たかが喧嘩位で通行止めを受けたくはない。
取り敢えず、周りのプレイヤーに
「何があったんですか?」
「え?ああ、見ての通り喧嘩だよ。何でも、あのノームの方が原因とかサラマンダーの男は言ってるんだ」
「へぇ、見た感じだとどっちにも問題ありそうなんだけど」
「NPCがサラマンダーの大群を壊滅させたって話は聞いたことあるかい?」
「一応は」
「確か………40人、更に付け加えて全プレイヤー最強のユージーン将軍がNPCと戦ったんだ。結果はボロ負け、あの将軍でさえ敵わなかったそうだ。その噂はたちまち広がって………」
「大体原因が分かった」
きっと俺の想像通りだろう。
一人に負けたサラマンダーは情けないだのどうだのの話をノームの男はしていて、それを運悪くサラマンダーのプレイヤーに聞かれたという感じだろう。
「察してると思うけどノームの男はその話を笑いながらしていて、運悪くサラマンダーの男に聞かれたらしいんだ。しかもサラマンダーの方は実際にやられたらしいからなぁ」
喧嘩は他所でしてもらいたい………。
何でわざわざ入り口の前で喧嘩するんだよ。
俺は一歩踏み出した。
おい、と止められたが止まらなかった。
そしてーーー。
「そういうのは他所でやってくんないかな」
大勢のプレイヤーの視線は二人から俺に移った。
喧嘩をしていた馬鹿二人の視線も勿論俺に移る。
両方の気持ちは高ぶっていたのか、知らない
サラマンダーの男は俺に近寄り、襟を掴んできた。
身長は…………俺と同じ位だ。
170〜175位だ。
俺は襟を掴み上げているサラマンダーの男の腕を掴んだ。
「何、俺が悪いこと言った?」
「て、テメェ………」
「そんな怒る事じゃないでしょ、たかがバラバラに解体されただけで。ねぇ、サラマンダーさん?」
俺の一言で男の怒りは頂点に達した。
俺を押し飛ばし、腰にある片手用直剣を掴み、襲いかかってきた。
此処は領ではないから殺ろうと思えば殺れる。
サラマンダー領とかウンディーネ領とかだったら無理なのだが。
領のシステムはザックリ言えばSAOでの街だ。
プレイヤーキラーが出来ない、そういう捉え方でいい。
此処は領じゃない、だから…………俺も殺れるんだよね。
「Return a dirty blade」
魔法詠唱。
この魔法は
俺を中心に大きな魔法陣が展開され、見たことのない魔法に周りのプレイヤー達は驚く。
「な、武器が!?」
「残念だったねぇ、お前じゃ俺を殺せない。それ以前に触れる事すら許されねぇ」
展開された魔法陣がある間、相手は俺に刃を振るう事は一切許されない。
仕組みは簡単、相手が俺を攻撃する瞬間、俺が攻撃されると認識した瞬間に相手の武器を装備する前に戻す。
どうやって遊ぼうか。
また解体か?
それじゃつまんねぇな。
折角の公開処刑だしなぁ……………。
「んーーーーーーー」
思考している時、後ろから気配がした。
「お前はまだ引っ込んでろよ」
そう言って俺は見ていない背後に振り返ると同時に手でプレイヤーを振り払おうとした。
「がッッ!?」
やっぱり来ていたのはノームの男だった。
無視されていたのが嫌だったのか?
それにしても、凄いなこれ。
「首吹っ飛んじまってるじゃねぇかよ」
俺の振り払おうとした手は相手の顔面に張り手の様に直撃し、有り得ないことに首が飛んだ。
凄い。
凄いすぎる。
楽しい。
最近はストレスが溜まりすぎてたのか?
首を飛ばす、心臓部を抉る、解体する。
そんな殺人衝動が湧き、それを実行することで快感を得る。
「はヒ…………ラフコフの奴らの気持ちが少しは分かる気がするなぁ」
照もきっとそうだ。
綺麗事を言ってるだけで本当はこの快感を得たかっただけなのでは?
前はあんなに照の事を攻めたけどよ。
良ーく分かった、あぁ分かった。
「どうなってんだコレ、ALOにも筋力パラメータって存在すんのか?としたら俺のパロメータどうなってんだろうなぁ?」
未知の魔法、想像の力。
首を飛ばせる程のわけのわからない腕力。
もっとだ、もっとある筈だ。
俺だけに隠された力がある筈だ。
それを確かめてみたい。
段々と俺は、力と殺人衝動に酔いしれていった。
「先ずは何から試そうかなぁ………フひひ、そうだ。俺の筋力ってこんな事は出来んのカなぁ?」
俺はサラマンダーの男の腕を掴んだ。
首を飛ばされた瞬間を見ていたこの男はすっかり、腰を抜かしていた。
周りのプレイヤー達はその光景をずっと見ることしか出来なかった。
近寄れば何をされるか分からないからだ。
「首を飛ばせる程の筋力があるかラなぁ、お前の腕を思い切り引っ張ったらどうなるんだろぉなぁ?」
目の前の男のさっきの威勢は既に無く、ガタガタと震えていた。
何度も思うが、たかがゲームだ。
ゲームがリアルっぽくなっているだけ。
最近のゲーマーと来たら、ガチ勢ガチ勢言って、まさかゲームへの感情移入もガチ勢なのだろうか。
俺は腕を軽く引っ張った。
「ーーーーーーッッ!!」
男が叫び声を上げた。
「ん、強制ログアウトしたのか?」
男はビビリ過ぎて精神が不安定になり、精神状態が危険値に達したようだ。
VRゲームはプレイヤーの精神が不安定になったり、ナーヴギアやアミュスフィアに差し込んでいるLANケーブルが抜かれると強制的にログアウトさせられる。
男は俺の目の前から一瞬で消えた。
多くのプレイヤーが集う中、その中心で仮想世界の風が俺を撫でてくる。
フード付きのコートは風によって静かに揺らされる。
目の前に残っているのは一つのエンドフレイムだけだった。
「
哀れむように鼻で笑った。
そして、その姿は"ある二人プレイヤー"にも焼き付けられていた。
俺は唖然としているプレイヤー達を無視し、その場から消えて行った。
「あ、キリト君。彼処にいるよ」
「さっきのプレイヤーか?」
俺は央都アルンにある公園の様な所に来ていた。
ブランコというのは中々に懐かしい物だった。
と言っても、本気でこいでいるわけではなく、ゆらゆらと小さく揺さぶられる程度で、他の人から見れば座っているだけだ。
「世界樹は直ぐ目の前にあるんだけどな、俺飛べないし」
俺が飛べない悲しみに浸っていると目の前に二人のプレイヤーが現れた。
男女のプレイヤー。
女の方は見た感じシルフだ。
よく映画の盗賊が持っていそうなカットラスに似た片手用直剣を持っている。
男の方は……………インプ、もしくはスプリガンだろうか、真っ黒だ。
背中に大きな大剣を装備している。
見ているのは俺の方。
俺の後ろには誰もいない。
やはり、俺に用だろうか。
大方はさっきの喧嘩を見ていたプレイヤーだろう。
どうせ、筋力パロメータが異常とか嫉妬して文句を言ってくるに違いない。
「何か用かよ」
俺はフードで顔をあまり見せない様に、かつ無愛想に言った。
無愛想に言ったというのに、それを気にしないかの様に男が近寄り、話しかけて来た。
「さっきの戦い、見てたよ」
「そうかよ」
俺は仮想世界のブランコの鎖の部分、左右を片手ずつ掴み、ブランコを漕ぎ始めた。
ブランコを漕ぎ、男の真上辺りまで行くとフードの中から男の真剣な表情が見えた。
「あんたは強いんだな」
「さぁ?」
「にしても、あの筋力パラメータは異常だ」
「やっぱりパラメータがあったのか………で、何。嫉妬か?」
俺の言葉を聞き、男は首を横に振った。
「違う、ただ…………頼みがあるんだ」
「初対面の人にか?」
「あんたは強い、俺より間違いなく」
「それは光栄な事だな」
目の前の真っ黒黒スケがどのくらい強いかなんては知った事ではないが。
間違ってはいない。
俺は間違いなく全プレイヤー中、最強のプレイヤーだ。
例え相手が何千万人いようが、アルヴヘイムオンライン全てのプレイヤーが敵になったとしても負ける事はないだろう。
「頼み事って何だ。落し物程度なら探さないことはないよ」
「……………俺と二人で…………グランドクエストに行って欲しいんだ」
「俺とお前で?二人で行きたいだけならそこの知り合いっぽい人に頼めばいいだろ」
俺はシルフ種族の女プレイヤーを指差した。
だが、男はまた首を横に振った。
「リーファは………今まで手伝ってくれたから、これ以上迷惑をかけれない」
「俺ならいいってか」
「何より暇そうだしな」
暇………確かにやることはないが、グランドクエストになると二人でクリアは絶対に無理だ。
ただ、この男と一緒に戦っても勝てるだろう、俺がいるから。
だが、グランドクエストはどのMMORPGでも数十人の大勢で協力し、納品、討伐、防衛をやり遂げる物だ。
しかし、男はそれを承知の上で挑もうとしている気がする。
目が真剣だからだ。
答えは決まっている。
「嫌だ」
やるわけないだろ。
勝てないわけではない。
気に食わないんだよ。
その、何かの為にやり遂げようとしている目が。
「そうだよ…………でも、本当は一人で挑むつもりだったからな、別に気を悪くはしないよ」
男はそう言って笑顔を見せた。
「…………なんで一人で挑もうとするんだよ、もっと人を集めて機会を待てばいいだろ」
「それじゃ駄目なんだよ」
男は低い声で言った。
拳を握りしめ、世界樹の方を見上げていた。
「へぇ………何でだよ」
疑問に思ったことを純粋に聞いて見た。
すると、男は悲しげに俯いた。
とても暗い顔をしている。
そして、世界樹を指差した。
「彼処には………俺の大切な人がいるかも知れない、その為に俺は行かないと行けないんだ」
大切な人がいる。
その為に。
その為に。
その為に、
死なないゲームでなんで必死になってやがんだコイツ。
カッコイイじゃねぇかよ。
けどよぉ、一人じゃ何もできねぇくせに。
俺はブランコから飛び降り、男に近寄り、黒いコート、胸倉を掴み上げた。
「かっこつけてんじゃねぇよ」
「……………?」
「どうせ、その大切な人には会えねぇよ。どんなに会いたくても、どんなに頑張ってもな、彼処にいるかも知れないなんてのは勝手な思い込みなんだよ」
妄想、ただの妄想。
俺がそうだから。
もう、何度、大切な人の為に諦めない様にしようと思っただろうか。
また会える、そんなのは勝手な思い込みだ。
現にそうじゃないか。
こんなにも俺は傷ついて、誰かの為に尽くし、沢山の命を救った所で、目的には達せない。
それどころか、意味が分からないまま大切な物が失われて行くだけ。
そして俺は、諦めた。
今の俺がこのゲームをする理由、それはただ単に引き受けた以上はちゃんとやり遂げよう。
それだけだ。
くだらねぇ、それならいっそーーー。
「お前も大切な物を失ってみたらどうだ?」
「ーーッ!」
男は俺の胸倉をつかんできた。
なんだよその目は。
「ちょっと、キリト君!」
シルフの女はこのままでは喧嘩になってしまうと思ったのか、止めに入った。
キリト、その言葉に俺は反応した。
いつかの戦友、親友とも言える存在。
黒の剣士キリト。
「は、黒の剣士キリトさんにでも憧れていやがるのか?」
「な……………!」
「だからか、お前が一人でグランドクエストに挑もうとするのは、彼処には大切な人がいる?そういう理由をつけて憧れの人にでもなりたいのか?」
「なんで………お前が……………」
男は驚いていた。
黒の剣士に憧れている男、そんなものではない。
何故ならーーー。
自分は本物のキリトだからだ。
キリトは思った、目の前にいるのは
黒の剣士キリトを知っているのはSAOの人間、SAO開発者しかいない。
開発者だとは思わない、それは当然、目の前のプレイヤーは若すぎる。
フードで顔は見えなくても声の若さからして自分と大差はないだろうと思われるからだ。
「勝手に行って、勝手に後悔してろ」
俺はそう言い放って二人を通り過ぎた。
キリトは止めようとしたが、声が出なかった。
人なんて、簡単に傷つき、簡単に折れてしまう。
想い出に浸り、また自分を傷つける。
誰かの為に頑張っても、また自分を傷つける。
辿り着くのは自分を正当化させる為の妄想。
自分は頑張った、これでいい、もっといい人がいる。
だけど、正当化した所で今までの記憶がなくなるわけじゃ無い。
幸せだった記憶は生きている限り辛い記憶に変わる。
そして、泣きはじめるんだ。
馬鹿みたいに、お気に入りだった漫画の主人公みたいにカッコつけて。
『今日はユウヤの為にシチューを作ってみたんだよ』
知るかよ。
『ボクとセイが危険に晒されても旦那様が守ってくれるからね!』
『おとーさんは強いもんねっ!』
五月蝿い。
守れてなんかねぇだろ。
『ボクがユウヤを守れる様に、ユウヤはボクを一生守ってね』
勝手に決めつけんなよ…………。
『ユウヤはボクの事が好き?』
俺はお前なんて"知らない"。
「すげぇな仮想世界って、雨みたいなのもリアルに再現できるんだから」
俺は科学を凄いと思いながら笑顔で空を見上げて言った。
空を見上げると、雲一つない晴天だ。
俺はフードを深く被り、世界樹とは別の方向に歩き出した。
「…………なんだ?」
俺は足を止め、目に映ったものに驚いた。
央都アルン入口上空に大量の妖精。
色々な種族が混じったプレイヤー達が飛んでいる。
その大群は世界樹に向かっている様だ。
ウンディーネ、シルフ、ノーム、耳が生えているのは……ケットシー?
人数は大体1000人だ。
このまま行けば世界樹に辿り着く、大体は予想がつくのだが。
「「「「「サラマンダーに遅れを取るなーーー!!」」」」
四種族の代表と思われる四人のプレイヤーが声を合わせ叫ぶ。
次の瞬間、総勢約1000人のプレイヤーが続いて叫ぶ。
かなりの士気だ。
「俺の予想してたグランドクエストってあんな人数でも受注出来んのかよ」
プレイヤーだけでは無い、ケットシーに関してはドラゴンの様なものまで連れている。
VRMMOを無双系統のゲームに変えるようだ。
「さっきの男…………キリト擬きも行くんだよな」
俺はある一つの考えを思いついた。
さっきの男に現実を見せてやろうと。
「四種族のやばそうな軍隊と男一人………シルフの奴も来るとして……ドラゴンもプレイヤーと数えたとして大体ーーー」
「たったの1302人か?」
アイテムストレージからグングニールを装備し、俺は世界樹に向かう。
俺に渦巻いているオーラは輝いてはいない。
絵の具の黒をそのままだした様に真っ黒だ。
もし、まだ大切な人が
諦めないって言うなら。
越えてみろよ、巨大な壁を。
「絶対に越えさせはしねぇけどな」
光の勇者、懐かしい呼び名だよ。
誰がつけたんだか。
『ユウヤは光の勇者だねっ!』
俺は勇者だ。
だから現実を見せてやらないと。
死に物狂いで失いたくないもの程、失ってしまう。
『ユウヤ、大好き」
現実を見せてやるよ。
俺は