ソードアート・オンラインーEverlasting oathー 旧バージョン、1、2話欠損   作:ゆぅ駄狼

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第22話

 俺は…………負けた。

 

 自分自身に。

 

 限界だって、もう無理だって思ってた。

 

 一生、俺は立ち上がれないんだって。

 

 転んでしまった俺は擦り傷じゃなくて、とても酷い、複雑に、グチャグチャになった骨折だった。

 

 ただ転んだだけで。

 

 痛くて、痛くて、一人じゃ立てなかった。

 

 でも、そんな俺に手を伸ばしてくれた。

 

 こんな俺(偽りの勇者)キリト(光の勇者)が。

 

 あいつは俺にまた、光をくれた。

 

 だから、その光をーーー。

 

 

『絶対に手放さねぇ』

 

 

 俺は光の勇者。

 

 皆の光を、自分自身の光を集める者。

 

 そして、光を糧として、『希望』を護る。

 

 光はーーー戻った。

 

 お前(キリト)の『希望』を護ってやるよ。

 

 片腕が無くとも、眼が見えないとしても。

 

 中から溢れ出してくる光を頼りに、沢山の人の道標となり、守護者となる。

 

 

 ーーーユウヤは光の勇者だね!

 

 

 俺は自分の体を貫通している光の槍(ラスト・アポカリプス)を掴む。

 HPバーが0になっていようが関係ない。

 現実世界では心臓を刺されてもすぐには死なない。

 数秒か、数分だがあの世へ行くまで猶予を与えられる。

 ーー俺がやってんのはゲームだ。

 自分の意思で、プログラミング、セキュリティ、チート対策、全てを無視して自分の存在をここに証明し続ける。

 

 光は世界から消えることはない。

 

「何ッ!?」

「返して貰う………キリト……………」

 

 この世界のルールに従って、既に消えなくてはならない体はその場に留まり続けた。

 槍を引き抜き、全てのプレイヤーの状態異常を解く、俺への痛みはずっと残したまま。

 

「ユウヤ…………?」

「もう大丈夫、誰も傷付かない…………お前の目的は上にあるんだよな…………?」

 

 キリトに背を向け、ガーディアンが湧いていた上空を見上げた。

 俺へのペインアブソーバー以外の魔法を全て解除した事でガーディアンが湧き始めていた。

 

「お前………翼がーーー」

 

 

 

 ん、どうしたユウヤ?

 

 おじさんのへやでこんなのみつけたよ。

 

 これは………あぁ、ファンタジー系の奴かな。

 

 ふぁんたじー?

 

 そう、ファンタジーだよ。

 

 ねぇ、おじさん。これなんてよむの?

 

 これは妖精・精霊についてだね。

 

 ふーん、じゃあこれもようせいなの?

 

 う………ん、まぁそうだね。

 

 

 ノーム

 ユグドラシル

 スルト

 オリジン

 アテナ

 "マクスウェル"

 アルテミス

 セルシウス

 クー・シー

 

 

 このあてなってなにかすごいの?

 

 強い。

 

 おー!

 

 ……………。

 

 おりじんっていうのはー?

 

 全ての始まり、確かそんな感じの…………。

 

 おれっておりじんから生まれたのー?

 

 え、あ、いや………まぁそうだね。

 

 ほー!

 

 じゃぁ………"マクスウェル"って何?

 

 マクスウェルかー。

 

 うん。

 

 これは無の精霊。

 

 む?

 

 中身が無いんだ。

 

 どういうこと?

 

 全部無かった事にしちゃう精霊、自分の心でさえもね。

 

 かわいそう?

 

 あぁ……可哀想だ。『心が無い』なんて可哀想だろ?

 

 うん…………。

 

 心を無くすなんて絶対にダメなことなんだ。

 

 ダメなこと?

 

 ダメなことだ。心は『人と人を繋げる』大切な物の一つなんだ。

 

 ふぅん、ならおれがこいつにこころをあげてみるよ!

 

 はは、お前があげる心はまだ種かもしれないけど、ずっと側に居て水をあげてやれば咲くかもしれないな。

 

 ほんとう!?

 

 咲くよ、お前はとっくに一つ咲かせてるからな。

 

 え?

 

 

 お前がいるだけで俺は笑顔になれる。

 

 

 

 マクスウェル、無の精霊。

 全てを無かった事にする精霊。

 心さえも。

 精霊の中で唯一、地上を這いつくばる。

 空を見上げる事しか出来ない精霊。

 空を飛べない悲しみさえもーーー無かった事にする。

 感情が無いマクスウェル。

 

 ーーーある日。

 一人の幼い少女に出会った。

 少女はマクスウェルを見つけた。

 何の感情も湧かないかの様に空を見上げるマクスウェルを。

 

 

 なにしてるの?

 

 ……………。

 

 ねぇ。

 

 ……………。

 

 喋れないの?

 

 ……………。

 

 お空を見てどうしたの?

 

 ……………。

 

 お友達は?

 

 ……………。

 

 いないのかぁ……………なら私がなってあげる!

 

 俺は………。

 

 あ、なーんだ。喋るんじゃん!

 

 俺には分からない。

 

 何が?

 

 貴様が何故、俺に話しかけるのか。

 

 だって、悲しそうなんだもん。

 

 悲しい、何だそれは。

 

 えー!?悲しいって………イチゴとか盗み食いされた時とか…………?

 

 分からん。

 

 あはは…………君の名前は?

 

 マクスウェル。

 

 君が!?へー、精霊って案外私達と変わらないんだね。

 

 …………。

 

 無の精霊だよね?

 

 ……………あぁ。

 

 何か嫌だなぁ…………呼び名を考えてあげる!

 

 ?

 

 君はレン君!

 

 レン?

 

 うん、レンギョウっていう花があってねー、意味は………なんだっけ。

 

 レン…………。

 

 私はアリス、宜しくねレン君!

 

 

 幼い少女に殆ど適当に付けられた呼び名。

 マクスウェルの名前はレン。

 少女の名前はアリスという。

 この世界で目撃されている精霊はマクスウェルただ一人。

 あまり知られてはいないが、マクスウェルは人間を殺し尽くす為に他の大精霊によって地上に降ろされた。

 精霊だけの世界を作る為に。

 

 勿論ーーー平和は消え去っていった。

 

 

 レン君、またお空を見てるの?

 

 俺は………貴様等を消す為に此処に来た。

 

 え………?

 

 全てを無に返し、精霊だけの世界を作る………それが俺の存在理由………否、本当は理由など無いのかもしれない。

 

 難しくてよくわかんないけど、良いと思うよ?

 

 …………そうか。

 

 今まで私と君は友達でいれたけど、もうお友達ではいれなくなっちゃうんだね。

 

 友達?

 

 言ったでしょ、私がお友達になってあげるって。

 

 …………………それは困ってしまう。

 

 何で、君は無の精霊でしょ?

 

 あぁ………何故だか分からない。

 

 君はきっと、『無』なんかじゃないんだよ。

 

『無』ではない?

 

 

 君は私達を殺しに来たんでしょ、ならすぐにでも殺せば良かったじゃん。

 でも、今も私は生きてるもん、君の手を握っていられるもん。

 無の精霊なんて、君はそんな悲しい精霊じゃないよ。

 本当にそうなら私が君にあげるよ。

 喜びも悲しみも、全部。

 間違っているのは他の精霊さん達だよ。

 

 

 マクスウェルは自分の中に何かの変化が起きたのを感じた。

 今までの『無』ではなく、『有』だ。

 何かが自分の中にある。

 

 ある日ーーー。

 精霊達は自分達が送り込んだ精霊、"マクスウェル"に感情が生まれてしまった事に気付いた。

 無を司る精霊に感情などあってはならない。

 精霊達が下した決断はーーー消去だ。

 マクスウェルごと人間を消すことにした。

 

 マクスウェルは分かっていた。

 自分が感情を持ってしまえば精霊だけの世界を作るのは無理だと。

 だから送り込まれたのだと。

 無を司るマクスウェルは自分の感情、心をすぐにでも消すことができるーーーが。

 

 することができなかった。

 

 マクスウェルの中にはどうしても一つの思考が巡り巡っていた。

 

 

 ーーアリスともっと遊びたいーー

 

 

 そして、マクスウェルは精霊界を敵に回した。

 マクスウェルを人間界に送り込んだオリジン。

 精霊の双子、アポロン、アルテミス。

 死を司るハーデス。

 そして、精霊王ユグドラシル。

 数十万を越える精霊を敵に回した。

 

 全ての精霊がマクスウェルと少女の目の前に立ち塞がっている。

 

 アリス、俺は………また貴様と遊べるのだろうか。

 

 遊べるよ、きっと。

 

 今度は砂遊びというものがしたい。

 

 私、お城作れるんだよ。凄いでしょっ!

 

 お城、とはなんだ。

 

 大きなお家!私も住んでみたいの!

 

 なら、お城を作るとしよう。

 

 うん!

 

 

 交える事のなかった精霊と人間は約束を交わし、無の精霊は初めて"笑った"。

 しかし、結果はーーー。

 

 マクスウェルは全ての精霊と戦い、勝利した。

 "現状"が勝利と言えるかどうかは分からないがきっと、『勝利』と胸を張って言えるのだろう。

 

 一つの槍を用いて、その槍は精霊王ユグドラシルを貫いていたが、一方のマクスウェルはーーー死んでいた。

 片目を失い、腕を引き千切られ、体には数万本の矢や剣、槍などが刺さっており、マクスウェルは完全に絶命していた。

 

 だが、何かが違った。

 少女の目に映ったマクスウェルは死んでも尚、微笑みを絶やすことは無く、背中に無かった筈の"天使の様な翼"を大空いっぱいに広げている。

 

 

 ーーまたお空を見てるけど、どうしたの?

 

 ーー…………俺もあの空に行ってみたい。

 

 ーーレン君なら行けるよ!

 

 

 少女は涙を見せずに微笑んでいた。

 

 

 

 

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