ソードアート・オンラインーEverlasting oathー 旧バージョン、1、2話欠損 作:ゆぅ駄狼
「だぁーーっ疲れた!」
溜息を吐いて机にグッタリとしているのは俺の親友である桐崎優也。
初対面の人に対しては無愛想だけども、実際はとても優しい奴だ。
「まだ一時間目が終わっただけだぞ?学校生活はこれからだよ」
「………音楽室行ってくる」
優也は音楽室へ行くとポケットに片手を突っ込み、もう片方の手で頭をわしゃわしゃと掻き、教室の外へと向かって行った。
因みに言うと、優也はピアノが弾ける。
それもかなり上手く弾く。
実は優也はピアノのコンクールで優勝ばかりし、トロフィーやメダルなどを沢山持っている。
ーーーそれにしても優也の破天荒な行動には毎回溜息が出てしまう。
「はぁ…………」
俺が溜息を吐きながら次の授業の準備をしていると、右方面から視線を感じた。
視線の先を見て見ると女の子がチラチラと俺の方を見ていた。
俺と視線が合うと女の子は顔を真っ赤にし、慌てて目を逸らし、誤魔化す様に慌ただしく授業準備をした。
目を逸らされた。
そう思い、俺は授業の準備を続けたがーー
またもや視線を感じた。
視線を感じる方を見るとやっぱりチラチラと女の子が見ている。
「どうかした?」
「え!?いや………その………何て言うか……大変だね」
「ああ、優也の事かな?」
「うん、あの人怖いし、破天荒だし、大雑把だし………桐ヶ谷君、大変そう」
「あはは………もう慣れたよ」
初対面の人は話さなければ優也は怖いなんて思わないんだけれども………
この子は会話してしまったし、なんせ学校初日で泣かされかけたからな。
破天荒なのは……確かにそうだな。
つい最近の破天荒な行動と言えば、コンビニの前に溜まっている不良集団に喧嘩を吹っかけて消滅させるという破天荒さ。
大雑把ではないね。うん。
あの優也が大雑把になったらピアノの鍵盤消えるよ?
「あんまり無理したら駄目だよ?」
「うん、有難う」
俺は笑顔で御礼の言葉を女の子に向けて言った。
すると女の子は顔を真っ赤にして目を逸らしてしまった。
そう言えば……紹介するのを忘れていた。
女の子の名前は結城明日奈。
大きな会社の社長の娘さんだとか。
簡単に言えばお嬢様だ。
「優也は君が思ってる程、怖い人じゃないよ………多分」
「怖いよ………あの人に話しかけると毎回睨まれるもの………」
「あれでも普通の目付きなんだけどね………」
「 ふぅん………」
明日奈はチラッと優也が出て行った教室の外を見ていた。
きっと、明日奈の中では優也は永遠に怖い目付きの不良として通って行くのだろう。
悲しき優也。
「そうだ、"今日も"優也、昼休みは音楽室だろうから一緒に昼飯でも食べない?まぁ、あと三時間も授業あるけど」
「え………あ、うん………いいの?」
「俺は別に構わないよ。君が嫌じゃないならね」
正直言って、一人で虚しく食べる弁当程無味な物はない。
だから一緒に話しながら食べる友達が欲しいのだ。
唯一の友達は音楽室だし。
勿論、相手が女の子だから、という理由で誘っているわけではない。
無論、他意もないです。
「桐ヶ谷君が良いって言うなら………別にいい」
明日奈は目線を逸らしながら言った。
時折、俺の方を上目遣いで見てくるのはちょっと卑怯臭い。
可愛いとは思うけど、俺は女の子とは無縁だからときめいても仕方ないんだよね。
「それじゃ、昼休みにね」
俺は上目遣いをしている明日奈の頭に手をポンと置いた。
すると、明日奈の様子が急変し、周りがざわつき始めた。
俺は無意識に明日奈の頭に手を置いたことに気付いたのはざわつき始めてからだった。
「あぅぅ…………」
「ハッ!ご……ごご、ごめん!!」
あぅあぅと口を動かして、顔を真っ赤にしている明日奈の頭から急いで手を下ろした。
本当に他意があったわけじゃない。
無意識、そう、無意識だったのだ。
昔にもこういう事があって女子の話のネタにされてた事があるからね。
って、優也が言ってた。
「……………」
と言うか………周りの視線が痛い。
特に男子から。
此処で余談なんだけど。
中学の時に一回だけ、何故か男子に集団リンチに遭いかけた事があるんですよ。
皆、⚪︎⚪︎ちゃんがどったらこったらとか。
学校の体育館倉庫に呼ばれた時は本当に恐ろしかった。
でも、その時は優也が異変に気付いて男子を鎮圧してくれたっけな。
ありがたや、優也。
ーーーっとまぁ………女子と無縁になっているのにはこう言う理由があってあまり関わろうとしてなかった。
今日は優也と昼飯を食べれなさそうだから明日奈を誘ったけど………やめた方が良さそうだな。
「えっと………やっぱり今日はやめとくな」
「ふぇ…………?」
「君が悪いって訳じゃないんだけど、寧ろ俺が無意識なのが悪いんだけど………俺が女子に関わるとあまりいい事が無いんだよね。主に俺が悪いんだけど」
うむ。俺が悪いって事を二回強調して言えば、相手は、ああ、私は悪く無いのか。っと理解してくれて、更には何も起こらずにこの事態を穏便に終わらせることが出来る。
ーーー筈だったんだけどな。
「うぅ…………」
「え、ちょっと………何で何で………ちょ、どうしよう」
想定外の事態が発生。
俺の予想とは全く違い、明日奈が泣き出す始末。
やばい、男子だけじゃない、女子からも視線が半端じゃない。
俺が焦っている内に明日奈はポロポロと泣き出した。
「うぅ………うぇ……ふぇぇ…………」
「待って待って、何で泣いてるの!?」
そんな事を言ってる間に更に視線による圧力が増加。
俺も俺で頭の中が混乱していた。
こういう時ってどうしたらいいんだ〜!?
取り敢えず泣き止ませないと………。
でも、どうしたら………。
きっと、混乱しすぎて俺の目はぐるぐるマークになっているだろう。
混乱していると頭の中の片隅に一つの方法が思いついた。
これは昨晩、ネット小説を見ていた時に主人公がヒロインを泣き止ませる時にしていたことだ。
それが恥ずかしい行為だなんて混乱している俺には理解が出来なかった。
俺は明日奈の目の前に立って、そっと明日奈に近付いた。
「泣かないで…………」
「ふぇ……………」
ネット小説で主人公がヒロインにしていた行動。
それは、優しく抱き締める。
つまり、俺は今、明日奈を抱きしめている。
高校生活が始まって一ヶ月しか経って居ないのに突然、女の子を抱き締めるだなんて高校生活終了をお知らせする行為だ。
周りのクラスメイトは視線によるプレッシャーを強めるどころか、口をポカーンと開け、唖然としていた。
「俺が悪かったんだろ?謝るから泣かないで……」
「うぅ…………桐ヶ谷君は悪くないの…………」
俺はゆっくりと抱き締めている腕の力を弱めて明日奈を離した。
「また今度、な?」
「……………うん」
明日奈の返事を聞くと俺は授業の準備を続けた。
教室 ーーー昼休みーーー
結局、授業に集中出来なかった。
実は明日奈を離した直後から状況の判断能力は元に戻っていた。
そのせいで今までの授業全てに集中出来なかった。
明日奈を抱き締めた時の女の子独特の柔らかさと匂い。
女の子を抱き締めた事が初めてだった俺には忘れられない出来事だった。
クソッ!後ろで呑気に口笛なんて鳴らしやがって!
後ろを見て見ると口笛を鳴らしながら窓の外を見ている優也がいた。
横を見て見ると国語の授業のノートを纏めている明日奈。
別に、好きって訳じゃないよ?
ほんと、ちょっと気になるだけね、主にさっきの事で。
明日奈を見ていると後ろの席からガタンっと立ち上がる音がした。
「ぎ………!?」
「なーに情けない声出してんだ和人?」
「………何でもないよ!!」
「うぉ!?そんな怒んなくても良いだろ………あーあ、ピアノ弾いてこよーっと」
萎えた顔をしながら頭をポリポリと掻きながらまた音楽室へと向かって行った。
この時の女子の目がヤバイ。
女子の殆どが目をハートにしている。
優也はやっぱりかっこ良いよなぁ…………俺とは違う。
そんな女子達を他所に、俺は溜息をついて弁当を食べようとーーーしたんだけどなぁ………
「あ………れ?無い、無いぞ。忘れた………?」
鞄の中を漁って見ても、机の中を見ても周りを見渡しても俺の黒色の弁当が見当たらない。
完全に弁当を家に忘れた。
購買に行くしか無いと思い、尻ポケットを触って見るが………無い。
財布も忘れたと見た。
何が辛いって、空腹を満たせないことが辛い。
軽く不幸オーラを身に纏いだしてる気がする。
「はぁ……………」
溜息をつくことしか出来なかった。
ーーーすると。
ツンツンと俺の右腕を突つかれる感覚がした。
自分の右腕の方角を見て見ると可愛らしい弁当箱を持った明日奈がいた。
「一緒に食べる………?」
「………でも………」
さっきの事もあって少し気まずい。
いや、かなり。
俺が口籠っていると明日奈はぷくーっと頬を膨らませた。
「私が桐ヶ谷君と食べたいの!」
顔を赤くしながら駄々っ子の様に大声で言うと涙目で俺を睨んできた。
可愛いだなんて死んでも言えない。
「可愛い…………」
「…………え?」
死んでも言えないだなんて言えない。
正直な感想を述べてしまった。
お互いに数秒固まっていると俺の顔面が明日奈の目の前から消えた。
「コラァ和人ぉぉぉおおおおおお!!!」
原因はこいつのせい。
俺の顔面に国語辞典を投げて来た。
俺の顔面は真っ赤っか。
「里香………」
「何、女の子をナンパしてるのよ!」
「いや、してないから!断固否定します!」
怒鳴って来ている女は篠崎里香。
中学の時に知り合ったそばかすがチャームポイントの女友達なんだけど…………アンタのせいで私の人生が変わっちゃったんだから……とか意味不明な単語を赤面しながら叫ばれた事がある。
それ以来、物凄く突っかかって来る。
はっきり言って迷惑以外の何物でもない。
「次はどんな子を…………って」
「どうした?」
「何………この可愛い子」
「えーっと?里香さーん?」
「………………」
里香はやってらんねという顔をして無言で教室から立ち去って行った。
結局俺は無駄に痛みを伴っただけだった。
「何なんだよアイツ…………」
「桐ヶ谷君大丈夫?」
「うぁ……口切れてる………」
「バイ菌入るかもしれないから保健室行こ?」
「うーん………そうだな」
俺の昼食は一人の女によって消された。
絶対に許さないよ里香。
それと国語辞典。
…………ちーっすっと言う感じに俺は保健室のドアを開けた。
しかし、其処には先生は居なかった。
「先生いないのかよ………」
「…………取り敢えず口の中の血を洗いながそっか」
「そだな」
保健室には先生が居なかった為、俺は明日奈の判断に賛成し、保健室に置かれているコップに水道水を注いだ。
グジュグジュと口をゆすぐがーー痛い。
口の中を水でゆすぐ度に鋭い痛みが口内に襲い掛かる。
ぺっと水を吐いてみるとそれなりに赤くなっていた。
マジで許さないよ、国語辞典。
「痛い…………?」
「少しな………」
少しって言うかかなり痛い。
水で口の中をゆすぐと鋭い痛みが襲い、水を吐くとジンジンと痛いのが襲ってくる。
割とイライラする痛み方だ。
顔を痛みで歪ませている俺を見て、明日奈は心配している顔で俺を見ていた。
心配している顔は正直言ってーーー可愛い。
俺の為に何かすることは無いかと周りを見渡してオドオドしているのも見ていて可愛い。
全く、目の保養だ。
だなんて思っていても思わない様にさせていただく。
結局は思っちゃってるんだけどな………。
「昼休み終わっちゃうよ?昼飯も食べてないんだろ?俺の事は気にしなくていいから食べて来なよ」
すると、明日奈は首をふるふると横に振った。
きっと、自分にも責任があると勘違いしているのだろう。
だがーーー違った。
「桐ヶ谷君と一緒に居たい………」
「ほぇ?」
またアホみたいな声を出してしまった。
俺の予想とは違う反応が再び返ってきた事に驚きを隠せないでいた。
「えっと………何で?」
「……………き………だから………」
ごめん、全く聞き取れない。
下を俯いてるせいで全く聞き取れない。
………うん、顔を上げてくれたのはいいけど、何で涙目なんだよ。
俺、またなんか悪い事したのか?
っと、思っていると明日奈が俺の背中に腕を回して抱き付いてきた。
「ちょっと、明日奈!?」
「好きなの!!!!!!!高校初日の時に一目惚れでずっと…………桐ヶ谷君の事が好きだった。そんな桐ヶ谷君が私に心を強くしてくれる御守りをくれた。嬉しかったんだよ?それからずっと、ずっとずっと、桐ヶ谷君の事だけしか考えれなかったの!!!」
ーーー突然、告白された。
俺は謎の告白と抱き付かれていたことにより、混乱が再び来襲。
上目遣いで俺の返事を待っている明日奈と意識が吹っ飛びそうになる位混乱している俺。
………さっきも思ったけど……明日奈の体、柔らかいし、髪もいい匂い………。
そんな事考えたら駄目だぁぁぁあああ!!
取り敢えず何か意識を逸らさないと!
「桐ヶ谷君……………」
「ひゃい!?」
情けなくてアホな声、第三弾目。
男としてカッコ悪すぎる気がする、何て思う余裕が俺にあるわけが無い。
明日奈の方を見るとジッと何かを待つ顔。
告白された事なんて一回も無かったんだけど………どうすればいいんだ!?
ヤバイヤバイ………!
唐突に可愛さが増して見えて来た………!
「お、お、お、おおおお俺も別に明日奈が嫌いって訳じゃ無いよ………?」
うん、嫌いでは無いな。
寧ろ好きに近いんじゃないか?
待て、冷静に考えよう。
明日奈が可愛く見える。
↓
明日奈に対してドキドキする。
↓
明日奈を抱き締めたい。
↓
明日奈が好き。
これは明日奈が好きと言うことになりますね。
明日奈は俺の言葉に少し不満があるのか、むぅ〜と唸るとグイッと制服を引っ張り、俺の顔を自分の顔へと近付けた。
その距離はお互いの吐息が確認出来る程の距離。
俺は無意識に明日奈を抱き締めた。
俺自身の気持ちが伝えろ、伝えろと言っている。
ああ……俺は明日奈が好きなんだなぁ………
抱き締めている腕に力を入れ、ギュッと離さない様にした。
明日奈は抵抗どころか、それを受け止める様に静かに腕の中に収まり、俺を見ていた。
「俺も好きだよ」
その一言だけ、俺は口にした。
俺はその場の勢いに任せて明日奈に顔を近付けた。
明日奈は理解していたのか、目を静かに閉じた。
俺は明日奈の方に頭を傾けた。
「ん………ぅん…………」
明日奈は色っぽく、甘い声を出しながら俺を受け入れた。
それでも、少し怖かったのか、目には涙を浮かべている。
俺は怯えさせない様に優しく口付けをした。
「ぷはぁっ!」
お互いに口を離すと、明日奈は口を半開きにし、目をトロンとさせ、頬を桜の様な色にしていた。
………流石にやりすぎた。
というか……………何てことをしてしまったんだ!
でも、そうは思っていても内心はハッスルしていた自分がいた。
自分を凄く殴りたい。
「ご、ごめん!無意識で………その…………!?」
必死に弁解をしていると、弁解もクソも無いが。
とにかく弁解をしていると明日奈が再び唇を重ねて来た。
「ん………んぐ………………ん………」
このやり取りが二回連続で続くとは思っていなかった。
俺は明日奈を受け入れ、背中に腕を回して抱き締めてみると微かに震えていた。
明日奈は満足したのか口を離すと泣き出した。
「ど、どうした!?」
「うぅぅ………うぇぇ………んぐ………ふぇ………ふえぇ…………………」
ポロポロと涙を流し、号泣する明日奈。
でも、今の俺にならどうすればいいか分かる。
「忙しい奴だな……………泣き止むまでずっと、ずっと離さないでいてやる」
俺は優しく微笑みながら優しく、それでいて愛情を込めて明日奈を抱き締めた。
全く………可愛いったらありゃしない。
俺は明日奈を愛おしく思いながら頭をそっと撫でた。
明日奈はずっと俺の胸の中で泣いていた。
ーーー俺には分かる。いや、明日奈にも分かる筈だ。
流してる涙は悲しいからじゃない。
心の底から嬉しいから流しているんだ。
実は俺もちょろっと涙を目に浮かべていることは誰もしらない。
まさか、最後には感謝する羽目になるとはな
ーーーー国語辞典。