ソードアート・オンラインーEverlasting oathー 旧バージョン、1、2話欠損 作:ゆぅ駄狼
第26話
ーーー優也が明日奈を救ってくれてから2週間ちょっと。
きっと、これは優也なりのケジメだったんだ。
「優也、聞いてくれよ。明日奈が歩ける様になったんだ」
「…………………」
「ユウキ………木綿季は大丈夫だってさ。倉橋先生が保護してくれてるよ」
「……………あぅ…………」
「お前の……おかげで須郷も捕まったよ」
「…………………」
そう、須郷は警察により逮捕された。
本物の人間の脳を使った人体実験の罪によって。
ーーーあの時、俺も一緒にいたらこんな事にはならなかった。
優也はもう、真面には"喋れない"。
笑う事も出来ない。
けれども、木綿季の名前を出すと時々、左の瞳から涙が流れていく。
孤独の中、永遠に木綿季の事を思っているのだろう。
優也は、一人でガーディアンの群れと戦い、俺を世界樹に導いてくれた。
HPバーが消滅しても存在を消さなかった優也を、俺は勇者だと思いきっていた。
この友こそが最強なのだとーーー勝手に思いこんでいたんだ。
何故、優也はこんな風に変わってしまったのか。
それは簡単な話、優也だけ痛覚を切っていなかったからだ。
「かっこつけやがって…………こんな風になったらお前が幸せになれないだろうが」
そう言って優也を暖めている毛布を掴み、悔しさを堪える様に握り締める。
何を言っても優也から返ってくる言葉は無い、時々喋っても日本語ではない何かだ。
無表情で口をパクパク動かすその姿は光の勇者なんてものには見えなかった。
「優也………お前、翼が……………」
「昔、叔父さんが言ってたんだ。無の精霊だったマクスウェルは唯一飛べない精霊。何の感情も持たないマクスウェルはある少女に希望を貰ったって、希望を宿したマクスウェルは大空へと翔るーーーってな」
これは本当にゲームなのだろうか。
この時、俺は目を疑っていた。
優也の背中からは偉大ーーー神秘、としか言いようが無い、それは見事な天使の翼だった。
「キリト………行け」
「でも、お前ーーー「行けッッッッ!!」ーー」
最初は戸惑っていた、何故ならユウヤの片腕は無い。
片腕が無いだけでかなりの戦力差が出る。
それに、片方の目は異常な位に紅いエフェクトを出し続けている。
片目破壊の状態異常が出ている筈だ。
でもーーーー。
頼れる様な気がしたんだ。
ユウヤの翼を見ると、どんな困難も乗り越えてくれるんじゃないかって。
そしてーーー俺は任せてしまった。
「ーーー頼んだ」
「任せろ」
そして、ユウヤは俺の前を翼で羽ばたき、ガーディアンのターゲットを集めていった。
見事に前線に出たユウヤへとガーディアンはターゲットをつけ、俺は俺の目的の為に上へと向かった。
「おい…………お前ら……………」
「「「「「「「?」」」」」」」
「此処からは俺の役目だ、お前らは帰れ」
バグり始めていた槍を見てそう言った。
ーーー病室の窓からは心地良い風が優也を撫でる。
だが、それに反応することもない。
「何で一人で全部やっちまうんだよ、皆もいればお前は……………」
「それがーーー優也君だからさ」
不意に後ろから声をかけられた。
振り返ると、そこには少し歳をとったおじさんが立っていた。
おじさんは花束を持っていて、持っている花束をそっと優也のベッド近くにある机に置いた。
「俺は桐崎大吾って言うんだ。宜しくな」
「………桐ヶ谷和人です」
「君は優也の友達だね」
「はい、優也君はSAOで一緒に戦い抜いた仲間です」
「ーーーいい友達を持ったな、優也」
大吾が優也に語りかけても返事はない。
「優也、厄介事に首を突っ込んで火傷しちまった様だなーーーでも、良いんだ。お前は友達の為にやってたみたいだからな」
ーーー優也は知らないかもしれなかったが、須郷は悪者だ。
結城家の養子へと入るために明日奈の昏睡状態を利用し、無理にでも婚約しようとしていた。
更には法律で禁じられた人体実験もしていたのだから。
須郷との決着をつけ、俺が優也の所へと戻った時にはーーー優也の体は剣、弓矢が刺さり、魔法による爆炎に何度も呑まれていた。
HPが存在しなくなった優也はエンドフレイムになることも出来ない。
ガーディアン達は動けなくなった優也をエンドフレイムになるまでずっと攻撃をしている。
俺は急いで優也を助け出し、クエストから離脱した。
そして、クエストから離脱した瞬間に優也はログアウトしてしまったーーー。
「そして、結果がこれーーー植物状態………か」
「優也は…………俺と明日奈の為に、俺達の為に頑張ってくれました」
「…………そのうち起きて、また一緒に飯食べようなーーーじゃ、キリト君」
「あ、はい」
大吾は病室を後にして行った。
もう夕方だったが、俺は優也に語り続けた。
「須郷の実験には死人も出たらしい、男女合わせて二人、優也と同じ歳だって」
名前は………"藤林照"、"佐藤鈴菜"だった筈。
二人共ナーヴギアを装着し、ナーヴギアから得た脳のデータを須郷にいじられていたらしい。
ある日、ナーヴギアから無理矢理信号を脳に送り、洗脳を試みた結果、脳の組織が焼き切られたとのことだ。
奇妙な事に、ナーヴギアを被っていた筈の男の方は死体発見時、女の子を守る様に抱き締め、死んでいた。
「あ、いたいた。お兄ちゃん、お母さんが心配してるよ?」
「あぁ、分かってるよ。すぐにそっち行くから」
俺と"直葉"はその場を後にした。
優也に手を振って。
優也は微笑んでいた。
ーーーー木綿季。
おーい、
木綿季?
起きろって。
「木綿季!」
「わわわっ!なになに!?」
「どんだけ長い間寝てんだよ。もう放課後だぞ」
「あれ………君は誰…………?」
「はぁ?寝ぼけてんのか、馬鹿」
何が起きているのだろうか。
ボクは周りを見渡して見る。
周りには帰りの準備をしている生徒?達。
その中の一人がボクに近付いてくる。
見覚えがある。
「木綿季、一緒に帰ろ!」
「アス………ナ?」
「あれ、明日奈先輩、和人さんはどうしたんですか?」
「メカトロニクス部で部活動あるからって」
「あー、俺もそろそろ部活いかないとなー」
「頑張ってねー、"純"」
純?
結局誰なんだろう?
「あーーーっ!」
「ーーーっ!?どうしたの木綿季?」
「アスナ、無事に帰ってこれたんだね!」
ボクはアスナに抱きつく。
懐かしい感覚か、"現実"で触れ合うのはこれが初めてだからか、とても嬉しかった。
明日奈は戸惑っていた。
「無事、無事?無事ってなんのこと?」
「無事に
ユウキの言葉に対し、明日奈は疑問符を浮かべる一方だった。
「ねぇ、木綿季」
今思えば可笑しい事じゃないか。
明日奈の言葉を聞いてユウキはそう思う。
どうしてボクはーーー。
「
ーーー機械の中にいないんだろう。
何でボクは制服を着ているのか。
何で知らない人がボクを知っているのか。
何でボクが外に出ているのか。
分からない事だらけだった。
「あは………ははは……………また冗談キツイよアスナ………閃光のアスナってSAOの中じゃ有名だったでしょ!」
「閃光の…………アスナ?私、そんな恥ずかしい事自分で言ってたの!?」
「え………あ、れ?」
可笑しい
可笑しい
可笑しい
そうだ、ユウヤ。
ユウヤは…………?
「ねぇ、アスナ」
「閃光……………あ、うん?」
「ユウヤって何処にいるの?」
「え、えっと……………」
もう、どうなってるんだろーーー。
「ユウヤ…………この学校には数人程度はいるんじゃないかな」
ーーーなんで?
ボクの言ってるユウヤは一人しかいないよ?
「どうしたの、木綿季?ちょっと可笑しいよ?」
「可笑しいって、可笑しいのはアスナだよっ!ボクが言ってるユウヤはアスナもキリトも良く知ってるよ!…………知ってるよ…………」
「キリト…………和人君の事かな、桐ヶ谷和人って言うけどキリト君っていう人は木綿季が初めてだよ」
明日奈は不思議そうにユウキを見て笑みを零す。
ボクが可笑しいのかな。
でも、ボクはーーー。
「何でーーーー」
「木綿季?」
「ボクはAIDSで死ぬ筈なのに、何で学校なんかにいるのっ!!!」
息が荒くなる。
でも、抑えきれなくて。
何もかもが、辻褄が合わなくなって、ボクの記憶は可笑しいのかって疑う程、叫びたくなる。
そんなボクに対しても、アスナは優しく答えてくれた。
信じられない言葉で。
「木綿季の病気は小さい頃に治ったんでしょ?もう、大丈夫な筈だよ。心配しなくてもいいんだよ?」
治った?
治療法が無いって言われたのに?
AIDSは発症したら治らないって言われてるのに?
「え…………あ……………そん……な…………」
「前に木綿季が言ってくれたんだよ?」
「どうやって…………」
「どうやってって……………ねぇ、木綿季の言ってるユウヤ君って、」
「木綿綿の幼馴染の事?」
「幼………幼馴染?」
「うん、でも…………ううん、何でもない」
「何?ねぇ、アスナ?」
「で、でも…………木綿季、前に話してた時、辛そうだったもの」
「辛そう?」
「ユウヤ君…………小さい頃、事故にあって死んだって……………。」
死んだ、
死んだ?
何をーーー。
「木綿季はAIDSは発症してなかった。HIVに感染してたけどーーー脊髄移植で治ったって」
「脊髄移植…………え?」
「どうしちゃったの?木綿季は自分で言ってたんだよ?」
「ユウヤ君のお陰で生きていられるんだ、って」
嘘だ。
嘘だ。
嘘だ。
嘘だ。
嘘だ!
嘘だ!!
「嘘だっ!!!!!」
何でアスナがこんな酷い嘘をつくのか、ボクには理解できなかった。
ボクは教室を走って抜け出した。
現実では動かしてない筈の足も、何故か言うことをちゃんと聞いて風を切る様に走り抜ける。
校舎を把握してない筈のボクの体は何故か迷うこと無く出口へと向かっている気がする。
知らない筈の人達を見ると、知らないのに眺めていたら名前が出て来そうになる。
気が付くとーーー公園前の交差点中心に立っていた。
そこで止まった理由は分からない。
けど、良く知っている場所の気がする。
交差点近くの電柱には"三つ"の花束が添えられているのが見える。
「そっか」
気が付けば涙が溢れ出ていた。
ボクを邪魔だと言う車達は五月蝿くても。
ボクは一歩も動けなくて。
「
ボクは本当に
それが痛いくらいに理解出来て。
その時の事が未だに信じられなくて。
「もっとーーーー生きていたかったんだね」
ボクと優也は夢ばっか見てたんだ。
背中を触ってみると"身に覚えがある"跡があった。