ソードアート・オンラインーEverlasting oathー 旧バージョン、1、2話欠損   作:ゆぅ駄狼

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第27話

「おい、そこの餓鬼どきやがれ!」

 

 ボクは交差点のど真ん中。

 車の運転手達はボクを邪魔者扱いする。

 それは当然の事だ。

 

「ーーーすいません」

 

 謝罪の言葉をし、ボクは頭を下げた。

 足を歩道へと踏み出して行く度に、段々と冷静さを取り戻す。

 

 

 桐崎優也。

 

 ボクの幼馴染。

 

 というよりはお兄ちゃんに近かった。

 

 生きていれば中学三年生だったかな、ボクより二つ上で和人や明日菜と同い年。

 

 ずっと前から知っている。

 

 優也はずっと前にーーー死んでいる。

 

 この交差点で親と一緒に歩いている時に自動車事故にあったんだ。

 

 

 歩道まで辿り着くと、目の前には息を切らした明日奈がいた。

 

「ゆ、木綿季……どうしちゃったの?」

「ごめんね、明日奈……………ボクね………ボク…………」

「駄目よ木綿季、泣いちゃったら可愛い顔が台無しだよ?」

 

 涙が出ていることはボクも気付いていた。

 ただ、何度拭っても収まらなくて。

 拭う度に夢を思い出しちゃって。

 過去のことまで全部思い出しちゃって。

 

『待ってよゆうやぁ!』

『おっせーな!ほら、乗っかれ!』

『え?』

『おんぶだよ!』

『わーいっ、ありがとーゆうや♪』

 

 優也はとっても優しくて。

 

『痛ててて…………』

『大丈夫?』

『へーきだよ、お前がいじめられる苦しみと比べてみればな』

『ーーーーありがと』

 

 強くて。

 

『またゆうきを傷つけるなら、俺が全員、ぶっ殺してやる』

 

 おっかない。

 けど、そこもたくましいって言うか。

 頼れた。

 今思えば、小さい頃の事なのに、優也って言葉使いがちょっと怖かったな…………。

 

 昔の思い出が印象深くて、大切な思い出だったから、"また"夢を見ちゃったんだね。

 

『おい、大丈夫か?もう泣くなって。お前は強いんだから』

 

「うん、ボクは泣かないよ。明日奈」

「よしよし、今日は私の家に来るといいよ。木綿季の好きな本あったでしょ、あれの新刊が出たから買っといてあげたよ」

「ありがと、でも、今日はいいや」

「そう、なら帰ろっか」

「うん」

 

 明日奈は自然にボクの手を取り、二人一緒に帰路について行った。

 

 

 ボクが見たのは見苦しい夢の一つだ。

 

 夢に優也という存在を出すことで、ボクは優也をボクの世界にずっと留め続ける。

 

 大好きだった優也をずっと、縛る様に。

 

 ボクと優也は別に相思相愛だった訳でもない。

 

 優也がボクを好きだった訳でもない。

 

 でも………少しは可能性はあったかも。

 

 ただ、確証がないんだ。

 

 好きであって欲しい。

 

 ボクの事だけを好きだって言ってもらいたい。

 

 じゃないと、また夢を見ちゃうよ。

 

 ボクも事故にあえば優也に会えるかな?

 

 駄目、それは絶対に。

 

 優也が"生きているから"。

 

 ボクが死んじゃったら本当にいなくなっちゃうもん。

 

 でもーーー悔しいな。

 

 

 現実でも夢でも、勝手に好きになって。

 

 勝手にキスして。

 

 勝手に愛を誓って。

 

 迷惑ばっかかけてた。

 

 

「おーーーいっ!明日奈ーーー!ゆうきーーーー!」

 

「あれ、明日奈。きり………和人じゃない?」

「え、ほんとだ!部活どうしたんだろ」

 

 夢では黒の剣士と言われ、現実では中学二年生にしてメカトロニクス部の部長を務めている。

 異常と付くほどの機械いじり。

 あと………天才。

 

「木綿季って和人君と知り合いだったの?」

「うーん…………ボクはあんまり知らないかな」

「ふぃ〜、習い事で剣道やってるにしても走るのはもう歳かな……………」

「歳って……まだ中学生でしょ……………」

「ねぇ、和人君」

「なんだ?」

「木綿季と知り合いだったの?」

「…………どうなんだろうな」

「え、知り合いっぽく呼んでたじゃない」

 

 和人はゆっくりと人差し指をボクに向けてこう言った。

 

「"これ"とは知り合いだな」

 

 意味が分からない。

 ボクは現実の方でのキリトとはあまり、というか一言も言葉を交わしたことがないような気がする。

 寧ろ、これが初めてだ。

 

「ボクは和人の事はあまり知らないんだけど、それより、ボクを『これ』扱いするのはやめて欲しいかも」

「いきなり呼び捨てかよ、俺はお前の歳上だぞ」

「むぅ…………分かったよ、和人せんぱい!」

「そ、そんな大声で言わなくてもいいんだが………」

 

 先輩、と可愛い女の子に言われたからなのか、和人は照れ隠しをする様に腕で顔を隠す。

 その様子を見ていた明日奈からは黒い気配が感じられる。

 

「和人君…………?」

「なっ、なななな……………何でございましょうか…………?」

「木綿季に手を出したら………殺すわよ」

「ひぇあ!?そんなことしないって!」

「ーーーったくもう…………和人君も早く同年代の彼女くらい作りなさいよ」

 

 そういいつつも、明日奈はちらちらと和人の方を様子見する。

 

 何か、違和感がある。

 

 ーーーそっか、夢だったもんね。

 

「あれ、そういえば明日奈と和人って同学年なの?」

「私が三年、和人君が二年だよ」

「何の接点もないよね、いつ知り合ったの?」

「和人君が助けてくれたんだよ」

「あー、あの時だったな」

「私が二年の時、クリスマスイブの日………歩いていた時に危ない人達に無理矢理連れて行かれてね……ナイフまで持って、私を脅して、目的は、せ、せ、せ、せっ!」

「性行為ーーー」

 

 和人が言葉を発した瞬間に路上へと吹き飛んで行った。

 微かだが、明日奈の手から煙が上がっているのはきっと気のせいだろう。

 明日奈の目付きが獲物を狩る目になっているのもーーー気のせいだろう。

 

 吹き飛んだ和人を確認し、明日奈は話を続けた。

 

「そこに和人君が来てね、かっこよかったんだよ!」

 

 吹き飛んだ男はかっこいいらしい。

 

「ナイフまで取り上げて、こう言ったんだよ『リーチが短いな、でも、お前らを殺すのには十分だ』って」

「凄い強そうだね…………」

「っつつーーー思いっ切り殴らなくてもいいじゃないか!」

 

 頬を摩る和人。

 

「ごめんね、体が勝手に動いちゃって」

「勝手に動いたら強烈な一撃を放つのかよ、お前は」

「和人君ってば大袈裟なんだから…………」

「ほんとだよ……………」

 

 大袈裟だと思っておきたいところ。

 

「そういえば、和人君、部活は?」

「無くなった、先生が急用の仕事で佐賀県まで行ってくるんだってさ」

「随分遠くに行くね」

「部活自体は自由にやってもいいんだけど、明日奈と帰りたかったし」

「ーーーなっ!?」

 

 満面の笑みで和人が言う。

 明日奈は困ってる様に見せかけながらも、何処か嬉しそうだ。

 

 付き合っちゃえばいいのに。

 なんて思っちゃうボクがいる。

 

「付き合っちゃえば?」

 

 ボソっと言ってみる。

 案の定、その一言で明日奈が崩壊しだす。

 

「え、え?わ、わ、私が和人君と、恋人に?えと、なんていうか、私は構わない、うん大丈夫。だ、だだけどね!?」

 

 そんな明日奈に和人は溜息をつく。

 

「冗談に決まってるだろ、それに、明日奈にはもっといい奴がいるって」

「え」

 

 案の定、その一言で明日奈はがっつりへこむ。

 ちょっと可哀想なので、ボクは明日奈に助け舟を出すことにした。

 

「和人は好きな人いないの?」

「また呼び捨てか……………まぁ、俺だって年頃の男の子って奴だし、そりゃぁいるよ」

「ーーーほ、ほんとっ!?」

「な、なんだ、いてもおかしくないだろ?」

「そ、そうだけど……………誰っ!?」

「ちょっと明日奈…………」

 

 凄い恐ろしい大気を漂わせながら明日奈は和人を問い詰めて行く。

 

「ねぇ、一体どこのこなの?」

「何で一々教えなきゃーーーちょっと待て落ちつけ」

 

 段々とその恐ろしさに和人は気付きだし、顔を真っ青に変えていく。

 閃光の明日奈は恋ですら閃光のようだ。

 

 少し羨ましく思えちゃうボクがいる。

 

 ボクの夢では明日奈と和人は二人一緒、とても幸せそうにしていた。

 

 悔しい事に、ボクは自分の見ていた夢が大好きだ。

 

 ならーーー。

 

 それを現実にしちゃおっか。

 

 

「和人は明日奈が大好きなんだよ」

 

 

 ボクの言葉に二人の動きが止まる。

 明日奈は驚いた顔を、和人は真実を突かれた、という感じで無表情になり出した。

 

「実は明日奈も和人が大好きで、好きで好きでたまらないんだよね?」

 

 こうするのが合ってる、ボクの一番知っている、一番身近な人がそうしろって言ってる様な気がする。

 

 でも、なんでだろ。

 

 少し違和感の様な物が感じられる気がする?

 

 合ってるんだけど…………少し違う?

 

「はぁ…………木綿季、勘違いしてないか?」

「え?」

「俺は別に明日奈が恋愛的に好きって訳じゃない」

 

 冷静かつ、本気混じりの声で、視線はボクから逸らさずに真っ直ぐに言った。

 横でその言葉を聞いていた明日奈は言葉の意味をゆっくりと理解して行く。

 

 恋愛的に好きじゃない。

 

 これの意味が皆は分かると思う。

 

 そう、和人が明日奈に対して抱いている感情は"そういう物"ではないと言うことだ。

 

 そんな事を目の前で言われて、笑顔で言葉を交わす女性がいると思うか。

 

 気持ち悪い。

 

 明日奈は無言で走り去って行った。

 

「あ…………え…………何で、」

 

 二人は両思いだったんじゃないの?

 

 ボクは間違っていない筈。

 

 あれ、でも、やっぱりそれも夢の中だけのこと?

 

 感じ的にはどっちも好きって…………………あれ?

 

 

 ボク。

 

 取り返しのつかないこと、しちゃったのかな。

 

 

 いや、そんな訳ない。

 

「和人は明日奈が好きだったんじゃないの…………?」

「なんでそんなに気にすんだよ」

 

 和人は明日奈の事なんてどうでもいいと言うかの様に一人、再び歩き出す。

 彼の背中を、ボクはその場に留める事は出来ない。

 ーーーー何かが引っ掛かる。

 

 ボクの知っている和人は明日奈を放っておくほど酷い人だったっけ。

 

 優しい和人はーーーそれは夢だったから?

 

 本当は酷い人?

 

「和人は明日奈が嫌いなの?」

「好きだよ」

「………ぇ?」

「超がつくほど好きだ、寧ろ、好きは検定一級レベルかもしれないな」

「は…………は?」

 

 笑顔で言われても困る。

 

「もし、そうだとしたらさっきのは相当酷いよ」

「だろうな、そんな事は分かってるよ。でも、屑の役割なんて少し慣れてるしな」

「好きなら好きって言っちゃえばいいのに」

「それは絶対にダメだ」

「何で?」

「理由は言えない、それは"自分自身"で見つけないといけないから」

「和人の事なのに、分かんないの?」

「分かるべき人が分からないといけないから、それまで俺は絶対に見守り続けないといけないんだ」

「…………意味がわかんないんだけど」

 

 ボクが疑問符を浮かべる中、和人はフッと鼻で笑った。

 

「"適当"に言っただけだよ」

 

 少しだが、和人の頭の中身が心配になってくる。

 

「それが"約束"だからな、そうだろ?」

「え?」

 

 和人はボクの方を見て言う。

 

「そんな約束した覚えないけど」

「"そうだったな"」

 

 和人はそのまま帰ってしまった。

『明日奈の事は木綿季にお願いするよ、ごめん、明日奈』とだけ言って。

 

 謝るくらいなら付き合っちゃえばいいのに。

 明日奈が可哀想でしょ。

 

 そう思いつつ、明日奈を追いかける。

 

 ボクってこんなに冷静に物事を判断出来たっけ?

 

 いつも以上に心の視界っていうのかな、心の余裕かな?

 

『いいかゆうき、心に余裕を持つんだ。お前は強い女の子なんだから。あんな奴らなんて見返してやれ、お前の心を剣にして、ぶっ倒してやれ』

 

 長い夢を見てたから?よく考えると一時間目からずっと寝てたんだよねボク。

 

 夢にしてはハッキリし過ぎていたし、何ヶ月、何年分の日々の夢をたったの数時間で見るなんて、自分でも凄いと思う。

 

 ただ、ハッキリしすぎて現実と夢の区別がつかないや、それでも、だいぶ時間が経ったから区別が出来てきた。

 

「後で純に謝んないといけないなぁ」

 

 昨日は純と一緒にドーナツを食べたのに、今日は『誰?』なんていってしまった。

 

 明日は休みの日だから何か奢ってあげよっか。

 

「あ、明日奈だ」

 

 今いるところから見える、公園の入り口近くにあるベンチに明日奈が座っている。

 遠くからでも分かるけど、やっぱり泣いてる。

 

 ゆっくりと近付く。

 

「もー、明日奈、ダメだよ?泣いちゃったら可愛い顔が台無しだよ、ほら、笑って笑って」

 

 ボクなりに頑張って励ましてみる。

 

「う"ぅぅぅ………だぁってぇ…………」

「うわぁ……ボロ泣きじゃん……………」

「いきなりフられるなんて思ってなかったもんっ!」

「あはは………それはボクも思ってなかったよ」

「和人君の事………好きっ…………好きなのに…………うぅ……………」

「本音が出ちゃったよ…………でもーーー大丈夫」

「え?」

「さっき理由聞いてきたけど、好きなんだって」

「で、でも…………」

「どのくらい好きなのか自分でいってたよ、一級品レベルだって」

「………………や……………」

「や?」

 

 明日奈の様子が少し可笑しい。

 顔を伏せたまま、同じ言葉を何回も呟いーーーー。

 

 

「やったぁ」

 

 

 にぱぁっと笑った。

 

「はぁ……………元気でたみたいだね」

「そんなことないよ?最初っから元気で有り余ってたんだからっ!」

 

 二人で手を繋ぎ、仲良く、"いつもみたい"に帰って行った。

 

 

 

 

 ボクは家に着く。

 

「ただいまー…………って誰もいないんだよね」

 

 家に入るも、『お帰り』と出迎えてくれる家族はいない。

 ボクだけ助かってしまったのだから。

 

「ただいまー、姉ちゃん」

 

 一つの仏壇の前で正座し、"いつものよう"に出来るだけ笑顔で言う。

 "この人"の前では絶対に笑顔で以外を見せない様にしている。

 どれだけ悲しい事が起きても。

 

『紺野 藍子』

 

 ボクの姉ちゃん。

 "これが"今の姉ちゃん。

 

 両親の物は無く、姉ちゃんのだけしか残っていない。

 両親はずっと前に他界している、AIDSのせいで。

 ボクと姉ちゃんもAIDSの原因だったHIVにかかっていた。

 

「ずっと一緒って言ったのにね……………ありがと、姉ちゃん」

 

 両親に続いて姉ちゃんもAIDSが発症した、そのせいで姉ちゃんは入院する羽目になってしまった。

 

 

『おい、泣くなよ。大丈夫だって、ゆうきの姉ちゃんはそんなんで死にはしねーよ』

『でも、ボクのおとうさんとおかあさんも死んじゃって……るんだもん………」

『あ、こら、泣くなって………しょうがねぇな。俺が何にでもなってやるよ。これからは俺も家族になってやるから』

『そしたらゆうやも死んじゃうよぉ……』

『はぁ?俺が死ぬと思ってんのか、俺は絶対無敵なんだよ!』

『ほんと?』

『俺が嘘ついたことあるか?』

『ないっ』

『だろ?』

『うんっ』

 

 

 生きるって大変なことなんだ。

 辛いことも苦しい事も、全部向き合わなきゃいけないんだもん。

 皆、いなくなんないでよ。

 

「ばーか」

 

 姉ちゃんに対して、優也に対して、皆に対して言ってやった。

 

 

 

 

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