ソードアート・オンラインーEverlasting oathー 旧バージョン、1、2話欠損   作:ゆぅ駄狼

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第3話

 第74層 ーーーー迷宮区ーーーー

 

 

 

 

「結構敵が湧いてくるな…すぐ湧いてくるってわけじゃないけど敵が毎回リスポーンする度に敵モンスターが数体いると中々体力使うな…」

「そうだな…でもソロの時とは違って俺は多少は楽になったぞ」

「それでも盾持ちが多いから倒すのに結構時間がかかるわね」

「ボク、もうヘトヘトだよ…」

 

 敵を薙ぎ倒しながら愚痴を言い、進んでいたら二体の盾持ちのモンスターがリスポーンする。

 骸骨騎士の様なモンスター達は剣を振り上げるとユウヤとキリト、アスナとユウキの方へと襲いかかるが、すぐに俺達は骸骨騎士モンスターに対応した。

 

「キリト!!行くぞ!!」

「分かった!!」

 

 俺の愛槍、《クェーサールイン》が緑色に輝き、骸骨騎士に槍を振ると骸骨騎士は盾を自らの体の前に出す。

 だが、最初からユウヤが狙っていたのは骸骨騎士ではなく盾の方だった。

 ユウヤはニヤリと笑い、骸骨騎士の盾に思い切り槍を振り下ろす。

 

「俺が狙ってたのは最初から盾だぜ?」

 

 ユウヤの槍は骸骨騎士の盾に命中し、骸骨騎士の盾が吹っ飛んだ。

 俺が盾を吹っ飛ばすと同時にキリトが前に出てきた。そして俺はキリトに向かって叫ぶ。

 

「スイッチ!!!」

「任せろ!!」

「カカカカカカッ…」

 

 俺がキリトに叫ぶとキリトがスイッチで骸骨騎士の前に出た。

 スイッチで骸骨騎士のクールタイム中にキリトが骸骨騎士の目の前に出た為、骸骨騎士は片手に持ってる武器が振れなく頭をカタカタと動かしていた。

 

「はあぁっ!!」

「カカカ…」

 

 骸骨騎士はなす術が無く、キリトの上位ソードスキル、《ホリゾンタル・スクエア》を黙って受けることしか出来ない。

 ユウヤが盾を弾き返した時に生じたダメージとキリトの愛剣《エリュシデータ》の筋力補正と《ホリゾンタル・スクエア》の威力もあり、骸骨騎士は結晶体となり消滅していく。

 

「良い動きだったよキリト」

「ユウヤもな」

 

 俺とキリトはお互いを褒め合い、拳と拳をコツンと合わせた。

 アスナとユウキも骸骨騎士を倒し終わったらしく、俺達の方に合流した。

 

「いやー!アスナの細剣の剣捌きはやっぱり凄いね!速すぎてボク合わせれなかったよ!」

「嘘だ〜!ユウキは私の動きにちゃんと合わせてたじゃない!それにユウキの方が凄かったわよ。モンスターの剣の動きが止まってるんじゃないかって思うくらい簡単に避けてたじゃない!」

 

 確かにアスナの剣捌きは速過ぎる。1層の時でも速いと思っていたのだが今はその時の倍以上の速さの剣捌きで敵を倒していたのだ。速すぎて剣先が見えないから"閃光"と呼ばれるほどだ。

 だが、ユウキもユウキだ。敵モンスターの動きを予測して戦っているのだが、剣が振り下ろされても剣が止まっているかの様に簡単に避けてしまうのだ。

 敵の剣の動きを読む、観察力に関しては間違いなく俺よりは高いだろう。

 

「さ、もう少しで奥に着くと思うから進むぞ」

 

「ソロよりパーティの方が楽だろ?」

「そうだな…皆強いから安心して背中を任せれるしな」

「キリト君いつも一人だからたまにはこういうのも良いんじゃないかな?」

「そうだ!ボク今思ったんだけどさ、皆でこのままパーティ組んでれば良いんじゃないかな!」

 

 ユウキが提案するとキリトは深く考え、俺達を見ると考えておくと言った。

 

 以前、キリトにソロじゃ対応出来ない状況に陥っていつか死んでしまうか分からないから俺たちとパーティを組めと誘った所、キリトが暗い顔をして拒否して来たので何かあったなと俺は思い、拒否を承諾したのだ。

 

「まぁ気長に待ってるさ、今はマッピングを終わらせようぜ」

「あぁ…すまないな」

 

 そう言って俺達はマッピングをする為に迷宮区の奥に着くとアスナが立ち止まった。

 ユウキも何かに気づいたのかアスナと一緒に立ち止まった。

 

「「ユウヤ(キリト君)あれ…」」

 

 ユウキとアスナが俺とキリトを呼んで前を指差すと大きな扉があった。

 大きな扉はどの層でも必ず見て来たものだ。

 その大きな扉は次の層へと登る為に通らないと行けない部屋、ボス部屋。

 俺とキリトもボス部屋に気付き、立ち止まる。

 

「ボス部屋だな…」

「マッピングはここまでで十分そうだな」

「……どうするの?」

「中を少し見るだけなら大丈夫なんじゃないかな?」

 

 ユウキがそう言うと俺とキリトは考えた。

 そしてユウキの提案を受け入れた。

 ボス部屋のボスは次の層へ行くのを阻止する為にいるのでその守護する部屋からは絶対に出てこなく、中を覗くだけなら大丈夫だろうと思ったのだ。

 

「中を覗くだけならいいか…皆一応、転移結晶を用意しとけ」

 

 俺が転移結晶を取り出すと他の皆も転移結晶を取り出した。

 そして俺達は扉に手をかける。

 扉は大きいが簡単に開き中を覗くと部屋は暗く、何も見えない。

 

「何もいない…?」

「暗すぎて何も見えないな…」

 

 中に入ると暗い空間が広がっており、ボスの姿がなかった。

 いや、"見えなかった"のだ。

 

「…………ユウヤ!目の前にいる!」

 

 ユウキが叫ぶと同時に部屋の灯りがつき、ボス部屋の中が明るくなる。部屋が明るくなった事により、俺達はボスの姿を確認でき、俺達の目の前にいたのは羊の様な角を生やした蒼い"悪魔"。

 蒼い悪魔は自身と同じくらいの大剣を超えた特大剣を持ち、俺達を見下ろしていた。

 ボス名は《グリムアイズ》。

 

「グガゥガアアアアアアアアアア!!!!」

「「「「うわああああああ!!!」」」」

 

 

 

 

 

「…………やばそうな敵だったな…」

「………あぁ…武器は大剣一つだったけど…特殊攻撃ありだろうな………」

「前衛に守りが強い人を集めて皆でどんどんスイッチしてくしか方法はなさそうだね…」

「盾装備の奴が十人はほしいな…」

 

 キリトがそう言うとアスナはキリトに疑惑の目を向けた。

 多分、このパーティにいるなら必ず思っている事だろう。俺とキリト以外は…

 

「盾装備ねぇ…」

「な…なんだよ?」

「君、何か隠してるでしょ?」

「へ…?いきなりなんだよ」

「だっておかしいもの。普通、片手剣の最大のメリットって盾を持てることじゃない。でもキリト君が盾を持っているの見たことないもん。私の場合はレイピアのスピードが落ちるからだし、ユウキは…」

「ボクは片手剣にしてはあまり重くないからアスナと同じスピードに特化させてるんだよ」

 

 アスナとユウキがそう言うとキリトはヤバイという顔をして腕を組んでそっぽを向く。

 因みに俺もスピード、攻撃重視の為、盾は持っていない。基本両手で槍を持っているがこれだとソードスキルが発動しない。なのでソードスキルを発動する時は片手で持っている。

 にしても、キリトの愛剣《エリュシデータ》は片手剣だが片手剣とは思えないほどの重さを誇っている。

 なのでアスナ達が疑問に思うのは無理ない。

 

 キリトの本当の強さは盾無しだからすぐに真価を発揮出来るんだけどな。

 

 キリトの盾無しの訳を以前に聞いていた俺だから俺はキリトの盾無しに疑問を思うことがなかったのだ。

 だがアスナ達はその訳を知らないのでこうしてキリトに対して疑問府を浮かべているのだ。

 

 そして更にアスナはキリトを問い詰め出した。

 

「怪しいなぁ…」

「うっ……」

「そうだ!ご飯にしよう!皆で食べるご飯は美味しいぞ!」

 

 俺はキリトの救出作業に取り掛かった。

 俺がお腹が減ったといえば一人の少女が話に食らいついてくるから俺は腹が減ったと言ったのだ。

 

 さぁ……お前はここで言うことがある筈だ。

 

「そうだ!ユウヤ、ボクお弁当作って来たんだ!」

 

 はい、もう愛してる。

 

 俺は笑顔でユウキを抱き締めた。

 

「ユウキ愛してる!一人の男の運命が救われたよ!」

 

 ある意味で。

 

「むにゅぅ…」

 

 俺がユウキを抱き締めるとユウキは顔を真っ赤にしながら笑顔で弁当を出そうとした。

 ユウキが弁当を取り出そうとしたらアスナも弁当を取り出す。

 

「「おおおおお!」」

 

「手作りですか!」

「そうよ。皆ちゃんと手袋外して食べてね」

 

 アスナがそう言うとキリトにサンドイッチを渡した。

 サンドイッチと言ってもソードアート・オンラインではサンドイッチの様な食べ物である。それでもアスナは素晴らしいと言えるぐらい現実でのサンドイッチを再現している。

 キリトにサンドイッチを渡すと俺にも渡そうとしてきた。

 

「ああ、俺はユウキのがあるからいいよ」

「そうだよ!ユウヤの胃袋を把握してるのはボクくらいだからね!」

 

 俺達が話している横でキリトはアスナのサンドイッチにがっついていた。

 

「美味い…!だけどこの味どうやって…?」

 

 キリトがアスナに聞くとアスナはふふっと笑い、沢山のパロメータが書かれたウィンドウを表示した。

 そのパロメータの数は異常だった。

 大量の計算式や材料。材料の成分やら何やらを全て記している。

 

「一年の修行と計算の成果よ。アインクラッドで手に入る約100種類の調味料が味覚再生エンジンに与えるパラメータをぜーんぶ解析してこれを作ったの!」

「すげぇ…」

 

 アスナは何やら緑の液体が入った瓶を取り出した。

 

「こっちがグログワの種とシュブルの葉とカリム水で」

 

 そう言うとアスナはキリトと俺の手に緑の液体を垂らす。

 その液体の匂いは中々香ばしく、緑の液体を俺とキリトは舐めてみた。

 

「「マヨネーズだ…」」

 

 まさかアインクラッドで現実のマヨネーズを食す事が出来るとは思っていなく、感動のあまりに俺とキリトは口を開け、物凄いアホ面になっていた。

 

「でこっちが…」

 

 次にアスナは紫色の液体を取り出し、その液体も同じく俺とキリトの手に紫の液体を垂らした。

 

「アビルパ豆とサグの葉とウーラフィッシュの骨で作ったの」

 

 俺とキリトはその液体を舐めてみると口の中に懐かしい味が広がり、再び感動した。

 この液体の味は誰もが感じてきただろう。お魚につけたり、ラーメンを作ったり、その他もろもろ……。

 液体の味は間違いなく"あれ"だった。

 

「キリト…これは間違いなくあれだよな?」

「ああ…間違いない」

 

「「醤油だ!」」

 

 俺とキリトが顔を見合わせて言うとアスナがポカーンと口を開けていたと思うと笑顔になって笑った。

 その時の俺達は凄く幼い子供に見えたらしく、それを見てアスナが笑ったのだろう。

 

「凄いねアスナ!ボクも料理スキルはコンプリートしてるけど醤油やマヨネーズは再現出来ないよ…」

「ふふっ♪そのサンドイッチはこの二つのソースで出来てるのよ」

「凄いな…これ…売ったら凄く儲かるぞ…!

 

 キリトがそう言うとアスナが頬を染めて照れていた。

 確かに醤油とマヨネーズはアインクラッドの中では誰も作っておらず、商品にして売ればかなりの額を稼げるだろう。

 だが、キリトは重大な事に気づいたのだ。キリトにとっては重大な事だった。

 

「そ…そうかな?」

「……ハッ!」

 

 キリトは何か思ったのか腕を組んで難しい顔をしていた。

 食べ物に関してはキリトは中々敏感だった為、キリトはアスナにやっぱり駄目だと言う。

 

「どうして…?」

 

 キリトは焦った様な表情でアスナの方を向き、自分の意見を伝えていた。

 

「俺の分が無くなったら困る!」

 

 俺とアスナは呆れた顔をしてキリトを見ていた。

 キリトの言葉を聞いたアスナは溜息をつくと、頬を染めてキリトにそっぽを向いた。

 

「意地汚いなぁ…気が向いたらまた作ってあげるわよ…」

「食べ物は逃げないから安心しろってキリト。そんな事よりユウキ、昼飯くれ!」

「うん!どーぞ!」

 

 ユウキは笑顔で俺におにぎりの様な物を渡してきた。

 いや、おにぎりだ。

 綺麗な三角おむすびでした。

 

「「「………」」」

 

「どうしたの?」

 

 俺は手のひらにおにぎりを渡されて何も言えなかった。

 アスナの醤油やマヨネーズでも驚いたのにユウキはそれを超えるものを取り出して俺の手に置いたのだ。

 そのおにぎりの様な物は完全に再現されており、米ですら再現されている。

 アインクラッドの中でおにぎりを拝めるとは思っていなかったので俺とキリトとアスナは驚きのあまりに何も言えない様だ。

 

「えっと…ユウキ、これは何だ?」

「おにぎりだよ!」

 

 ですよね。

 見た瞬間分かったよ。見た瞬間綺麗な三角おにぎりだったよ。

 綺麗に再現しすぎだろ、お前の料理パラメータどうなってんの!?

 キリトなんてサンドイッチを食べてる手を止めてるよ?アスナに関しては驚きすぎて白くなってるぞ?

 

「まぁいいや…頂きます」

 

 俺は黙ってユウキの作ってくれたおにぎりを食べる事にした。

 おにぎりはとても美味しい。

 ユウキは感想を待ってるかの様に俺をまじまじとみていた。

 

 か…可愛い…

 

「美味しい…?」

「ああ!とても美味しい鮭おにぎりだっ…た…鮭…?」

「うん!この前ユウヤが鮭おにぎり食べたいって言うから作ったんだ!」

 

 そうっすか…

 

 ユウキは料理の天才だという事がこの日発覚した。

 そして俺達は無言で昼飯を食べ終わる。

 

 食べ終わるとキリトが険しい顔をして俺を見てきた。

 

 誰か近くにいるのか…?

 

 俺はキリトの顔を見ると察して索敵スキルを発動させる。

 すると突然大勢の男達が現れ、俺達の方に向かってきた。

 

「皆!」

 

 キリトが叫ぶと俺達はすぐに立ち上がり、身構えた。

 男達は俺達に気づいていないらしく、そのまま進んできた。

 

「あぁー…疲れた…って…お!?キリトじゃねーかしばらくだな!」

 

 先頭に立っていた男が俺達に気づき、その男達の中から悪趣味なバンダナをつけた野武士面のリーダーらしき男がキリトの名前を呼んだ。

 野武士面の男の鎧にはギルドマークがついていた。

 そのマークは攻略組ギルドのギルド風林火山の物だった。

 

「何だクラインか…まだ生きてたのか…」

 

 男の名前はクラインだった。

 風林火山のクラインは俺とユウキも知っていた。

 攻略組のメンバーで会議の時にはよく顔を合わせていた。何よりユウキにナンパをしてきた男だった。

 だが意外に俺とクラインも仲が良く、酒場にたまに飲みに行ったりしていた。

 アインクラッドでは酒を飲んでも実際の体に影響はなく、子供でも飲めるのだ。

 しかし、飲みに行った日はユウキに説教を食らわされていたりもする。

 

「相変わらず愛想がねーな!それよりソロのお前がなんでって…ユウヤもいるじゃねーか!」

「おっすクライン。この前の酒は美味かったぜ」

「そんな事よりどうしたんだ!お前らがこんなとこでしかも女連れ……へ?」

 

 クラインはユウキとアスナの顔を確認するとパソコンが固まったかの様にフリーズしてしまった。

 独身の身であるクラインにはとても驚く程の光景だったのだろう。

 それも自分より年下の美少女が二人を見て独身スキルを働かせたのだろう。

 その結果がフリーズである。

 

「「おーーいクライン?」」

 

 俺とキリトはフリーズしたクラインに呼びかけた。

 するとクラインは突然お辞儀をして手をユウキとアスナの前に出して一言。

 クラインは独身スキルをフルに発揮させた。

 

「ク…クククライン!独身24歳!恋人募集ちゅ…「消えろおおおおお!!」うがぁっ!?」

 

 キリトはクラインの鳩尾に強烈なパンチをかまし、俺は桐崎家奥義、クリティカルストライクをクラインの股間目がけて放った。

 キリトの腹パンは見事に鳩尾を捉え、俺のクリティカルストライクはクラインの股間にクリティカルし、ストライクしたので股間からは悲惨な音がなった。

 ゲーム内だった為、クラインの股間はなんとか砕けずに守護された。

 だが、かなりの力で腹パンとクリティカルストライクをしたのでクラインは吹き飛んだ。

 

「「「「「リーダーァァアアア!!!」」」」」

 

「「あ…」」

 

 他の風林火山メンバーはクラインが吹っ飛ばされたのを見て俺達の前に出てきた。

 男達は腕を組んで俺達を見ていたと思った。

 見ていたのは俺達じゃなく、ユウキとアスナだった。

 

「「「「「アスナさんと猫耳のユウキさんだ!!」」」」」

 

「え?」

「猫耳!?」

 

 男達はトッププレイヤーでも有名な閃光のアスナと猫耳のユウキだという事に気付き、ユウキとアスナに群がった。

 因みにユウキはの猫耳はアクセサリーショップでつけていたところを色々な人に見られ、情報屋の鼠のアルゴという女性プレイヤーに広められたしまったから猫耳のユウキと言われている。

 

 俺達はユウキとアスナに男達を近づけない様に必死に抑えていた。

 

「まぁこいつらは悪い奴らじゃないよ」

「ユウヤの言う通りだ。こいつらは風林火山ギルドで良い奴らだよ…」

 

「「リーダーの顔はともかく」」

 

 俺達がクラインの顔について話すとクラインが突然俺とキリトの首を両腕で掴んだ。

 

「うるせっ!好き好んでこんな顔になった訳じゃねーんだよ!」

「え?違うのか?」

「それは親御さんに失礼だな」

「頼むからそれ以上俺を責めないでくれ……」

 

 クラインは参ったような顔で負のオーラをだし、肩を落としていた。

 

 大丈夫だクライン…中々男前な顔だからすぐに出会いは見つかるさ!

 

 俺はそう思いながらクラインを慰めているとアスナとユウキが俺達の光景を見てふふっと笑っていた。

 野郎共は静かになり、クラインは本題を俺達に聞いてきた。

 

「おい…どういうこったユウヤはともかく、ソロのキリトがなんでアスナさんと…」

 

 ともかくってなんだともかくって

 確かに俺はいつもユウキと一緒にいるが俺だって一人で狩りにいったりクエストをしたりしてるんだぞ。

 俺は心の中でそう思った。

 

「こんにちは、キリト君とはパーティを組むことになったの」

 

 アスナは笑顔でクラインと男達に向かって言った。

 独身男達はキリトに怒りの目を向けていた。

 まるでこれから狩りをする虎のような目だった。

 

 独身マジで怖ぇ…

 

「キリトッてめぇー!」

「ま、待てって!」

 

 クラインがキリトの胸倉を掴み、キリトに独身の怒りをぶつけていると誰かが近づいてくる足音がした。

 ユウキとアスナは足音に気付いたのか、すぐに身構えた。

 

「ユウヤ!」

 

 ユウキが俺を呼んだのでユウキの方向を見たらユウキとアスナが入り口の方を見ていた。

 こちらに大勢の重装備の兵士の様な男達が近づいてきていた。

 かなり頑張ってここまで来たのか先頭の男以外は全員汗だくになりながら歩いていた。

 

「あれは…軍か?」

「アインクラッド解放軍の奴らか…?」

「第1層を支配している巨大ギルドがどうして此処に…?」

 

 クラインが巨大ギルドの奴らがなぜ此処にいるかと疑問に思っているとアスナがその疑問に対して答えた。

 

「25層攻略の時に多くの被害がでていたからクリアと言うよりも組織強化って感じになって前線に来なくなってたけど…」

 

 軍、通称アインクラッド解放軍は25層の攻略までは最前線で攻略組のギルドとして活躍していた。

 だが25層のボス攻略の時にアインクラッド解放軍に所属する大勢のプレイヤーが犠牲になった為、最前線には顔を出さなくなっていたのだ。

 アインクラッド解放軍は俺達の前で止まるとリーダーらしき男が他のプレイヤー達に休めと言って休憩を取らせた。

 アインクラッド解放軍の部下らしき男達は休憩の声を貰い、溜息をつくとがくりと座り込んだ。

 

 かなり消耗しているな…しかもこんな大勢の人数で何をする気だ…?

 

 アインクラッド解放軍のリーダーらしき男が俺達の前に来ると話しかけて来た。

 

「私はアインクラッド解放軍、コーバッツ中佐だ。」

「俺はユウヤだ。」

「キリト、ソロだ。」

「君達はもうこの先も攻略しているのか?」

「ああ、ボス部屋の前までマッピングしてある。」

「ふん……ではそのマッピングデータを提供して貰いたい。」

 

「「「え!?」」」

 

 ユウキとアスナとクラインは驚いていた。

 そもそもマッピングは苦労のかかるものであり、最前線にいる攻略組しかマッピングしないのでマッピングデータはそれなりに貴重な物だったりする。

 それを行きなり現れて提供しろと言われたのでクライン達は驚いていたのである。

 コーバッツという男の話を聞いたクラインはコーバッツに向かって怒りの声をあげた。

 

「タダで提供しろだと!?テメェ、マッピングする苦労が分かって言ってんのか!!!」

 

 するとコーバッツがクラインの言葉に対して自分の意見を主張しだした。

 

「我々は一般プレイヤーに情報や資源を平等に分配し、秩序を維持すると共に、一刻も早くこの世界からプレイヤー全員を解放する為に戦っているのだ!!故に諸君が我々に協力するのは当然の義務である!!」

「……貴方ねぇ!!」

「ユウヤだって苦労してマッピングしたんだよ!!!」

 

 コーバッツの言葉でユウキとアスナも頭に来たのか、コーバッツに対して自分達の意見を言おうとした。

 クラインは完全に怒ってコーバッツに殴りかかろうとしていた。

 俺とキリトは殴りかかろうととするクラインを止めた。

 

「待てってクライン。元々俺とキリトは街に戻ったら公開しようと思ってたデータだ。構わない。」

「ユウヤの言う通りだ。持っていても攻略会議の時には公開するしな。」

 

 俺は右手でウィンドウを開き、トレードアイコンを押してコーバッツにマッピングデータを渡した。

 クライン達は納得していない様な顔をしていたが構わずトレードした。

 

「おいおい…それは人が良すぎるぞユウヤにキリト!」

「俺とキリトがマッピングデータで商売すれば上手く行きそうだが…」

「マッピングデータで商売する気はないよ」

 

 俺がコーバッツにマッピングデータを渡し終えるとコーバッツは俺達に礼を言ってきた。

 

「協力感謝する。」

 

 そう言うとコーバッツは部下達の方へ戻っていった。

 

 まさか…ボス部屋に挑戦しようなんて思ってないよな?

 

「ボス部屋に行く気ならやめといた方が良いぜ。」

 

 俺は最後の最後で保険を打っておいた。

 コーバッツは俺の言葉を聞き振り返って来たがお前の命令は聞かないという目付きで俺を見てきた。

 

「……それは私が判断する。」

 

 俺はこの言葉でこいつが何をする気か理解した。

 この男はボス部屋に挑む気だった。

 アインクラッド解放軍は大人数で行けばボスに勝てるであろうという生半可な気持ちで大勢のプレイヤーを迷宮区に送り込んだのである。

 

 間違いない…こいつらボス部屋に行く気だ…!

 

 俺はそれを理解し、コーバッツを全力で止めようとした。

 

「さっきボスの部屋を見て来たけど生半可な人数でどうかなる相手じゃない!!」

「そんな人数で行っても作戦が立てれなければ行っても無駄死にするぞ!仲間も消耗してるみたいじゃないか!!」

「私の部下達はこの程度で根をあげる様な軟弱者ではない!!貴様ら!!立てぇ!!」

 

 コーバッツがそう言うと部下達は声を上げながら立ち上がり、奥の方へと進んで行った。

 俺達はその光景を見てるしか出来なかった。

 だが俺はやはり心配であり、軍の奴らを追いかけようとするとキリトも同じ気持ちだったのか無言で頷いた。

 

「ユウキ達は此処に残っていてくれ。俺とキリトはあいつらを追う。」

「もし俺とユウヤが10分くらいしても帰って来なかったらすぐに転移結晶でダンジョンから出て行くんだ。」

「でも…ユウヤぁ…」

 

 ユウキが心配そうな顔で俺を見て来たので俺はユウキの頭にポンっと手を乗せ、撫でた。

 心配させない様に優しくユウキの頭を撫でた。

 

「心配すんなって。俺が死ぬとでも思ってんのか?俺は死なないから安心しな。それに転移結晶があるから危険になってもすぐに逃げれるさ。」

「アスナとクラインも此処で待っててくれ。」

「分かったわ…でも気をつけてね…?」

「気をつけて行けよユウヤにキリト。」

 

 俺とキリトは頷きアインクラッド解放軍、コーバッツを追いかけた。

 俺達は出来るだけ早くコーバッツの元へ行こうとしたので、リスポーンした敵モンスターは無視して走り続けた。

 

「キリト…もしあいつらがボス部屋に入ってて誰かが死にそうになったら迷わず"あれ"を使え。」

「……分かった。」

 

 俺達はコーバッツの元まで走り続けた。

 

 

 

 

 

「ねぇアスナ…10分もう経ったよね?」

「15分くらいは経ってるわね…」

「ユウヤとキリトの野郎が10分経っても戻って来なかったら転移結晶で移動しろって言ってたけどよ…」

「ボクやっぱり行ってくる!」

 

 ユウキはそう言うとユウヤとキリトの行った方向に走り出した。

 

「ちょっとユウキ!?」

「ちょっアスナさんまで!」

 

 アスナはユウキを追いかけて、クラインはアスナを追いかけて走りだした。

 ユウキはもう既にかなり奥の方まで来ていた。

 

「ユウヤ…大丈夫だよね…?」

「ちょっとユウキ待ちなさいってば!」

「ぜぇ…ぜぇ…二人とも落ち着いて…この奥はもうボス部屋だけだろ?此処まで来ていないっていう事はもうアイテムで帰ったんじゃないか?」

 

「「……」」

 

 ユウキとアスナはクラインの言う通り、ユウヤとキリトは軍の皆を帰らせると同時に転移結晶で転移したのではないのかと考えた。

 

 

 ーーーーーうああああああああ…

 

 

「「「!!!」」」

 

 男の悲鳴が聞こえた。

 ユウヤの声でも無く、キリトの声でもないその声は間違いなく先程ボス部屋に向かったアインクラッド解放軍の部下達の悲鳴だった。

 

「ユウヤも危ない…!」

「キリト君…!」

「軍の奴らボス部屋に入ったのか!?」

 

 ユウキ達は急いでボス部屋の方へ向かった。

 ボス部屋の前につくと大きい扉、ボス部屋への扉が開いていた。

 その中にはアインクラッド解放軍と槍を持った少年と剣を持った少年がいた。

 

「ユウヤ!!」

「馬鹿…!何で来たんだ!」

「此処は転移無効化エリアだ!中に入ったら転移結晶使えないぞ!!」

 

 キリトがそう言うとキリトの目の前にグリムアイズの特大剣が襲いかかった。

 モロに直撃してしまえば生半可なレベルの奴は一撃とはいかないが、かなりダメージを受けるだろう。

 

 キリトはグリムアイズの特大剣を剣で受け流したが少しHPが削れてしまった。

 特大剣の威力が高すぎる為なのか、受け流してもダメージが多少通ってしまう。

 

「大丈夫かキリト!?」

「俺は大丈夫だ!それより軍の奴らを早く逃がさないと…」

 

 事態は一刻を争っていた。

 転移結晶が使えない部屋に突っ込んで行った軍の奴らはボスの目の前にいる為、ボスにターゲットされていたのだ。既に蒼い悪魔グリムアイズの特大剣に軍のプレイヤー二人が犠牲になっていた。

 その中、コーバッツは諦めないでいた。

 

「我々解放軍に撤退の二文字はあり得ない!!戦え!!戦うんだ!!!」

「馬鹿野郎…!」

「クソッ!死にたいのか!!」

 

 コーバッツの部下達はコーバッツの命令を聞き部下達はグリムアイズに向かって突っ込んで行った。

 グリムアイズはその姿を哀れむ様に見ていた。

 

「グルルルルゥゥ……」

「全員、突撃ーーーー!!!!」

 

「「「「「「「おおおおおおおおおおお!!」」」」」」

 

「「やめろぉぉおお!!!」」

 

 コーバッツと部下達は俺とキリトの声に耳を貸さずにグリムアイズに攻撃を仕掛けにいった。

 だがグリムアイズは突っ込んで来る軍のプレイヤーに容赦しなかった。

 グリムアイズは口を上に向けると口の中で蒼い渦の様な物を作った。

 口をプレイヤー達に向けると口の中で作った渦を圧縮し、蒼いブレスをプレイヤー達に放った。

 

「グゥゥウアアアアアアア!!!」

 

「「「「「「うわあああああああ!!!」」」」」」

 

 物凄い爆発音が響くと軍の奴らは全員吹き飛んでいった。

 ブレス攻撃を盾で防いでもダメージがかなり通ってしまっていたのか、軍のプレイヤー達のHPは半分を切っていた。

 軍が吹っ飛び怯んでいる中でもグリムアイズは休む隙を与えず、自身と同じ位の大きさの特大剣を振り上げた。

 

 グリムアイズの特大剣がオレンジ色に輝き、特大剣は軍にいる方向へと襲っていった。

 特大剣を振り下ろした衝撃で周りが見えなくなるほどの土埃が視界を塞いだ。

 更に特大剣はプレイヤー達には当たらなかったがプレイヤー達の近くに振り下ろされた為、軍のプレイヤー達は剣圧で吹き飛んでいった。

 この時にはもう大体のプレイヤーがHPが黄色のゾーンに突入していただろう。

 

「「「「ぐわああああっっ!!!」」」」

 

「……クソ!!………!避けろコーバッツ!!!」

「グゥガアアアアアアアアアアア!!!!」

 

 そしてグリムアイズは特大剣を振り下ろすと、すぐに近くにいたコーバッツに特大剣を下から振り上げた。

 俺が叫んだ時にはもう遅かった。 グリムアイズの振り上げ攻撃がコーバッツに直撃してしまいコーバッツは上空へと放り出された。

 コーバッツは俺とキリトの前に落ちてきた。

 俺はすぐにコーバッツの元に駆けつけた。

 

「しっかりしやがれ!あんたパーティのリーダーだろ!!」

 

 俺がコーバッツに向かって叫ぶとコーバッツの被っていた兜が真っ二つに割れ、コーバッツが涙目になりながら見てきた。

 

「うぁ……」

 

 コーバッツのHPを見るともう0になっていた。

 既に手遅れだったのだ。蘇生アイテムがあるなら未だしも俺は蘇生アイテムが無いからコーバッツが消滅していくのを黙って見ていなければならない。

 そしてコーバッツは涙目になりながら言った。

 

 

 ーーーーーーあり得ない…

 

 コーバッツがそう言うと俺の目の前で結晶体となり消滅した。

 

「そ…そんな…」

「人がこんなにも簡単に…死ぬなんて…」

 

 アスナとユウキはコーバッツが消滅するのと軍のプレイヤー達が傷付けられていくのを見て手が震えていた。

 グリムアイズは攻撃をやめなかった。

 剣を再び振り上げると一人のプレイヤーに狙いを定めた。

 

「ひ……うあ……死にたくない…!…死にたくないぃぃいいいい!!!」

「グルルルルルルルゥゥ…」

 

「「あ…」」

 

 ユウキとアスナはその光景をずっと見ていた。

 気付くとユウキとアスナは剣に手をかけていた。

 震えながら剣を握っていた。

 もうやめてほしいと言う思いを込めて。

 もう誰も傷つけないでと言う思いを込めて。

 

「落ち着けユウキ!!!」

「アスナ落ち着け!!!」

 

 ーーーー駄目だよ

 

 ーーーーこんなの駄目だよ!!

 

「うわあああああああああああああ!!!」

 

「「駄目ええええええええ!!!!!!!!!」」

 

「ユウキ!!!!!」

「アスナ!!!!」

「クソ…!どうとでもなりやがれ…!」

 

 ユウキとアスナは叫ぶとグリムアイズに向かって剣を握り、突撃していった。

 

「やあああああ!!」

「はああああああ!!!」

 

 そしてユウキはグリムアイズの背中にソードスキル《バーチカル》を、アスナはソードスキル《カドラプル・ペイン》を撃ち込んだ。

 すると軍のプレイヤーからユウキとアスナにターゲットが変わってしまった。グリムアイズはすぐにユウキとアスナの方向を向いた。

 蒼い悪魔はユウキとアスナを捉えていた。

 

「グゥゥゥゥウウウ…」

「へっ…?」

「あ…」

 

 凄い勢いでユウキとアスナにグリムアイズの剣が襲った。

 

「「っく…キャァッ!!」」

 

 グリムアイズの最初の一撃はなんとか剣で受け流すことが出来たがすぐにグリムアイズはアスナにパンチを繰り出し、ユウキには蛇と同化している尻尾を叩きつけた。

 グリムアイズの攻撃を受けるとユウキとアスナは同じ方向に吹き飛ばされた。

 

「うぅ…」

「く…ぁ…」

 

 ユウキとアスナがグリムアイズは既に特大剣を振り下ろしてきていた。

 俺達はすぐにユウキ達の方に向かった。

 

「はあああああああ!!!」

「うおおおおおおおおお!!!」

 

 間一髪、俺とキリトがグリムアイズの剣の軌道を逸らし、ユウキとアスナには当たらなかった。

 もの凄い土埃が出ると、再びグリムアイズは剣を構えた。

 

「下がれ!!」

 

 俺がそう言うと二人は頷き、ユウキとアスナは後ろに下がっていった。

 グリムアイズは剣を構えたと思ったら軍を手助けしているクライン達の方に口を向けてブレスを放とうとしていた。

 俺はそれを阻止しようと槍でグリムアイズに斬りかかった。

 

「やめろおおおお!!!」

「グルルルルルルルアアアアアアァアア!!!」

「キリト!"あれ"を使え!!」

「…分かった!!皆、10秒間だけ耐えてくれ!」

 

「「「任せて!(くれ)」」」

 

 キリトは一旦後ろに下がりアイテム一覧で今まで使わなかった《ダークリパルサー》を装備した。

 そして次はスキル一覧を開き、一つのスキルを選択した。

 そのスキルはこの場を一気に逆転させる物だった。

 

「クソ…!一撃でこの威力かよ…!」

「クライン、愚痴を言ってたら死ぬぞ!」

「ユウヤ!スイッチ!!」

「行って来いキリト!!!」

 

 俺達とキリトがスイッチで入れ替わってキリトはグリムアイズの前に出た。

 グリムアイズは標的をキリトに変え、特大剣でキリトに突きをした。

 キリトはその突きを愛剣《エリュシデータ》で受け流した。

 

 本来は受け流し、終わりの筈だった。

 だがキリトは背中に手を回すと緑色の光の渦から出てきたもう一つの剣、《ダークリパルサー》を手に取った。

 それはキリトの最後の切り札、二刀流だった。

 キリトは《エリュシデータ》でグリムアイズの特大剣を受け流すともう一本の剣、《ダークリパルサー》でグリムアイズに斬撃を浴びせた。

 

 クライン達はキリトの二刀流に驚いていた。

 驚くのも無理ない。キリトの二刀流は情報屋のスキルリストにすら乗ってないキリト専用のユニークスキルなのだから。

 

「何だ…ありゃ…」

「うおおおおおおお!!」

 

 キリトはグリムアイズに対して無双していた。

 キリトは二刀流ソードスキル《スターバースト・ストリーム》を発動していた。

 スターバースト・ストリームは二刀流専用の上位スキルで16連撃を繰り出せる剣撃だ。

 俺はキリトがスキルを発動するのを見て前に出ていく。

 

「ユウキ、アスナ、クライン!キリトに加勢するぞ!」

「うん!分かった!」

「分かったわ!」

「まっかせとけい!」

 

 俺達もキリトに加勢していった。

 グリムアイズのHPは確実に減って行き、残るHPバーも一本となり、誰もが勝利を確信していた。

 

 

 ーーーーだが

 

 

「…!?」

 

 突然キリトの動きが止まり、倒れこんだ。

 キリトだけじゃなかった。ユウキ達も動けなくなり、倒れこんでいた。

 

 な!?どうしたんだ!?

 

「…がっ!?体が…!」

 

 俺がそう思っていると俺の体も動けなくなり、その場に倒れこんでしまった。

 一体どうしたのかと思い、HPバーを確認すると麻痺マークがついていた。

 

 ま…麻痺…?グリムアイズは麻痺効果のある武器を使ってない筈だ…なのに何故動けないんだ…?

 

 グリムアイズを観察しているとグリムアイズの尻尾に生えた蛇がブレスを吐いていた。

 

 蛇か…!蛇のブレスに麻痺効果が付与されていたのか…!

 

 蛇は俺達がグリムアイズに攻撃している間に麻痺効果の付与されたブレスを吐き、俺はその麻痺毒によって動けなくなってしまっていたのだ。

 

「グルルル…」

「え…?」

 

 グリムアイズが突然動き出したと思ったらユウキを掴み上げた。

 

「てめぇ……ユウキに何するつもりだよ……まさか……!」

 

 最悪だった。俺のそのまさかが的中してしまったのだ。

 グリムアイズは片手でユウキを握ると力を入れ出した。

 ユウキを握り潰そうとしているのだ。

 

「うぅ……!うああぁあぁ……ユウ……ヤぁ……う……ぁ……」

「やめろおおおおおおおおおお!!!!」

 

 俺はグリムアイズに叫ぶがグリムアイズは手の力を緩めるどころか更に力を入れ出した。

 もう既にユウキのHPバーは黄色のゾーンに入っていた。

 それでもグリムアイズはユウヤに構わず力を入れ続けた。

 

「う……ぁ………」

「頼む……やめてくれえええ!!!」

 

 グリムアイズはユウヤの声が聞こえたのかユウヤの方を見てニヤリと笑うとユウキを握っている手に思い切り力を込めた。

 

「ユウ……ヤ……」

「もうやめてくれよ………」

 

 

 

 

 俺は…守ると誓った筈の女の子を守れないのか?

 俺は…大好きな人が死んでいくのを黙って見ることしか出来ないのか…?

 俺は…二度と大好きな人の笑顔を見れなくなるのか…?

 

 俺は……

 

 

 ーーーーーボクはユウヤが大好きだよ。

 

 

 突然ユウキの言葉が俺の頭の中を横切った。

 その言葉は俺の大好きな少女がいつも俺に送ってくれる言葉だった。

 

 

 ーーーまだ諦めたら駄目だ…!

 

 

 少年はまだ沢山少女と思い出を作りたいから。

 

 

 ーーーー俺はユウキを助けるんだ…!

 

 

 少年は最愛の人を守りたいから。

 

 

 ーーーーー誰のヒーローでも無い、一人の女の子のヒーローになるんだ…!

 

 

 少年は少女の前ではかっこよく居続けたいから。

 

 

 何より少年は、

 

 

 

 

 少女の笑顔を見たいから。

 

 

 ーーーーーー俺はユウキの笑顔を見なきゃいけねえんだよ!!!!!

 

 

 

 

 

 

「うおおおおおおおお!!」

 

 叫びながら俺は立ち上がった。

 少女を守る為に。

 

「ユウヤ…!?自力で麻痺から抜け出したのか!?」

 

 俺は自力で麻痺から抜け出した。

 麻痺から抜け出すと強制的に武器とスキルが変更された。槍スキルと槍が消え、代わりに幾つもの流星をイメージしそうな位、輝いている槍と神聖槍という見たことのないスキルが装備されていた。

 そしてユウヤの目の前には自動で神聖槍を装備され、二つのソードスキルの自動装備を報告するウィンドウが開かれた。

 武器の名前は《グングニール》、神話に登場する神の武器。

 《グングニール》を握るとユウヤの体の周りに光の渦が発生していた。

 

「ユウヤなのか……?」

「ユウヤ……君」

「何だ……その光は……」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 キリト達はユウヤの姿に驚いていた。

 ユウヤの体の周りには光の渦が発生しており、先程持っていた槍が消え、新しい槍を装備したと思ったら先程持っていた槍の一回り大きくなった槍を持っていたのだ。

 グリムアイズは異変を感じ取り、ユウキをユウヤに向かって投げつけた。

 

「ユウキ……!」

 

 俺はユウキを優しく受け止めた。

 ユウキのHPバーはレッドゾーンに入っていた。

 もう少し遅くれていたらユウキはこの世界から消えてしまっていただろう。

 そして俺はユウキに優しく声をかけた。

 

「ユウキ……お前だけは絶対に守り抜くから」

「う……ん……」

 

 そう言って俺はユウキを横にした。

 ユウキは俺に笑顔を向けてくれた。

 

 俺の命に代えてでもお前を守るから…それが俺の命の誓いだ!!

 

「決着着けようぜ……蒼い悪魔」

「ガァアァアアアア!!!」

 

 俺がそう言うとグリムアイズは特大剣を振り下ろしてきた。

 だが俺はグリムアイズの剣を受け流すのでは無く、避けた。

 そして俺はソードスキルを発動させた。

 

 神聖槍ソードスキル《レイジング・ルーラー》

 

 神聖槍が出てきた時から元々あったソードスキルだったが剣撃数は8連撃と多めだった。

 そしてグリムアイズのHPバーを削るには十分だった。

 

「はああああぁああああぁ!!!!」

 

 

 一撃目……!

 てめぇがユウキに与えた苦しみはこんなもんじゃねぇ!

 

 二撃…三撃目……!

 俺はユウキを…皆を絶対に守る!!

 

 四撃…五撃……六撃目……!

 てめぇを殺す……殺す殺ス殺す殺す殺す殺す…!!!!

 

 八撃目……

 ユウキを傷つける奴は…

 

 ユウヤは口角を上げ、笑った。

 その笑みは不気味で。

 一人の人間の少女を守り抜こうとする悪魔の様に見えた。

 

 これはもう一人のユウヤなのかもしれない。

 

 

 ーーーーー 一匹残らず全員殺しテやる ーーーーー

 

 

「グガアアアアアアァア!!!!」

 

 だがグリムアイズも黙ってやられる訳では無かった。

 特大剣を振りかざしユウヤの体に命中させてきたのだ。

 特大剣はユウヤの体に直撃し、ユウヤを吹き飛ばした。

 

「くっ……!」

 

「「「「ユウヤ!!」」」」

 

 俺はまだ負けれない。こんな所では負けられない。

 目の前の悪魔を倒してユウキの笑顔を見るまでは

 

「お見舞いしてやるよ…蒼い悪魔!!」

 

 ユウヤは神聖槍を投げる体制に入ると槍は神々しく光だした。

 ユウヤはソードスキル《ラスト・アポカリプス》を発動した。

 このスキルは威力は強大だが威力と引き換えにある物を要求した。

 

「おいキリト…ユウヤのHPバー減ってないか…?それに槍を持ってる腕だけ斬りつけられたような赤いエフェクトが入っているぞ…」

 

 クラインがそう言うと皆はユウヤのHPバーと槍を持っている腕を見た。

 見て見ると確かにユウヤのHPは物凄い勢いで減っていた。ユウヤの腕に出来ている赤いエフェクトはソードスキル《ラスト・アポカリプス》の代償であるHPを吸い取っている証であった。

 《ラスト・アポカリプス》は自分のHPを削り、神聖槍に送る事で神聖槍の威力とスピードを上げる事が出来る。

 この光は俺自身の命の光だった。

 

「ユウヤ!そんなことしたらユウヤが死んじゃうよ!!」

「大丈夫だよユウキ……」

 

 俺はそう言ってユウヤに笑顔を向けた。

 俺はユウキを守らなければいけない、だからこんな所で死ぬわけにはいかなかった。

 そしてグリムアイズは俺のソードスキルを食い止めようと全力で向かってきた。

 俺のHPは結晶体になる寸前、残り1だけ残った。

 

「グアアアアアア!!!」

「消えろおおおおおおおお!!!」

 

 ユウヤが光輝く槍をグリムアイズに投げた。

 神聖槍は光輝きながら蒼い悪魔へと向かっていった。

 その光景を見たアインクラッド解放軍の一人が口を開いた。

 

 

 ーーーー光の…勇者……

 

 

 俺の命の光を注いだ槍は光り輝きながらグリムアイズの心臓部分に命中した。

 グリムアイズに神聖槍が命中するとグリムアイズは足を止め、叫びながらHPが減っていった。

 そしてグリムアイズは結晶体となり消滅した。

 

 

 ーーーーーどうだこの野郎……俺の命の光は強いだろ…

 

 

 そして俺はグリムアイズが消滅するのを確認すると目を閉じた。

 

 

 

 

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