書いててこの口調は違う感が大きい、作ってない本人の性格のままの文章にするべきだったのであろうか。
追記:見直してみたら、なんということでしょう。まりやさんの名前をまりあと間違えておりましたわ
始めて彼等に逢ったのは六月の終わり、七月が直ぐ目の前に来ているそんな日。
梅雨だと言うのに。いえ、梅雨だからこその曇り空、されど雨は降らないそんな朝でした。
『ほら、何時まで眠そうな顔をしてるの、瑞穂ちゃん?』
『誰の所為だと思ってるの。まりやが散々、僕を弄って遊んでいた事が――――』
『もー、口調、そんでもって『僕』じゃなくて『私』でしょ?』
『はぁ…………』
葉桜の見頃も過ぎ、閑散とした桜並木を歩います。
僕、失礼。私は宮小路瑞穂、そして彼女は従妹の御門まりや。
『聖應女学院』へ通う我々なのですが、私達以外には生徒は居ません。
何故なら、遅刻寸前だからです。
『情けないなぁ。揃って寝坊するなんて』
『あ、あはは。ごめん、その事は謝るけど、また口調が……』
『はいはい――――だけれど、今はまりや『さん』の他は私だけ。もう少し砕けた口調が許されても良いと思いませんか?』
『駄目よ。一体何処で、誰が、瑞穂『お姉様』の事を聞いて居るか解らないじゃない。みんなの『エルダー』がボロ出して悲しませないように……ってね』
『はぁ…………』
凛として、棘のある言葉で言えば、崩れた言葉で意趣返し。
立場が違えば、こうも楽に出来るものなのかと、羨ましい限りです。
『それにほら、あそこにまだ歩いてる娘…………歩いてないわね。ウチの学生が居るわよ』
『あ…………本当。真逆、気分が……?』
『それだったら、座り込むなり倒れるなりしてると思うわよ。歩いた儘寝てる、とかなら話は別だけれど――――ほら、瑞穂ちゃん、声かけたげなさいよ、きっと眠くて頭がボーっとしてるだけ。憧れの『お姉様』に挨拶されれば、眠気なんて裸足で逃げ出すわよ』
『はいはい…………………………ごきげんよう』
そう。今の私は、全校生徒の憧れの
まりやの策略と、その他諸々の偶然のお陰でこのような名誉ある称号を頂きました。
頂いてしまった以上仕方が無いのだから、せめて立派に役目を果たせるようにと、私は立ち尽くす人に声をかけたのです。
『……………………………………………………』
その時の1週間程度を思い返せば、そのエルダーシスターの名を持つ事は、どれ程の影響力があるかは理解できていました。
だから。大きな動作も無く、驚いた様子も無く。
ただ小さく此方を向くだけ、その後の反応も無い。
正に『無』表情と呼んでも差支えが無い目の前の人物。
見惚れるほどに美しく整った顔立ちに反し、近づけば取り込まれてしまいそうな暗い雰囲気。
微かに残っていた眠気が、裸足で逃げ出していくのは此方でした。
――――――コレが。僕と、七瀬千影との初めての出会いだった。
・・・・・・
『――――――――申し訳ございません!!!』
それから10分くらいでしょうか。
反応らしい反応が無かった女性、千影の名前を聞き出し、彼女が転入生である事を知り、学院長室まで連れて来るのに要した時間です。
兎にも角にも、ノックをして、扉を開こうとした時、中から男性の声が聞こえてきました。
『頭をお上げになって下さい。貴方のお話からすれば、自発的に行動しているのであれば、それは良い兆候なのでしょう?』
『しかし、それにもTPOがあるでしょう…………』
中でお話をしておられたのは、聖應女学院の美倉学院長、そして一人の男性でした。
若く、年頃は私と同じくらいでしょうか。
少し焦っている様にも見受けられましたが、此方も謎の転入生の事が気掛かりで、それ所ではありませんでした。
『あの、失礼します』
『おや、宮小路さん、そして御門さんも。どうされました、もうHRは始まっている時間かと思いますが』
『転入生の方が…………迷子、迷子と言えば宜しいでしょうか。桜並木で立ち尽くしていましたので、ご案内を』
『転入生。成程、解りました……七瀬さん、どうやら彼女が連れてきた様ですよ』
『そのようで。しかし、二人ほどの子女を結果的に遅刻させたとなれば、問題では?』
『ふふ、善意の行いに対し、罰を与える事はありませんよ。さて、御門さん。彼女を梶浦先生のクラスへと案内して下さいませんか? 少し、宮小路さんにはお話がありますので』
そうして、まりやと千影が学院長室から出て行きます。
2人きりで短くない距離を如何しようかと不安そうにしているまりやの顔は、少し可哀想にも思えました。
『学院長、何故彼女を残したのです?』
『宮小路瑞穂、彼女はこの学園の第72代エルダー・シスターです。そして、偶然な事に、千影さんのクラスメイトとして、また寮生としても1年間を共にする方です』
『………………………………ええと。とりあえず、俺……私は七瀬千影の兄で七瀬和也と申します』
戸惑ったような、一体何を言えば良いのかと言う雰囲気で、和也は挨拶をしました。
僕としても、学院長が言った『偶然』の言葉で片付けるには、余りにも出来すぎた内容だと感じていました。
『ご紹介を受けましたが、宮小路瑞穂です……珍しい偶然と言うものもあるのですね』
『全くです。今代のエルダーシスターの方と千影が過ごす事になるとは…………本日みたく、多大なご迷惑をお掛けする事になりそうですが、よろしくお願いします』
『迷惑だなんて。あの様な個性的な出会いをした方です、良い友人関係を築くことが出来ると思います』
『だと良いんですけどねぇ………………』
深い溜息を吐くその姿には、歳が近そうな雰囲気に反し、哀愁が漂っていました。
私と同じく、この様な時期の転入、そして何やら訳がありそうな雰囲気。
同情と言えば失礼なのでしょうが、何か近しい事を私は感じ取るのでした。
『神にご機嫌を伺う事は神代よりあれど、人が変わった例などないですからね。千影には、世界を変える程の刺激で変わってもらいたいものです』
『世界を…………それが、彼女をこの時期に転入させた理由ですか?』
『まあ、良い男性を捕まえる為に嫁入り修行して来いと言う事ですよ。聖應に入れたのも、この世界屈指のお嬢様学校ですからね…………まあ。箔がついただけで寄って来る程度の男には渡すつもりはありませんが』
最後の方は眼が本気でした。
私には兄妹等はありませんが、きっとこう言うのを兄バカと言うのだと感じました。
『おっと、長話が過ぎました。それでは学院長、私はこの辺りでお暇させて頂きます』
『ええ。お母様に宜しくとお伝えください』
そう言い、和也は帰って行くのでした。
一礼をして去っていく時に表情が見えましたが、不安と、期待が入り混じっていました。
・・・・・・
「そんな風だったかなぁ。和也って、知れば知るほど
「言ってくれる」
七瀬神社の縁側に座り、和也お手製の桜餅を食べながらの過去話。
僕も和也も、卒業後も見据えた長い付き合いに成るなどとは、当時からは想像もつかなかっただろう。
「だって、月1回程度なら兎も角、週1回は手紙とか送ってたよね?」
「あー、はいはい。ブラコン最高ぉ!」
「…………兄様。あの時、そんな事を考えて居たのですか?」
そして、僕達に挟まれる形で千影が顔を赤らめている。
当時を想い出せば、本当に千影は変わった。
良く話すように、表情豊かに、想いを表してくれる様になった。
「考えるさ。等身大の人形に話しかけてる風にしか思えない妹の事を心配して、何が悪いよ」
「等身大…………ふふ、そう言えば、あの後の千影が正にそうだったよ?」
「あの後?」
「み、瑞穂様まで!」
僕が何を言おうとしているのか気付いたのか、止めようと千影が慌てている。
尤も、興味深そうな和也に止められてしまっているのだけれど。
「あの後、僕も教室に向かったんだけど、もう一限が始まってる時間だったから、緋紗子先生に遅れた理由等を説明しようとしたら、千影の自己紹介がまだ続いててね――――」
「ああ。解るぞ、良く解る光景だ。大方、緋紗子先生が、ボーっとしたまま動かない千影にうろたえながら、瑞穂さんに救いを求める視線を向けたんだろう?」
「そうそう。あの時は僕も驚いたなぁ…………15分くらい、HR合わせると30分くらい過ぎてるのに、教卓の横に千影が立ってるんだから」
「~~~~~~~!!」
更に顔を赤く染め上げ、手で顔を塞ぎ、声にならない声を出して首をぶんぶん振っている。
正直、可愛い。
和也なんか、横で大爆笑してる。
先刻も考えたけど、出逢ったばかりでは考える事もできなかった関係。
きっと、あの千影の転入の日は、皆不安だったに違いない。
だから、あの日を過去の想い出に出来て良かったと僕は思う。
――――――こんな風に話せるようになって、本当に良かったと思う。
番外編第1弾は本編7話で出した千影についてちょっと。
おとボクって、クローズド・サークルすぎて、本編絡めれないし二次創作作り辛い。
別にミステリじゃないけど。
1年通して学園内のみの出来事だから、特にお嬢様っぽいイベント作るのも作者の技量が関わってきて、そう言う意味ではなぞるだけの作品になりかねない不安定さもあるのではないかと思うデス。