「――――と、言うわけなんですけど。知りません?」
「か、風見鶏に眠る魔人、ねぇ? 一体、何処からそんな噂が…………」
一種の七不思議なのかもしれない。何せ此処は学び舎なのだから。
そう、此処は学び舎、王立魔法学園、通称『風見鶏』である。
そんな中、予科1年A組の葛木清隆と、本科1年で、清隆のクラスの
「取りあえず、長い歴史の学園だって聞いて、色々な人に話を聞いたんですけど……その様子だと、リッカさんは知らなさそうですね」
「まあ、ねえ? そんな、魔人なんてのがこの学園に眠ってるなんて、聞いたことないし」
「――――――――この学園が、どうかしましたか?」
「ああ、エリザベス。聞いてよ、清隆がね?」
ロビーで話をしていると、学園長であるエリザベスがやってきた。
友人を見つけた事と、後は会話の内容が引っかかったのであろう。
「…………風見鶏に眠る魔人。ですか、ええと……?」
「ほら、やっぱりエリザベスでも知らないじゃない。そんな変な噂、何処が発祥なのやら」
「う、うーん。でも、結構有名らしいんだけどなぁ。まあ、学園長先生が知らないなら、そりゃ嘘って事で――――」
「いえ、魔人ではありませんが、人外に近い人ならば、最奥の研究室で研究を続けているのですが…………」
「え、初耳よそれ?」
リッカもこの学園は来て短い。そんな人物が居ることは流石に知らないようであった。
「10年は、学園の外に出ていないでしょうねぇ……最近、研究に目処が立ったらしく、学園内で見かけると話には聞いていましたが。魔人と呼ばれるような人は、後にも先にも、その方だけだと思いますよ。それでは」
そう、気になることを言い残して、エリザベスは学園長室へと帰っていくのであった。
・・・・・・
「…………風見鶏の魔人かー。確かに、この研究室が並ぶ棟は、あまり人も来ないのよね。そもそも、ここのOBって外に出て行くのが基本だから、研究者なんて居ない物だと思っていたわ」
「学園長は最奥って言っていましたよね、この扉でしょうか?」
最奥と言われて、取りあえず来てみた。
表札らしきものが存在しているのは此処だけなので、多分此処に魔人とまで呼ばれる人間が居るのであろう。
「取りあえず『外出中』らしいですけど?」
「あらー、無駄足だったわね。どんな人か見てみたかったけど、また今度――――」
「私に、用事かしら?」
「「!?」」
振り向くと、一人の女性が立っていた。
すわ件の魔人が現れたのかと身構える2人であったが、普通の人物であった。
「此処は私の研究室よ。どなたか知らないけれど、遊びにでも来たのかしら?」
「あー…………はい? そんな所です?」
中の住人を確かめるために、遊び半分で来たのは間違いない。
しかし、魔人を見に来ましたなどと、女性相手に失礼すぎることは口にもだせないので、取りあえずの返事をしておく清隆であった。
「……………………一般の生徒さんが来たのは何年ぶりかしら。と言うか、今西暦何年なのかしら?」
「え、えーと。1950年ですけど」
「あら、5年ぶりかしら。そういえば、5年前は……たしか、ええと。ええと…………そうよ、大きな戦争をやってたわね。本国……日本は敗色濃厚だったけれど、結局負けたのかしら? いえ、それよりも、もう戦争は終わったの?」
「その5年前に終わってるわ。枢軸国の負けでカタがついたわ」
「くすくす、何だ、結局負けたのですか。矢張り、本土に帰らなくて正解でしたねぇ」
取りあえず、エリザベスが言っていた様に、風見鶏……自身の研究室に篭っている事が伺える会話であった。
「と、言いますか、日本人なのですか?」
「あ、自己紹介が遅れたわ。七瀬、七瀬百花よ。今は此処の、風見鶏のOBとしてず~っと研究を続けているの。長いこと日本には帰って無いけど、日本人よ」
「な、七瀬ですか!?」
清隆も日本人である、そして、葛木家の人物と言う事もあり、七瀬の名前に聞き覚えはあるのであった。
「ほ、本当に『七瀬』なんですか!?」
「本当に七瀬よ?」
「清隆、この娘、有名なの?」
「いや、ええと。日本では超の上に超が2個ついた上に、下に弩級が付くレベルで名門の家ですよ。現在頭首は日本に居ないって言っていましたし、もしかすると…………?」
「あらあら、名門だなんて。たまたま地脈とかを押さえるのが上手かっただけよ? それで、私が現在の七瀬家の頭首を勤めてる七瀬百花よ…………と、言っても。頭首自体は500年前からずっと私よ。くすくす、老化を防ぐ魔法って本当にいいわね。私、コレでも戦国時代初頭から生きてるのよ?」
「何ソレ凄い…………」
リッカとて魔女狩りの時代を生きた人間である。
ソレより更に前、嘗ての極東に存在した『サムライ』が生きていた時代の人物に、驚きを隠せないのであった。
「それで、ええと。そうそう、遊びに来たのね、偶にはお客さんも良いわ。あがって頂戴、何も無いけど、お茶とお菓子くらいは出せるわ」
そんな驚きを知らずしてか、百花はそう言って2人を研究室の中へと招き入れるのであった。
・・・・・・
「くすくす。『風見鶏の魔人』ですか、随分と面白い名前を付けられたものです」
お茶と茶菓子を出しながら百花は笑う。
5年所か10年近く放置されていた物なので大丈夫かと恐ろしい事を百花は呟いていたが、保存の魔法が確りと効いていて腐ってなどはいなかった様子である。
「あ、あの。良いんですか? イメージ的に、その…………?」
「大丈夫よ。私、元々戦国時代に『七瀬の鬼神』って呼ばれてた事もあるし、今更魔人なんて呼ばれようとも気にしないわ」
「良いんですか…………」
本当に引きこもって研究を続けに続けていた結果、長い事時差があるので外には興味津々な様子であった。
「そういえば、私の研究室の場所は誰から聞いたのかしら。メアリ……今の学園長?」
「そうね、エリザベスに聞いてみて、風見鶏の魔人に一番似合う人物として紹介されたわ」
「くすくす、あの娘ったら」
「やっぱり学園長とはお知り合いなんですか?」
「ええ、先々代……あら、んー…………取りあえず、イギリスに渡ったのが400年くらい前だから………………ええと、まあ。彼女の先祖の代からの長いお付き合いよ」
最早昔の話しすぎて思い出すのが面倒になってきている様であった。
「…………リッカさんもそうですけど。魔法使いって、スケール大きいんですね」
「ちょっ、清隆! 百花さんと同じレベルにするのは止めなさい!」
「くすくす。カテゴリー5を捕まえて、子供扱いするほど私は偉い魔法使いじゃ無いわ。だから気楽にして頂戴」
そうは言っても、リッカとしてみれば人生としても、魔法使いとしても大先輩。
清隆にしても母国の伝説の人と言う事もあり、否応にも緊張してしまうのであった。
「さて。色々と聞けて楽しかったわ……所で、質問があるのだけれど。清隆君」
「は、はい!」
「くすくす、もう、緊張しないの。清隆君は、葛木清隆と名乗ったけれど、葛木家の嫡子なのかしら?」
「あ――――い、いえ。違います、俺は家を継ぐ人間ではありません。継ぐのは俺の妹で、一緒にこの風見鶏へと来ています」
「――――――――へぇ、妹さんが」
珍しい事を聞いたと言わんばかりにする百花の姿があるのであった。
「くすくす。そう、お兄さんなの。そうよね、色々と大変ね。妹さんを確り守ってあげてね、葛木の家系は、昔から無茶ばかりしているんだから」
「あ……矢張り知ってましたか」
「ええ。私も一応巫女だもの。京の都にどどーんと家を構えて、全国に情報網を走らせていたんだから」
そういえば、七瀬とはそういう家であったと清隆は思い出す。
ただし、過去形で語っている所を見ると、七瀬家の本家は今どんな事を行っているか把握はしていなさそうであった。
そんな感じに日本の話題が続く2人であったが、完全に蚊帳の外のリッカは詰まらなそうである。
「ちょっとー、清隆も同郷の偉い人が居るからって、日本の事ばかり話さないでよー。私も加われる話とかにしなさいよ」
と、そんな感じに頬を膨らませている。
カテゴリー5の『孤高のカトレア』も、女の子なのだと、百花は微笑ましい目で見るのであった。
「くすくす。ごめんなさいね、清隆君をとっちゃって。でも、確かにお客さんに失礼だわ。じゃあ、リッカさんとも――――っと、もうこんな時間なのね…………まだまだお話をしたい所だけど、そろそろ私も研究の続きを行うことにするわ。大体先刻の時間には、この部屋に篭っている筈だから、いつでも遊びに来て頂戴。あ、居ないときは学園中をフラフラしてるから、諦めてね?」
「あ、その……す、済みません。私たち、研究のお邪魔をしてたんですよね。ええと、その。お言葉に甘えさせて頂きます!」
「…………俺も、時間があるときに遊びに来たいと思います」
「ええ。久しぶりに人と話せてよかったわ」
そう言って、2人は挨拶をして部屋から出て行く。
とても優しそうな雰囲気であったのと同時に、何で魔人などと呼ばれているのか、噂とは不思議なものであると2人は思うのであった。
本編主人公の母親、七瀬百花のお話です。
設定的にはソレイユと同級生、魔法界ではなく、人間界メインで住んでいた感じの人。
しかしまあ、本編に一度も出てない人物の事を何で書いたのやら。
学園長をメアリと呼ぶのはこのssだけ! 別のゲームの影響さぁ! ハハッ!(甲高い声で)
か、どうかは知りませんが。まあ、あの人名前エリザベスだけしか過去編では出ないし、良いよね。
もしかすると、このネタが利用規約の芸能人のに拡大解釈されて引っかかる可能性があるのが怖い所。