桜の織り成す番外編   作:天枷美春

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駄目だ。(キリッ)っとした文体できない。だからこのssはシュールギャグ(?)


魔剣、妖刀、されど神に挑む剣

「6ヶ月。随分と、時間がかかったものだよ」

 

 

研ぎ終えた刀を持つ。

刃紋に遊びは無い、鍔や鞘に装飾は無い、そして銘も無い。かつて父が叩き上げた刀と同じように、無骨。

それで良いのだ。少なくとも、清興にはそれで良い、斬れる刀であればよい。

この刀は、過去類を見ない鬼才と呼ばれる鍛冶師島清興が、稚拙であり凡夫凡庸な剣士島清興の為に作り出した一振りの刀なのだから。

 

 

「――――――ん、剣呑なお客さんだね」

 

「見事、我等に気付いていたか」

 

「くふふ、当然。君ら『闇』の人だよね、何か用?」

 

 

複数の人数が現れる。

鬼の面を着け、背中には刀を背負った物が数名である。

異様とも思えるその光景であるが、清興には覚えがあった。

 

 

「その通り、我等闇の尖兵。そしてソレが解っているのであれば話が早い。鍛冶師、その刀を寄越せ」

 

「…………冗談。之はボクの刀だよ?」

 

「クッ……女、貴様こそ何を惚けた事を言う。貴様は鍛冶師としての腕は一流だが、剣の腕は凡庸だと聞く。そんな者が稀代の一品を持っていて如何する。宝の持ち腐れではないか」

 

 

話しながら、清興を取り囲むように闇の尖兵が現れる。

その数は10や20ではない。

そして、少なくとも尖兵と名乗る割には雑魚ではない、それほどまでの実力を持つ者まで交じっている。

 

 

「何、安心しろ刀匠。我等に出された命はその刀の回収だけではない、貴様と言う刀匠を闇へと引き入れる事もある、刀こそ我等闇の武器組のものとなるが、貴様には何時でも刀を造るのに必要となる物を与えよう」

 

「くふっ……くふふ、くふふふふ……」

 

「女、何が可笑しい?」

 

「いや、いやいや。くふふっ。何、君達が余りにも、馬鹿な事を言うモノだからね。くふふ」

 

 

完成したばかりの刀を抜き、正眼に構える。

すわ抵抗かと、闇の尖兵達も刀を抜き、何時でも清興に斬りかかれる様にする。

しかして、命令が出た所で斬りかかれたかは疑問である。

動けなかったのだ、勿論、清興が全てを斬り伏せたのではない。

それであったのならばどれ程痛快な話であった事だろうか。

 

 

「………………見事ッ……!」

 

 

日本刀は美しいものである。

勿論、美術品として生み出された物ほど、美しさの度合いも変わるだろう。

しかして、それらが実用に耐え得るかはまた別である。

清興が造り出した刀は、知っての通り斬れ味を追求している。

そんな、飾りも何も無い刀が、斬る為だけに生み出された刀だというのに。

見た全ての者が見惚れる程の妖しさを醸し出していた。

 

 

「くふふ…………さて。この刀が欲しいんだっけ? ああ、駄目だよ。駄目に決まっている。之はボクがボクの為に造ったボクだけの愛し子さ。ボクだけが扱える、ボクの想いにしか答えない。この刀は、誰にも、渡さない!」

 

「仕方あるまい……! 刀匠を失うことは確かに惜しいが、別に貴様が刀匠である必要はない。手足を失ったとて、その技術その他など、達磨として生かした貴様の体に、薬でも使って聞けば良い! 皆、かかれ!!」

 

 

―――――――――妖刀についての話を、一つしよう。

人斬り包丁と何が違うのか。簡単な話である、刀自体が、死を呼ぶのだ。

村正と呼ばれる妖刀が存在する。かの剣に関した有名な創作であるが、村正作の一振りを川に突き立てた所、上流より流れた葉が村正に誘われる様に近づき、斬れたと言うものがある。

その物語は、正宗と呼ばれる刀との比較であり、正宗と呼ばれる刀は、葉を寄せ付けなかったとされる。

この物語は、無闇に他を傷つける村正の愚かさ、恐ろしさを説いた話だとか、真に強き力は、無闇に他を傷つけない正宗との違いを謳っているとされる。

 

 

だが、清興はそうは捉えなかった。

刀とは、斬れてこそのもの。刀を見て、逃げられる様では、刀を持つ意味など無いであろう。故に、清興は村正を目指した。無闇に、他を傷つける刀を目指したのだ。

そして、その刀は確かに完成した。清興は、妖刀を、名も無き妖を作り上げたのだ。

だからこの様に、刀を狙う輩が現れるのは、必然であろう。この刀は、斬る為に生まれたのだから。斬る事を目的として、清興が作り上げた究極の一振りなのだから。

故に、清興は、満足なのであった。

 

 

 

 

 

・・・・・・

「か、川神先輩!!」

 

「白浜?」

 

 

兼一が川神院の百代の元へと駆け込んでくる。

最近は川神院に姿を現すことは珍しいものではなくなったが、それらは全て梁山泊の師匠等によって放り込まれるからである。

自分の意思で駆け込んで来るのは、珍しい事であった。

気持ち、顔が青ざめている。

 

 

「し、島さんをご存知で無いですか!?」

 

「清興……見てないな、どうかしたのか?」

 

「先日、島さんの刀が完成するとの事で、師匠と共に飛騨まで向かったのですが……島さんの姿は無く、夥しい程の血と、死体が…………」

 

「なん……だと…………!」

 

 

曰く、兼一は此方に逃げ込んできては居ないかと血相を変えて戻って来たとの事。

だが百代にも今の話は初めての事、首を横に振る姿をみて、兼一は力なく崩れるのであった。

 

 

「せめて、せめて師匠が、梁山泊の師匠が一人でもついて居れば…………島さんは……」

 

「落ち着け白浜、清興が殺されたと決まった訳じゃないだろう?」

 

「ち、違うんですよ。島さんの箍が外れてしまった可能性が高いんです!」

 

「………………清興の?」

 

「今でこそ島さんはあんな感じでしたが、昔は……始めて会った時は、酷い有様でした」

 

 

刀と技術を狙う者から、逃げて逃げて、そんな生活を何年と続けていた清興である。

夏を迎える前に出会った時は、酷い有様であったと兼一は語るのであった。

 

 

「それで、箍が外れたくらいで如何にか成るのか、アイツは? 良くも悪くも、普通の剣士だろう、アイツは」

 

「…………ですけど。島さんの強さと弱さは、何かアンバランスに感じませんでしたか?」

 

「清興が自分の実力を隠してるとでも言うのか? 私に言わせて貰えばソレはないな、お前との模擬試合を見せてもらったが、手加減している様子は無かったぞ。本当に強いなら、私なら見抜いてる筈だ。自惚れている訳ではないがな」

 

「そう、ですか………………」

 

 

清興の実力は、兼一と同程度と言っても差し支えない成長速度である。

師事していない分、既に成長速度で言えば清興は追い抜かれているかもしれない。

そんな清興に、嘗ての手合で流水制空圏を発動した事がある。

相手と心を通わす、活人拳最高の奥義で、兼一は清興の心を見た。見てしまった。

どれだけ今が笑顔に溢れて居ようと、未だ清興の心には、闇が多かったのだと。

 

 

「行き成り失礼しました、とりあえず僕は師匠たちと一緒に他を当たってみます」

 

「待て、その前に島津寮に行って来い。まゆっちに何か連絡が入ってるかも知れん…………入ってなくても、連絡は必要だろう。清興は、アイツの友人何だ」

 

「は、はい!」

 

 

百代に言われ、古い友人であった由紀江ならば、何か清興の足取りがわかるかもしれない。

そんな淡い期待と、そして最悪の状況があるかも知れない事を含めて、伝えに行かなければならないのであった。

 

 

 

 

 

・・・・・・

「はい、お姉さんですか? 今、島津寮(ウチ)のお風呂使っていますが」

 

「「えー……」」

 

 

散々心配させておいてそれかよと、百代と兼一はうな垂れる。

だが、それは問題が解決したというわけでは無いらしく、今度は由紀江からの質問があるのだった。

 

 

「お姉さんは、どうなっているのですか?」

 

「…………どう?」

 

「様子が尋常ではありません。アレほど――――――」

 

「そうか、まだ島さんは黛さんに話しては居なかったんだね。島さんは、闇の武器組に襲われて、こっちまで逃げてきた…………んじゃないのかな?」

 

「いえ、ずぶ濡れなだけで、怪我らしい怪我はありませんでしたが……そんな事になっていたのですか?」

 

「…………オイ白浜。本当に清興の工房周辺は、血と死体の山だったんだよな?」

 

「は、はい。師匠と何度も出向いてますから、間違えるはずはありません」

 

 

何度か清興の工房へと足を運んだ事がある兼一だが、先日見てきたソレは明らかに異様な光景であったのは言うまでもない。

確実に、大勢がその場で殺しあった。それだけは確かである。

 

 

「血…………ああ。確かに、血の嗅いも少ししていましたが、とりあえず下着までずぶ濡れでしたので、先ずお風呂に入っていただきましたが……アレは、誰かの血だったのですね?」

 

「と言うか、僕達も今一良く解らないんだよね。状況は島さんがお風呂から出てから――」

 

「――――んー? くふふ、丁度出たよ。何かボクに用事なら、聞くけど?」

 

「ぶっ!?」

 

 

外で話をしていたのが聞こえたのか、清興が風呂から出てくる。

無頓着にも程があるが、現在パンツとT-シャツのみの状態で出てきている。

お陰で兼一が鼻血を噴出して大変な事になった。

 

 

「あわわ、流石に服をちゃんと着ましょう!?」

 

「くふふ。ごめんごめん、どうもボク心配されてる感じだったしね。急いで髪を乾かして出てきたんだけど」

 

「お前にとっては下着より髪なのか」

 

「くふふふ。いや、だって兼一って本命の娘が居るから別に見せても問題ないよね?」

 

「ふ、普通はそんな事関係なく見せませんよ!! だからさっさと服着てください!」

 

 

兼一は眼と鼻を押さえながら清興へと話しかける。

そんな様子も楽しみながら清興は浴衣を羽織るのであった。

 

 

「それで、何の用事?」

 

「島さん、最高の一振りが出来上がったって、連絡が――――――」

 

「そう! そうそう!! くふふ、くふふふふ! すっかり忘れてた、兼一に連絡を入れたんだよね、御免御免。見せるよ、コレだよコレ。ボクの、最高の、一振り!!」

 

「ッ……!」

 

 

兼一は刀に関しては素人である。

一応、梁山泊の香坂しぐれを武器の師匠として持っているのだが、それは扱いについてあって良し悪しを学んでいるわけではない。

それでも、兼一は反応した。

美しさに見惚れた訳でも、見事な業物と勘当した訳でもない。

ただ恐ろしい何かが、本能に危険信号を送ってきたのだ。

 

 

「実はね。この刀を、君と、まゆっちに見せて、また何処かに消えようかと思ってたんだ」

 

「お姉さん……?」

 

「この刀を狙って、色々と面倒な連中が来るのさ。川神院とか、川神学園に迷惑をかける訳にもいかないしね」

 

「でも、島さん! それは…………それは修羅道って言うんだよ! 殺して、殺されて。そんな生き方になってしまって良いんですか!?」

 

「くふふ、上等上等。刀は斬らないと!」

 

「島さん!」

 

「………………兼一。君は本当に馬鹿なくらい優しいね。だけどボクはちょっと特殊な性癖とかがあるから、余り一般人のところに紛れ込んでると大変な事になるんだよ? 止めてくれるには、ちょっと君じゃ実力不足かな」

 

「だったら、代わりに私が止めてやろう。元々、川神院はお前を保護する目的で白浜の所のジジイと取り決めをしていたらしいじゃないか。私に言わせて貰えば、並みの武術家程度のお前じゃ直ぐにのたれ死ぬだけだし――――――――――それに、お前が居れば強敵には飽きなさそうだ」

 

「くっ…………くふふ、くふふふふ。傲慢だな戦闘狂(バトルマニア)? ああ、良い。良いよモモ先輩。その科白、胴が二つに分かれても、吐けるかどうか試してあげるよ!」

 

 

言葉と共に一閃。

不穏な空気を察知しながら話を聞いていた2人であったが、止める間もなく知り合い2人の戦いが始まってしまうのであった。

 

 

 

 

 

・・・・・・

『も、もう無理ですってば!』

 

『くふふ。喋れるって程度には元気だね、モモ先輩、続けて続けて』

 

『解った』

 

『アンタ等鬼ですかー!?』

 

 

現在兼一は百代との自由組手をやらされている。

制空圏を築いては直ぐに壊され、かと言って攻めた所で効果が無い。美羽との組手より絶望的な練習を強いられていた。

 

 

『「ほらほら、寝てると追撃が行くぞ?』

 

『わ、解りましたよ!!』

 

 

疲れたからと言っても止めて貰える物でもない。

それに、兼一とて解って居る。仮にも此方から申し込んだ組手である、当たらない、意味が無い、だから諦めて横になる選択肢は失礼にあたるのだと。

 

 

『ん、オイ白浜。面白いなソレ!!』

 

『……………………』

 

 

今までの制空圏とは違うと、百代は感じ取っていた。

何故ならば、突きが兼一をすり抜けるように外れたからだ。

手加減をしているのは事実であるが、手加減どうこうでどうにかなる動きではない。

つまり、今確実に兼一が何かを行っている。

 

 

『くふ、くふふふ。流水制空圏と言ったかい? 見るたびに想うけど、美しいね』

 

『ふぉっふぉっふぉ、眼が本気(マジ)になっとるぞい?』

 

本気(マジ)にもなるよ、デスパー島で見て以来、アレが、頭に焼き付いて離れない』

 

『…………なら、言うておくが、清興ちゃんには無理じゃのう。活人の極みじゃ』

 

『くふふふ………………成程、成程。それは確かにボクには無理か、無償の愛は、兼一にこそ相応しいみたいだ』

 

 

それだけの隼人の言葉で、流水制空圏を理解する。

自分とは対極に位置するソレは、決して身に着く事は無いと。

 

 

『モモ先輩!』

 

『うん?』

 

『くふふ、ボク帰るね。兼一も、またね』

 

『ああ、またな』

 

『げふぅ! ……あ、う、うん……島さんも、また………………』

 

 

結局、兼一は完璧に修めている訳でない流水制空圏を破られる。

そんなタイミングで清興は川神院を出て行くのであった。

 

 

――――――――これは、少し前の記憶。

 

 

 

 

 

・・・・・・

『………………見よ、清興』

 

『はい』

 

 

抜き身の刀が立てかけられている。

飾りなど何処にも無い。

 

 

『――――!』

 

『見たか。儂の、儂が作れる刀は、之が限度だ』

 

 

ふと剣先に停まった雀が二つに割れた。

かの天下三名槍と言われた『蜻蛉切』と同じ話が目の前で起きた。なればこそ、名をあやかり『雀切』にでもするべきか。

目の前の光景に見惚れ、何を思えば良いか自身でも整理がつかなくなって居る。

後に思い返せば名前など如何でも良いだろうと、昔の自分に伝えたくなる光景であった。

 

 

『清興。儂の刀では、此処までしか斬れぬ。お前は、之を越えてゆけ』

 

『……………………はい!』

 

 

充分すぎる程の斬れ味を見せ付けて尚、師は越えろと言う。

その言葉に、清興は驚く。驚くが、直ぐ様受け入れる。

いつか自分は師を越える。では、何をすれば師を越える刀なのであろうか。

 

 

――――刹那、禁忌を垣間見た。選んではならない選択肢。

ソレを目指せば確かに師を越えることは可能だろう。

されど、本当に目指して良いものかと良心が叱咤する。

では、何を斬る。それこそ、ありとあらゆる物を斬る事を目指せば良いのか。

確かにそれも良いだろう。だが、趣味ではない。

何であれば島清興は納得がいく。雀が斬れた瞬間に、何に見惚れた。

嗚呼。理解した。目指す道など一つだけではないか。

 

 

――――――――そしてこれは、島清興の根源である。

 

 

 

 

 

・・・・・・

百代と対峙する清興は落ち着いていた。

相手は畏怖するべき最強の存在。

対して、自身は凡夫。何処に居てもおかしく無い存在。

羽虫が獅子に勝てるわけが無い。これは周りの評価以上に、清興自身が常々考えている事である。

 

 

ならば何故。何故こうして対峙している清興は落ち着いているのか。

清興には己が作り出した刀以外に、もう一つの剣――――『魔剣』を作り出していたからである。

 

 

その事を知らずして、百代は清興の必殺の間合いへと入ってしまう。

否、自らの意思で入って来た(・・・・・・・・・・・)のであった

 

 

 

 

 

――――――魔剣は、幾つもの要素を積み上げ、一つの形として成す。

 

 

例えば、塚原卜伝の『一の太刀』

生涯に一つの敗北も無いと謳われる彼の魔剣。

どの様な相手であろうとも、どの様な条件であろうとも、如何にすれば斬る事が出来るか。

その判断を死合いの刹那。否、涅槃寂静とまで言われる短さにて行い、斬る。

魔剣とは、かく言うものである。理解が出来れば出来るのでは無く、出来るからこそ理解が出来る物なのである。

 

 

清興の魔剣は、そう、塚原卜伝の『一の太刀に』良く似ていた。

 

 

彼女は鍛冶師であり、剣士でもあった。

しかし悲しいかな、彼女が持つ才能は鍛冶師としてのもの、剣士としての才能は平凡そのものである。天と地が逆様になり、彼女に味方しても、天才と呼ばれる黛由紀江、そして目の前の川神百代には、届かない。

故に彼女は考えた。届かない領域に、剣を届かせる。摂理に抗う『魔剣』を考えた。

 

 

 

 

 

 

先ほど、塚原卜伝の魔剣と、島清興の魔剣が良く似ていると述べたが、考えの一部が良く似ているだけである。

先ずは『一の太刀』を解りやすく説明しよう。

先の先、先の後、後の先、後の後と言った死合いにおける駆け引き全てを内包しうる技。それが魔剣『一の太刀』である。

 

相対する者が此方に意識を向けていない刻。それが先の先の『一の太刀』

相対する者が攻めの意を見せ守りを崩した刻。それが先の後の『一の太刀』

相対する者が攻め、守りなど出来ぬ刻。それが後の先の『一の太刀』

相対する者が攻め終わり、守りに意識を向ける刻。それが後の後の『一の太刀』

 

成程、確かである。全ての動きにおいて、対応する一撃が出せるのであれば、負ける道理などあるまい。勿論、心身を極限にまで鍛えあげ、柔剛を使い分けてである。

だが、清興にはそれほどの才は無い。ましてや彼女は『気』すら使えぬ女の身。ならば、彼女は如何にして彼女の魔剣を作り上げたのであろうか。

 

 

 

――――――話は変わるが、武術家における静の極みの技の一つとされる『流水制空圏』はご存知であろうか。

【無敵超人】風林寺隼人の持つ秘技の一つ。基本的な考えとして、相手の動きに逆らわず、流れに乗る様に動く事で、全ての攻撃を受け流す。そう、白浜兼一が悲運にも行わされた川神百代との組み手で行った動作である。

勿論、ただ避けるだけで極みの技と呼ばれる筈が無い。流水制空圏には3つの段階がある。

 

第一段階は『相手の流れに合わせる』である。先ほど説明したのは第一段階。そして、この世に風林寺隼人の伝説として伝わる流水制空圏は、ほぼ基礎と言っても過言ではない部分である。

第二段階は『相手と一つになる』である。相手の動きに重ね、相手の動きをなぞる事で、こちらからの攻めに転じる事が可能となる。

第三段階は『相手を自分の流れに乗せて相手の動作を思うままにコントロールする』である。

 

流水制空圏が静の極みと呼ばれる所以は、この最終段階にある。

相手の流れに乗る事から、一転して相手を操る域に達している。何故かは、ダンスのリードを考えて欲しい。

相手の力量に合わせ踊ることも大事であるが、相手が気持良く動けるようにするのもパートナーの勤めである。

つまりは、思うが侭に動かす奥義ではなく、思うが侭に動いて頂く奥義なのだ。

勿論、これもまた、理屈が理解できるからとて、実行可能な奥義ではない。

この技の核となるのは、活人拳が本懐とする『優しさ』にあり、相手を想い、一体となり物事を考える気持ちで『自分ならば、この時を如何動くか』を読み取る事が出来て、始めの基礎となる第一段階へと足を踏み入れる事が出来る。

誰からも甘いと言われるほどの優しさを持つ白浜兼一だからこそ、風林寺隼人もこの技を伝授したのではないだろうか。

 

 

 

 

 

さて、余談も終わり、清興の魔剣の説明へと移ろう。

清興の魔剣は、塚原卜伝の『一の太刀』の3番目。後の先の『一の太刀』を元にしている。

彼女の考えはこうだ。

『もし、あらゆる行動に合わせて一撃を入れれば、それは防ぐ手立てが無い』

なんとも幼稚な考えである。

正に言うは易く、行うは難しである。一体誰がそんな反射速度を持っているというのだ、一体誰が相手の動きを予想できるのか。

しかし、彼女は驚くべき業を持って成し遂げる。

 

 

次に彼女は、流水制空圏へ着目する。

彼女の剣技は殺人剣である。合わせる様に、彼女は斬れれば良いとの考えで刀を叩く。

静動で言うのであれば確かに清興は静の武人である。されど、殺人剣(拳)には習得し得る事の無き静の極みが流水制空圏。

彼女には、死合いで相手を想いやる頭など持ち合わせて居ない。

何を以って彼女は静の奥義を窮めるか。

 

 

皮肉にも、それは『愛』と言う刀への想いであった。

愛し、愛し、愛し愛し愛しながら叩いた鉄の塊は、彼女が自分の為に作り出した刀となる。

彼女の根源は、幼き頃に見た、触れただけで小鳥を切り分けた父の刀。

彼女の根源は、ソレを越えると誓った事。

彼女の根源は、その越えた刀で、人を、斬って、みたい。そう想った事。

決して人には言う事の出来ない愛。種は蒔かれ、形作られた。

嗚呼、だが『愛』がまだ足りない。相手を想う愛が。

 

考える。第一に相手の流れに合わせる事。相手が如何動くか、攻めか、守りか、逃げか。

考える。第二に相手と一つになる事。自分が相手なら、如何動けば斬られに動くかを。

考える。第三に相手を自分の流れに乗せる事。如何すれば、相手は自分に進んで斬られてくれるかを。

考えた。相手に斬り殺して欲しいと思わせる様に動いて頂こう。そして、愛が、足りた。

 

 

 

――――――かの様にして、彼女の魔剣は完成した。

彼女の眼には見えている。相対する者の動き全てが。

攻めた所を斬られたいのか、守った所を斬られたいのか、避けた所を斬られたいのか。

彼女の眼には見えている。相対する者の動きが、一本の光の線となって。

その光は、斬り殺す/されたいとの想いが一致した証。

故に、彼女は刀をその光に沿わせるだけでよい。そうすれば、皆、斬れる。

既に滅びて久しき流派。永全不動八門一派・御神真刀流御、その義之極“閃”

奇しくも、護る為に生き、滅びていった一派の技である。殺す為に、斬る為に生きる清興により魔剣“閃”は完成し、復活した。

 

 

 

 

 

・・・・・・

――――――――さて。結論から言おう。死合いは、清興の負けである。

勝者は川神百代。

清興が負けた理由。現実離れした動きに体がついて来なかった訳ではない。

第三者が清興を止める為に動いた訳でもない。

人を殺そうとしたからと言う理由で失格になったと考えるのは、頭が花畑だろう。

斬られた百代が、清興を下した。ただ、それだけである。

 

 

「――――――――――――はは……! 凄いぞ、凄いぞ清興!!」

 

「……………………」

 

 

清興は答えない。

既に意識は刈り取られている。

しかし、そんな事を気にする余裕が無いほど、清興の魔剣を喰らった百代は興奮しているのだ。

 

 

「真逆、気も何も無しに私がぶった切られるとはな!!」

 

「あ、あの。川神先輩、お体は大丈夫なんですか?」

 

「ん? ああ。瞬間回復があるからな!」

 

 

誰が。斬った傍から回復し、そしてそのまま一撃を加えてくるなどと予想できようか。

清興の敗因は、武神川神百代を余りにも軽く考えすぎた事であろう。

――――――――菟にも角にも。コレで暫くはまだ、島清興はこの街に留まる事になりそうである。

どっとはらい。




島清興(しま せいきょう)
『せいきょう』と読みます。『きよおき』とは読みません←此処テストに出ます。

元々は戦国BASARAのssで西軍系作品の『島左近女性説!!?』とか言う頭悪そうなタイトルで石田のみっちゃんとのらぶろまんす(笑)を描こうと思ったキャラ……からの流用。

この世界には島は右近が居るけど、被りなんて気にしねえ。
後、この世界の石田はかませ臭強いから。本気でラブいクラフトするならBASARAの凶王殿の方が良いと思ってしまう。だから、西方十勇士とかそう言うわけでもないし、実力的には中の下くらいのキャラとなって作ってみた。

んでまあ。まゆっちの古い友人(キマシタワー枠ではなく、上手くまゆっちを攻略すると着いてくる枠)として。
兼一の純粋な心とかに惹かれてて。
開眼した奥義は何故か御神流のアレなキャラであった。仕方ないね、魔剣とは論理的に構築され、論理的に使用されなければならんらしいし。

本編主人公は巫女(覡)で魔法使いと結構ぶっ飛んでるけど。
清興だって負けちゃあいない。鍛冶師で剣士、くふふ系ボク少女。おぱーい! と、まあイロモノ感パネェキャラ作ってしまいましたよ。

…………後。この話って、モモ先輩が体真っ二つになっても瞬間回復あるから大丈夫と言うある意味ギャグ的要素の上に成り立つわけですが。
あの人の瞬間回復、マジ何処まで使えるんだろう……
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