「彼女は、いや彼女だけじゃない。きっと、皆帰りたかったんだろう」
疲れたのか、小さく寝息を立てている天龍を見ながら、そっと呟く。
「例えその時に居なくとも、何時か共に戦える事。そして帰って来ると知って居たのかも知れないな」
「…………提督?」
そんな天龍に軽く毛布を掛けている龍田を見ながら呟く。
が、此方は聞こえてしまって居た様で、不思議そうな顔をされた。
「だからこそ、今でも彼女は。彼女は沈んだ敵でも助けたいって言うのかもな」
最終段階に向けて、
「いよいよ、此処まで来たか」
「――――提督、電達が帰還した。補給後に此方へ向かう様に支持も出しておいた」
「有難う、助かる」
今の秘書官である長門が指令室に入り、遠征させていた者全てが帰って来た事を告げる。
それは、戦いが最終局面に入る事を意味していた。
「さて、天龍。そろそろ起きてくれ」
「んー……? ああ、悪ぃ悪……い…………って、提督! これは、その、居眠りじゃなくてだな!!」
「気にするな、疲れている事くらいは解ってる。まあ、眠り姫が起きた序に、電も到着した。これから俺達が何をするかを話すぞ」
「…………いや、待ってくれ。その前に、任務を続ける理由を皆に伝えて貰いたい。私も、理由は知らないのだからな」
「あらー? 長門さんも、お聞きにはなって居ないのですか?」
「ああ。先日の第三海域、つまり当初の目的通り南方海域への道を開いたところで上層部からの命令は完了している……のだが、提督は昨日、まだ戦闘の準備を続けると」
命じられた指令は一つ、南方海域と呼ばれる地域の偵察である。
南方と東方の海域は、点在する島々に補給基地を作ると言う計画が一度は立てられたのだが、尋常じゃない深海棲艦の前に計画が頓挫していた。
ならばと言う事で、先ずは南方海域を偵察し、補給基地建設のための前線基地を立てる事が出来そうな場所を探してこいとの命令であった。
「秘密裏に進める必要は無いとは思って居るが、念には念を入れただけだ。秘書官である
「ならば聞きたい、何故まだ戦闘準備を?」
「この写真を見てくれ」
「深海棲艦! 人型からして南方棲鬼、いや、武装が…………」
つい先日倒してきた南方棲戦鬼をも超える武装を纏った深海棲艦が佇んでいる写真であった。
「ふう…………上への報告は迷っている。南方棲鬼、南方棲戦鬼こそ確認されていないが、この海域は、先のソレとは比較に出来ない程凶悪なヤツらが居る」
「提督、この写真はどうやって…………?」
「…………帰りのルートをイムヤに先行させたら、何か異常な雰囲気だったとの報告が入ってな。交代でゴーヤにボスまで探らせた結果がコレだ」
本人もかなり無茶していると言う自覚はあったらしいが、提督が出した命令と言う事で、ボロボロになりながらも最深部まで進んでくれたそうである。
帰ってきてから二度とやりたくないと半泣きで言っていたので、ゆっくり休ませている。
「帰り、だと……こいつらは、我々が進むルートの先に居ると言うのか!?」
「…………そうだ。この敵大型超弩級戦艦……まあ、まだ南方偵察の任務中だし、南方棲戦姫とでも名付けておくか。この姫は、我々の帰還ルートの先に居る。運が良かったな、我々の、進軍ルートでもあった訳だ」
「へ、こんなのが行きに出てたら、その時点で大戦争だったぜ」
「まあ、帰りに出てこられても困る訳だが。我々としても多少消耗している……それで、俺達には選択肢が出来た」
「選択肢……?」
「コイツらに決戦を挑むか、迂回して本国に帰るか……だ」
此処から先は完全に任務外の戦闘になる。
資材も多少はあるとは言え、只でさえ苦労した南方棲戦鬼の上を行くであろう武装を持つ姫に挑むのは、ハッキリ言って時間の無駄である。
「確かに、提督言う通り、態々敵に挑む必要は無いわね~」
「軍人としての名折だ……が、流石に子供のお使い感覚で勝てる相手では無さそうだな」
「だけどよ、提督は倒しに行く気満々じゃねえか、何時も資材に困らされてる割には、どうしてなんだ?」
「んー…………何か、コイツ引っかかるんだよなー……ってだけだ。他にも理由があるが、それは個人的な理由だから、戦闘準備だけはしておいて、全員が納得したら敵艦隊の中央突破して帰ろうかと思っているんだがね」
本当は、偵察だけしてさっさと帰ろうかと思っていた矢先の出来事であったのだ。
この写真は、心の何処かに引っかかる。
毎年、年度初めにも似た引っ掛かりを覚える日があるが、その日の気分を思い出させる。
「………………あの、司令官さん。電、補給が終わりました」
「おお、ご苦労。他の連中も、終わってるな?」
「なのです!」
電が補給より戻った為、第1から第4の旗艦が集った事になる。
今までの話を電にも行い、これからどうするかの話し合いが続くのであった。
「さて。とりあえず、それぞれの部隊の旗艦4名に聞いておきたい。中央突破するのか、避けて帰るのかどちらかをだ。勿論、これは任務外だし、しかも上には伝えてない。戦わなくても何ら問題ないぞ?」
「提督が乗り気であるならば、この長門、着いて行くだけだ」
「俺もだ……って言いたいけど、流石に俺や龍田じゃ足手まといだろうしな、後方支援になりそうだぜ」
「天竜ちゃんにしては、随分と弱気ね?」
「ったりめーだろ、今回だって其処まで活躍できなかったんだぜ…………っと、悪ぃ。話の腰を折っちまったな、電はどうしたいんだ?」
「電は…………電も、戦う事を選択します。司令官さんが、戦いを選んだと言う事は、きっとまた沈んでいく『誰か』を助けられるかもしれません」
「…………流石一番初めの秘書だ。俺が何となく考えている事も解るか」
今でこそ秘書官の立場を長門に譲っては居るが、着任の時から世話になっている。
だからこそ、再び戻って来ようとしている『誰か』の声に、気づけたのではないかと考えるのであった。
「――――成程、漸く理解した。私も、どこかであの深海棲艦は引っかかって居たんだ。アレを倒せば良いんだな」
「何だ、先刻以上にやる気が出たな……?」
「ふふ、当然だ。しかし、流石は電だ。秘書官としての年季が違うな」
「い、いえ!」
ここぞとばかりに頭を撫でられて、恥ずかしそうにしているのであった。
「龍田、何話してるか解るか?」
「いいえ、全然」
「何、お前たちも敵を倒せば解る事だ。提督、もう編成は決めてあるのか?」
「第四艦隊は休みだ。帰って来たときの為の雑用でもしていてもらう……と言うか、正直此処に回せるほどの余分な戦力は無い」
「あら~、私お休みなのね」
「いや、第四艦隊が休みなだけだ。龍田は天龍を旗艦とする第二艦隊へ編入。金剛型4名を率いて『艦隊決戦支援任務』に出てくれ」
「ちょっ!? まっ……!!? オイ! ガチの前線じゃねえか!」
後方支援任務とは訳が違う、第一艦隊に着いて行き、最後にありったけの弾を吐き出して敵に損害を与える役割である。
前方の敵は第一艦隊が倒していくとは言っても、危険な任務には変わりない。
「活躍したかったんだろう? 目に物見せてやれ」
「~~~~~解ったよ! 龍田、あいつら呼びに行くぞ!」
「は~い」
2人揃って金剛姉妹を起こしに向かう。
力不足と本人は言っていたが、天龍も龍田も就任最初期から支え続けているのだ。
今回こそ実力を十全に発揮できなかったが、本来ならば前線攻略にも役立つ存在である。
「…………あいつらなら、あの姉妹の手綱も制御できるだろ」
「あの、司令官さん。電は、第三艦隊に配置なのですか?」
「第三艦隊は赤城、加賀、蒼龍、飛龍……を、囮としてだな。イムヤ、ゴーヤの潜水艦による奇襲を行う『前衛支援任務』に行って貰う」
此方の部隊は所謂露払いである。
敵に打撃を与えたのち、主力艦隊と交代する任務である。
一撃離脱を繰り返し、互いに消耗を抑えながら進軍する任務である。
「その、何だ。随分と力押しの作戦だな。一航戦と二航戦を囮にするとは、本人達が聞いたら怒るだろう」
「何、潜水艦の存在を秘匿するための囮扱いだ。空母4席からならる爆撃は、十分に使えるだろう」
「撃ち漏らしは潜水艦にか、成程」
「それで、最後に主力艦隊だが、旗艦は当然長門、お前だ。」
「ふむ」
「その後に、北上、大井、千代田、千歳……そして電で向かう」
「ふえええええ!? 電もですか!?」
「夜戦に持ち込まずに片を付けれるなら良いんだが、それも難しそうだからな。期待しているぞ、深海棲艦の姫に、デカいのを一発ぶつけて目を覚まさせてやってくれ」
「――――は、はい、なのです!」
既に梅雨は過ぎ去った、もう8月、夏である。
戦いが終われば、太陽の如く綺麗な花が咲くであろうと、戦いの準備を続けるのであった。
事実は小説より奇なり?
いいえ、現実は残酷です。
私、この時E1で諦めて大和さんどころか伊58すら手に入れないまま終わったんですよ。
伊168だけですよ、手に入れたの。
これは、E4へ挑んでいった人は、こんな感じだったのか―との妄想。
そんな私も今では大和持ちの提督です(白目)
E1~E3で南方海域への道を開いて、E4で本土に戻ろうとしてる所で南方棲戦姫に出会って、撃破。そしてお持ち帰りなのかなーって思います。
更なる余談ですがもう一つ、このssを書こうと思った理由に
私の初期艦電たんなんですよ電たん!
陸奥に成るビームも喰らわずに戦艦一隻目も長門さんだったし、いろいろと調べると艦長さん色々とこの3人に関わってるしと、まあ面白い偶然が重なったので書こうかなーと。