主人公は七瀬和。
いやあ、メティス能力っていいよねぇ。
と言うか、特殊能力モノっていいよねぇ。
さり気無く別作品の元ネタ仕込んだりできるし。
「こちらHUNTER1! HUNTER2,3,4へと連絡。目標は此処に居る!」
『了解、気をつけろ!』
ビーコンを光らせ、そして無線を行う。
連絡を受けた一人が応答してくる、声には緊張が走っている様だ。
無理もない、彼ら
「酷い有様だ……天変地異でも起きたのかよ。ここ十数年の異常気象が、可愛く思えるとは」
焼け爛れ、炭と化した並木道。
近くの川は凍りつき、流れは無く。
建造物は、雷が落ちたかの様に壊れていた。
そして。
『聞こえるかHUNTER1? 随分落ち着いているが、其処にコードネーム『ドラゴン』は本当に居るのか?』
「ああ、居る……が、そうだな。皆、其処まで急ぐ必要はない、どうやらその『ドラゴン』とやらは沈黙している様子だ」
そして、それらの災害が一度に起こったのではないかと思われる
・・・・・・
「ず、随分厳重な出迎えだね」
上ヶ瀬市は複合型の学園都市である。
メティスと呼ばれる超能力を研究する澄之江学園が存在する地であり、また一度は海へと沈んだ都市を埋め立て、その上に土地を確保した地である。
本来ならば、研究機関である事を微塵も感じさせないその学園が、科学者や学園と契約している警備会社である『CSC』職員等が集まる異様な雰囲気と化していた。
「…………風花、幾らクラスメイトになる『かも』しれない人物だと言っても、相手は街一つを壊滅させた人物なのよ?」
少し呆れたように小柄な少女、宇佐美沙織が呟く。
彼女は澄之江学園の風紀委員であり、対
本日は風紀委員長の代わりにこの『転入』の見届け人として来ている。
………………尚、風紀委員長はスーパーの特売日だからとこの場に居ない。
「で、でも、外の人がメティスの
「気持ちは解るけど、それでも何が起こるか解らないから危険すぎるわ。まあ、貴女の能力なら、問題は無いんだろうけど」
姫川風花には、たとえ相手がどう言った能力であろうとも防ぎきる自信があった。
本来、一般人の彼女は立ち会う事すら出来ないのだが、学園側としては能力を考え、最悪の事態の為にも許可しているのだ。
「それに、問題ない人だったら、晴れて私のクラスに入るんだよね?」
「問題が無かったらよ……来たみたい」
そんな事を話してるうちに、車が一台到着する――――後ろに、多くの護衛車を引きつれて。
「
「ご苦労様でした、此方CSCの黒瀧です。コードネーム:ドラゴン、貴方達はそう仰るかも知れませんが、中に居るのは人です。人としての扱いを、しては頂けませんか?」
「………………………………ドラゴンは、現在薬で眠らせ、厳重な拘束にて動きを封じています。引き渡しは完了しました、後は宜しくお願いします」
一台の車は其処に乗り捨てて行く様である。
運んできた、軍人と思われる男は、護衛車の一つに乗り込み、さっさと帰って行ってしまうのであった。
「やれやれ、外の人は…………眠っているのは仕方が無い、メティスの訓練場へ運び、最悪何があっても良い状況にして待機だ。そこで拘束具も外してあげなさい」
「はっ!!」
取りあえず、この場では何か起きる気配は無い様子である。
科学者やCSC職員等は、目覚めるまでの長い時間を待機で過ごす事になるのであった。
・・・・・・
「……………………早瀬慶司、どうして貴方が此処に居るのよ!?」
「い、いえ、俺は呼ばれただけなんで」
「私が呼んだのよ、彼の能力もアイギスだった筈だし、確かに姫川さんに比べると
「…………先生がそう言うのであれば」
研究者であり、CSCの職員でもあり、臨時講師でもある汀薫子の言葉に渋々と沙織は従うのであった。
それでも目とかで慶司を威圧しておくのを忘れないのは流石である。
「多分、俺が居た所でそんなに役に立つとは思えませんが……まあ、先日のニュースの人物ですから、興味があったので良い機会だとは思っていましたけど……そんな『ドラゴン』とか呼ばれている割には、普通の女の子っぽいですよね」
メティスの計測器が多く並ぶ場所で、ドラゴン…………彼女は眠っていた。
名前の響きより、普通に男か何かかと思われていたの為、拘束具を外した時に研究員達が慌てたのは言うまでもない。
そしてそれから小一時間程度経過した所であり、いっこうに起きる気配のない彼女を『眠り姫』とでも呼ぼうかと研究員が気を抜き始めたので、一時解散して残りたい者だけが残って居る状況になっている。
「ドラゴンって呼んで居るのはあくまでも現地で対応した自衛隊の方のコードネームだったと言う訳だから、仕方ないわね。私もまさか女の子だとは思いもしなかったけれど」
「そう言えば、汀さん。何でコードネーム:ドラゴンなんて呼ばれているんですか?」
「知っての通り、この子が街一つを殆ど壊滅状態まで持ち込んだらしいのだけど、メティスパサーの範疇を超えた能力、そして規模だったそうよ…………だから
現状では情報規制が敷かれていて街一つが壊滅状態になったとしかTVでは報道されない。
しかし薫子はCSCの職員としての伝手で知って居る、その原因も考える事はしてはいるが、勝手な推測を話す必要はないであろうと黙っている様だ。
「…………良く、此方の学園は入学を許可しましたね。聞いた感じ本人の意思とかは関係なさそうな状況ですけど」
「超法規的措置でもとられたんじゃないかしら? 学会では、メティスを進化の過程とするのが主流の流れなのだから、彼女をメティス犯罪者の一言で片づけるのは勿体無いって、誰かが考えたのかもしれないわ」
だからこそ、世界でも稀有とされるメティスと一般人が共に暮らしているこの学園都市に送られてきたのではないかと薫子は推測している。
尤も、眠って居る少女が学園に対応している年齢に見られたからと言うのも都合の内かもしれない。
「あら、もうそろそろ目覚めるかしら?」
「解るんですか…………?」
「MWIに動きがあったわ。彼女、眠っている時も130程度と十分に凄いのだけれど、今少し上昇したわ」
「ああ、
「………………そうみたいね?」
天変地異を起こすレベルで暴走していたと聞いていた薫子であったが、その割には何も変化が無いと慶司の言葉で気づくのであった。
「…………ん、んん……?」
「あ、起きた」
「――――取りあえず、姫川さん達の後ろに下がって、2人とも、何時でもアイギスを展開できるようにしておいて!」
「「はい!」」
「あ、の……? 此処は、どこ、ですか?」
「まだ立ち上がらない方が良いわ。話によれば、3日間程眠らされていたらしいから」
気怠そうに頭を押さえながら少女が聞いてくる。
そんな少女に対し、安静にしていろと告げる。
目覚めたばかりの頭で一応の理解を示したのか、ベッドに腰掛け、楽な姿勢になるのであった。
「解りました…………では、改めて聞きます……此処は、何処です?」
「上ヶ瀬市、澄之江学園都市町の澄之江学園にあるメティス研究所の一つよ」
「上ヶ瀬……お伽噺の町でしたか?」
「あら、随分と古い話を知って居るのね。そうよ、それで貴女は何故運ばれて来たかは理解しているのかしら?」
「……………………はい。此処に来る前に、目覚めていた時に大体のお話は聞いています。それで、私は解剖とかその様な感じで処分されたりでもするのですか?」
「そんな事をさせない為に、此方に保護されたのよ」
一応、学園から受けている話は、可能であれば彼女を生徒として引き受け、力の暴走が起きないようにする事である。
可能でなくとも、引き受けたと言う話は情報規制されている訳では無いので、非人道的な実験等は出来ない筈であった。
可不可に関わらず、能力に対する訓練を行う必要があると薫子は告げるのであった。
「それで、貴女が私たちの手に余るほどの問題児でなければ、この学園は受け入れる体制を整えているのだけれど、貴女としてはどうなのかしら?」
「そう、ですね。私としては、行ってしまった罪に対しての償いをしなければならないでしょうし、其の為にも、また我を忘れて暴れてしまう訳にもいきません」
「それなら決まりね。話は通しておくわ」
「はい…………有難う御座います……所で、そちらの方々は?」
「貴女のクラスメイトになる人物代表2人と、学園の風紀委員の先輩よ。とりあえず、休んでいる他の職員を読んでくるから、自己紹介でも何でもしていると良いわ」
そう言って、和に取り付けられていた機器を外し、薫子は出ていくのであった。
「ええ、と。とりあえず、初めまして……私は、七瀬和と申します」
寝起きの和には、返事に関わらず初めから澄之江へと入学することが決められていたのではないかと勘繰ってしまう程であった。
取りあえずの自己紹介を互いに行い、そして一番小さい人物が先輩である事に顔には出さずとも驚くのであった。
「……………………それにしても、クラスメイトの方ですか。私の話をどの程度聞いていたかは存じ上げませんが……危険だとは思わなかったのですか?」
「メティスパサーの事は、メティスパサーにしか理解出来ない事だってあるから……O.C.を起こした事は、故意の罪って訳じゃ無くて、それに良い人か悪い人かなんて、実際に会わないと解らないから」
「ああ、いえ。
「あ、それなら猶更大丈夫だよ。私、之でも結構固いから」
「か、固い…………?」
何か、あまり話が噛み合って居ないような気がしてならない和であった。
しかし、何かしらのメティスの能力が其処までの自信に繋げているのだと理解する。
「七瀬さん、姫川はアイギスって言う、防御に特化したメティスを持ってるんだ。一応、俺もだけど、精度出力、その他諸々姫川よりは下だ…………それで、姫川はこの学園屈指の防御力からタンク姫川って渾名が広まってるんだ」
「ちょっ、早瀬君!? それは早瀬君が勝手につけた渾名で、しかも広まってないよ!?」
「アイギス…………メティスに、名前をつけているんですか?」
渾身のボケとツッコミも、和には通じていなかった。
と言うよりも、メティスに名前を付けて使用していると言う感覚の方が、和には解らない物である様子であった。
「ああ、貴女のメティスには名前がついて居ないのね……偉い人によれば、メティスパサーが使うメティスには、潜在から名前がついているそうよ。例えば、之が私のアンブラ」
「影が……あら、可愛い」
「有難う…………メティスには潜在的に名前がついているわ。それも、自身が確りと理解している名前でね。そぐわない名前や、名無しの状態で使おうとしても、ちゃんとした力としては行使出来ないわ」
「………………まともに行使できない状態で、街一つ壊滅とは、私は随分と変な力を手に入れたものですね」
「これも受けおりだけれど、メティスって言うのはどうもその人の欲求が形を作るらしいわ。きっと、貴女もどこかでその力を欲したのじゃ無いかしら、まだどんな力かは見てないから解らないけれど」
「こんな力を、私が…………?」
俄かには信じられないと言った表情である。
暴走していたとは言え、自身の能力については理解しているのだ、兵器染みた能力を欲する事なんて、普通はあり得ないだろうと頭を押さえている。
「そう言えば、七瀬さんの能力って何なんだ? 汀さん……先刻出て言った人が言うには、常時展開しているとかそんな話だけど」
「あ、まだお話していませんでしたね。こんな感じです」
和が力を入れると、周囲の気温が一気に寒くなる。
そして、今度は逆に急上昇して熱くなり、それが収まると次は和の体に小さく電気が走るのであった。
「3つ、だよね? 七瀬さん、今3つ能力を使ったよね?」
「はい、姫川さんの言う通り、私のメティスは、火と、氷と、雷を操る能力みたいです。しかも、自身で何を使おうとか制御できないんです。気を抜くと出ますし、感情が暴走しても出ますし」
「…………言っちゃ悪いけど、研究者にとっては涎が出るほど欲しくなる珍しい能力だな。一人一つの能力と言われてきたメティスの力に、異を唱えてる訳だし」
「解りませんよ、火氷雷で一つの力かもしれませんし?」
「そんな都合の良い能力、何か…………あー、昔遊んだ事があるゲームの魔法は、その三つが基本属性だったな」
「くすくす、男の子な発想ですね」
「うっ…………」
まさか、ゲームの中の能力に、似たような物があったのかと、和は笑うのであった。
慶司としても、珍しさに少しばかり興奮していたようで、我に返って恥ずかしそうにしているのであった。
「くすくす。別に、呆れて居る訳ではありませんよ、もしかしたら、それが私の源なのかも知れませんし、どの様な感じで名付けられていました?」
「そ、そうだな。黒魔導士とかが使っていたし、直訳で良いならブラックマジックとか。少し捻ってウィッチクラフト……とか?」
「……………………全然これだと言った感じがありませんね」
「だったら、それは七瀬さんのメティスネームの方向性とは違うって事か」
「まあ、私はそもそもテレビのゲームをやったことがありませんから」
「初めから、可能性としては低かった訳か……姫川、何か思い当たるモノ無いか?」
「ええー? 流石に難しいよ。もっと、ほら。
「むしろ、あっちの神様は一芸特化が多い気がする…………」
名前の元ネタとなる神話を探しても、複数の能力を持った存在は少ないであろう。
これによって、能力からメティスネームを探すと言った事が難しくなっている。
「もっと、抽象的な言葉がメティスネームになったりするんだろうか」
「…………抽象的とは?」
「まなみ……俺の妹が、ペネトレイターって言うメティスを持ってるんだ。名前通りの、能力でさ」
「
「元ネタがあっての能力じゃなくて、能力が似ているからこその元ネタって言う訳よ。無ければ自分でつけちゃえば良いのよ」
「自分で……三つの力ですから、スリーとか、サードとか……ええと。しっくり来ませんね」
イレギュラーな能力である事は間違いない。
自分の力、それが何なのかすら解らない、つまりは力の制御のし様がないのが現状であった。
「…………強くなりたい、力が欲しいと思った事は、多々有ります。人間ですから」
メティスネームを考え続けていると、ふと想いが口から零れた。
温暖化や、急激な海面上昇、そして新たに
終末論すらも囁かれるそんな時代に、七瀬和は生きて居る。
「三つも力を貰ったんですよね、私」
「それ以上かもしれないし。実はソレ自体一つの力なのかも知れないけどな」
「ずっと、ずっと欲しいと思っていたのは、諦めないで居られる力――――あっ」
ふと口に出した言葉が、頭の中を駆け巡る。
そしてこれが、メティスネームなのだと、心が理解をした。
「――――――成程、思い浮かぶとこれしかないと思えるのですね」
忌まわしい力、それでも何処かで和が必要としている力。
気持ちを落ち着かせ、和はその名を口より紡ぎだす。
「『トライ』、之が、私のメティス」
「トライ……?」
「はい、3つの力なので、先ほども言った様にスリーとかサードとかも考えていましたが、前者は兎も角、後者は『3つ』と言うより三番目と言う風に思えまして。後は、私が困難へと挑戦する事を意味する『
――――そう、名付けたとき、少しだけ力が怖くなくなったような気がした和であった。
今回の番外編に出て来る和さんは、別ss
後、カテゴリがD.C.になったけど、全然D.C.関係ないのはすまんね。
まあ、本編の番外編だからD.C.カテゴリなだけだけど。