一方通行は楽観的すぎる   作:au revoir

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十一話 誘拐事件ですって!

 

 

 

「それぞれの資料とデータよ。好きな方を選びなさい」

 

まぁ貴方なら壊す方が得意でしょうけど。

そう薄く笑った芳川桔梗は、机に腰をかけたままこちらを見据えた。

こりゃまた意地悪な選択だな。オレがどちらを選ぶかなんて、わかっているだろうに。

オレもまたニヤリと笑って手を伸ばした。決まっているだろう?そう彼女に問いかけながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

研究所を出て一直線にあいつがいるファミレスへと向かって走る。脳の伝達速度だけはいいが、お生憎様、体力皆無だ。何度も息切れを起こし、人がいないところでは能力を使って加速した。

午後十一時過ぎ。

最終下校時刻をもうとっくに過ぎたからか学生はいないが、仕事終わりの大人たちが疎らにいた。それをオレは鬱陶しくも思いながら走ったが、目的地が見えてきた辺りで徐々に足を止めて、歩き出したオレは悪くないと思う。ってか、めっちゃ走ったぜ。息切れ半端ない、ヤバイ、超ヤバイ。

 

「っはっはっはっ、はぁーー……」

 

長く息を吐き、そして長く吸う。所謂深呼吸を繰り返して、息を整えるとファミレスの扉を開いた。カランコロンという軽快な音がなる。

近寄ってくる店員を無視して、オレ達が座っていた場所へと向かう。奥だったが、少し歩くだけでその席は見えてきた。

そこへ突っ伏す打ち止め(ラストオーダー)の姿を思い出しながら、オレは近づいたが……。

 

「あァ?」

 

そこには、綺麗に拭かれたテーブルしかなかった。

まだ食べてる途中であるはずのハンバーグと白米は消え、さらにはそこにいたはずの打ち止めの姿すらない。何故だ?一人首を傾げるが、近づいてきた店員を呼びかけ、ここにいた打ち止めが何処に行ったかを聞くことにした。

 

「そちらにいたお客様なら、お連れの方とお帰りになりましたが……」

「はァ?連れだと?」

 

連れ?あいつに連れなんていないはずだ。ましてや、クローン。研究者という知り合いがいたとしても、打ち止めの居場所は知らないだろう。他のミサカ達という事も考えたが、直感的に違うと否定する。

 

なら、誰が?

 

そう考えるも、オレは元々人の顔をあまり覚えないタイプだ。何回も会えば覚えるが、名前も知らないという事もある。印象的なら嫌でも覚えてるがなぁ。

ふと、そんな事を考えているとある男が脳裏に浮かんだ。そう……昼に見かけた、あの男。

 

…………………まさか。

 

「え、えぇ。白衣を着た保護者と名乗る男の人だったのですが……お知り合いですか?」

 

どうやら、ビンゴだったようだ。誰か景品くれ。ダブルならぬ、トリプルぐらいのビンゴだぞこれ。

女みてぇな名前をした臆病な三下を思い浮かべる。あんなのは正真正銘の三下だ。いや、百流ぐらい下か?クハッ、オレに喧嘩を売るとどうなるかわかってる賢い奴だったはずなンだけどねェ??天井クゥン???

 

「あァ、よォく知ってるよ」

 

店員にそう返したオレは踵を翻した。

その後オレは芳川に天井亜雄の居場所を突き止めて貰い、その場所へ向かった。

なるべく急いで、能力を使って走り出す。周りに危害を加えない程度に、だ。少しほんの小さなクレーターができるだろうが、学園都市の科学技術力な一日で全て直してくれるだろう。え?それは過信しすぎって?バカか、能力者を生み出す都市だぞ?それぐらいできなくてどうする。

 

 

 

 

 

 

 

黄色い、暗闇でも目立つ派手なスポーツカーを見つけて歩き出す。あまり人が通らない場所であり、通っても珍しい車が止まってるな程度にしか思わない場所。誰もこのスポーツカーに幼児誘拐犯が乗っているとは思ってないだろう。

多分天井クンは世界中のロリコン共を敵に回したぞ。勿論、オレは例外だ。ロリコンじゃねぇし。子供とか嫌いな方だしな……主にウザいからという理由で。

 

「ン?」

 

少し疲れたから歩いてたのだが、此方に気づいたらしい。天井クンはスポーツカーのエンジンを付けようと突起になっている。何故そんな事わかるって?さっきからブンブン煩いのに、一向に進む気配がないからだよ。

多分恐怖で鍵を何回も回してしまってるんだろうな。たまにあるじゃん?長く回してないとエンジン付かないやつ……天井のは多分それだ。

しかし、しかしだ。今はいいかも知れないがいつか付くだろうそれを、放っておく程オレは甘くない。能力で一気に加速して、車を壊してしまおうか。そう考えていると、やっとエンジンが付いたのか此方へ突進してきた。しかも最大出力で。

 

「……ハァ」

 

思わずため息が出る。

研究者って変な所で心が弱い。頭がいいのに、イレギュラーを受け入れられないお堅い思考が玉に瑕だ。自分達の思い通りに行かないとパニックを起こす。

そんな典型的な……ある意味科学者と言える、精神的弱者である天井クンはオレの能力を忘れたらしい。

 

覚えてねぇの?

 

オレの能力は、核兵器すら効かねェって事を。

 

「ばァーーーーか」

 

キヒャと笑い、嗤って、嘲笑う。

突っ込んできた天井の車だが、オレが素早くボンネットを殴りつけた事により停車した。ガソリンが爆発しねぇ程度に凹ましたが、まぁこの百流には丁度いいぐらいの力だろう。

フロントガラスは元々割れやすいもので、オレが起こした衝撃でガラスが飛び散り天井達にかかる。先ほどより鮮明に見える天井と助手席に座る打ち止めを見る。右に天井、左に打ち止めとなると、これやっぱ外国産かよ。

あれだな、金があった時に見栄はって買っちゃった系だな?で、結局なんで買ったんだろうと悩んで、高いから傷一つ付かないように走っちゃう庶民だよな?オレ知ってる。

オレ咄嗟に壊しちゃったけど、修理代ヤバそうだな。擦り傷一つで十万行くか行かないかの値段なのにさ、ボンネットが壊れ、フロントガラスも粉々……散々だねぇ。

 

……まぁ、同情する気はこれっぽっちもないが。

 

運転席からドアを開け小さな悲鳴をあげながら逃げ出そうとする天井を、ドアで挟んで気絶させる。これで殺さない辺り、オレの優しさが伺えるってもんだ。感謝するんだなー、天井クン。

助手席に移動し、打ち止めの姿を確認する。打ち止めは昨日会った時から着ている毛布に包まり息を荒げていた。額に手を添えると、ハッキリと分かるぐらいに熱がある。しかも高熱だ。

 

 

 

 

 

今日、こいつと別れてから向かったのは研究所だった。

絶対能力者進化(レベル6シフト)計画。その屋内実験が行われていた場所だ。何ヶ月か前から来なくなっていたが、まだオレのパスは有効だったらしく、扉を壊さなくて済んだ。

天井の行動、打ち止めの脱走。不審な点が多い。そう思ったオレは、別に放って置いていいのではないか?という心の声を無視して、研究所内を歩き回った。

打ち止めや妹達(シスターズ)、研究の資料を探して回り、アテが外れまくった最後の部屋。そこには芳川桔梗がおり、コーヒーを飲みながらある紙を見ていた。

オレが打ち止めに起こっている異変に気づいたと勘違いした芳川は何故か詳細を話し出した。まぁそれも芳川の策だったのだろう。先に説明しておいて逃げ道を無くすとは。

打ち止めに起こった異変とは、脳内にウイルスを流し込まれたことだった。そのウイルスが発動するのは今晩十二時、つまり九月一日の午前零時だ。一度発動すれば、打ち止めと妹達を繋いでいるミサカネットワークを通じてウイルスが充満。人間的感情を少しばかり持つ人形から、人間への敵対という命令だけを遂行するロボットへと成り下がってしまう。そうなれば、学園都市は混乱。

このウイルスを仕組んだのは目の前で伸びている天井亜雄。ホント、オレに負け劣らずとんでもねぇクズだな。

大方、天井は学園都市が混乱に陥っている間に逃げ出すつもりだったのだろう。外から隔離されたこの学園都市(ろうや)は、技術(ひみつ)を持ったものは絶対に逃さない。それこそ、誰にも手に負えないような力を持っている奴以外は全て。

 

ま、そんな事はどうでも良くて。

 

問題は目の前の打ち止めだ。

芳川から貰ったデータ。培養器から出る前の脳内データが入っている端末を起動させ、伸びている線を打ち止めのこめかみに近い額に付ける。とりあえずこれで大丈夫なはずだ。十二時になる前には終わるはず。

ふぅ、と息を吐く。

全く、人助けだなんて上条サンに会った日ぐらいだ。あれは邪魔だったから蹴飛ばしただけなんだが、何故か感謝されたっけ?感謝のされ方が大袈裟すぎて笑ったのは覚えている。

ふっと口元を緩ませていると、突然打ち止めが何かを喋りだした。何だ?起きたのか?そう思っても、目の前の打ち止めは目を瞑ったまま。しかし、口は忙しなく動いていた。

 

「これより上位個体、打ち止めから全ミサカへの最終信号(ラストオーダー)を送ります。ってミサカはミサカは」

 

昨日今日で会っても可笑しいとわかる台詞。そもそもこいつが敬語なんて、いただきます以外は話していない。つまりは打ち止めの意思ではないということ。

手元の端末を見る。そこには数字の列……つまりデータがギッシリと並んでいるが、エラーを起こしていた。ヤバイ。瞬時にそう思った。

オレが軽いパニックを起こして冷や汗を流している間にも打ち止めは何かを呟いていた。最初はあまりにも小さい声だったが、段々とでかくなり終いには小さく叫ぶような声になっていった。

何か喋ってるのが聞こえる。何かわかるかも知れないと思ったオレだが、それは良い意味で裏切られた。

 

「ミサカはミサカはミサカはミカサはミサミカサミサカミカサミサカミサカミサカミサミサミサミサミサミサミサミサミサミサミサミサミサミサミサミサミサミサミサミサミサミサミサミサミサミサミサミサミサミサミサミサミサミサ------」

 

うぉおお!?ついにぶっ壊れたぞ!?ずっとミサしか言ってねぇ!?

異常事態だ。すぐさま数少ない連絡先から芳川を選び、電話を掛ける。ワンコールぐらいしてから芳川は出た。

 

「おい!芳川!打ち止めがぶっ壊れたンだが」

『え……?まって、その声、まさかッ!』

 

芳川によると、最終信号(ウイルスコード)が発動するのが十二時ジャスト。しかし、その発動時間が十分早まったとか。マジかよ。

今の時間は十一時四十五分。ファーーwwwあと五分しかねぇwwwwwこれは絶望的www

芳川もそう判断したのか、処分するしかないと諦めたらしい。おいおい、諦めんなよ、仮にも未知に挑戦する研究者だろう?

しかしだ、それにしても芳川やオレが思うほどに絶望的。これからこのデータをもう一度起動させようとしてもエラーと文字が並ぶ、上手くいったとしても間に合わない。

どうする?オレ。何か手があるはずだ。何か、何か。

 

「……………」

 

にしても何故、こんなにもこの子供を助けようと突起になっているんだろう。

オレには関係のないこと。そう関係の、ない……。

 

---頼れるのが貴方しかいなかったから。

 

そうだ。何故、助けようとしているのかわかった気がする。

 

頼られたからだ。

 

頼られる、なんて事この今世ではなかった。前世でもあまりなかったが、今世はその比ではない。

 

頼る、頼られの関係。

 

利用し、利用されの関係しか築いてこなかったオレはそれを、知らず知らずの内に求めていたのかも知れない。だって、その言葉を聞いたときは少しばかり心が弾んだのだから。

決してロリコンではない。彼奴らと一緒にしては欲しくはないが、まぁ嬉しかったのは事実だ。

だから一日二日と言えど今まで連れ回していたし、ご飯も奢った。オレが奢るなんてこと、あまりねぇのだから感謝してほしい。

 

「感謝しろよ、ガキ。この一方通行サマが救い出してやるンだからなァ」

 

そう言ってニヤリと笑う。

 

『ちょ、一方通行!何を---』

 

驚いたような芳川の声を無視し、携帯を後方へ放り投げる。フェンスに当たりガシャンという音がしたが、まだ少し声が聞こえてくるので壊れてはいないのだろう。

端末を開き、画面に流れてくる数字の列を記憶する。うん、大丈夫。記憶できている。

全て読み終わり、同時に記憶したオレは端末を横に置き、身を乗り出して打ち止めの額に手を添えた。

オレの能力名は一方通行(アクセラレータ)。今のオレの名前でもあり、能力名でもある学園都市一位の座に着く存在。殆どなんでもありなオレのベクトル操作が、ウィルスデータ程度に何もできない何てことはないだろう。

上手くいく。絶対に。

 

消えて、塗り変わっていく、打ち止めの脳内データ。

 

 

 

オレは思わず、笑みを浮かべた。

 

 

 

 




二回も否定したよ、此奴。(何がとは言わない)

「学園都市第一位。equal科学的利用価値第一位ね」

ん?妹達編の主役級と言っていいのに、この作品に一切登場しない布束さんの声が聞こえた気がしたが、気のせいだな!

アクセラさんて友達いないよね。原作でもあの二人だけだもんね。
街中で化学兵器ブッパしても平気で立ってる奴だもんな、そりゃいないわ。というか、街ん中で戦車って傍迷惑だよなー。
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