一方通行は楽観的すぎる   作:au revoir

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十四話 残骸を破壊しますね!

 

 

 

 

借金生活を宣言された日から約十日が過ぎた。

 

あの膨大な金額は流石にオレが持っている一財産では足りなかったわけで、オレはカエル顔の医者---冥土帰し(ヘヴンキャンセラー)と言うらしい---に借金をする形で落ち着いた。

まぁ足りたとしても、全額払えば無一文になるんだけどね。あ、もしかしたら払えるかも知れない。どれだけ持っていたか把握していないし、今度一度口座確認しとくか。

因みに未だオレは退院していない。どうやら、調整期間のようなもので、杖付きではあるものの普通に歩けるオレとしてはいらない時間なのだが、チョーカーがオレの脳波とちゃんとリンクしているかどうかの確認らしい。全くもって面倒くさい。

しかし、さっきも言った通りちゃんと歩けるので何時までも病室に寝泊まりは無理と、違う病室へと突っ込まれた。どうやらそこはもう使われていない場所で、二つのベットとそれを仕切るカーテン以外は何も置かれては居なかった。そこまではいい。いいんだが、あの黄泉川さん?

 

「これはなンだ?」

「何って着替えじゃん?ここには職員用の風呂があるじゃんよ。もう夜も近いし、入ってくるといいじゃん」

 

じゃんじゃんウルセェよ!お前は何処ぞの傀儡使いなんですかねぇ!?

タオルと着替え。それを渡されたオレは仕方なく風呂があるという場所へと向かった。というか最近入ってなかった気がするし、そのままでは不潔なので入ることにする。人としての最低限の嗜みだ。

因みに黄泉川こと黄泉川愛穂は、芳川の友人で職業は教師に警備員(アンチスキル)となかなか多忙な毎日を送っている女性だ。語尾にじゃんを付けるという漫画的には珍しくもない口癖をお持ちの方で、なんとあの上条サンが通っているとある高校の体育教師なんだと。なるほど、それでいつもジャージかと納得したのはつい数日前だ。

 

風呂場に着いたオレはまず着替えを籠の中へ入れ、杖をその横に置き服を脱ぐ。オレの服は前のような黒い半袖のTシャツではない。灰色の生地に白の模様が入ったロングTシャツだ。下は前と一緒である。

シャツを脱いだら、次は下のズボン。捲し上げた裾を止めているバンドを外す。何を履いても縦のサイズが合わないオレにとって、このバンドは必需品だ。しかし、何で合わないのだろうか?この身長にしては足が長い方だと思うし、普通だ。お?これはピッタリかな?と思っても必ずちょっとは余ってるし……考えても仕方がないが。

取り敢えず全裸になったオレは腰にタオルを巻き、中へ入る。まずは、頭から洗うか。

髪を濡らすためにシャワーをつけ頭から降りかかる大量の水を感じながら、ある事に気付いた。

 

このチョーカー、防水機能あるの……?

 

慌てて鏡を覗き込んで確認する。これで壊れるとか洒落にならんぞ!いやマジで!おいそこ!この時点でもう手遅れとか言わないでくれる!?

鏡に写り込んだ白い髪の少年。オレだ。紅い目を鋭くさせ、ある一点を見つめている。首元のチョーカーである。緑色に光っているライトを確認したオレはふぅと息を吐く。焦った、めっちゃ焦った。

チョーカーはちゃんと正常に作動していた。どうやら、ちょっとやそっとでは壊れないようだ。うん、すげぇなコレ。

今考えれば普通な事だ。オレは能力者だし、それも学園都市最強。能力からしてある程度衝撃とかに耐えられないとやっていけないだろう。空飛んだり、瓦礫飛ばしたりするからな。肉弾戦もするぞ?

 

「……何か習得でもするかァ?」

 

オレの能力は周りに物があれば、遠距離は可能だが……それも単調な攻撃。だって飛ばすだけだし、コントロールなどできない。

だから必然的に、能力で物を飛ばしながら接近してぶん殴るってのがセオリーなんだが……それが通じない相手が来るかも知れない。これまでならいい。格下ばっかだし、これからもそうだろうけど……本当に格下としかいないと言えるか?

オレは強い。能力のお陰でな、最強だ。だが、それは学園都市内(・・・・・)での話。まだまだ世界は広い。もしかしたら強いやつが沢山いるかもなぁ?

サイヤ人並みに戦いが好きになったわけではない、だが備えあれば憂いなしだ。この身体でも習得できる体術でも学ぶのも一手だ。

運動は苦手だ。だが、逃げてばかりではいけない。能力に頼りっぱなしではどうしようもできない時があるのだから。それを二回学んだ。一回目は上条サンと、二回目は天井との。まぁ二回目はオレの不注意なんだが。

 

「……ま、明日からでいいか」

 

ダメな奴のセリフである。

いやだって!もう夜だぜ!?明日からでいいじゃん!え?それこそ夜にこっそりとやるべきだろう?なるほど!ひとりでに強くなって皆を驚かせる寸法だな!

じゃ、今日からやろう。(軽い)

 

そんな事をつらつらと考えながら頭を掻く。鏡を見ていないのでわからないが、いい感じに泡立っているのではないだろうか。二回ぐらい洗ったからな、泡立ってくれなきゃ困る。

ガシガシと荒く、それでいて頭皮に優しく洗っていると、突然浴室ドアがバーン!と音を立てて開いた。因みにここ、スライド式のドアである。そんな音は力の限り引かないとできないのだが、何回もやっている人物を知ってしまっているため、今回も犯人はそいつだろう。はぁ、とため息を吐く。

 

「一方通行!背中を洗ってあげる!ってミサカミサカはタオル姿で突撃してみる!どーん!」

 

突っ込んできた打ち止め(ラストオーダー)を座りながらもひらりとかわす。へぶっ!という可愛くのない声が聞こえたと思うと、打ち止めは浴槽の壁に顔面をぶつけていた。あらら、痛そう。

 

「ぐ、ぅ……かわすことはないんじゃないかな?ってミサカはミサカは抗議してみる。お陰で顔が痛い。ってミサカはミサカはいらないお世話に文句を言ってみたり」

「そりゃ、悪かったなァ」

 

だが、突っ込んできたそっちも悪いと思う。普通の十歳児が突っ込んできたら世間一般的に微笑ましいものになるのだが、この一歳にも満たない十歳児は良くも悪くも知識はそれなりにあるし、脳で言えば大人並みだ。そんな奴がわかっててやっている行為とは思えないな。

裸の男にタオル一枚巻いているとは言え、裸で突進してくるとは。

まぁ、そう言っても。

 

「うー!ミサカは背中流しあいっこをしてみたいだけなのにー!ってミサカはミサカは駄々をこねてみたりー!!」

「うるせェ!!風呂にでも入ってろ!」

 

ただのバカなのだが。

打ち止めを風呂へと投げ入ると、ふといつの間にか閉まっていたドアの向こうに気配を感じた。振り返ると案の定、浴室ドアに影が映っていた。シルエットからして、ドアにもたれ掛けているのだろう。そして誰なのかもわかった。

クスクスと小さく笑い声を漏らしたそいつは、ごめん、と謝ってきた。

 

「打ち止めに一方通行がどこに行ったって聞かれたから正直に答えたら、何故かこうなったじゃん?私は不可抗力じゃんよ」

「やっぱ黄泉川かよ」

 

盛大なため息を吐く。いらぬお世話はお前の方だわ、打ち止め。

 

「でも打ち止めは小さいじゃんよ。ちゃんと面倒見るのも上の役目だと私は思うじゃん?」

「少なくともこいつは一人で風呂入れるぞ?」

 

何言ってやがんだ。

さっきも言ったが打ち止めの頭脳は大人並み。思考や感性は子供でも、物事はちゃんと考えられる。それこそ常識的なのはすべて知ってるしな。

よって、オレが面倒見る事はなし。

 

「まぁそう言うなって。芳川にも言われたし、私も賛成だと思うじゃんよ」

「オレは反対だっつゥの!」

 

聞いてんのか!?こいつ!

オレは子供が嫌いだ。こいつは少しだけ聞き分けがいいが、基本的に我が儘だ。それが面倒くさい。子供は我が儘を言うのが普通!?ハッ!言ってろ!少なくともオレは言うこと聞くお利口さんでしたけど、何か?

 

「前にもオレは子供が嫌いだって言ったろ!?」

「あー聞こえない、聞こえないじゃんよー」

「テメェ……!」

 

そんな事言ってる時点で聞こえてんだろ!

黄泉川と言い合いをしていると顔面に水が飛んできた。バシャリと音を立てて、オレの顔は濡れる。心なしか頭の上にあった泡も落ちてきている気がする。イテッ、目に泡が入った。

 

「なははー!大成功!ってミサカはミサカは油断していた一方通行に仕返しができて大満足!」

「…………」

「一方通行がこういう時は反射を切ってるのは知ってるからね!ってミサカはミサカは貴方の甘さを指摘してみたり!」

 

ふふーん。と偉そうにふんぞり返っている打ち止めにイラッとしながらも、そもそもこうなった元凶の名前を怒りを込めて呼んだ。

 

「おい黄泉川ァ!」

「……はぁ、私は知らないじゃんよ」

 

ため息を吐いた黄泉川は何処かへ消えてしまった。これで、オレと打ち止めしかいなくなることに……って置いていくなよ!こいつどうにかしろよ!ちくしょうめが!

 

バシャリ。

 

また水が当たった。

 

「二回目ー!ってミサカミサカは笑いながら言ってみたり!幾ら何でも油断しすぎ!ってミサカはミサカは一方通行の将来を心配してみたり!」

 

…………おーけー?わかった。そっちがそういう態度ならば、オレもそれ相応の態度を取らしてもらおうじゃないか。

オレは素早くシャワーのノズルを掴み取り、それを打ち止めの顔面へと向けた。

 

「へ?」

 

一瞬惚けた顔をした打ち止めだったが、だんだんと青くなっていく。やることがわかったようだ。それはいいが、打ち止めさんよ?いつまでも口を開けていると悲惨なことになるぜ?

 

スイッチーー、オン!!

 

「ごぶぁぶばびぶぉぼぉーー!?!?!?」

「ギャハハハハハハハッ!!ザマァねェなァ!?打ち止めさんよォ!!」

 

どちらも子供なんて言ってはいけない。

オレだってまだ高校生。まだまだ子供なんですよぉ?

 

え?さっきと言ってることは違う?うーん?何の事かなー??

 

打ち止めの必死な姿に笑っていたオレだが、流石に可哀想になっていき最終的に止めた。その後オレの顔面に拳が飛んできたのは……まぁ余談だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜。

オレは早速、病院を抜け出してみた。意外と簡単に行けたので拍子抜けだったのはしょうがない。ミッションインポッシブル的な展開を期待していたわけではないが、まぁこれで毎日抜け出しても問題はなさそうだ。

今日抜け出したのは、さっき言ってた何かの体術を習得するためではないんだな、これが。早速なんて言ったけど、目的が違う。

 

「ここらか……?」

 

打ち止めから引き出した情報を頼りに犯人が行きそうな場所などを特定。ある程度絞れた所に来たんだが、どうやらアタリだったようだ。

 

「え、あ、まさか……っ!一方通行ッ!?」

 

目の前のツインテの少女が顔を恐怖の色に変えてそう叫ぶ。ツインテと言っても、前に会ったピンクのですの野郎みたいのじゃなく、深い赤色の茶髪で首に近い位置でくくってある。そのおかげか結構長く見えるな。

キャリーケースを引きずった彼女は横断歩道の途中で此方を見ながら後ずさりをした。どうらオレを知っているようみたいだし、勝てないと思ったのだろう。現にそう口に出している。

 

オレが夜分遅くにこいつを探していたのにはちゃんとした理由がある。

先ほど、寝る前に打ち止めが何やら一人でブツブツと呟いていたのだ。気になったオレは聞き耳を立てたわけだが、どうやらミサカネットワークで他のミサカ達と話し合っていたらしい。内容まではわからないが、ミサカネットを使って話すという事は急を要すること……本来あまり他のミサカ達と関わらない彼女達だからこそ、それは彼女達にとって余程のことである。

今回は打ち止めは参加しなかったらしいので、そのまま不貞腐れて寝た打ち止めの頭から情報を引き出した。脳内データの数列を解読することで、さっきまで何を話していたかを理解できる。まぁ脳内ネットワークに侵入するわけで、打ち止めとミサカ達にはバレているかもしれないが……そこは別に良い。そこから入手した情報が情報だった。

どうやら、残骸(レムナント)……樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)の中枢部品が持ち出されたとかなんとか。樹形図の設計者が破壊されたのは、天気予報が予言ではなくなった時から何となく知っていたが、またあのスーパーコンピュータを作り上げようとする輩がいるとは思わなかった。

……いや、予想はしていたが。

ま、それはどうでも良いとして。それが完成してしまえば、またあの実験が再開されるかもしれないということ。それはまぁ別に良いのだが、オレの目的が達成しているとミサカに指摘された今、あんな面倒くさいことは二度と御免だ。なので、中枢部品を持ち出そうとしている者を始末するのが今回の目的である。

それに学園都市ならば、樹形図の設計者と同じぐらいのスーパーコンピュータをもう一度作り出す何てこと、できそうだけどな。オレが生きている間にできるかは知らないが。

目の前の女は一歩、二歩と下がっていたが急に顔を歪めて嗤った。

 

「あは、あはははははははッ!!知ってるわよ……えぇ、知っている!貴方が八月三十一日に能力を失っているってことわねぇ!!」

 

急に笑い出した女にオレは冷めた目線を送ってやっていたが、その後に続いた言葉に少し固まってしまった。

 

………………………………今、何て言った?

 

「もう貴方は最強じゃない!!そう、最強じゃないのよ!なら私にだって-----ッ!?」

 

それ以上そいつの言葉は続かなかった。オレが起こした地割れのせいで。

地面が割れたわけではない。ただ、コンクリートを無理やり剥がし、上へと飛ばした感じだ。だけど、それだけでもほぼ丸腰な女にとっては脅威のはずだ。目の前を見るといつの間にか消えていた。

しかし、すぐに場所は特定できる。左上の蛍光灯の上。なるほど、空間移動(テレポート)系能力者か。だが、あの動揺加減だとすぐには能力は使えないだろう。空間移動系は脳の演算負荷が強い、冷静な思考をしていなければできない者だ。というかあの女、自身を移動させれるってことは大能力者(レベル4)かぁ。

まぁ、そんなことはどうでも良いんだけどな。

 

「っ!?どうして!能力は使えないんじゃ!?」

「一つ訂正しとくがなァ?」

 

女の近くにあるビルの窓ガラスを割る。

 

「能力は使えなくなったわけじゃねェンだな、コレが」

 

すぐさまそいつは避けるために移動するが、どうやら自身の移動には負担がかかるようで、ガハッ!と唾を吐き出していた。汚ねぇ。

空中に転移したそいつを更に追い詰めるために、オレは背中に小さな竜巻を四本作り出し飛ぶ。ホント便利な能力である。

その女に近づくと、その顔に浮かんだ恐怖の色がくっきりと目に見えた。ニヤリとオレの顔が狂気染みた笑顔へと変わる。

 

「その甘い甘いお頭をどうにかしてくる事をお勧めすンぜェ?三下がァ!!」

「ぶふっ!!」

 

思いっきりその顔面を殴りつけてやった。

その女は飛んでいき、コンクリートの壁へとぶつかりそのまま落ちていった。生きてるかな、あれ……どうでも良いけど。

とりあえず、残骸は破壊したのでこれで目的は終了ってわけだ。

 

「それに……」

 

放り出した杖を拾う。

 

「オレはまだ最強だっての……クソッタレが」

 

学園都市一位の座は、まだまだ降りる気はねェンだよ。

 

 

 

 

 




これと大覇星祭のこと忘れてたなんて言えねぇ……。

え?最後の言葉はロリコン台詞を言うべき?何の事ですかねぇ?

結標さんのトラウマって何だろ?自身を転移して吐くぐらいだから、それ相応なんかね?と気軽に調べて、“計算ミスで片足を壁にめり込ませ、それを不用意に引き抜いてしまったせいで皮が引き剥がれた”っていうのを見て、ひぎゃぁああとなったのは余談です。想像したら足が震えた。そりゃトラウマになりますわ……。
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