一方通行は楽観的すぎる 作:au revoir
「は?外に出かけたい?」
「うん!だってずっと病院じゃつまんないんだもん!ってミサカはミサカは病院のつまらなさに文句を言ってみたり」
急にそんな事を言い出した
確かにずっと病院ではつまらないだろう。ましてや遊び盛りの十歳児。ここは広いとはいえ窮屈なんだと思う。オレは十歳児ではないのでわからないが。
しかしだ、それをオレに言わなくても普通に出て行けばいいのではないだろうか?
「愛穂と桔梗はね、一方通行も連れて行けって言ってたよ。ってミサカはミサカは貴方の手を取りながら誘導してみたり」
「あいつらッ……!」
行こう行こう、と手を引っ張る打ち止めを無視しながらオレはため息を吐く。あいつらの性格はどうにかならんのか……賛同できる部分もあるが基本的にあまり好きではない人種だ。あっけらかんとしていて大人の態度を取る……非常に癪に触りますね、ハイ。オレだって大人(前世含めて)だし!今世と年数数えたらあいつらより年上なんですからね!
仕方なしに打ち止めに付きやってやる事にしたオレは立ち上がり、ふと窓の方を向いた。
窓ガラスの向こう側から、軽い発砲音やら歓声が聞こえてくる。打ち止めが出かけたいと言ったのは、これが聞こえてきたからだろうか。
一年に一度の大覇星祭。それが今日から行われている。
大覇星祭とは、学園都市内で行われる大規模なイベントの事だ。運動会、とも言っても良い。能力制限なしのガチンコバトルを学校毎に分かれてするのだから。
大覇星祭は年に一度。この二日間に限って、強固な学園都市の警備を甘くして外から人を招き入れる。目的は超能力という非常識的なのを認知させる事と、この場所が子供にとって有益だと思った親の子供をこの学園都市へ入れさせるためでもある。実験材料は多いほうが良いに決まっているからな。
そして何も運動会だけではない。確かに外には体操服に身を包んだ学生達で溢れかえっているが、その他にも沢山いる。例えば、屋台を経営してる人とか。
「ねぇねぇ!あのフランクフルト美味しそうだよ!買おう!ってミサカはミサカは良い匂いがする場所へ向かって歩き出してみたり」
「金持ってんのか、オマエ」
急に目的地と違う場所へ歩き出した打ち止めの首根っこを掴み、引き寄せる。能力で打ち止めを持ち上げて真正面からそう問いかけてみると、打ち止めはバツが悪そうにそろそろとそっぽを向いた。
「うーん、そこは一方通行が出すべきなんじゃないかな?女の子は男の子に奢ってもらうのが常識だよ。ってミサカはミサカはこの前読んだ雑誌の内容を言ってみたり」
「今後一切その雑誌読まない方がいいな、為にならン」
奢って貰うのが常識?そんな常識あってたまるか。
オレが手を離したことにより自由落下した打ち止めは、わわ!と声を出しながら体勢を立て直した。オレはそれを見届けると、左手を首に回してコキッと鳴らし、ため息を吐いた。
あぁもう、相手にすんの面倒くさすぎるだろ。
真っ直ぐ歩いているはずなのに、ちょくちょくと消えたり曲がったりする打ち止めを見て思った。目新しいのが沢山あるからなのだろうが、その放浪癖はどうにかならんのか。
いちいち方向補正をするのが面倒くさくなったオレは、打ち止めがどこへ行こうが無視する事にした。
相手は自分のした行動に相手も付いてきてくれるから安心する。なら、相手が何をしても無視をすれば不安が募るのではないだろうか?
人と別の行動を取るというのは勇気のいることだからな。
「ハッ!待ってよー!ってミサカはミサカはさっきからミサカを無視してる貴方を呼び止めてみたり!」
屋台を抜けて商店街のような場所に出る。ショーウィンドウに並ぶケーキをきらきらと目を輝かせて見ていた打ち止めを呆れながら、歩みを止めない。何か言っているが無視だ。
記憶通りならば、この先を左方向に競技場があるはずだ。今やっているのは、中学生対抗の競技。確か、玉入れだったか?
お姉様が出てるの見たいって言ってたのは何処のどいつだったか……少なくとも和菓子に目が行っているそこの十歳児には違いない。
というかさっきから食べ物ばかり見てるな……オレと同じで、見た目に反して大食いなのだろうか?
「というか、食いモン以外に興味ねェのか、テメェは」
「勿論、興味あるよ。アクセサリーとかね……けど今はお腹空いてるからどうしてもそっち方面に目が行っちゃうんだよね。ってミサカはミサカは苦しい言い訳をしてみたり」
お腹空いてるのくだりが、最後ので本当かウソかわからなくなったぞ。
確かに打ち止めの言う通りお腹が空いてきた。何か食べに行こうか。もうそろそろお昼頃だしな。
ハァとため息を吐いて、自分の後頭部をガシガシと掻いた。イテ、掻きすぎたかも、
「つゥことで、何か食べたいもンはあるか?」
「奢ってくれるの!?ってミサカはミサカは純粋に驚いてみたり」
「あァ、今回だけな」
「そう言って何回も奢るんだよね!知ってるよ!ってミサカはミサカは口を隠して笑いを堪えてみたり!」
「……打ち止めさンは昼飯いらないンだな!そーかそーか!」
「あ!うそだよ!うそ!!」
クカカ、と慌てる打ち止めを笑いながらその頭を大雑把に撫でてやり、杖をついて歩き出す。
全く……こいつらの相手は面倒くさいが、からかうと面白い。そこだけは認めてやってもいいな。
堪えきれない笑いを堪えながら、人が行き交う中を歩いていると、打ち止めが一向にやって来ないことに気づいた。
ふと振り返る。隣にも前にもいないという事は、後ろしかあり得ない。案の定、打ち止めはそこにいて何故か頭を両手で押さえていた。打ち止めさんは何をしているのやら?
「どォした?行くぞ?」
「……うー!一方通行のバカ!ってミサカはミサカは整理しきれない感情を罵倒にして出してみたり!」
「はァ?」
顔を真っ赤にして口を尖らせた打ち止めはスタスタとオレを通り過ぎて、歩いていった。一体全体、どうしたっていうんだ。
「おい、打ち止め、何かあンなら言え」
「別に何もないもん!!ってミサカはミサカは足が遅い一方通行を睨みつけてみたり!」
杖をついている時点でそんなに早く歩けない事は知っているだろうに。走るなんて論外である。無理をすればできるが、そんなのは面倒くさい。
そんな事より文字どおり睨んできている打ち止めを見る。ふんす!という鼻息が聞こえてきそうな表情だ。更には眉間に皺がよっている。
……え?打ち止めさん、おこなの?おこなんですの??プークスクスクス。
そんな感じで煽ると、打ち止めはスタスタと猛スピードで此方へ向かってき、オレの鳩尾に拳を入れてきた。クリティカルヒット!!
ゴフッと息が漏れる。ぐぇ、いきがつまった。
「何すン、だ……!」
「バーカ!バーカ!一方通行のばーか!こっちまでおいでー!ってミサカはミサカは走りながら煽ってみたり!」
べぇー、と俗に言うあっかんべーをした打ち止めは走り去っていった。
一部始終を見ていた周りの人間達は打ち止めが走り去った方向とオレを何度も見直しながら、心配そうな目線を送ってくる。わかってる、さっさと追いかけろだろ?見た目だけとは言え、子供を一人にしてはいけないからな。
だが、だがな?
この内から湧き上がる感情をどうすればいいと言うのか。
オサエロ?無理な話だ。現に極限突破して、怒りどころか、いっそ清々しい気分だぜ。ほら?清々しくて、笑顔になっちまってる。
ふふふ、ははははは。
「覚悟はできてンだろォなァ?ラ、ス、ト、オーダー??」
さァ、楽しい楽しい鬼ごっこの始まりだ。
後悔してももう遅いぞ?
長い長い一時間にも及ぶ鬼ごっこを終え、オレ達はレストランへと向かっていた。
結果はオレの勝ち。何、大したことはしていない。ただ必死に追いかけていたら、人混みに紛れようとするも押し潰され、狭い路地を走ろうとも野良猫に驚いて転びかけたり、不良共に当たって金をせびられたり、道路に出てしまって轢かれかけたり、オレは何もしていないのにも関わらず、何処かの不幸だ不幸だのと言っている奴のように、打ち止めが不幸に見舞われただけだ。勿論、最後のは助けたが。
それでも逃げようとした打ち止めは、最終的に石に躓いて転んだ。そりゃもう盛大に、顔面から行った。それなのに、小さな擦り傷にもなっていないのは、ここがラノベ世界だからと思いたい。大体、二次元の人間は身体がが丈夫にできているものだからな。
むくりと起き上がった打ち止めの顔面は赤かったが、大した怪我もなく平気そうだった。オレはそんな打ち止めを見てため息を吐き、そしてすぐに立ち上がりまた逃げ出そうとする打ち止めを引っ捕え、チョップを十回ぐらいお見舞いしてやった。勿論、能力は切ってある。
痛い、痛いと涙目になりながら謝ってきた打ち止めに満足したオレは腹が減ったことに気付き、さっき言った通り、レストランへと向かった。ファミレス?今日ぐらいは別の店でもいいだろう。ファミレスなんて何処も似たり寄ったりだしな。
「ううっ、一方通行容赦ない、手加減して、大人気なさすぎー……ってミサカはミサカはまだ痛む頭を押さえながら文句を言ってみる」
「オマエが悪い」
全くもって打ち止めが悪い。
何が悲しくて、こんな歳にもなって鬼ごっこをしなくちゃいけない。最近の高校生でも鬼ごっこはしないぞ?命懸けの鬼ごっこなら知らないが。
というか手加減なら大分したぞ。能力を使っていない所で察しろ。もし、使っていたならその頭蓋骨は凹んでたぞ。愉快なオブジェの出来上がりだったかもな。クカカカ。
「何か怖いこと考えなかった?鳥肌立ったんだけど。ってミサカはミサカは腕を摩りながら貴方に聞いてみたり」
「あァ、もし手加減してなかったら愉快なオブジェが出来てたなって、考えてたなァ」
「ハイかイイエだけで良かったのに思考の中身まで言わなくていいよ!怖い!ってミサカはミサカは貴方から距離を取ってみたり!」
ズザザザァーという効果音が似合いそうな勢いで後退していく打ち止め。人が行き交う中、他人に当たらなかったのは奇跡というべきか……そのまま後退していった打ち止めは後ろにあったベンチへと足を引っ掛けストンと座った。
ハァ。まだ見える範囲だから良かったものの、何処かへ行かれてしまってはオレが探さないといけない。保護者というのは本当に面倒くさい。世の親たちはこんな自分勝手な子供を可愛いと言えるのが凄いと思う。オレなら絶対無理。
「オイ、また迷子になったらどォするつもりだったンだ」
座った打ち止めに近づき、ため息を吐きながらそう注意してやる。迷子になれば、困るのはお互い様だ。そんな面倒な事、起こさないで欲しいものだが。
打ち止めはオレの言葉に、冷や汗を流しながらそっぽを向いた。どうやら少しは自覚があるらしい。
「な、ならないもん!というか最初からなってないし!大体貴方のせいだもん!ってミサカはミサカは!」
「責任転嫁はよろしくないンじゃねェか?お嬢さン?」
「むきー!ってミサカはミサカは図星すぎる言葉に地団駄を踏んでみたり!というかそこでお嬢さん呼びは卑怯だ!ってミサカはミサカは計算高い貴方を睨みつけてみたり!」
「図星かよ。てか、お嬢さン呼びの何処が卑怯なンだよ……」
「ま、まさかの無自覚ッ!?ってミサカはミサカは……ハッ!でも今まで行動から十分有り得る!ということは、一方通行って見た目に合わず鈍感!?ってミサカはミサカは予想外の事に狼狽えてみたり」
顎に手をやり何かブツブツと言い出す打ち止め。お前はいつから独り言キャラになったんだよ。やめろよ、怖い。
とりあえず、独り言を呟きながら表情をコロコロと変え出した打ち止めから目を逸らし、近くにあった電子時計板を見る。十二時四十一分。あと二十分で一時だ。
懐からパンフレットを取り出す。このパンフレットは本来外部から来た保護者達に配るものだが、まぁそこら中至るのところにある。地図の近くにあるのが定番だな。
全体的に緑色をした紙を広げ、常盤台中学が出る競技を確認する。あの第三位は常盤台のエースだ。常盤台には
ふむ?暫くは無いようだな。というか最後の方にしかない……逃したか。だが、これでゆっくりと飯を食える。よし、美味いところでも行くか。
「行くぞ、打ち止め。オマエのお姉様は、三時ぐらいまで競技がねェぞ」
「え!玉入れは!?ってミサカはミサカは少し前に聞いた情報を確認してみる」
「もうとっくに過ぎた。オマエと鬼ごっこをしてる最中になァ」
「そんなぁ!ってミサカはミサカはこの世の不条理さに嘆いてみたり……」
「世の不条理じゃなくて、完璧に打ち止めが悪いンだがなァ。ま、時間ができたンだ。どっか美味い飯にでも行こうじゃねェか」
「美味しいご飯!!」
チョロ。
培養器から出て何週間しか経ってないからか、飯に対する執着が凄い。特にスイーツ。女子って怖い。ま、食べる量は人並みより少し多いだけなので苦労はしない。
ご飯♪ご飯♪と鼻歌まじりにスキップしている打ち止めに苦笑しながら、オレも歩き出す。
ふと上を見ると晴天であり、日差しが少しだけキツイ。反射をオンにしておく。設定は紫外線だけにしたからか、頬を撫でる風が少し気持ちいい。酸素や重力など、それ以外を反射していた時があったからな、膜の中はずっと無風だったな。
……うん、こんな日もあっていいかもな。
やっぱ、自然ってのは素晴らしいね。いつか、海にでも行ってみたいものだ。前世の記憶じゃ良いところらしいし。
それに、この世界に生まれてこの方、街の外には来る前にしか行った事が無いからな。屋内育ちなめんな。いつか、外に観光でも行きてぇな。
書いてて思った。打ち止めがインデックス化してるぅ!?
とある世界の男共は女の尻に敷かれる運命なんだよね。知ってる。
インデックスって現代社会にとってはハイスペックだと思うんですよね。完全記憶能力を持っている事もそうですが、その記憶した事を理解し応用できる頭の良さがね、もうね。あと、食べても太らない体質に、その容姿。大人になれば美人だろうなぁ。