一方通行は楽観的すぎる 作:au revoir
「じゃぁ、ミサカちゃんじゃなくて、
「うん!でも長いからラストちゃんでも、オーダーちゃんでも好きな呼び方でいいよ!ってミサカはミサカは初めてのあだ名にわくわくしてみたり!」
「それもそうねぇ。じゃ打ち止めちゃんでどう?」
「変わってないよ!?」
ズギャァアン!という効果音が付きそうな顔をした打ち止めは、目尻からホロリと涙をこぼした。どうやらよっぽど、あだ名というものをしたかったらしい。諦めろ、打ち止め。美鈴さんがこういう奴だっての、数分前にも学習したばかりだろ。
数十分前に知り合った御坂美琴の母親、御坂美鈴は何というか、良く言って天然だ。だって、明らかに手ぶらだと言うのに、チーズフォンデュ食べる?とチーズが入った鍋を取り出してきたのだから、これのどこが天然じゃないというのか。ってか、どこから出してきた?と問いたくなるほどの出来事である。
多分、突っ込んだら二度とできない芸当だと思う……うん。
「で?貴方が……」
「一方通行だ」
打ち止めを挟んで左側を歩いているオレを、美鈴さんは首を傾げてきた。即座に名前の事だとわかり、そう言えば名乗ってなかったな、と一方通行だと答えた。答えながら、能力名と同じ名前なんて可笑しな名前だと、今更ながらに内心笑う。
「アクセラレータくんね。二人とも不思議な名前してるわね?外国人?」
うん、それはオレも思った。しかし、オレなんて本来の名前なんて忘れてしまったし、打ち止めに関してはクローンだ。変なのは仕方のないことである。
バリバリの日本人、I am Japanese peopleだと答えたオレと打ち止め。美鈴さんは目を丸くしながらも、そうと答えた。どうやら、納得してくれたらしいが、もう一つ疑問が浮かび上がってきたらしい。だって、美鈴さんの目線はある一点に釘付けだからだ。オレの頭。
「一方通行くんの髪色って不思議ね。真っ白」
「あァ、こりゃァオレの能力の副作用なもンだ」
「能力?」
「……オレの能力は常に紫外線を反射してるからか、色素が必要となくなったンだよ」
「へぇー、そうなのね」
……理解できてんだろうか?この人。まぁ、端折りに端折ったけど、能力の説明。
大学に入り直しているって聞いたし、頭がいい方だろう。わからないなんてことはないはずだが、何せこの反応だと疑わざるを終えない。
美鈴さんはオレの言葉を聞いて、暫く考えた後顔を上げて、うんうんと頷き始めた。なんだ?
「学園都市の人って全員能力持ってるんだっけ」
あぁ、なるほど、そういうこと。
「全員ってのはちょっと語弊かも!ってミサカはミサカは間違った情報を指摘してみる!」
「人口の八割が学生。その中の六割がたが、
コレ、学園都市の常識だがなァと呟くと、美鈴さんは娘からこの情報を手に入れたと言った。
「美琴ちゃんと違ったこと言うのね」
……………………第三位ェ……。
何嘘の事言ってんの!?常識だよ!?じょ・お う・し・き・!
ちょっと大丈夫か?この親子。色んな意味で心配だ。第三位の方はやはり、
それとも、ただ単に美鈴さんが間違えて覚えたって可能性もあるな。
……うん、後者の方が信憑性があるのは何故だ?
意外にオリジナルがバカだと知った打ち止めはズーンと落ち込んでいる。
バカか、そんな事でで落ち込んでるんじゃねぇ。大体、超能力者な時点で一応天才の部類だろう。しかも彼奴まだ中学生だぜ?お前ら前に自慢してたじゃんか、お姉様は五ヶ国語マスターしてるって。お姉様はバカじゃ無いんだろう?ほら、元気出せよ。
そんな意味を込めて打ち止めの肩をトントンと叩いてやる。たった二回叩いただけだが、打ち止めが涙目で此方を見てきたので苦笑した。涙脆い奴だな。
「あ、もうすぐ着くかも!」
打ち止めを慰めるオレは眼中に無いらしく、パンフレットにそれは釘付けだった。どうやら、地図を確認していたようだ。もうすぐだとはしゃいでいる。まるで子供のように言う美鈴さんは、一体何歳なのだろうか、と考えさせられる。大学生、しかも二回目だと言っていたから、二十二歳以上は確実。妥当なのは二十二〜二十六歳の間だが、まぁそれは無いだろう。
見る限り、結婚して子供産んで預けて暮らしが安定してきたから、もう一度大学行ってみるか的な感じだと思う。オレの場合、そんな面倒な所もう一回だなんて行きたくは無いな。金の無駄だし。
暫くして結構デカイドーム状の建物に着く。どうやらここでやるらしく、入り口前は観客や学生達で賑わっていた。心なしか露店もある。
ふむ、時間前に来れたみたいだ。時計を見ると約十分前。今から入って席を取らないとなくなるかもしれないな。
美鈴さんは打ち止めの手を取り、そのまま機嫌良さそうに歩いていく。彼女らの少し歩が速いのでオレも速くするが、やはりというか杖をついている分、徐々に引き離されている気がする。しかし、見失わない程度の距離を保ってられるので、あまり気にする事でも無いか。
会場に着き、適当な席に座る。ここは普段、サッカーの試合などをする場所なのだろう。天然の芝生が敷き詰められ、途轍もなく広い。手入れが大変そうなそこを、観客席は周りを囲んでいた。
「あ!美琴ちゃん!」
席を確保して二、三分、選手達が入場してきた。常盤台中学はやはり、あの第三位がいるからか出てきた瞬間に声援があがる。それもオレの周りから。爆音に近い声に耳を塞ぎながら顔を顰め、前を見る。するとそこには、青白い法被を着た男性達が、美琴ちゃーん!と野太い声を出してペンライトや団扇を振っていた。
……大変だな、第三位。
同情はしないけどな!
彼奴ら絶対、
第三位はこの学園都市の看板娘でもあり、元は
ファンクラブができていて当然だと思うが、彼女はまだ中学生……おっさん、お兄さん達が美琴ちゃーん!と叫ぶ姿には事案が発生しそうだ。
「はぁぁ、美琴ちゃん可愛い」
「見ろよ、あの睨むだけで人を殺しそうな目!ありがとうございますぅ!」
「これで明日から生きられる。大覇星祭ありがとう!」
そのまま南無阿弥陀と言いそうな勢いで、両手を合わせた手を振っている。
こういうのをドルオタと言うのだろうか。まぁ第三位はアイドル的存在だから、間違ってはいないだろうけど。
第三位を応援するのはいいし、気持ちは分かるけど、もう少し自重してくれないだろうか?打ち止めが凄い勢いで、揺れてんだけど。ここだけポルターガイスト起きちゃってんだけど。
ドルオタ(仮)達に怯えた打ち止めを嗤いながら、正面を見る。どうやら、常盤台中学は入場し終わったようで、対戦相手の入場だった。というか、常盤台中学の中に一人だけ高校生混じってない?え?違う?あの金髪の人。
「うぉおおお!操祈様ぁあ!」
「今日も綺麗なお姿で!!」
「踏んでくれー!」
あ、別の方で何か親衛隊がいる。どれだけいるんだよ。ん?操祈?食蜂操祈のことか?ということは、あいつ第五位かよ。マジか。
超能力者達の名前は記憶しているが、容姿まで知らないため初対面ではわかんないんだよな。なるほど、あの金髪が
というか、オレ能力使えなくなってたら気がつかないうちに心理掌握使われてたかもしれないのか?うわ、ありがとう神様!いるか知らないけど!
黄色い法被を着た心理掌握親衛隊は、超電磁砲親衛隊と睨み合いながら応援している。どうやら因縁の対決なようで、どっちが勝つか言い争っていた。
まぁ、第三位も第五位も同じ中学生---第五位についてはわからないが---にしては、個体差が激しいもんな。そりゃ好みわかれるか。
親衛隊達を冷めた目線を送ってあげた後、会場へと目を向ける。そこには四人一組になって立つ皆様方が。どうやら騎馬戦をするらしい。
超能力者二人はどうやら、上、というか相手のハチマキを取る役だ。そりゃな、あのエースとも言える奴らが馬役というのは、可笑しいだろうし。
「あ!始まったよ!いけぇー!ってミサカはミサカはお姉様を応援してみたり!」
「打ち止めちゃん、お姉ちゃんいるの?初耳ね、どこ?」
「あそこだy---むぐっ!?」
「あァ、見えなくなっちまったなァ。また見えたら言うンで」
「そう?気になるわねー」
危うくバラしそうになった打ち止めの口を塞ぎ、誤魔化す。見えなくなったなんて嘘だ。今もハッキリと見えてるし、青白い閃光を発している。
別にバレても美鈴さんは美琴ちゃんが沢山いて嬉しい、とか何とかで許してくれるだろう。だが、クローンである彼女達が生み出された理由は非道なものであり、その彼女達をオレは別の、くだらない理由で殺していた。それには罪悪感は別に感じていないが、これは学園都市の闇の部分と言ってもいいだろう。
それを一般人で、しかも外部の人間が知ればどうなるか?
最悪、死ぬ事になる。それに、オレが殺したみたいで嫌だしな。自己中な理由である。
ま、オレは自己中の塊みたいなもんだし?ニート生活のために
「〈実の母親がいる前でそれはねェだろォよ。自重しろよなァ〉」
「〈あ、ゴメンってミサカはミサカはテヘペロをしてみたり〉」
いや、事の重大さ理解しろよ。と言いたいが、してるからこその言動だろう。打ち止めの悪い癖である。
小声で話し合うオレ達に、美鈴さんは首を傾げる。どうやら聞こえていないようだ。やっぱ、この人天然&鈍感じゃね?
まぁ、声の音波のベクトルを操って打ち止めひしか聞こえないようにしてるのだから、聞こえなくて当然だ。寧ろ聞こえてたら自信をなくすぜ!
美鈴さんに上手く誤魔化せた所で、観戦に戻る。やはりというか、お嬢様学校である常盤台中学が押していた。まぁ対戦校はオレも知らない学校だしな。殆ど無名と言っていい。その一般校である彼らが、エリート校に勝てるかと言えば、NOだ。早々に戦意喪失となってリタイアか、
騎馬戦というのはチーム戦だ。上の乗り手役が上手く相手の意表をついてハチマキを取る事に秀でていても、下の馬役の立ち回りが上手くなければ、乗り手役の特技を引き出せない。逆も然り。
しかし、その点についてはあの超能力者達には問題なし。一人は人格者で、そいつの為に頑張ろうと馬役の彼女達は上手く立ち回っている。
もう一人は、あぁ、まぁ、うん……能力を使った上手い戦術をしている。馬役達の目に覇気がないのは、気のせいだと思いたい。
しかし、まぁ。
「慣れてやがンなァ……」
「ん?慣れてるって?ってミサカはミサカは突然声を発した貴方に首を傾げてみたり」
オレの独り言を打ち止めは拾って、問いかけてきた。一々拾うなよ、説明すんの面倒クセェ。いや、まぁな、独り言いうオレがなんだという話だが。
「能力の使い方」
「ん?能力?ってミサカはミサカはさらに首を傾げてみたり。そりゃ、自分の能力なんだから慣れてて当然だと思うけど。ってミサカはミサカは何を当たり前なことを言ってる貴方を不思議に思ってみたり」
それ、なんだよなぁ。
“慣れてるのが当然”だ。ちょっと可笑しいと思わねぇか?
いや、それ自体を可笑しいとは思わねぇ。能力が発現したときから、担当の科学者が付き、その能力を制御する為の訓練があるが、それにしたって慣れすぎなんだよ。やはりというか、超能力者はぶっ飛んでいるらしい。オレが言えた義理ではないが。
能力を制御するのは慣れている。しかし、それを無防備な人がいる所で使う。もし、不慮の事故でも起きてしまったのならば、それは能力を使った奴のせいになる。そう、そういうものなのだ、能力ってのは。
やっぱ、楽観視し過ぎなんだよ。
それは、人を殺す事だって簡単な力なのに。
バチバチと閃光が舞う。ぐあっ、とかいう悲鳴を上げながら敵将達が崩れていく。その崩れる前にその額からハチマキをスッと取っていき、得点を獲得していく第三位。その顔は“楽しい”という感情がぴったり合うものだった。
上手いなぁ。馬役の人達には被弾せず、確実に敵だけを葬り去っていく。
能力というものは
第三位はそれを利用し、頭からだけ電撃を放ち相手にぶつけている。勿論人が死なない程度で。多分、数時間は体が痺れて動けなくなるであろう電力。
慣れた作業。そう思わせる所作。チンピラ共でも葬ってきたンですかねェ?
「美琴ちゃんの土壇場ね!いけーっ!」
「いけーっ!」
きゃいきゃいと騒ぐ、美鈴さんに打ち止め。ぶんぶんと空気を切る音が横から聞こえてくる。イテ、いてっ!やめろ!腕当たってんだよ!!
打ち止めから少し距離を取るように座り直す。これで当たらなくなったが、何故か数秒後にはまた当たりだした。よく見れば、打ち止めも少し此方に近づいてきている。オイ。
「腕、当たってンだよ、やめろ」
「え?あ!ごめん!ってミサカはミサカは気づかなかった事に謝ってみる!」
「ったく、気をつけろっつゥの」
ハァとため息を吐くと、打ち止めはハハハと乾いた笑いをこぼして、元の位置へと戻った。何故、此方に寄ってきたのかは謎だが、まぁこれで当たる事はない。
膜は、太陽光に含まれる熱線と紫外線を反射するように設定せているだけで他はどうにもしてない。ま、してないだけで息するように変えれるから、問題はないんだが。
何故、打ち止めの腕を反射しなかったんだって?バカか?腕が折れるだろうがよ。
「あっ、こっち向いた!美琴ちゃーん!!」
美鈴さんは前にいる親衛隊共に負けないぐらいの声を張り上げて、手を振っている。それに負けじにと打ち止めも降っていた。
ふと、グラウンドを見る。常盤台中学が圧勝していて、もう直ぐ終わる頃だろう。全員を見ていると、第三位と目が合ってしまった。……合ってしまった、というより合わせたの方が正しいか。さっきからずっと此方を睨んでいるのだから。心なしか、第三位から小さな青白い火花が……ひぇ、怖いねぇ。
強い眼光を受け止め、ニヤリと笑い、ヒラヒラと手を振ってやる。完全に人を馬鹿にしたような態度に第三位も顔を赤くし、閃光を更に強くした。オイオイ、それ以上強くすると馬役の人達が黒焦げになるぞ?いいのかよ。
ニヤニヤと相手が犯そうとしている罪に、嘲笑ってやりながら見ていたが、そこで笛の音が鳴ってしまった。チッ。
常盤台中学の本日の競技はこれで終わり。必然的に第三位もやる事がなくなるのだが、多分親子水入らずで観光でもするんだろう。学園都市には来客用のホテルもあるし、今日だけ限定だが泊まっていく者も多い。何せ、出て行くのにも入るのにも面倒くさい手続きが必要なのだ。わざわざ出て行って、また明日来る何て事はないだろう。それに、ナイトパレードもあるしな。
って、現実逃避してる場合ではなかった。どうしてこうなったのやら……ま、オレが煽ったのが原因だが……一番の原因は打ち止めが美鈴さんを見つけてしまったことだろうな。目の前にいる第三位に目を合わせる。
ま、挨拶といこうじゃねぇか。
「久しぶりだなァ?お姉様?」
そう嫌味を含んで呼んでやると第三位は歯をギシリと鳴らし、そして怒りのこもった眼を向けてきた。
「一方通行ッ!」
声にも怒りがこもっていて、普段よりも低い声だ。第三位は相変わらず眼を鋭くさせ、眉間に皺を寄せていた。
未だ事情を理解できてないのは、当事者でない御坂美鈴のみ。その彼女も第三位の後ろで首を傾げている。庇うように立つ実の娘にも困惑しているようで、心配そうに此方を見てくる。ま、大丈夫でしょ。
…………はぁ、これは嫌われたかねぇ。
獣のような眼光に、オレはそう思った。
一万人もの、クローンとはいえ妹達を殺した人物が、自分の母親と行動してたらどうする?勿論、庇うし、警戒するだろ?ま、それを理解していての発言なンだけどねェ。一方通行より。
最近一方通行がかっちゃんに見えてきてヤバいです。ヤメロォ!影響受けちゃってんじゃねぇ!声が同じで性格がチョット似てるだけの別人だろぉ!なぁ!!