一方通行は楽観的すぎる   作:au revoir

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十九話 お引越しします!

 

 

「で、その滞在先ってまさか黄泉川の所か?」

 

小刻みにエンジンによって揺れる車内の中、オレは運転手を務めている芳川へとそう問いかける。

カエル顔の凄腕の医者からはもうOKサインが出ており、約一ヶ月ほどの入院期間を終え、オレは退院した。因みに打ち止め(ラストオーダー)も入院していた、という事実には驚かされた。縦横無尽に病院内を駆け巡り、看護師に怒られる子供のどこが入院患者に見えるのだろうか。むしろ杖をついているオレの方が当てはまるわ。

 

「その、まさかよ」

 

マジかよ。

え?あの、大丈夫なのか?こう言うのは失礼だが、家事なんて事できなさそうな印象をお持ちでしたけど。まぁ、今、オレの前にいる芳川桔梗さんは、あぁ見えてニートだけどさ。ニートなんだよ。大事な事なので二回言った。

元々研究員であった芳川は、絶対能力者進化(レベル6シフト)計画に参加して考えが変わったらしい。こんな事をする為に研究者になったわけじゃ無い、とな。それに、貴方の姿に突き動かされたわ、と言われた時は苦笑してしまった。どうやら、オレが決め手だったらしい。

そんな芳川だが、もう研究者に戻るつもりもなく、新しい職を探している真っ最中だ。にしても、ハローワークに行く事もなく、友人である黄泉川に仕事を探してもらっている様だが……常に自分に甘いと言っている芳川の言葉は的を射ている、と少し思ってしまったほどだ。自分で探せや。

 

「貴方、今の学校辞めてしまうのでしょう?」

「ン?あ、あァ、その事か。書類上(・・・)は辞めねェよ」

「そう……初めて聞いたわ」

 

あれ?言ってなかったか?

書類上、オレの通っている学校は長点上機学園となっている。実験が始まる前からこの学校へと表上、属しているが、まぁ実験が始まってもそれは変わりなかった。

誠に面倒くさいことだが、本当であれば学校と表す研究所に所属するのがセオリーだ。だが、オレの場合それは拒否した。今の状態でも実験はできると言われたし、長点上機学園も第一位であるオレを手放したくはなかったのだろう。あっちも拒否った。

というか、そもそも転校とか繰り返してたら面倒くさくないか?学校へ行かなくていい分、今のままで良いと思うしな。

んなわけで、オレは長点上機学園所属である。授業は受けてません。いやぁ、超能力者(レベル5)って肩書き便利。授業は受けなくて良いから、その肩書きが所属しているという事実だけくれ、と言われたし。オレとしては万事おーけーだ。

 

「でも、まぁ……愛穂は研究者じゃないし、正義感が強い保護者肌だから、貴方をきっと守ってくれるわ。そこは安心して」

 

まぁ、警備員(アンチスキル)の自宅だしなぁ。スキルアウト共とかの、襲撃とかを心配しなくてもいいのか。それはラッキー。

ただ、心配なのは……黄泉川が家事スキルを持っているかどうか、なんだよなぁ。これは外せない。というか、家、広いんだろうか?

 

「うははーい!愛穂ん家、楽しみー!ってミサカはミサカは喜びを全身で表してみたりー!」

「うわ!ちょ……っ!飛び跳ねンな!!酔うだろォが!!」

「へぶっ!」

 

車内で飛び跳ねるとか、常識人のすることじゃねぇよ。うぇ、ちょっと酔ったかもしれねぇ。

打ち止めの頭を引っ掴み、シートへぶつけた後、オレは外を見た。天気は晴れ、気温も良さそうだ。もう九月下旬で少し寒そうだが、この長袖で十分だろう。オレより打ち止めの方が寒そうだが。

酔いを醒ますために、窓を開ける。少しだけ肌寒い風が入ってくるが、それが気持ちがいい。風によって暴れる男にしては少し長い髪の毛を抑え、対向車をボーッと見つめた。

 

…………あと、何分ぐらいで着くんだろう。

 

ちょっと本格的にヤバくなってきたかもしんない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あともう少しでグロッキーになるかも知れない、というところで待ち合わせという場所に着いた。

三半規管が弱まった事を自覚し、クラクラする頭を押さえながら、何とか杖をついてワゴン車から降りる。住宅マンションと思しき場所を見渡す。暫く場所の配置を脳内の地図と照らし合わせながら、車から降りてくる打ち止めと、芳川を横目で見ていた。

うーん、どうやら元いた学生寮より少し離れているみてぇだな……ま、別に良いか。

 

「黄泉川先生、私を誰に合わせたいんですかー?」

「秘密じゃん。けど、もう着いたみたいだから……あ!いたじゃん!」

 

おーい!と住宅マンションの昇降口から出てきた黄泉川が手を振ってきた。打ち止めは大きく振り返し、芳川とオレは少し手を上げるだけに止まる。

って、ん?黄泉川の後ろにちょこちょこ付いてきている奴、誰だ?見た目からして小学生っぽいが……というか桃色の髪をした奴なんて初めて見てしまった。日本人が似合う髪色ではないのは明らかだが、あれだけ不自然じゃないのは不思議だな。あ?オレ?オレは色素抜けただけだっての。

多分、さっきの声の持ち主だろう。黄泉川を先生って言ってる事から、結構親しいのかね。

黄泉川は芳川と一言、二言話し合った後、此方へと向いた。何やらニヤニヤとしているが、何だろうか。

 

「紹介するじゃんよ。私の同僚で飲み仲間、」

「月詠小萌なのです。是非!小萌先生と呼んでくださいね」

 

そうペコリと頭を下げた、桃色の髪をした小学生(仮)。

オレと打ち止めは黄泉川が言った、“同僚”と“飲み仲間”、そして“先生”。

 

「「…………………………は?」」

 

二人して数秒間、思考を停止させた。

 

ん?へ?何?どういう事だ!?

 

混乱する心に対して、脳内は冷静にこの謎生命体を分析していった。

黄泉川と月詠小萌と名乗った奴の言葉から推測すると、小萌先生は黄泉川と同僚であるからして、そして何処かふわふわとしていながらも大人として少し達観している所からして、推定二十後半から三十近いと思われる。飲み仲間と言うからには、それなりに飲むのだろう。ニコニコと笑うその姿からは想像できないが……というかしたくないね。

それなのに、推定した年齢がもし当たっていると、その最っ高に低身長な説明がつかない。何をどうしたら若々しさ、というか若すぎる身体を保ってられるのか。見た目、歳を取らなすぎでは…………はっ!老化を抑える研究!不老不死!

人類の一つの夢とも言われる不老不死。禁忌であるが、学園都市ならばやりかねん。というか外では人間のクローンを作るのはご法度だと言うのに、この学園都市では平気で量産していた。スゲェよ、学園都市。流石、日本の中にある一種の国家だよな……バチカンかよ。

そっか、なるほど、なるほど。

 

「不老不死実験の被験体かァ……」

 

あー、それなら納得。うん、納得だわぁ。

だからさ、小萌先生。現実逃避している憐れな高校生を現実に引き戻すような残酷な事をしないでくれます?

小萌先生はそんなんじゃないのですー!とか聞こえんから。その体躯とか、声の幼さとか、服装とか!年齢考えたら、どう見てもそんなんなのですよ!

その口から大人の妖艶な声でも聞こえてきたら信じてただろうよ!それこそ、メルヘン作家バリトンボイス毒舌ショタみたいななァ!

 

「可哀想に……」

「へ?」

「きっと実験ばかりで、この先ずっと自由時間とかないんだ。ってミサカはミサカはハンカチをそっと目に添えてみたり……」

 

懐から水色のハンカチを取り出し、シクシクとなくふりをする打ち止め。だよなぁ、泣けてくるよなぁー。打ち止めもだろうけど、結構親近感湧くよなぁー。

……というか打ち止めさん?それオレのハンカチでは?いつの間に盗んだんだよ!このガキっ!!

 

「先生の話を聞いてくださいーー!!」

「あっはっはっは!掴みはバッチリじゃん!」

「つ、掴みのために呼んだのですか!?」

 

なん、だと……?

“掴み”っつったか?掴みだって?って事はこの小学生(仮)……本当に…………………考えるのやめよう。誰かが言ってたな……考えるな、感じろと。わかりました!何処かの誰かさん!オレ感じる!オレ生きてるッ!

……ちょっとこのテンションはしんどいな。

小萌先生を十分に揶揄ったオレ達は、車を移動させてくるという黄泉川を見送った。去りながら、ひらひらと手を振る黄泉川は本当に男気が強い。きっとあれだな、女子校に通って王子様扱いされた玉だろ。きっとそうだ。(偏見)

 

「改めて自己紹介を。月詠小萌なのです。黄泉川先生に面倒を見て欲しいと頼まれたのですよ。何か困った事があれば、どんと!小萌先生に任せてください!」

 

黄泉川が去ったあとに、改めて自己紹介をした小萌先生。えっへん!と胸を張るその姿は、打ち止めに何かとそっくりだ。というか、どう見ても小学生だ。

 

「一方通行だ、よろしく」

「打ち止めだよ!よろしく小萌先生!ってミサカはミサカはあなたの手を取って振ってみたりー!」

「わっ!勢いありすぎなのですよー!」

 

それぞれ自己紹介した後、打ち止めは小萌先生の手を取り、千切れんばかりの勢いでブンブンと振る。ちょっと腕が痛そうだ。だけど、小萌先生は嬉しそうに微笑ましそうに笑う。

一人は仏頂面なオレ、一人は元気すぎる失礼な子供。初対面の子供に悪口とも取れる冗談……まぁオレはほぼ本気だったが、それを許せる器量の大きさ。小萌先生が良い人なのは、この数分間で伺えた。そうか、悪い奴もいれば良い奴もいる。人間ってやっぱそんなもんだよなぁ。

……オレには何だか、それが眩しくも羨ましくも思えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小萌先生と別れた後、車を動かし終えた黄泉川と合流し、遂に黄泉川家へと足を踏み入れた。

マンションにしては広い玄関、そしてリビングキッチン。これは一人暮らししている者にとっては、十分な広さを誇る。一目見て家賃が高そうな場所だな、と思った。

部屋は片付いていて、所々生活感が溢れるが、まるで新品のように輝いていた。ついでに打ち止めの目も輝いていた。

 

「広いな……」

「すごいすごーい!ってミサカはミサカは塵一つない部屋を褒めてみたりー!」

「貴女、また始末書書かされたの?」

「あはー、何の事じゃんよー?」

 

始末書?とオレは黄泉川達の方を向く。打ち止めが部屋の綺麗さを褒めた途端に、始末書の話。全くもって話が繋がってない。

オレの疑問を浮かべたような表情に気づいたのか、芳川は苦笑いしながら説明してくれた。どうやら、黄泉川は問題が起きると部屋を片付ける癖があるらしい。特徴的な語尾に加え、そんな癖とか加えて良いのかよ。キャラ崩壊しません?というか、片付ける癖なのに、掃除までするのか、ある意味すごいな。

呆れるような目線を送ると、黄泉川はあははーと笑いながら目を逸らした。

 

「わー!すごーい!何でこんなに炊飯器があるの?ってミサカはミサカは普通の家庭ではあり得ない数に驚いてみたり!」

 

パタパタと打ち止めが素足で走って行く場所を見ると、炊飯器が五、六個並んでいた。思わず目を見開く。アレは数がおかしい。打ち止めに心の内で賛同した。

 

「愛穂は炊飯器で料理をするから」

「炊飯器は何でもできる万能の逸品じゃん!」

 

いや、その理論は可笑しい。炊飯器は元々米を簡単に炊くために作られた物だ。それを何故に料理を作る道具になってるんだ。確かに、チーズケーキ等を作る事ができるとこの前テレビでやっていたが、料理という幅広くはなってないはずだ。もし、本当に色んなのを作れるのならそのレシピを公開すれば良いのに。黄泉川、有名になれるぞ。そしてそのレシピをオレが見て、作る。ま、本人がいる手前、そんな事はしないが。

……フライパンとかはちゃんとあるのだろうか?

料理道具一式あるのか不安になったが、それはさすがにあるだろうと思い込む事にした。

 

それよりも、まだ胸焼けがするので、ちょっと寝ます。

ソファーに寝転がり、目を瞑る。良い夢、見られますように。

 

 

 

 

 

 

 

ま、無理だけどな。

 

 




出会わなかった……ね。アレ?
じ、次回だ次回に期待だ!(書くの私)

車って不思議だよな。幼い頃は酔わなかったのに、大人になるにつれ酷くなる。運転してるとマシっていうけども、マシなだけで酔ってるわけでして。どうにかならんのか!ならんな!!
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