一方通行は楽観的すぎる   作:au revoir

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四話 実験開始ですよー!

 

「悪い事したらごめンなさい、これ鉄則なァー?」

「ご、ごめ"、ん"な"、ぐぁっ!」

「ハーイ、キコエナーイ。やり直しなァー?」

「ごふっ」

 

壁にもたれ掛かり座るスキルアウトの腹を蹴る。能力によって普通の蹴りより数十倍も重い蹴りが、腹に食らわされても意識があるんだから、こいつはある意味尊敬する。まぁ?意識飛ばさない程度に手加減しているんだけどね?

オレの晩飯を奪った罪は重い。聞いた事なかったのか?飯の恨みは怖いって。

 

「チッ、思ったよりシケてやンの」

 

横たわるスキルアウト共の懐から財布を取り出し、お札を取り出す。それを繰り返し、全て集めて二万に満たない程度。ふむ、まぁ晩飯程度の金は取り戻せたからいいとするか。

ほぼ千円札の札束を財布に入れ、路地裏から表通りに出る。

っと?あれは、人形じゃん。

表通りに出て反対側にいる人形を見つけ、腕時計を見る。あぁー、そろそろ実験開始の時間か。うーむ。一度くらいは遅刻せずに行くか。

 

「お待たせしました、珍しいですね。とミサカは珍しく早く来た一方通行に驚きを隠せません」

 

横から声をかけられ、そちらを向くと赤いギターケースを背負った人形がいた。

思わず前を向いて、さっき見つけた人形を見る。なるほど、違う個体か。ホント見分けつかねぇなぁ。

 

「そりゃァ、悪かったな。遅刻常習犯で」

「いえ、大丈夫です。正直あまり実験に支障は出ていませんので。とミサカは皮肉を込めて返答します」

「じゃ、行くか。とアクセラレータはその皮肉をスルーして路地裏に向かいますってなァ」

「……貴方がその口調を使うと鳥肌が立ちますね。とミサカは腕をさすります」

 

ヒィーと棒読みで悲鳴をあげながら高速で腕をさするのはシュールだな。しっかし、めっちゃ引いてるな、面白。

先ほどのスキルアウト共を踏みつけながら、路地裏に入っていく。後方から「確認しました。これよりミサカ10032号も行動を開始します」と聞こえたのは気のせいではないだろう。あの黒猫を抱えていたのが10032号だろうな。

入り組んだ路地裏の奥。前を歩いていた人形が止まり、ギターケースを開いた。そこから出てくるのは、もちろんギターではなく銃器。連射型の銃だろう。確か機関銃とか言ったか。

 

「準備完了です。とミサカはセーフティを外しながら戦闘体制をとります」

 

ゴーグルを装着する人形を見ながら、首をコキッと鳴らす。さて、早くして部屋の片付けをしなきゃな。多分元通りに直されていると思うが、食材とかはそのままだしな。中身の交換はしてくれねぇのなんの。親切なんかそうじゃないのかハッキリして欲しいわ。

今回の実験の殺し方、行動範囲を思い出す。うむ、この路地裏から出てはいけないと。まぁそりゃそうか。外に出れば悲鳴が多数上がるぞ。なにせ血だらけで武装した女が飛び出してくるんだからな。

 

「……第10031次実験開始時刻になりました。とミサカは実験開始を宣言します」

 

それと同時に人形(ミサカ)は機関銃の引き金を引いた。

銃弾が大気を切り裂いて此方へ向かってくる。それをオレはハァとため息をつきながら、そのまま眺めた。

 

ーーーキィン

 

金属音と共に銃弾が跳ね返り、人形の近くへと跳弾した。間一髪避けたのか、人形は無傷だ。

妹達(シスターズ)は大体一手目に銃弾をぶっ放す。学習する、とあの研究者は言っていたが、それを疑問に思うほど、変化がない。まぁ一手目に限った話けどな。

 

「っ……!」

 

小さく驚愕の表情を表した人形は踵を翻し、より深く路地裏の奥へと入っていった。

仕方なしに追いかける。

逃走しながら攻撃。これもあいつらの基本戦闘術。相手が強敵ならこの戦術は最善だ。無闇に突っ込むより、機会を伺って攻撃した方がよっぽどいい。

道端にあったビール瓶を浮かして、人形に飛ばしながらオレはゆっくりと歩いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君、ちょっといいかな?」

「あァ?」

 

いつだったか、そう声をかけられた。

それはいつものように突っかかってきた馬鹿共(スキルアウト)に実力差を思い知らさせた後の事だった。

声をかけてきたグラサンスーツの男を一瞥してから、すぐさま無視し寮に帰ろうとしたのは覚えている。確か前に始まった新アニメが今まであまり売れていなかった漫画家の新作が売れに売れて、アニメ化したっていう事で歓喜した。今でも録画したのは消していない。

だから早く寮に帰りたかった。けれど、そいつはオレが無視しているっていうのに、諦めることなく付いてきて積極的に話しかけてきていた。煩かった。今じゃあの時音を遮断すれば良かったと思う。

 

「……君は最強のその先へ行ってみたくはないかい?」

 

思わず足を止めた。

その言葉はやけに鮮明で、今までの話が全て忘れるような衝撃的な言葉だった。

オレは学園都市最強と言われ、オレ以上に強い能力者はあまりおらず、いつのまにか普通に暮らしていたのにスキルアウト共が突っかかってきていて、それを返り討ちにする毎日。

オレの能力を調べてみたいと、研究者達が媚を売りに来て、それを蹴るのも日常だった。前より、前より断然マシなんだが、やはりというかこんな日常はいらなかった。

強すぎるがため、能力を振るい全力で戦うこともなく、憧れていた超能力はベクトル操作というチート染みたもの。超能力の代名詞とも言える念能力者が良かったと思うのは、こんな能力を手にしたからだろう。まぁ自分では選べないんだけど。

強すぎる能力を手に入れた後はただひたすら、挑戦者を待つだけ。だが来るのは低能力者のバカ共ばかり。

 

「最強のその先……絶対へと、無敵へと!君も人間だ。一度は思ったことはないか?」

 

絶対……無敵。

なるほど、そうなればバカ共の相手をせずに済む。絶対へとなればその先はなく、研究者共も来なくなるだろう。

普通の、普通に暮らす日常が待っている。オレの能力のせいか、学校は所属しているだけで行かなくてもいいし、すでに演算能力だけなら大人の演算能力をゆうに越している。それに、金も困っていないので待っているのは不変の生活。つまり……夢の堕落(ニート)生活!?何それ素敵!

 

「その話……」

「うん?」

 

オレは振り返って、ニヤリと笑った。

 

「乗った!!」

「よっしゃ!」

 

オレがサムズアップするのと、グラサンスーツがガッツポーズするのは同時だった。

 

 

 

 

 

 

 

「ふゥン、クローンなァ」

「あぁ、これ全てがあの第三位を媒体(オリジナル)としたクローン達だ。今の所五千体はいる」

「同じ顔がこうも並ぶと気持ち悪ィなァ」

 

連れてこられたある研究所内。そこには培養カプセルに入れられた長髪の十四かそこらの娘が入れられていた。

学園都市の広告塔とされている御坂美琴(レールガン)。知識として顔は見たことあるが、それにそっくり……いや瓜二つだった。遺伝子レベルで似てくるとこうなるのか。なるほど、双子も苦労してるんだな……髪以外の見分けがつかねぇ。

とりあえず女の裸体をまじまじと見てはあらぬ誤解を招くので、振り返り研究者共の方へと向いた。

 

「で、どうすれば絶対能力者(レベル6)へとなるンだァ?これを見せたってことは、こいつらを使うンだろ?」

「さすがは一方通行、その通りだ。これは元々違う計画で生み出されたものでね。結局その計画は凍結されてしまったが、訳あって此方へ流用することができた」

 

苦笑するグラサンスーツはクローン達を見てから此方を向いた。

オレはそんな事を聞いているんじゃないのに。

もう一度、グラサンスーツにこいつらをどうするのか聞く。

 

「御託はいい。オレはどうするンだ、と聞いているンだがなァ」

「戦うんだよ」

「は?」

 

おっとぉ?意外な答えが。いや意外でもないか。

クローン達を使っての実験。寧ろそうじゃなきゃ可笑しいし、結論の一つとしてオレの頭に浮かんできたしな。

 

「この実験の結果は樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)お墨付きでね。超能力者である超電磁砲(レールガン)を……128人倒すことで絶対能力者へと至る。そう出た」

 

は?第三位を128回倒す?無茶振りじゃね?

いや、オレの能力なら第三位ぐらい128人いても多分だが大丈夫だろう。しかしだ。この街に第三位は一人、世界中探しても一人なのにどうやって128人用意せよと。

まぁ、その問題は目の前にいる浮かんでいるクローン達が解決してくれるんだろうが。

 

「もちろん超電磁砲を128人も用意できない。だが、代用はできる。これらは腐っても超電磁砲のクローンだ。樹形図の設計者はこれを二万体行動不能にすることで達成すると導き出した」

 

おぅふ。

結構壮大な話だったよ。実験だったよ。

二万体ねぇ。一日二体倒したとしても、二万体倒すには約九年かかる。するとどれくらいの頻度で戦うのだろうか。

 

「今日から実験開始だが、大丈夫か?」

 

なるほど、今日から。

グラサンスーツが言うには今日は第一次実験だけ。明日からは一日二十体相手しなきゃならないらしい。つまり二万体倒すのに約三年。うむ、これから忙しくなるな。慌ただしい日常も好きだぜ?

室内実験だそうで、飯も出るらしいし、食費浮くしでラッキーかな。

 

「オレサマを誰だと思ってンだ?」

「そりゃ頼もしいな」

 

ニヤリと笑いあう。互いの利益のため……と言ってもオレは強くなること以外利益ほとんどないけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

まぁ、この時、人を殺すなんて思わなかったが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……慣れてくるもンだねェ」

 

赤い液体が飛び散ったような跡を見ながらオレは頭を掻く。

明らかに異常なこの光景は見慣れたもので。不自然に濡れていない場所から脚を退け、踵を翻す。結構派手にやってしまったが、あいつらは片付けられるのだろうか。いや、綺麗さっぱり何もなかったかのようになるだろうな。作業効率だけはいいんだし。

来た道を戻るのは何故か癪なので、別の道を行く事にする。ここ付近は寮にも近いので裏路地含めあらゆる道という道は頭にインプットされている。学園都市一位なめんなよ?こんなことちょちょいのちょいである。

ふわぁ、と欠伸をする。あれだけ寝たのにまだ眠たいとは。まぁ今日は無駄に動き回ったしな。実験とかスキルアウトとかスキルアウトとかスキルアウトとか……あいつらマジギルティ。殺してないけど。

 

「なん……だよ…………これ……」

 

路地を二回ほど曲がった後、か細いがそれでいてしっかりとした声が届いてきた。ったく、無駄にいい耳は持つもんじゃないね。知りたくなかったぜよ。

 

「あーァ、めンどくせェ……」

 

あいつが首を突っ込むのは確実。お人好しは要らぬ世話をするから厄介なんだ。

……どうにかなるだろうか。あいつは不幸体質の少年だ。大丈夫だ。こない。こないはず。きっと、こない……。

 

…………って何怯えてんだ、オレ。

 

オレが怯える。

ハハッ……怯えることってあるんだな。このオレが。

随分、人間らしいことに驚く。生まれた時から感情という感情があまりなく、能力が発現して、研究所たらい回しにされたいても何も思わず、思うのはただ“めんどくさい”のと“別にいいか”ということだけ。

自分の体なのにどこか傍観していたオレが、感情があまりないオレが、一人の人間の介入によって、揺らいでいる。飯の恨みじゃねぇ。ただ、あの存在が怖い。どこか、何かが。

 

ツンツン頭の屈託のない笑顔が脳をよぎった。

 

………………こんな時はあの言葉だ。そう、オレが口癖のように呟くあれ。

 

 

 

 

---さぁ、魔法の言葉を放とう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まァ、なンとかなるだろ」

 

 

 

 

 

ナンクルナイサー。

 

 

 

 

 




上条さんの右手は如何なるものでも壊すんじゃ!例えば心を閉ざした原因とかなぁ!

シリアスってよりシリアルを目指したかったけど、書いている本人としてはわかんないもんだね。多分なってない。

次回はシリアスですよ……というかほぼ原作(アニメ)通り?
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