一方通行は楽観的すぎる   作:au revoir

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七話 実験凍結ですよー!

 

 

 

 

「うん、別に異常はないようだね。砕けた鼻も元通りだしね」

 

カエルのような顔をした医者は頷きながらカルテに何かを書き込んでいく。

知らない場所かと思ったけど、当たり前だった。病院だったのだ。

生まれてこの方、病院なんぞ行ったことがない。能力のおかげか、病原体はこないしな。いやホント、これなくなったらオレ死ぬんじゃないかな。主に衛生面で。

病院と言っても似たところには行ったことがあるが、ここは知らない。場所を聞けば第7学区らしい。マジか。

外を見ると見たことのある景色だった。というかこの場所知ってるぞ。ふむ。場所わかったな。これで帰れる。というか近い。

と言うか実験はどうなったのだろう。上条サンに思いっきり二回もぶん殴られてからの記憶なし。どうやってここに運ばれてきたのかもわからねぇ。そもそもあの状況で敵さんだったオレは放っておかれる側なはずだ。いや、鼻治ったことには感謝するけどさ。疑問もあるさ。

 

「でも、今日退院というわけにはいかないね。今日は泊まってもらって、明日退院でいいね?」

「アッハイ」

 

なんか凄みがあったので即答してしまった。

オレの答えに満足そうに頷いたカエル顔の医者は、立ち上がって扉へと向かった。

はぁ、やっとか。結構な質問攻めにあってか疲れた。ぐでぇ。

小さく息を吐いていると、コンコンコンと扉からノック音が響いた。なんだ?まだ用事でもあるのかよ、と思ったら入ってきたのは意外な人物だった。

 

「お前……」

「元気そうで何よりです。とミサカは殺されそうになった相手に皮肉を込めて挨拶をします」

 

ミサカだった。

ふんすと鼻の息を吐いたミサカは来客用の椅子に座り、此方を見据えた。

包帯だらけのその身体は、あのミサカ10032号だとわかる。どうやら同じ病院に患者としているようだ。それにしては歩き回ってるけど。

というか人形なのに、住民票もないミサカを受け入れるってこの病院すげぇ懐が深いな。超能力者(レベル5)であるオレも受け入れてくれたし。

 

「貴方にお伝えすることがあります。とミサカは意を決して貴方に向かい合います」

「伝えること、だと?」

「はい。とミサカは頷きます。実験についてです。とミサカは補完します」

 

実験について。

それはさっきオレが知りたかったことだ。オレを運んできた奴とかどうでもいい。絶対能力者進化(レベル6シフト)計画。これの方が今、この場で最も重要だ。

オレは言葉の続きを待った。

 

「実験は無期凍結になりました。とミサカは謎の安心感と共に息を吐きます」

 

やっぱこいつ感情持ってるわ。

ミサカから聞かされたのは、大幅予想していたのと同じ事だった。予想的中ってわけだ。

凍結理由は超能力者(オレ)無能力者(上条サン)に負けた事から生まれた疑念。本当に樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)の演算があっていることへの。

オレはいつも思う。研究者達は樹形図の設計者に頼りすぎて、自分たちで予想した事がないのではないかと。つまりバカ。まぁ、それだけ樹形図の設計者は結果を出してきたし、一日たりとも天気予報を外した事がない。

だから、イレギュラーが発生したことで樹形図の設計者に疑惑を向ける事になったのだが。オレは上条サン自体がイレギュラーだと思うので、何とも思わないが。

そうか、無期凍結か。これでオレの絶対能力者(レベル6)への道は途絶えたようだ。

 

「やはり心残りがあるのですか?とミサカは首を傾げながら問います」

「あァ、あるなァ。お前を殺せなかったっていう心残りが」

「ッ!!」

 

バッと椅子から飛び上がり、ドア付近まで秒単位で後退したミサカにオレはクツクツと笑う、

 

「クカカッ、冗談だ」

「冗談には思えませんでした。とミサカは胸を撫で下ろしながら元の位置に戻ります」

 

再び椅子に座ったミサカを見届けてから、オレは再び笑う。

こいつらは良くも悪くもまだ産まれてから一ヶ月も経っていない0歳児だ。学習装置(テスタメント)だっけか、それで言語などを学習しても冗談など感情的コミュニケーションはあまりできないはずだ。此方が冗談で言っても冗談と受け取らない。だからからかい甲斐があるんだが。

 

「そんな表情もするんですね。とミサカは一方通行の意外な一面に驚きます」

「ン?喧嘩を売ってンなら、買うぞ?お?」

 

そんな表情とは笑うことだろうか。嗤うことはあれど、確かにあまり人前では笑わない。というかそんな場面がなかったのが常だ。

大体会うのはスキルアウト共だしな。そんな奴らには笑う要素なんてないし。

そう言うとミサカは首を傾げた。ん?

 

「どうした?」

 

そう問いかけるとミサカはフルフルと首を横に振った。なんだってんだよ。

 

「いえ、何故ミサカには笑っているのかと疑問に思っただけです。とミサカは首を更に傾げます」

「それ以上傾げンな、気持ち悪ィ。そりゃお前に笑う要素があったからじゃねェか?わかンねェけど」

「自分の事なのにわからないのですね、ぷぷー。とミサカは一方通行をバカにします」

「やっぱ、テメェ一回潰すッ!!」

「キャー暴力はんたーい。とミサカは自身を抱きしめ悲鳴をあげ、怯えます」

「怯えてるようには全く見えないンですけどォ!?」

 

拳をぐっと握り怒りに耐える。無表情だから、人を煽っているようにしか見えず、更にムカつく。あーこいつら嫌い。すげぇ嫌だ。とっとと、どっかいけよなぁ。

 

「はァ……用がなくなったンならとっとと帰れ」

「では、そうします。とミサカは立ち上がります」

 

椅子から立ち上がり、扉まで歩いて行ったミサカだが、そこで止まり此方を振り返った。

なんだ?思わず首を傾げる。

 

「一方通行は……」

「あァ?」

「一方通行はどうして、絶対能力者へとなりたかったんですか?とミサカは疑問に思ってたことを投げかけます」

 

ジッと見つめるその無機質な瞳から逸らすように、オレは別の場所を見た。視界に入ってきたのはオレの手。

 

「……最強から絶対へとなれば、無敵になるだろォ?敵がなくて無敵だ……そうすれば誰もオレに挑まなくなる……傷つく事がなくなる…………」

「一方通行……」

「というのは嘘でェ!」

「は?」

 

クカカカカッ、と笑う。

 

「ホントはスキルアウト共がウザかったし、絶対になれば研究者共も研究し甲斐がなくなるだろォ?悲願が達成するンだからなァ」

「ん?とミサカは首を傾げます。結局何が言いたいのですか?とミサカは回りくどい一方通行に少しイラつきます」

 

むーっと無表情で頬を膨らますミサカにオレは苦笑しながら、話の続きをする。

 

「つまりだ、ウザいそいつらが来なくなれば面倒くさい事がなくなる。夢の堕落(ニート)生活ができるわけだ」

「ニート……ニートとはNot in Education, Employment or Trainingのことですね。とミサカは確認を取ります」

 

えらい流暢な。

 

「そォだな」

「では、絶対能力者へならなくても一方通行は今でもニートなのですから、大丈夫なのでは?とミサカは一方通行は意外にもバカだと思い知ります」

「おいコラどォいうことだ?」

 

オレの反応にミサカは鼻で息をしてバカにしたように笑う。……この天下の一方さんをバカにしやがりましたね??この人形め。

 

「ですから、一方通行は長点上機学園所属ですが通ってないと聞きました。とミサカは以前読んだ書類の内容を思い出します」

「そりゃァ一応(・・)だし、それにオレは特殊な立ち位置だかなァ。行かなくても出席扱いなンだよ」

「それです。とミサカは指摘します。所属しているが通っていない、何もしてない……これのどこがニートじゃないのですか?とミサカは問いかけます」

 

ぐっ……!痛いところ突かれたっ!

確かに、かの長点上機学園に所属しているとはいえ、オレの生活はニート同然だ。

家でぐうたらし、実験に出かけたり、コーヒー買いに行ったり、ぶらぶらしたり。これのどこがニートじゃないと言い切れるのだろう。

今、夏休みなので日中にぶらぶらしていてもなにも不思議はないが、春も秋も冬もずっと同じ生活だったオレなんて、何処が学生なのだろうか。言うなれば学生ニートか、オレは。

……ふむ、オレの悲願は既に達成されていたようだ。そこにウザいハエ共が集りに来ていただけで。

うぅ、クッソ……確かにバカだな、オレ。

 

「う」

「う?」

「うるせェッ!用が済ンだンなら、どっかいけ!ってか帰れッ!」

「わー!あくせられーたがおこったー!とミサカははしゃぐ子供のようにその場から去ります」

 

スライド式の扉を開け放ち、ちゃんと閉めてから去っていった。言葉の割になんて律儀な……。

一難去ってまた一難というのはこういうことだろうな。カエル顔の医者よりミサカの方が疲れた。あいつら無表情のくせにテンションがたけぇんだよ。(自分のことは棚にあげる)

カエル顔の医者が去った後は寝ようと思ってたけど、ミサカのせいで目が覚めた。今日一日中暇である。今の時刻は昼。時間が有り余りすぎる。

 

「…………」

 

そっと、右手を上げる。

オレの能力はベクトル操作。触れたあらゆるもののベクトルを操る、言わばチート染みたもの。上条サンのおかげで本当のチートじゃなくなったけど。

少し集中して、周りにある空気のベクトルを操る。そこから風を少しだけ起こして、右手に集めた。そして圧縮。

 

----バチッ。

 

っと、成功のようだ。手のひらの上、そこには青白い閃光が発生していた。プラズマだ。

小さく青白い球体として出来たそれからは、電気のようなものがバチバチと発生している。

 

…………うん、やっぱチートだわこの能力。

 

さすが第一位。(自画自賛)

普段、物を速く飛ばしたり、蹴りや拳の速度を強くしたりしてただけで考えてもなかったが、それだけでも身体強化類の能力に匹敵するし、空気のベクトルを操って風を作り出すのは大気系能力。今のように電気を発生させるのは電子系能力になるし……。複数能力を持っているようなもんだな、コレ。今更か。わかってたことだし。

まぁ、操れるだけで殺傷性がないんだよな。こういうの。

だって流石に風力使い(エアロシューター)みたく、真空刃は作れな……いと思うし、多分。ちょっとまって不安になってきたぞ。できそうで怖い…………いや、できない、できないな!できないぞー!!!うん、できない!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………オレはプラズマを消し、そっと布団を被った。

 

 

 

 

 

 




▽あくせられーたはげんじつとうひをつかった!

アクセラさん器用貧乏説。
違うんだ!アクセラさんが悪いわけじゃないんだ!幻想殺しっていうチートと強敵たちを生み出してるとある(世界)が悪いんだ!

ベクトル操作で真空を作り出せるのか?
『何もない空間』が真空なので、一定範囲を決め、反射膜を作り、その中にある空気中の分子を操り無くせば可能かと。
そもそも分子レベルで操れるのかが謎です。まぁ向き(ベクトル)を発生させて空気などを操ることができるんですから…………できるんじゃないかな?

ワタシ、ブンケイ、カガク、ワカンナイ。
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