ソードアート・オンライン 黒と紫の軌跡   作:藤崎葵

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連休も終了し、また仕事の日々が始まる・・・
といっても連休は秋祭りの準備と運行で忙しかったから休んでもないけどね☆



では43話、始まります。


第四十三話 OSS

メニュー操作を終えて、キリトの左手に片手剣が握られる。

右手の『ディバイネーション』と同じく、旧SAOから付き合いのある鍛冶師リズベットに鍛えてもらったもう一振りの剣だ。

銘を『フルンディング』。ここ最近での彼女の最高の逸品だ。

「そっか。キリト君の二刀流なら手数と火力が上がるからHPを削り切れるかも」

そう言って表情を輝かせるアスナ。

しかし、キリトは首を振って

「いや……多分、二刀流でも削り切るのは難しい。あのドラゴンの防御力は並じゃないからな。少し手数が増えた程度じゃ落ちないさ」

そう言い切った。

「なら、どうするんだ?」

「ドラゴンのHPを削り切るのは俺じゃない。ユウキ、例の『アレ』はもう完成してるんだろ?」

ソラの問い掛けにそう答えながら、キリトはユウキに視線を送る。

するとユウキは満面の笑みで

「もっちろん! まさか、こんなに早くお披露目する事になるなんてね」

そう言った。

ソラとアスナは疑問符を浮かべている。

「見てのお楽しみだよ」

そんな二人にユウキは軽くウインクしてみせた。

改めて、上空にいるドラゴンに視線を移す。

削ったHPは既に8割にまで回復していた。

「よし、行くぞ!!」

キリトの号令と共に3人は頷いて、翅を広げた。

彼も翅を広げ、4人同時に勢いよく飛翔する。

「散開!!」

刹那、4人はドラゴンを包囲するように散り散りになる。

「ギャオォォォァァァァァ!!」

巨大な咆哮を上げるドラゴンにまず切りかかったのはソラだ。

「はぁ!」

赤いライトエフェクトを纏って放たれたのは片手剣ソードスキル『シャープネイル』

隙の少ない三連斬撃だ。

獣の爪痕を思わせる斬撃はドラゴンのHPを確実に削る。

「スイッチ!!」

空かさず飛び込んできたのはアスナだ。

白銀の細剣がライトエフェクトを纏う。

放たれたのは、舞うようにして上下に撃ちこまれる二連撃の細剣ソードスキル『ダイアゴナル・スティング』だ。

それはドラゴンの首にヒットし、HPを削いでいく。

「まだまだぁ!」

続いて飛び込んできたのはユウキ。

ライトエフェクトを纏った彼女の愛剣が勢いよくドラゴンに振られる。

ソードスキル『ホリゾンタル・スクエア』。

水平4連続斬撃だ。

放たれる四度の水平斬りが、正方形の軌跡を描いて消散する。

これによってドラゴンのHPはイエローゾーンへと突入した。

しかし、まだ終わりではない。

「おぉぉぉ!!!」

反撃の余地を与えないように、二刀のキリトが連続の斬撃を繰り出した。

青いアタックエフェクトが、流星を思わせるように線を描いていく。

徐々に、けれど確実に減っていくドラゴンのHP。

「おぉ!!」

キリトの右の剣『ディバイネーション』が紅く輝く。

直後、片手剣ソードスキル『ヴォーパルストライク』がドラゴンの至近距離から放たれた。

強力な重突進攻撃をもろに受けたドラゴンは、その体躯を大きくのけぞらせた。

先の攻撃でHPは既にレッドゾーン。

「いまだ! ユウキぃ!!!」

キリトの叫びに

「でぇやぁぁぁ!!!」

ユウキが愛剣『マクアフィテル』を後ろに引いた刺突の構えの状態で、ドラゴンへと飛び込んできた。

彼女の剣が青紫に輝いた――――その刹那。

放たれる高速の連続刺突。

その回数、右上から左下に5連撃。

「5連撃?!」

「しかし、これでは浅い!」

驚きつつも、これでは仕留められないとアスナとソラは言う。

だが、キリトは笑みを浮かべていた。

「いいや……まだだ!」

そう言った直後。

青紫のライトエフェクトを纏った剣を勢いよく引き戻し、その光を失わないまま続けて連続の高速刺突を繰り出す。

その回数、再び5連。

今度は左上から右下へだ。

しかし、まだ彼女の剣の煌めきは止まない。

思いきり剣が引き戻され、青紫の輝きはさらに強くなる。

「これで……終わりだぁぁぁぁ!!!」

叫びと共に、最後の渾身の刺突が、先の十連撃で描かれた十字の交差点の中央へと放たれる。

それはドラゴンの腹部へと炸裂した。

ここでようやく彼女の剣の輝きが消える。

「じゅ……11連撃?!」

「これは……」

「あぁ。これがユウキのオリジナルソードスキル『マザーズ・ロザリオ』だ」

驚くソラとアスナにキリトはそう言った。

オリジナルソードスキル―――略称『OSS』。

2025年5月に行われた大型アップデート。

そこで新生アインクラッドを実装した運営は、SAOの代表的なシステムである『ソードスキル』システムも同時に導入した。

その際に、設定されている既存の剣技ではなく、独自の剣技を編み出し登録することのできる『オリジナルソードスキル』システムも導入されたのだ。

これの登録手順はメニューを開き、OSSタブに移動して、剣技記録モードに入って記録開始ボタンを押す。

その後、心赴くままに武器を振り回し、技が終わった時点で記録終了ボタンを押す。

と、手順はいたって簡単なものである。

しかし、多くのプレイヤーがこれによって挫折を味わっていたのだ。

『ぼくのかんがえたひっさつわざ』をソードスキルとして登録するには、非常に厳しい条件をクリアしなくてはならない。

斬撃と刺突、これらの単発技はほぼ全てのバリエーションが揃っている。

それ故OSSを登録するには必然的に連続技にしなくてはならない。

しかし、一連の動きに於いて、重心移動や攻撃軌道等々、さまざまなものに無理があってはならない。

その上、全体のスピードは、完成版のソードスキルに迫るものでないといけないという。

つまりは本来、システムアシスト無しには実現不可能な連続技を、アシスト無しに実行しなくてはならないという、矛盾とさえ言っていいような厳しい条件が課せされる。

これをクリアするには、ただひたすらに反復練習するしかない。

その地味な作業にほとんどのプレイヤーは耐える事が出来ずに『俺必殺技』を諦めたのだ。

だが、ユウキはこの地味な作業を何度もこなし、ついに数日前にOSS『マザーズ・ロザリオ』を完成させたのだ。

因みにこれを創った動機はいたって単純で、「突きの限界回数に挑んでみたかった」というものである。

「ギャォォォォォォ!!!」

強力なOSSを叩きこまれたドラゴンはけたたましい咆哮を上げている。

HPは勢いよく減っていき―――僅か数ドットを残して止まってしまった。

それを見てユウキを始め、皆が驚愕する。

完全に仕留めたと思っていたものが、仕留め切れなかったからだ。

ドラゴンは緩やかにHPを回復させつつ、大きな翼を羽ばたかせて上昇する。

一定の距離を取った後、ホバリングしたまま顎門を大きく開き始めた。

「これは、ブレス攻撃の構え?!」

「ユウキ!!」

ターゲットにされているユウキは技後硬直で動けない。

その間にも硬質なサウンドエフェクトが鳴り響く。

大きく首を反らし、勢いよくブレスが放たれようとした―――その瞬間。

「させるかぁぁ!!」

叫びとともに、ドラゴンの頭部に強力な一撃が見舞われた。

キリトの『ヴォーパルストライク』だ。

突進力のある攻撃はドラゴンのブレス攻撃を見事にキャンセルし、回復していたHPを削り落とす。

残りわずか数ドット。

そこへ、ソラが飛び込んできた。

彼の剣は鞘へと納められている。

その姿にアスナは疑問符を浮かべている。

しかし、キリトとユウキは驚きの表情を浮かべた。

「飛燕……一閃!!!」

直後、白いライトエフェクトを纏いながら、刃が超高速で垂直に抜き放たれた。

その一閃は残り数ドットだったドラゴンのHPを完全に削り切る。

「ギュォォォォォァァァァァァ!!!!」

断末魔の咆哮を上げながら、ドラゴンはその体躯がポリゴン片となって爆散した。

ソラは愛剣を一振りし、鞘へと納めた。

すると彼の目の前にシステムウインドウが現れた。

表示されていたのは『You got the last attacking bonus!』

次いで表示されたのは『銀竜刀』というアイテムだった。

「やったなソラ。後、LAゲットおめでとう」

剣を納めたキリトがソラに声をかけてくる。

「あぁ。お疲れ様」

「助かったよー。あのままじゃボク確実に落ちてたからねー」

次いでユウキとアスナも彼らのもとに寄ってきた。

「僕は止めを刺しただけだよ。ブレス攻撃をキャンセルさせたのはキリトだしね」

「えへへー。キリト、アリガトね」

言いながらユウキはキリトの腕にしがみついてきた。

「いや、まぁ……ユウキが無事でよかったよ」

キリトはそう言って彼女の頭を撫でる。

ユウキは気持ちよさそうに目を細めた。

「……相変わらず仲がいいな」

「ですねー……」

目の前でイチャつくスプリガンとインプに、2人のウンディーネは呆れ混じりに言う。

すると、キリトのロングコートポケットから小妖精が飛び出してきた。

「そうなんです。パパとママはいつでも仲良しです」

出てきたのはナビゲーションピクシーの小妖精――ユイだ。

彼女は旧SAOにおいての『メンタルヘルスカウンセリングプログラム』であったのだが、『カーディナル』によって異物として消去されかけたところをキリトによって助けられた。

その当時から、ユイはキリトをパパと、ユウキの事をママと呼んで慕っている。

2人も彼女を自分達の本当の子供として可愛がっている。

「あぁ。パパとママはずっと仲良しだぞ」

「もちろんユイちゃんもね」

大好きな両親からの言葉にユイは嬉しそうに笑顔を見せる。

「コホン! ほのぼのとした空気に水差して悪いけど……ドラゴンがドロップしたアイテムを確認しない?」

アスナが軽く咳払いしてそう言った。

「ん、そうだな。ユイ」

「はい、パパ。アイテムは広場の中央にオブジェクトとしてドロップしたようです。どうやら一つだけではなく3つ程ドロップしています」

言われたユイはそう答える。

4人は頷いて広場へと降下した。

着地して翅をしまい、広場中央にあるアイテムらしき光の塊を三つ視認した。

それに近づいてキリトはそれに触れてみる。

するとウインドウが出現し、アイテム名が表示された。

『銀竜の涙』

これがクエストクリアの為に必要なアイテムのようだ。

残り二つにも触れてみると、同じようにアイテム名が表示される。

一つは『銀竜の爪』、もう一つは『銀竜の鱗』。

どちらもAクラスのレアアイテムである。

「これは……鍛冶屋に持っていけば質のいい装備品が作れるな」

「何になるのかなー? 片手剣とか、片手剣とか?」

「それって、ユウキの願望でしょ?」

ワクワクしたように言うユウキに、アスナは苦笑いでそう言った。

「さて、涙の方はクエストクリア用のアイテムだから、爪と鱗はどう分配するかな」

「僕はLA取ってしまったから、3人で分配すればいいよ」

キリトの言葉にソラはそう返す。

「そうか。わかったよ。俺もいいからユウキとアスナで好きな方を持っていけばいいさ」

「ホント! やったー!!」

「本当にいいの?」

「あぁ」

問いかけにキリトは頷く。

「アスナ、どっちがいい?」

「それじゃぁ……鱗の方を貰っていいかな?」

「いいよ。ボクは爪の方を貰うね! なんの武器になるかなー?」

2人はそれぞれのアイテムに触れ、自分のストレージに収納した。

「そういえば。ユウキもだけど、ソラさんもOSSを登録してたんですね?」

その時、ふと思いついたようにアスナがソラに尋ねた。

当の彼は苦笑いだ。

「確かに。いつの間に登録したの?」

「しかも、アレって……」

「あぁ。あのスキルの模倣だよ」

「あのスキル?」

アスナが疑問符を浮かべる。

「ソラがSAO時代に使っていたユニークスキル『抜剣』のソードスキルさ」

「相変わらずチートな速さだよね。ていうか、よく再現できたね?」

キリトとユウキが呆れ気味に言う。

「登録したのは2日ほど前だよ、よく使ってたからね。身体に染み付いてるんだよ」

「『抜剣』なんてスキルもあったんですね」

「今はもうないけどな。俺が使っていた『二刀流』を含めた約10のユニークスキルはゲームバランスを崩しかねないから、ALOでは実装しなかったんだよ」

旧SAOではたった一人しか使い手がいなかったユニークスキルが存在していた。

キリトは『二刀流』。その名の通り左右に剣を装備できるスキルだ。

そしてソラが会得していたのが『抜剣』。納剣状態からしかソードスキルのモーションを起こせず、盾も装備できないが、代わりに鞘を攻撃用として装備できるスキルである。

これらのユニークスキルはセットするだけでゲームバランスを狂わせる程の補正を得ることが出来る。

デスゲームと化していたSAOでならばともかく、ALOはPK推奨とはいえ純粋なゲームだ。

それ故に、これらのスキルは大型アップデート時に実装されなかったのである。

「へぇ……じゃぁ、キリト君も『二刀流』のソードスキルを再現してOSSに登録してるの?」

「いや、再現は可能だけど……登録はしないつもりだよ。あのスキルの役目はもう終わってるからな」

アスナの言葉にキリトはそう答えた。

『二刀流』はあくまでSAOで戦っていた『キリト』のスキル。

ユウキを救いだしたあの時に、SAOの『キリト』の役目は終わったと彼はステータスを引き継がずにそれを初期化した。

だからこそ、彼は『二刀流』も役目を終えたとそう感じ、スキルの再現は出来るもののOSSとして登録する事はしないようにしている。

「さぁて、クエストを終わらせにホルンカに戻ろうか」

そう言ってキリトは背伸びする。

ユウキ達も頷いた。

そうして、歩き出そうとした―――その時。

「パパ! プレイヤー反応です!! 数は5人です」

ユイがそう告げてきた。

その刹那、ボンっと何かが弾けた音が響き、あっという間に彼らの視界が闇に覆われる。

正確には黒い煙が彼らの視界を覆い隠したのだ。

「な、これは?!」

「スプリガンの目晦ましの魔法!?」

「煙を吹き飛ばすぞ!!」

叫んでキリトは背の二刀を抜き放った。

青いエフェクトを纏った二本の剣が勢いよく振られ、黒煙が一気に吹き飛ばされた。

途端に視界が明るくなる。

その時

「ひひっ、狙い通りだぜ!」

キリト達の耳に声が届き、声の出所に向かい振り返る。

そうして目にした光景に、目を見開いた。

サラマンダー2人に、スプリガンとウンディーネとシルフが1人ずつ、並ぶように武器を構えて立っている。

そのすぐ近くで、アスナが地に倒れ込んでいた。

 




地に倒れるアスナ。


下卑た笑みを浮かべるプレイヤー達。


目の前の光景にソラは・・・



次回「殺意」
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