ソードアート・オンライン 黒と紫の軌跡   作:藤崎葵

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皆さんお久しぶりです。とりあえず生きてました。活動報告にもあるように色々あったんです。いやもうほんと色々と……ねぇ……



そんな訳でひっさびさの更新!!




では84話、始まります。


ロストソング
第八十四話 スヴァルト・アールヴヘイム


2026年 6月

 

 

央都アルン郊外の浮島。

ここに黒衣のスプリガンが佇み、遥か空を見上げていた。

しばらくそうしていると

 

「お兄ちゃーーーん!」

 

声が耳に届き、振り向いてみるとシルフの少女が翅を広げ、少年のいる浮島へと飛翔してきた。

少女が彼のいる浮島に降り立つと

 

「リーファ」

 

少女の名を呼ぶ。

すると少女────リーファは彼に歩み寄って呆れた表情を見せながら

 

「もう、先にログインするなんて、どれだけ待ち切れなかったの?」

 

「いや、ははは。すまん」

 

両手に腰を当てながら言うリーファに少年────キリトは苦笑いを浮かべながら言い頭を掻いた。

その様子にリーファも苦笑いを零し

 

「しょうがないんだから……でも────」

 

そこで区切り、キリト同様に空へと視線を向けた。

 

「ついにこの時が来たんだね」

 

「あぁ。あれが新しく実装された世界。光と闇の神々が住まう伝説の浮島大陸『スヴァルト・アールヴヘイム』」

 

「お兄ちゃん、告知されてからずっと楽しみにしてたもんね?」

 

 

2人の視線の先にあるのは四つの浮島大陸。

今年の2月に行われた『ALO統一デュエルトーナメント』後に告知され、遂に今日実装された新しいエリア。

それが『スヴァルト・アールヴヘイム』である。

このエリアは四つの浮島大陸で構成されており、島を一つずつ攻略していき移動範囲を拡大していく仕様になっている。

そこでしか獲得出来ない武具やアイテムも公式サイトでほんの少しだが公開されており、キリトを始めとする多数のALOプレイヤー達がワクワクしながら実装を待っていたのは想像に難くないだろう。

事実、彼は待ちきれないと言わんばかりに学校が終わると足早に帰宅し、速攻で制服から部屋着に着替えてアミュスフィアを被ったのだから。

 

「あぁ。俺だけじゃない、多くのALOプレイヤーがこのエリアの実装を待ち望んでたからな」

 

「早く遊びたくてウズウズしてるって感じだね」

 

クスリと笑って言いながら、リーファは一歩踏み出してから翅を広げて跳び上がり

 

「さぁ、いつまでもこんな遠くから見てないで、早くあそこまで飛んでいこうよ!」

 

ふわりと振り返ってキリトに向かい言うリーファ。

するとキリトはいつものように不敵に笑って

 

「あぁ、行こう!」

 

そう言って彼も翅を広げてキリトも飛び上がる。

翅を鳴らし、2人は同時に加速を開始し飛翔した。

目指すのは新たなる冒険の地、『スヴァルト・アールヴヘイム』最初の浮島─────『浮島草原ヴォークリンデ』だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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空都ライン 転移門広場

 

 

「おー。ここが『スヴァルト・アールヴヘイム』の街かー」

 

言いながらキリトは辺りを見回してみる。

周囲にはすでに多数のプレイヤー達が居り、新しく実装された街中を探索しているようだ。

すると、キリトのジャケットのポケットから小妖精が顔を覗かせ、翅を広げて飛び出してきた。

そのままキリトの肩に乗り、小さく伸びをすると

 

「ふぅ。ようやく出てこられました。今日はお二人だけなんですか?」

 

そう言って尋ねてくる。

 

「ううん。後で落ち合う事になってるんだよ、ユイちゃん」

 

質問に応えたのはリーファだ。

すると小妖精────ユイは愛らしく笑いながら言う。

 

「そうなんですね」

 

「ユイ。この街はALO本土の街と違いがあるのか?」

 

「そうですね。基本的にはあまり変わりません。クエストを受けるギルドや、酒場にマーケット、それに闘技場などもあるようです。ただALO本土の街と違って、この街の中では飛ぶ事は出来ないみたいですね。後はフィールドに出るときは転移門を利用しないといけないみたいです」

 

尋ねられたユイはそう応える。

キリトは感心したような表情になって

 

「なるほど。ありがとな、ユイ」

 

そう言って彼女の頭を指で軽く撫でてやった。

嬉しそうに表情を綻ばせるユイと、その様子を見ながらやれやれと肩を竦めるリーファ。

そうしていると

 

「あ、キリトーーー!」

 

聞き覚えのある声が耳に届いて振り返ると、そこには長い紫の髪を靡かせたインプの少女と、青い髪のウンディーネの少女と青年がいた。

三人はキリトの所まで歩み寄ると、インプの少女がなにやらむくれた表情になり

 

「もぅ、キリトってば早く来すぎだよ! 学校終わった途端に帰っちゃうしさ」

 

そう言って彼を見上げてくる。

その様子に一緒にいた2人のウンディーネは苦笑いで言った。

 

「まぁまぁユウキ。キリトが待ち切れるわけないじゃないか」

 

「そうだよ。キリト君らしくていいじゃない」

 

「むぅぅ。ソラとアスナの言う通りだけどさぁ……ボクとしては一緒にここに来たかったなぁ」

 

2人のウンディーネ────ソラとアスナの言葉に、インプの少女────ユウキは不満げなご様子だ。

キリトは苦笑いで頭を掻きながら

 

「悪かったよ、ユウキ。今度クエストに付き合うから勘弁してくれ」

 

そう言ってくる彼にユウキは数秒間ジト目で見やった後、軽く溜息を吐いて

 

「しょうがないなぁ。約束だよ、キリト」

 

呆れたような顔でそう言った。

後に連れて行かれたクエストが超高難易度であり、何度も死にかけたキリトは軽々しく約束するんじゃなかったと後悔したのは別の話だ。

そうこうしていると

 

「やっぱりアンタ達、待ち合わせ時間より先に来てる!」

 

「仕方ないですよ、リズさん。キリトさんが待ち切れるわけないじゃないですか」

 

「ホント、アンタって欲望に忠実って言うか、団体行動を見出すタイプね。ま、アンタらしいっちゃアンタらしいか」

 

声が聞こえ、振り返ってみるとそこにはレプラコーンとケットシーの少女が三人、そしてその後ろには

 

「おいおい、一番乗りかと思ったらもういやがるじゃねぇか。早すぎだろキリの字!」

 

「それでこそキリトって感じだがな」

 

真っ赤な髪を逆立て悪趣味なバンダナを巻いたサラマンダーと褐色肌のノームが立っていた。

レプラコーンはリズベット、2人のケットシーはシリカとシノン、サラマンダーがクラインでノームはエギル。

今まで様々な冒険や戦いを共にしてきたキリトの仲間たちだ。

今回の『スヴァルト・アールヴヘイム』の攻略。

その為のメンバーがここに集まったのだ。

皆の顔を見回してから、キリトは一息吐き

 

「よし、そろそろ行こう! もう沢山のプレイヤー達が、このエリアに挑戦してるはずだ!!」

 

そう言って不敵に笑って見せた。

 

「腕がなるわね」

 

 

「さぁ、新しい素材を見つけるわよ!」

 

クールだが何処か楽しそうなシノンと、未知の素材にワクワクしているリズベット。

 

「俺も新商品をどんどん仕入れるぜ!」

 

「ピナ、頑張ろうね!」

 

「きゅるぅ!」

 

フィールドが変わっても商魂たくましいエギルに、相棒の子竜と気合入れをするシリカ。

 

「おっしゃ! 俺もカッコいいとこ見せてやるぜぇ!」

 

「分析は任せてください!」

 

同様に気合を入れながら言うクライン、キリトの肩から飛翔して言うユイ。

その様子を見ながら

 

「うわぁ、皆気合入ってるなぁ。私も負けてられないな!」

 

「私達も頑張りましょう、ソラさん」

 

「あぁ。頼りにしてるよ、アスナ」

 

リーファとソラにアスナもまた気合を入れたようにそう言った。

そしてユウキがキリトの方へと向かい

 

「よぉし! 行こう、キリト!!」

 

満面の笑みを浮かべて言う。

キリトは頷いて

 

「あぁ! 『スヴァルト・アールヴヘイム』攻略開始だ!!」

 

『おぉーーーーー!!!』

 

右腕を高らかにあげて叫ぶと、皆もそれに続いてくる。

目指すは新エリア『スヴァルト・アールヴヘイム』全制覇。

キリト達はその第一歩である第一の浮島大陸『浮島草原ヴォークリンデ』の攻略へと乗り出した。

新たなるフィールドでの冒険に、胸躍らせるキリト達。

しかし、彼らは知らなかった────いや、気付かなかった。

そんなキリト達を、陰から見つめる視線がある事に────

 

 

 




豊かな緑に覆われた第一の浮島。

浮島草原に少年たちは早くも難関にぶち当たる。


次回「浮島草原ヴォークリンデ」

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