第九話 一馬(ユニコーン)の休日その5
星香の手作り弁当も食べ終わって、今はベンチで食後の休憩。
食後に行き成り動くと、横腹痛めるので、皆さん気を付けましょうね。特に走ったりしたら地獄を見ますよ。
買ってきたお茶を飲みながらのんびりと俺は空を見上げていた。
雲って良いよな。自由で……俺もあんな自由になりたいな。好きな様に姿を変え、好きなように流れる。羨ましいな。
何か爺臭い思考だな。そうだよな、実際転生前と転生後の精神年齢を足すと32才だからな、よくよく考えると先進年齢三十路を超えた只のオッサンだな俺。
今は自分の事は「俺」ってよんでるけど、オッサンだし「わし」って言おうかな……止めよ。さらに老けそうだ。
隣を見ると、星香がコクッコクッと頭を上下に動かしていた。もしかして、眠たいのか? まあ、分らんでもないな。
満腹でしかも、丁度良い暖かい気温だからな。眠くなるのも分らんでもないな。
実際に俺も少しだけ、眠くなってきているしな。
すると、トンッという感じに左肩に少しだけ重みを感じた。
そちらの方に視線を移すてみると、星香が俺の左肩に頭を置いてグッスリ寝ていた。星香のシャンプーの甘く良い香りが鼻孔を擽る。
俺は無意識の内に星香の髪に手を伸ばしていた。
そして、星香の髪を撫でそうになった所で、
「俺は何をしているんだ」
スグに手を引っ込めた。このままじゃ少し寒いだろうと思い、俺は頑張って着ている上着を星香が起きないように頭が落ちないように脱いだ。難易度10がmaxだと
したらこれは難易度8位あるぞ。そんなどうでもいい事は良いや……。
俺は星香に俺の上着を前から羽織らせた。するとどうだ、星香の右手が俺の裾を掴み、左手で俺の上着を掴んだ。
一瞬起きているんじゃないかって疑ったが、どうでもいいやっていう感じで流した。
お茶をチョビチョビ飲みながら、行き交う人達を見つつも空を見上げて雲を観察する。こういうのんびりいしる日も良いな。
さてと、この後に今までの良いことがひっくり帰るような不運が俺に襲いませんように、最後まで何もありませんように、一応神頼みをしておく。今日で何回やったか分らない神頼みだ。
やっぱり日本って平和だな~中東部の国の方では内線やら隣人国との戦争、また他の所では麻薬の密売人だけが居るような街もあるって聞いたし、マフィアが数多くいるっていう国もあ
るって聞いた。
そう思うと、日本って平和だな。
何か性分でも無いことを考えてしまっていたな。
また俺は行き交う人達(カップルと家族連れが多し)と空を見上げて雲を見ながらボーっとしていた。本当に良いな。こういうのんびりした事が出来る日っていうのはね。
それから大分時間が経ち、空の色に赤みが出始めた所だ。星香は未だに寝ていて起きる気配は無い。
起こすのが申し訳ないがそろそろ起きないと、時間が無くなるよ。
「星香。そろそろ起きろ」
「う~ん。後一万年」
「マジで居たよ。寝つつもこんな事を言うやつが現実に居た」
その事にお兄さんはビックリ仰天だよ。そんな事はいいとして、
「はよ起きろ星香」
「んですかユーくん……わたしのねむりをさまたげるとはいいどきょうですね」
「そんな事を言ってる場合なのかな」
「はえ?」
目をパチクリさせ、頭を起こして辺りを見回す。その際に掴んでいた俺の服の裾と羽織らせていた上着を話した。上着がパサッと落ちた。そしてテンテンテンっというのが、今星香の頭の
中を支配しているだろうな。
「あの~ユー君」
「うん、どうしたんだいへへいへいへい」
「今、それはいいです」
「はい」
そんな凄みを効かせた声を聞いたら、従うのは当り前です。
「今、何時ですか?」
「もう、午後の5時過ぎだよ」
俺の言葉を聞いた星香は頭を押さえた。
「何て事でしょうか。私は大変な失態をおかしてしまいました」
星香がとつぜんガバッと立ち上がって、俺の前まで来た。え? 何? 起こしてくれなかった俺に対しての鉄拳制裁パンチを食らわす気ですか。そうですか? なら来なさい。俺はいくらでも
受け止めてやるぞ。
さあ、来い!!!!!
覚悟を決めた。しかし、痛みは一切襲ってこない? なぜ?
「ごめんなさい!!」
「え?!」
星香が頭を下げた。なぜ? Why?!
「私のせいで、わ、わたしの、っせ、せい、で」
呂律が回らないのか、きちんと喋れていない。
「本当にごめんなさい!!」
そう言って、どこかに駆けだしていった。
星香が泣いていた。その事に俺は頭が真っ白になった……星香が泣いていただと? 直ぐには信じられなかったが頭が覚醒してきた。
「ああもう、世話をかけさせる!!」
俺も立ち上がり、星香がバックを置いたまま走り去ったのでそれを片手に持った。そこで、俺らの一部始終を見ていた二十代前半のカップルが俺の傍までやって来た。
「頑張りなさい」
「女を泣かせたんだ。その責任はキッチリとってやれよ」
そうやって俺の肩を叩いて、心配して声をかけてくれる人が居たんだな。
「ああ、分っている」
俺は走り出す。全力で走る。
人に当たっては「すいません」と謝りながら、人が行き交う遊園地の中を走る。多分、そこまで遠くに行ってはいないはずだ。
もう、なんで星香が謝るんだよ。そんな必要は無いだろうが!! 謝るとしたら俺の方だろう。
星香が楽しみにしていた遊園地。
そんな大切な事も忘れて俺は、肩にある星香の温もりが暖かいことを良いことに、星香を起こさなかったんだ。
そんな俺が星香を泣かせたんだ!! つくづく思うよ。俺は最低の男だってな!!!!! 多分、あのクソナルシストより最低な男だ。俺は!!!!! そんな自分が嫌になる。
そうやって、後悔するのは後だ!! 今は星香だ!!
「星香!! 星香!! どこいるんだ!!」
反応してくれるわけないか。クッソ!!
走り続ける。俺は止まる気は一切ない。星香が見つかるまで、絶対に俺は足を止めない。
辺りを見回すと一か所だけ目に止まった。
そこは……「dead or alive」もう、俺が一生乗らないと誓ったジェットコースターそこの最後尾に星香が居た。
一瞬だけ目を疑ったが、直ぐに星香の所までダッシュした。幸い星香にはバレルことなく、隣まで来た。
すると、俯いていた顔を上げて俺の方を見た。
もう、涙を流していなかったが、目が赤く腫れていた。
俺のせいでか、マジで最低の男だな。
でもなそんな最低の男でも、俺は最低の中の最高の男になろう。星香を泣かせた、勿論俺のせいだ。
だけどな、星香が楽しみにしていた遊園地を悲しみで終わらせる気は全く無い。最後は楽しかったって言わせてやる。そうすりゃあ最低の中でも最高の男だろう。
俺は星香の頭に手を置いて、繊細なものを取り扱うように優しく撫でた。
「ユーくん」
何度も何度も撫でた。
「星香が謝る事なんて一つも無いんだよ」
「で、でも!!」
「でもも案山子もあるか。謝らないといけないのは俺の方なんだよ」
「ユー君……」
「俺はな、星香が楽しみにしていた事を完全に忘れて、自分に甘えて、そして星香に甘えて起こすことをしなかったんだよ。その結果が星香を悲しませたんだ。だから、スマン星香」
「……っぷ!」
「へ?!」
星香が吹いた? どういうこった? 手を口元にあてて笑っているだと。
「本当にユー君は……私は只もう一度『dead or alive』に乗りたかっただけですよ」
「え、ええぇぇぇぇぇぇえええ!?」
人目を気にせずに大声で叫んでしまった。ああ、人目を集めてしまった!! 恥ずかしい。
だが、そんな事は嘘だとすぐにわかった。だって、星香の頬に涙の跡がクッキリと残っていたからだ。
「そうか。なら、一緒に乗ろうか?」
「え?! 良いんですか?」
何でビックリするのさ。
「一人で乗るなんて水臭いぞ。二人一緒に来てるんだ、なら一緒に乗って共感しようや」
「はい。ユー君!!」
やっと笑ってくれた。
さあ、もう一回地獄を味わってきますか。まさか、もう二度と乗るかって誓ったその日にもう一度乗るなんて……ついてねえな俺って奴はよ!!
「ユー君。何で笑みを浮かべているんですか?」
「お?! 笑みを浮かべていたか?」
「はい。何か嬉しいっていう感じの笑みを浮かべていましたよ」
そうか、偶には運が無くても良い事があるって分ったからな。
「さあ、星香覚悟を決めておけよ」
「もう、並んだ瞬間から覚悟を決めています」
「「いざ、出陣!!!!!」」
『ぎゃああああああああぁぁぁぁぁぁあああぁぁぁあああ!!!!!!!』一生分の叫び声を二人一緒にあげた。こういうのも良いよな。
また、先ほどと同じ状況にあった。気が付けばベンチに座っていた。
マジで三途の川の半分以上も進んでいたよ。危ない危ない、もう少しで完全にあの世に行ってたよ。まったく、川の向こう側でなのは(19才version)が全裸でこっちにおいでって手招きするから、つい誘われちまったじゃねえか。流石なのは、フェイト程のスタイルじゃ無いけど、バランスが良いエロい体してやがった。
まてよ、星香も元々はなのはから作られたようなもんだから……グボハ!!!!! エロい。星香の体もエロくなってしまう。goodjobだ!!!
「いた!」
気絶から目を覚ました星香が、俺の足を踏みつけていた。
「あの~星香さん。何で私目の足を踏んでいるのでしょうか?」
「何となくです」
「さいですか」
とは言っても、星香はすぐに足をどけてくれた。
「ユー君」
「うん?」
「今日はありがとうございました」
星香が満面の笑みで俺に笑いかけた。
「あ、ああ」
俺の顔は茹でタコのように顔を真っ赤にしているだろう。ダメ俺、星香の笑顔に弱いわ。
これあから星香は可愛いんだよ。
この時たま見せる感情を表に出した最高の笑顔が……この笑みが見れて良かった。今日の疲れが吹っ飛んだわ。
「ユー君。帰りましょう」
立ち上がった星香が、座っている俺の手を引っ張る。
「良いのか? まだ閉まるには時間が余っているぞ」
「良いんです」
「そうか、星香がそう言うなら良いけど」
「ですけど、」
「うん?」
星香が急に顔を近づける。
「もう一度連れて来てくださいね。その時はうんっと一杯楽しみましょう。今日以上に……ね!!」
「ああ、そうだな。星香」
こうして、俺の休日は過ぎて行った。この日の帰りに折角隣町まで来たから、飲食店によって夕食をすまして家に帰った。
夕食を外食で済ました一番の理由は、家に帰って作るのが面倒臭いからだ。
さてと、父さんたちが帰ってくるまで何もありませんように……割とガチデ……