それではどうぞ。
1 日常
「ったく、行商人も楽じゃねえな」
台車を引きながら、この俺こと柊空(ひいらぎそら)・プレイヤーネーム『ホロウ』は愚痴をこぼす。黒いフードに奇妙な仮面を被った姿のせいか、街の人からは気味悪がられている。うん、今日も平常運転だ。非常によろしい。
「んじゃ、いつものところに行きますか」
ソードアートオンラインの攻略も進み、現在は50層近くまで解放されている。現実世界へ戻るための条件であるゲームクリアのために攻略組が今日も攻略に勤しんでいる。
俺は攻略組では無いが、レベルは攻略組程度にはある。じゃあ攻略しろってのは無しだぜ?人には色々と事情があるもんさ。
そうしている間に、目的地である48層主街区《リンダース》に到着した。のどかな風景が広がるこの街で、全身黒の仮面男はやはり目立つ。そしていつもの場所に止まり、腰を下ろすと、黒い猫のようなモンスターが俺の頭に飛び乗った。
こいつの名前はシーナ。種族は『ナイトウォーカー』という黒猫のようなモンスターだ。こいつは夜中に偶然遭遇して偶然テイムに成功するという幸運を引き連れてきた。飯ウマ以外の何でもないね!
そうは言ってもこいつにはかなり助けられてるし、今では頼れる相棒だ。
今日は招き猫(シーナ)もいるし、商売繁盛間違いない!はず!!さあ、張り切って商売をしようじゃないかっ!!!
「…………何馬鹿なこと言ってるのよ」
「あれ、声に出てた?」
「ええ、思いっきり声に出てたから気持ち悪かったわ」
「それを黙って見てるのはどうかと思うぞ、リズ」
ピンクのショートヘアーの少女リズベットは呆れたような顔で話しかけてきた。リンダースで鍛冶屋を営む彼女とは商業者同士何かと話をするし、お互い常連でもある。
「いつものことだけど、よくその格好で商売出来るわね」
「お前もよくそんなところに買いに来るな」
「あら、そんなこと言うと頼まれてた武器渡さないわよ?どれだけ待たされたことか、ちゃんと理解してるのかしら?延滞料金でもかけようかしら」
リズベットはニヤニヤとこちらを見る。勝ったと言わんばかりのドヤ顔だ。頼んでた武器をすっかり忘れていたことを思い出し、相手の言わんとすることが理解出来た。
俺とリズは何かと言い争うことが多い。そのため、どうにか一泡吹かせてやろうとお互い必死なのだ。そのため、相手の弱みを握ることは必須と言っても過言ではない。
まあ、どうせそんなことだろうとは思ったけどね。しかし、こちらにもカードがあることを忘れてるみたいだな。
「………そういや、『アレ』はいつ支払ってくれるのかな?」
「…………あっ、やっぱり今の無し!ちゃんと武器渡すからそれはっ!!」
「えー、でもなー、結構傷ついたしなー、倍にしちゃおっかな」
「タダでいいから!!そのお金も今すぐ持ってくるからそれだけは許して!!」
実は、俺リズにお金を貸してるんだよね。鍛冶屋を始めるための費用の一部を俺が負担していたのだ。その返済が済んでいないので、それを上手くネタに使ったというわけだ。それにしても俺への返済が一番最後でしかも忘れてるとか結構酷いでしょ?まあ本人もうっかり忘れてるんだけどね。
その後、無事武器の返却と借金の返済が完了し、お互いの仕事に戻った。去り際のリズの悔しそうな顔は傑作だった。写メで送っちゃお!送る相手いないけどね。
まあなんだかんだ言ってリズと話す時間は結構楽しみだったりするからいいんだけどね。話しかけてくれるのはリズくらいってのもあるけど、こうして話しかけてくれるのは嬉しいものだ。絶対本人には言わないけどね、ネタにされるから。
すっかり空も暗くなった頃、俺は迷宮区に来ていた。暗くなってから迷宮区に入るとかお前馬鹿じゃね?と思うあなた、大正解!でもそんなの関係ねえ!!はい、○ッ○ッ○ー!!
「まあ、負けることは無いけどな」
何度も経験しているし、むしろこっちのホームだ。夜だろうがやることは一つ。目の前の敵を斬ることだ。
死と隣り合わせのこの状況に対する高揚感が頭を支配する。殺し合うこの感覚がたまらない。でも今は冷静沈着な様子を演じよう。深呼吸をし、毎回お決まりのセリフを口にする。
「イッツ・ショウ・タイム」
さあ、狩りの始まりだ。
読んでくださりありがとうごさいました。何とか書けました。腕が筋肉痛です。しかし我ながらの駄作っぷりに絶望しています。次の話も頑張って書きますのでご指導ご鞭撻の程よろしくお願いします。