書きたいことが多かったせいか、結構分かりづらいかもしれませんが、生暖かい目で見ていただけると嬉しいです。
それでは、どうぞ。
「リンク…………スタート」
その言葉と共に俺は《ソードアートオンライン》の世界にログインした。アバターをいじり、名前の欄に《Hollow》と入力する。
俺の名前の空《ソラ》というは、空《カラ》とも読む。俺の心は虚無。空虚でうつろ。故にホロウ。全てを失った俺には相応しい名前だ。
そうして柊空という俺は死に、ホロウという俺が生まれた。
そしてフィールドに出ると、俺は短剣でモンスターを狩りまくっていた。
この体はアバターだ。つまり顔の傷も無く、失った両足もある。元々の体より嫌なほどしっくりきていたことに少し戸惑いはあったが、目の前にある快楽の前には塵に等しかった。
モンスターに刃を突きつける度、今まで味わったことの無いような高揚感が頭を支配した。あまりにも刺激的なそれに、思わず口元が歪んだ。こうして戦っていると、生きてると実感出来る。自分の存在を認識出来る。そうして俺は、戦いの中に溺れていったのだった。
戦闘を終え、ひとまず街に戻ろうとすると、突然鐘のような、警報音のような音が響いた。すると、青い光と共に《はじまりの街》へと転移した。
「……………バグか?」
俺はアイテムを使ってないので、普通このようなことは有り得ない。なら、この事態を引き起こしているのは運営か、またはバグのような不具合か。
「ま、どうでもいいか」
周囲の奴らは「ログアウトボタンが消えてる」だの「このままじゃ帰れない」だの喚いてやがる。まあ、こんな状況で落ち着いてる方がおかしいな、普通。でも俺の場合はログアウトする気がないから別に関係ないしどうでもいい。てかアナウンスまだかよ早くモンスター潰したいんだけど
『プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ』
その声は、巨大な人型の何かから発せられた。といっても亡霊のような姿で、真紅のフードで顔を隠している。そして「私の世界」と言ってる。つまりこいつは。
『私の名前は茅場晶彦《かやばあきひこ》。この世界をコントロール出来る唯一の人間だ』
驚いた。天才量子物理学者であり、ナーヴギアの基礎設計者、そしてこの《ソードアートオンライン》の開発ディレクター。そんな絵に描いたような天才が出てくるとは。これはこれで面白いのかもな。
そして茅場は言葉を続ける。
ログアウト出来ないのは本来の仕様で、このゲームをクリアするまでログアウトは出来ない。
HPが0になったり、外部からナーヴギアを外そうとすると、電磁波によって(電子レンジの原理で)脳を破壊される。つまりは死ぬ。
これがこのゲームの仕様だそうだ。周りでは動揺やら恐怖やら地獄絵図になってるが、俺は違った。
────────最高じゃねえか。
なんだ、わざわざ俺の求めていたものにしてくれたのか。サンキュー茅場。これで遠慮なくこの世界に溺れることができるぜ。まあ、他人からしたら俺は狂ってるんだろうな。まあ知ってるけど。
そして、茅場が俺達に1つのアイテムを渡してきた。それは手鏡。早速取り出して覗いてみると、
「俺の……………顔…………」
そう、アバターじゃなく、現実の顔がそこには映っていた。いや、現実の顔になったようだ。周りの人間も同じように現実と同じ容姿になっていたようだ。
「てかまさかっ」
と思って足元を見るが、足はちゃんとあるようだ。流石にゲームに支障のないようにはなってるみたいだ。いやあ危ない危ない、足無かったら死んでるもんなこれ。
『………以上で《ソードアート・オンライン》正式サービスのチュートリアルを終了する。プレイヤー諸君の──健闘を祈る』
その言葉を最後に、茅場晶彦は姿を消した。というかいつの間に話終わってたのな。全然きがつかなかった
ぜ。
そして、今まで通りの景色が広がった。ただ、1つ違うことは、
────ソードアートオンラインが、デスゲームとなったこと。
それを理解した奴らが、それ相応の反応を見せた。
「嘘だろ…………こんなの嘘だろ!!」
「ふざけるな!早くここから出せよ!!」
「嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
悲鳴やら怒号やら絶叫やら、辺りは地獄絵図と化していた。泣き喚く者、抱き合う者、罵り合う者と様々だ。そんな中俺はというと、
「イヤッフゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!」
歓喜の声を上げていた。
愉しい。このデスゲームが。絶望に染まったプレイヤーの表情が。阿鼻叫喚の煉獄に身を委ねることが、愉しくて仕方がない。
俺は異常だ。だからあの世界では居場所も何も無かった。でも、このイカれた世界なら受け入れてくれる。許容してくれる。そしてこう思うんだ。
この世界こそ俺の現実だ、と。
「さ、そろそろ行くか」
どこにって?次の村だよ。このゲームにあるリソースは限られている。なら誰よりも早く奪うに越したことはない。実際動き始めている奴らもいるみたいだし?早く次へ進まないとな。
そして、俺はデスゲームに身を投じた。
それからは色々あった。第1層のボス討伐作戦に参加したり、そこでキリトと意気投合したり。割と普通にゲームを楽しんでいた。そこは認めよう。なんだか茅場の掌で踊らされてるように思えたが、そこは気にしないことにした。
もちろん、仮面はこの時から付けていた。顔の傷を隠すためにね。その仮面は今付けている物と少し違ったりするけど、まあ大差は無いし割愛しよう。
そしてキリトと別れた後、俺は笑う棺桶《ラフィンコフィン》に入った。ちなみに初期の頃に加入したため、割と古参だったりする(そのためザザやジョニーとは割と関係を持てた)。
その目的はもちろん、殺すため。
家族を殺されたお前が何故こんなことを?なんて思うかもしれない。家族を殺し、俺から全てを奪ったあいつを、確かに俺は憎んでいる。
けどさ、初めて人を殺した瞬間、何かが満たされたんだよ。渇いた喉を潤すような、そんなの感覚が俺を満たしたんだ。その感覚がいつまでも忘れられず、いつの間にか求めるようになっていた。そして俺は、その感覚を味わう手段を得たのだ。
でも、ただ殺すんじゃない。普通の人間ではなく、人殺しを殺す。何の罪もない人間に対して、俺は殺人なんて出来ない。俺と同じ道を、もう誰にも歩かせたくないから。
だからこそ、人殺しであるオレンジプレイヤーを殺すことにした。ここにいればそういう奴らと嫌なほど遭遇する。そうすれば好きなだけ殺せるじゃん?そういう点では俺にピッタリの場所だと思うんだよね。
そして、最終目標は、ラフコフを全員殺すこと。こいつらも人殺しだし、殺さない訳にはいかないじゃない?
まあそんな理由もあって、俺はラフコフに身をおくことにしたのだ。
(ちなみに、俺がラフコフ討伐作戦の際にラフコフに侵入出来たのは元メンバーだったからコンタクトがとれたっていうのが大きい。そしてラフコフのメンバーを殺しまくったのも、最終目標を達成するためだったりする。)
それから暫く後のこと。俺はいつも通りPKK(プレイヤーキラーキリング)をするため、獲物を探し回っていた。すると、あるものを見つけた。
「…………いたか」
3人のオレンジプレイヤーが1人の女を取り囲んでいた。女の顔は恐怖に歪み、それを見て男たちは醜悪な笑みを浮かべていた。………うん、これは完全にクロだな。情状酌量の余地なし。よって有罪。判決は死刑。
「じゃ、殺りますか」
そして俺はその1人の首にナイフを突き刺す。
「がぁぁぁぁっ!?」
「な、何だ!?」
殺したことを確認し、残りの2人を仕留めにかかる。
まずは1人目。四肢を切り落として動きを止めると、頭部に何度もナイフを振り下ろす。苦悶の表情を浮かべながら、男は果てた。
そして2人目。闇雲に襲いかかってきたの両目を抉る。そして首もとに毒を付与したピックを打ち込む。何も分からないまま、迫る死に絶望しながら、男の命は消えた。
こうして3人殺したわけけど、なんかあっけないし、何も満たされない。面白みも欠けているし、帰ったら反省会をしなくては
「おい!!」
その声に振り返ると、先程襲われてた女が俺の手を握ってきた。……………え、どゆこと?
「マジでありがとな!助かったぜ!!」
「え、いや、ちょっ」
握った手をブンブン振り回しながら彼女は言葉を続けていた。
「いやー、俺としたことが麻痺くらっててさ。少しヤバかったんだよ。でもあんたが来てくれて本当に助かったよ」
まあ、結果的にそういうことになっていたようだし、それでいいか。人助けは性に合わないけど、まあ……………ってあれ?そもそも何でこいつこんな自然に俺と話してるの?目の前で人を殺したのに?
「…………お前は」
「んじゃ、あたしの家行こーぜ!」
「いや何故!?」
そう言いながら手を引っ張る彼女に思わずツッこむ。
「どうして俺がお前の家に行くんだよ!?」
「何って、お礼するからに決まってるだろ?」
「だから、俺はお前を助けた訳じゃなくてだな」
「あ、そういや俺の名前まだ言ってなかったな」
「話聞いてる!?」
会話の主導権は彼女が握っているようで、言い返す隙もない。困惑する俺に、彼女は笑顔で自分の名前を告げる。
「俺の名前は《ニーナ》だ!よろしくな、仮面の兄ちゃん!!」
それが、俺とニーナの出会いだった。だが、俺はまだ知らない。この出会いが、全てを狂わせることになることを。
読みづらいかと思いますが、お読みくださってありがとうございます。
今回の最後に出てきた《ニーナ》という女性。ホロウがやたらと「あいつ」と言っていたり、『』で言葉を表していたのが彼女です。読み返していただけると分かると思います。
ニーナとホロウの出会いが、物語を加速させます。2人はどうなっていくのでしょうか。
それでは、次回でお会いしましょう。