ソードアートオンライン《仮面の行商人》   作:Gissele

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17 Reveal the Truth

「……………もう朝か」

 

 

窓から強い日差しが差し込んでくる。瞼の裏を焼かれるような感覚に、完全に意識を覚醒させられる。まあ、いつも通りの朝だ。だが、そんないつもの朝にいつもとは違うことが1つ。

 

 

「んぅ………………」

 

 

そう、俺の腕にしがみつきながら寝てるニーナだ。俺が起き上がろうとしたせいか、離れまいと顔を押しつけてくる。その感覚が、なんだかむず痒くて仕方がない。

 

 

 

……………………………というか、

 

 

「なんで俺の横で寝てるんだよっ!!」

 

 

あり得ない光景に、思わずニーナを突き飛ばす。突き飛ばされたニーナはベッドから落下し、顔を強打してた。鼻を抑えてジタバタしてるニーナを見て、「ザマァ」と心の中で呟いておく。

 

 

「いってぇ!!何しやがるんだホロウ!!」

 

「お前こそベッドに入って何してやがる!!」

 

「えーっと、夜這い?」

 

「シバくぞ」

 

 

そう言うとニーナが「てへぺろ☆」みたいな顔してきやがった。うん、すっごくムカつくね、思わず顔面陥没させてやりたくなったよ。

そうしていつも通りの日常がログアウトし、新たにカオスな日常がログインするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

え、どうしてニーナがいるのかって?

説明しよう!何故ニーナがここにいるのかというと、そもそもここがニーナの家だからであるからだっ!!

ってこれだと俺がニーナの家で寝てた(意味深)みたくなるのでちゃんと経緯を説明させてもらう。

 

 

ことの発端は俺がニーナの家に招かれた日のことだ。日も暮れてきたので帰ろうとすると、

 

 

「なぁ、ここに住まない?」

 

 

とナタリアさんが言ってきた。ってナタリアさん何言ってるの!?今日会った奴に「ここ住む?」とか頭おかしいんじゃねぇの!?てかそれニーナが言いそうなセリフなのに何故ナタリアさん!?

 

 

「お、それいいな母さん!」

 

「だろ?やっぱり分かるかニーナ!」

 

 

ってニーナも結局言ってるじゃねーかよ。本当によく分からないテンションだなこの2人。しかし、俺の意見を聞かずに決められても困る。というかそうする気は全然ないから。

 

 

「いや、俺は」

 

「じゃあ君は二階の隅の部屋ねー」

 

「早速歓迎会しようぜ!」

 

「俺の話聞いて!?」

 

 

……………とまあ俺に人権は無いようで、なんか知らないけどナタリア武具店の居候となったのだ。うん、カカア天下とはこの事だと強く感じたよ。

「いや、普通に逃げろよ」だって?そんなの無理無理。あの2人の馬鹿みたいなSTRの前では無意味。いくら俺の敏捷度が高くても、捕まってしまえばもうとうしようもない。ということで、俺は強制的にこの家の同居人(というか囚人)になった。ちなみに詳しくはWebで。というかそんなの存在しないけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうしてこの家に住み始めて、ちょうど1ヶ月。何故かベッドに侵入してきたニーナのせいで最悪の目覚めを迎えた俺は1階で朝食をとっていた。

 

 

「何しけた面してんだよホロウ」

 

「うるさい、誰のせいだと思ってやがる」

 

「そうは言っても、女の子の添い寝なんて結構なサービスじゃない?」

 

「ナタリアさんも何言ってるんですか」

 

 

 

相変わらずこの親子のテンションは謎だ。朝食を食べ終え食器を片付けると、フィールドに出る支度をする。

基本的に店の業務はナタリアさんがこなし、俺とニーナはフィールドでのレベリングと資材の回収する。この家ではそういう役割分担が自然と生まれていた。

そのための支度を今している訳だが、ニーナは既に出掛ける準備を終えているようだ。

 

 

「そんじゃ先行ってるー!」

 

 

というか俺を置いていっちまうし。あいつの交感神経イカれてるんじゃねえの?と思うもまあいつものことなのでスルーしておく。

 

 

「毎度悪いね、いつもこんなんでさ」

 

「まあ慣れましたよ。それに住ませて貰ってるのは俺の方ですし、とやかく言えませんよ」

 

 

ナタリアさんに返したこの言葉に嘘はない。ここから逃げられないのは事実だが、ナタリアさんもニーナも家族のように俺に接してくれている。そういった厚意に俺も甘えてしまっているので、割と感謝していたりするのである。

 

 

「でも、あの子によくしてくれてるのは凄く感謝してる」

 

 

そう言うナタリアさんの表情は、娘を大事に思う母親のそれだった。いつもとは違う雰囲気に戸惑う俺に、ナタリアさんはニーナのことを語り出す。

 

 

「あの子が小さい頃、とても辛いことがあってね。それは詳しく言えないんだけど、その出来事があの子の人生を狂わせてしまったんだ」

 

 

ナタリアさんは、懺悔するかのように続ける。

 

 

「そのせいであの子は周りから蔑まれるように見られるし、嫌がらせも沢山された。そのストレスが心も体も蝕んで…………」

 

 

ナタリアさんの目から涙が流れる。その悲痛な表情が、2人にとってどれだけ苦痛であるかを物語っている。

 

 

「それでも少しずつ回復していって、今はあれだけ笑えるようになった。それも、あたしに心配かけないようにしてるだけかもしれないけどね」

 

 

確かに、ニーナのテンションの高さは異常だ。それが母親に心配をかけないようにするためなら納得がいく。

俺は自分の仮面に手を伸ばす。ニーナも仮面を被っている。でもそれは誰かを傷つけないためで。俺のように、何かから逃げるための仮面じゃない。だから、一緒だなんて思うな。それは、2人に対する侮辱だ。

 

しかし、ナタリアさんはどうしてこの話を俺にしたのか。そこが謎だったので聞いてみる。

 

 

「…………どうしてその話を俺に?」

 

「さっき言った通り、ニーナは心の傷のせいで誰とも関われなかったんだ。そんなあの子が心を開いてる君は、あの子にとって希望なんだよ」

 

「…………………そうなんですかね」

 

「きっとそうだよ。だから遠慮せずに嫁にくれてやるよ」

 

 

………………いや、何故そうなる。まあ、これも湿っぽい空気を変えるためにナタリアさんが気をつかってくれたのだろう。

 

 

「その話はまた後ほど。早くニーナを追わないと何しでかすか分かりませんから」

 

 

俺もこれ以上耐えられないので、さっさとニーナを追うことにする。かなり差がついただろうが、俺の敏捷度なら楽に追いつける。

 

 

「ごめんごめん、長くなって悪かったね。それじゃ、あの子を頼むよ」

 

 

扉の前で振り返ると、ナタリアさんが笑顔で見送ってくれた。でも、涙はまだ止まっていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅すぎだぞホロウ、詫びはよ」

 

「うるせえ、ナタリアさんと話してただけだ」

 

 

ニーナに追いつくと、早速詫びを要求された。まあ結構な時間待たせてたし、無理もないか。だがそれがナタリアさん関係だと話は別だ。

 

 

「……………………あたしのこと何か言ってた?」

 

「そりゃあたっぷりと」

 

「どうかお慈悲を!何でもしますから!!」

 

 

ナタリアさんが何か怒ってると勘違いしてるようで、何故か俺にすがってくる。割と面白い光景だが、先程の話のせいでそういう気にもなれなかった。

 

 

「別にナタリアさんは怒ってねぇよ。むしろお前のこと心配してた」

 

「……………もしかして、俺の昔のこと喋ってた?」

 

 

ニーナがそう聞くも、俺は何も言えなかった。そりゃあ、人のトラウマをほじくり返すようなことはしたくない。俺自身、その苦痛はよく分かっている。

 

 

「気にすることはねーよ、お前は何も悪くないんだから」

 

「だけど、お前にとってそれは」

 

「………………頼みがあるんだ」

 

 

ニーナは普段からは考えられないほど真剣な表情をしていた。どれほど重大な話か、その表情から見てとれる。

 

 

「あたしの過去のこと、聞いてほしいんだ。ホロウからすれば、迷惑でしかないかもしれない。それでもお前には」

 

「んなこと気にしなくても、ちゃんと聞いてやるよ。心配するな、変な空気になったらどうにかするから」

 

「………………ありがとな、ホロウ」

 

 

そう言うとニーナは自分の過去を、自分を歪ませた事件のことを語り始めた。しかし俺はまだ知らなかった。これが、運命を狂わせるとも知らずに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あたしは普通の家庭に、普通の体と心で生まれてきた。でも、1つだけ普通と違うことがあったんだ。それは」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────父親が、人殺しだということ。

 

 

「っ………………」

 

 

瞬間、何かが脳裏をよぎる。

 

 

「俺の父親は医者だった。優秀な医者だったって母さんが言ってたよ。でも、そんな父親が人を殺した。理由は、嫉妬だったらしい」

 

 

 

 

 

─────────あれ、これって。

 

 

 

 

 

「自分より優秀な同僚が許せなかった。どれだけ努力しても、いつも認められるのは向こうだ。自分の努力もプライドも全て踏みにじられたように感じた彼は、同僚を強く憎んだ。そして、彼は同僚とその家族の殺害を計画した」

 

 

 

 

 

──────それって、もしかして。

 

 

 

 

 

「父親は同僚とその家族を刺して、家に火をつけた。結果その同僚と奥さん、そして長女の3人が死亡。長男も両足を失う重態だった」

 

 

 

 

 

 

──────どうして、お前がそれを。

 

 

 

 

 

 

「しかも俺の父親は、その罪を金で揉み消した。知人の刑事に金を渡し、証拠、証言、あらゆるものを無かったことにした。本当のクズだよ、あいつは」

 

 

 

 

 

 

─────やめろ、それ以上は。

 

 

 

 

 

 

 

「でも、天罰が下った。あいつは殺されたんだ。それだけが、救いなのかもしれない。だって、こいつを殺したのは」

 

 

 

 

 

 

 

──────頼む、やめてくれ。それを聞いたら、俺は。

 

 

 

 

 

 

 

「自分が殺した同僚の、息子なのだから」

 

 

 

 

 

 

 

その言葉で、全てを理解してしまった。こいつの父親のことも、そいつを殺した奴のことも。

 

 

 

 

 

 

 

「まあそんなことがあって、俺も酷い目にあってさ。学校でも外でも皆から嫌がらせを受けたり、執拗に報道陣が迫ってきたりして。そのせいで、心も体もおかしくなっちゃったんだ。それが、俺の過去だよ」

 

「……………………」

 

「…………ホロウ?」

 

「…………が、…………………た」

 

「おい、何を言って………」

 

 

俺は、全ての真実を口にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺が、お前の父親を殺した」

 

 

 

「…………………………《ソラ》?」

 

 

 

そして、運命の歯車は狂い出す。

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