前回の感想をいただきました。感想とアドバイスをありがとうございます!感想、批評は是非送ってください。作者が死ぬほど喜びます。
今回から時間軸は戻ります。ですが内容サクッと&リズ視点となっておりますのでご注意ください。
前書きが長くなってしまいましたが、それではどうぞ。
「以上が、《柊空》であり《ホロウ》である俺の全てだ。ご静聴、感謝します」
ホロウはそう言うと一礼する。その姿はまるで物語を語り終えた語り部のようだった。
「ま、こんな感じだから適当に流しといてくれ」
そう言って笑うけど、ホロウの目から流れる涙は止まらない。そんな顔で笑われると何を言えばいいのか分からなくなってくる。ホロウの過去を思うと、その異常さに頭が働かなくなってくる。仮面を剥いだ時はこんな事になるとは思ってもいなかった。それほどに、彼の話はあたし達の想像を超えていた。
自分の全てだった家族の命を奪われた苦しみも、その犯人を殺した彼の感情も、ニーナという女性に救われ愛した幸福も、その命を自らの手で奪い去った悲哀、憎悪、絶望も。その全てがあたし達の想像をいとも簡単に粉砕した。それほどに、彼の心は歪んでいた。
正直、何と声をかければいいのか分からなくなった。いつもふざけてるし、格好も変で君が悪いし、基本バカだし。相変わらずムカつく奴だった。
でも、あたしが鍛冶屋を始める時はその資金を嫌な顔一つしないで(顔は見えてないけど)貸してくれたし、今では鍛冶屋の常連でもある。それにいつも話し相手になってくれたり、困った時はさりげなく助けてくれたりする。いつもは言い争いばかりだけど、これでも彼の優しさには結構感謝していたりする。本人の前じゃ絶対に話したくないけど。
だからこそ、ホロウの抱えているものを少しでも自分が背負ってあげられたら。そう思っていた。でも、彼が抱えていたものはとても悲しくて、辛くて、そしてどうしようもない程に歪んでいて。その歪んだ心に触れると思うと心が折れそうになる。
「ま、そうだろうな。こんな歪んだ奴のことを理解なんで出来ないのが普通だ。安心しろ」
ホロウがそう言ってくる。いつもなら「なに人の心読んでるのよ!?」と返せるのに、今は言葉が喉を通らない。
「ほら、皆笑っていいんだぜ?このままじゃ俺が滑ったみたいになるだろ」
ホロウはいつも通りヘラヘラしている。でもホロウの目から流れる涙はそうは言ってない。強がってるのかどうかは分からないけど、その様子があたしの心を締め付けて、言葉を奪い去っていった。
そして沈黙が部屋を支配する。きっと、他の皆も言葉が見つからないんだと思う。
キリトは何とか声をかけようとするけどその言葉が出ないみたい。
アスナはキリトよりもショックを受けているようだ。アスナのことを考えると少し心配だけど、そんな余裕はあたしにも無い。
エギルは何でもないような顔をしてるけど、きっと衝撃を受けている。落ち着かない様子でいるのがその証拠だ。
この3人はまだ影響が少ない方だった。酷いのはシリカとアルゴだ。
シリカは両腕で体を抱きしめるようにしている。きっと襲い来るどす黒い感情を抑え込もうとしてる。でも体は酷く震えていて、歯が当たる音がガチガチと聞こえてきた。その表情も、悪夢を見ているような表情をしていた。彼女はホロウに助けられたこともあるらしいし、それが更にシリカを蝕んでいるように見えた。
アルゴもフードで顔を隠しているが、よく見ると顔は青ざめていて、歪みに触れておかしくなりそうな自分を保つのに必死なようだった。情報屋として沢山の情報を知ってきた彼女でも、ホロウの過去は想像を絶するものだったらしい。
そういうあたしも、結構ヤバかったりする。
何とか自分を保っていられるけど、叫びたいくらいに怖かった。得体の知れない何かに飲み込まれそうでたまらなく怖い。もうどうしていいか分からなくなってくる。
でも、それじゃいけない。ホロウはあんなに歪んだものを抱えながら生きてきたんだ。あんなに苦しいのに皆の前じゃ平気なフリして笑ってるんだそれなのにあたしがこんなんじゃいけないのは分かってる。だけど。
「あ……………………」
たった一言が出ない。声が喉を通らない。たった一言なのに、それが出来ない。いっそのこと叫ぼうかと思ったけど、どれだけ力を入れても見えない何かに阻まれる。
どうして。どうしてホロウに声をかけられないのだろう。……………ホロウが、ホロウの抱えている歪みが怖いから?
「それじゃあ帰るわ。あと、暫く皆の前から消えるよ。こんな状況じゃあ会っても気まずいだろうし」
「……………!」
マズい、彼が行ってしまう。早くしなきゃ。これを逃したら、もう彼に何も言えなくなってしまいそうだから。
「ほな、さいならー」
「ま、待ちなさいよ!!」
ようやく声を出せた。何とか彼を引き止めることに成功したあたしは、すぐに次の言葉を口に
「どうしたんだよ、リズ」
「──────っ」
出来なかった。振り返った彼はおそらく普段通りであろう笑みを浮かべていた。おそらく彼もそういう気持ちなのだろう。なのに、その目から流れる涙が止まらない。彼も止めることができていないのであろうその涙は、きっと愛する人を皆失った悲しみがそうさせているのだと思う。その苦しみを思うと、再び体が動かなくなってしまった。
「ったく、何でもないのかよ。いちいち止めないでくれ」
「ち、ちが……………」
「疲れたから早くねよっと。じゃーな、皆も早めに寝ろよー」
そう言って彼は扉を開けた。そんな彼の背中を、あたし達は黙って見てるしかなかった。
あの時自分が彼の仮面を剥いでいなかったら、こんなことにはならなかっただろうか。「抱えているものを自分も背負う」だなんて簡単に言わなければこんなことにはならなかっただろうか。いくら考えてももう何の意味もない。あたしは、彼に何も出来なかったのだから。
その場に残されたあたし達の間に流れる沈黙。彼の過去の悲しみと歪み、そして何も出来なかった自分への怒り。様々な感情が渦巻く部屋に、ドアの閉まる音だけが無情に響いた。
今回は圧倒的セリフ不足でした。なので短く読みごたえが無いかもしれませんがご了承ください。っていつものことでしたねすみません。
次回からは平常運転でいきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。