ナイトメア・イローション。
Myosotisの上位ソードスキルであるこの技は、使用者が攻撃し続ける限り発動する。赤い閃光が何度も己を切り裂く光景は、まさに敵を蝕む悪夢。グリームアイズに放った斬撃の数は数えていなかったから分からないが、それだけ多かったということにしておこう。何はともあれ、カウントが0になりグリームアイズは消滅。俺の勝ちだ。
「やっと、守れた」
初めて、大事な人を守れた。家族も、愛する人も、何もかも守れなかった俺が、この手で守ることができた。その事実が俺を満たしていく。渇望していたものを手にした感覚が、脳裏に深く焼き付けられる。それだけで、十分だった。
「もっと早く守れてたら文句はねーんだけどな」
もっと早く、力が欲しかった。そうすれば何も失うことはなかっただろうに。まあ、過去の事実にifを求めたところで何も変わらないのは分かってる。それは俺が背負うべき罪だ。大人しく受け入れよう。
何はともあれ、何とか守ることができてよかった。あれで間に合わなかったとか笑い話にもならないし。いやぁ本当によかった。
「ホロウ…………」
その声の方へ振り向くと、そこにはキリトの姿が。顔色が悪いようだが、意識が戻ったようなのでとりあえずホッとした。アスナやクラインとかいうキリトの仲間も何とか生きてるみたいだし。あ、でも軍は数名犠牲になったっけ。まあいいや。今はあいつらと話がしたい。あれから随分と会ってなくて何と言ったらいいか分からないけど、色々謝りたいことがあるし。とにかく話をするべく俺はキリト達へと歩み寄る。
でも、俺は忘れてたんだ。力の代償を。
────────ぐちゃり。
「あぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「ホロウっ!?」
突如、俺の頭を何かが襲った。脳が炎で焼けるような、硫酸に溶かされるような、得体の知れない何かが脳を這い回るような。痛みとも違う感覚が脳を支配し、俺を蝕む。想像を絶する苦しみに、俺はただ絶叫するしかなかった。
「うぁ、ああああっ!がぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
その姿はまるで地獄の炎に焼かれる咎人。そう自分でも思ってしまった。この叫びが俺の喉から出ているって、未だに信じられないし。だが今の俺にそんなこと考える余裕など無い。あるのは、この苦痛だけ。
でも、理由ははっきりしている。こうなることは分かっていた。分かっていながら使ったのだから後悔はしてない。これは俺の犯した罪への罰として、受け入れよう。でもそれに耐えられるかどうかは別の問題で。
「うああぁぁぁぁああああぁああああああっ!!!」
断末魔のような声を上げ、糸が切れたように俺は倒れた。
『今回は上手くいったみたいだな、ソラ。まあMyosotisを使えば結果なんて目に見えてるんだけどさ。とりあえず、守れてよかったね、おめでとう。
でも、強力な力には代償が必要なんだよね。そりゃああんなチート武器がノーリスクで使えるとなったら、そんなのクソゲー以外の何でもないし。ゲームバランスもクソもないしな。まあそれを分かっていながら使ったお前は大分狂ってるけどさ。
まあ、今回は死なずにすんでよかったな?直に目が覚めるだろう。そうすればいつもの日常に戻れるはずだよ。でもさ、これだけは気をつけて。
その花は、いずれあなたを殺す。
伝えたいことはそれだけ。またね、ソラ』
「うぅ…………………」
何故か聞こえてくる彼女の声に目を覚ます。どうやら俺はベッドの上に横たわっているようだ。何とか体を起こすも、意識が完全に覚醒していないせいかベッドから落下してしまう。地面に叩きつけられた衝撃と未だに残っている頭の感覚に襲われながらも何とか立ち上がった俺は、状況の整理から始めることにした。
まず、どうしてこうなったか。それは俺がグリームアイズを殺す際に使用した武器、Myosotisが原因だ。まあそれは分かり切っているので割愛。はい次。
そして、ここがどこなのか。まあそれも速攻で分かった。エギルの店の中にある小部屋だ。ほらあそこだよ、椅子に縛られてキリト達から超エキサイティンされたあそこ。まあ一度来たことがあるのですぐに分かったし、一応知ってる場所だということにホッとしてたりする。
そして次が問題だ。なぜ、俺はここにいるのかということ。おそらくキリト達に運ばれたんだと思うんだけど、それまで何が起こっていたかが全く分からない。俺が気を失っている間にまた何かがあって、最悪犠牲者が出ているのかも知れない。まあそれなら俺だって死んでるだろうし無駄な心配だとは思うけど、やっぱり心配なものは心配だ。
「………………とりあえず、エギルに話を聞くか」
ここはエギルの店だし、よっぽどのことがなければ店にいるはずだ。とにかく今は情報が欲しい。早く状況を把握しなければ。そう思い歩き出すも、
「ぐっ……………………」
あの時のが残っているのか、真っ直ぐ歩けない。壁に寄りかかって歩くのが精一杯だ。体は言うことを聞かないが、無理矢理動かして何とか進んでいく。そんな無様な姿に、自分のことながら笑えてくる。この姿をニーナが見たら、きっと煽ってくるに違いない。そんな事を考えているうちに、店までの階段に辿り着いた。
「あと、少し」
俺は持っている力を振り絞り歩を進めた。しかし、焦っていたのがいけなかった。
俺は階段を見事に踏み外してしまったのだ。
「……………マジ?」
少しばかりの浮遊感の後、俺の体が階段に直撃。そしてそのままゴロゴロ転がっていく。
「おおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」
何度も何度も体を打ちつけられながら転がる俺。頭がまだ本調子でないのも相まって、衝撃と気持ち悪さが一気に襲いかかってくる。というかそろそろリバースしそうでヤバい。流石に人の家でもんじゃ作るなんてそんなことはできない。口元を押さえることで何とか堪えていると、平らな地面に落下した後に少し転がって静止。どうやら一階の店に辿り着いたようだ。
「やっと着いた……………うっぷ」
何とか吐き気を堪えて顔を上げると、
「ホロウっ!?」
「ちょ、あんたどうしたの!?」
「大丈夫ですか!?」
キリト、リズ、シリカが驚きながらも駆け寄ってきた。その奥ではアスナとアルゴがなんかオロオロしていた。おいエギル、てめぇ何ゲショゲショ笑ってんだコラ。
「オーケー牧場、ダイジョブダイジョブ」
「うん、明らかにイっちまってるナ」
アルゴが哀れむような目でこっちを見てくる。合掌のポーズまでしてるし。いや死んでねーから。勝手に殺さないでくれ。
「というか、皆揃って何やってるんだよ」
「何って…………」
リズが何か言おうとしたが、すぐに口を噤んでしまった。他の奴らも何か気まずそうな顔してるし。するとエギルが口を開いた。
「皆、時間が空いている時はここに来ていたんだ。お前が倒れたことを聞いたら全員すっ飛んできたんたぞ?」
「え、マジで?」
「ああ、それたけ心配されてたってことだ」
いや、それ自体は非常に嬉しい。心配してもらえるのはありがたいことだ。でも少し待ってほしい。
「どうして…………」
俺の全てを打ち明けたあの日、皆かなり動揺していたし、俺に対して恐怖やら嫌悪感やら丸出しだった。そんな状況から1ヶ月以上会ってないというのに、どうして。
「……………どうしてって、お前が心配だからだよ」
俺の問いに、キリトが言いづらそうに答える。
「あの時は確かに驚いたし、正直理解ができなかった。お前の背負ってるものがあまりに大きすぎて、戸惑ったし怖かったんだ」
そんなの当たり前だ。あんな話されて平然としていられる方がどうかしてる。でもキリト達が恐怖を抱いていたのは確かだ。ならどうして。
「でも、それをお前はずっと背負ってきたんだよな。俺達の前で涙を隠して、いつもふざけたように振る舞って、それでも仮面の裏では泣いていた。それほどにことを俺達に明かしてくれたのに、俺達はそれを拒絶してしまった。本当にごめんな、ホロウ」
謝らなければいけないのはこっちの方だ。いくらお前らでも、俺の過去に触れて大丈夫なわけがないことは分かっていたのに。それでも理解されたい自分を抑えきれず、色々ぶち撒けたくせして自分はさっさと逃げるし。迷宮区でお前が危険な目に遭った時、お前を見捨てようとしたんだぜ?どう考えても謝らなければいけないのは俺の方なのに。
「違う、謝るのは俺の方で」
「お前が倒れてから、皆でちゃんと考えたんだ。今度こそちゃんと向き合おうって。おまえの過去と向き合って、またお前と皆でいたいからさ」
…………本当に、こいつは甘すぎる。いくら何でもやりすぎだ。自分のことで手一杯で、お前を一度見捨てようともした。そんな奴とまだ関わろうとかどうかしてる。でも、その甘さに何度救われたかは自分が一番理解している。
「あの時も………実は今も、何て声をかけたらいいか分からない。でも、今度こそ向き合うから。あんたの抱えてるもの、一緒に背負わせて」
リズが、いつものように笑ってくれてる。
「あたしだって、ホロウさんの役に立ちます!全然頼りないとは思うけど、このまま何も返せないなんて嫌なんてす!!」
シリカはまだ怯えてる。それでも真っ直ぐこちらを見ている。
「討伐作戦の時も、グリームアイズの時も、いつもホロウ君に助けられてばかりだね。今度は、わたし達がホロウ君を助ける番だから」
「俺もあんなこと言っておきながら、お前を受け入れられなかった。本当にすまない。できることなら、またやり直させてくれ」
アスナとエギルも。2人とも話したこともあまり無いのに本当にお人好しだな。でも、今の俺にとってはすごくありがたい。
「オレっちも、今度こそちゃんと向き合うから。だから、もういなくならないでクレ」
アルゴも顔を隠しながら、でもはっきりとそう言った。
皆、気持ちは変わってないようだ。それが嬉しくて、抑えようとしていた気持ちが口から漏れ出す。
「ありがとな、皆」
俺のことを知って、なお俺を受け入れようとする。あの時のニーナのように。でもニーナとは違う。こいつらはこいつらのやり方で、俺を受け入れようとしてくれてる。それが、嬉しかった。
「こっちこそありがとな。何かあったら遠慮なく言ってくれよな」
「情報に関してもサービスしてやるヨ。これからもよろしくな、《
ああ、こちらこそ。…………と返そうと思ったのだがアルゴの口から聞いたことのない言葉が聞こえてきた。
「おいアルゴ、狂花の死神って誰のことだ?」
「そんなの、ホロウのことに決まってるだロ」
「………………はい?」
「お前の二つ名だよ。ほらここ」
キリトが何やらビラのようなものを見せてくる。そこには、
『軍の大部隊を全滅させた悪魔!』
『それを単独撃破した二刀流使いの五十連撃!!』
………と書いてある。おそらくキリトのことだろうが、おそらく書いたのはアルゴだろう。かなり水増しされてるし。だが大事なのはそこではない。その下には、
『蘇った悪魔を葬り去った仮面の行商人!』
『真紅の斬撃を放つその姿はまさに狂花の死神!!』
……………なんだこれ。
「二つ名なら他にもあるゾ?《黒猫の短剣使い》、《ジャック・ザ・リッパー》、《死の行商人》、それから……………」
「おいアルゴ、これってもしかして…………」
「ああ、全部お前のことダ」
「えぇぇ……………」
いやいや何してくれてんの?こんなのがプレイヤーの間で広まってるだなんてただの公開処刑じゃねーか。というかこんな情報早く消さないと。値は張るがアルゴに消してもらおう。この情報流したのもアルゴなんだけどさ。
「アルゴ、この情報消してくれ。金はいくらでも出すから」
「それは無理だナ。だってこの情報流れたのは一週間前だし」
どうやら、俺は一週間の間気を失っていたらしい。それも驚きだったけど、今はこの二つ名を消せないことへの絶望しかない。うん、マジでつらい。
「というか、一週間も気を失うなんて何してたのよ」
「もしかして、あの時の……」
「あの時のって?」
「ホロウ君がグリームアイズを倒したときに使ってた武器がいつもと違ったの。ナイフじゃなくて、片手剣のような………」
リズの質問に、アスナが答える。
「それに、あの時のホロウ君は赤く光っていたし……」
「待って、ますます意味が分からないんだけど」
Myosotisを見たアスナとキリト以外は頭に「?」とついたような表情になる。まあいきなり赤く光ってると言われてもわけわかめだろうし、変な想像しかできないだろう。ここは一つ、解説といきますかね。
「アスナが言ってるのは、これのことだ」
そう言って俺はMyosotisを取り出す。今は力を使っておらず、花の形の結晶だった。それを見て、ますます皆の頭はぐっちゃぐちゃに。
「これ……何ですか?アスナさんは剣って言ってましたけど…………」
「見たことのない武器だナ。いや、そもそも武器カ?」
「Myosotisって、確かナタリアって人がホロウに渡した武器でしょ?それがこれなの?」
「わかったわかった、とりあえず一から説明するから。静かに聞いてくれ」
そう言って近くの椅子に腰掛ける。いい加減立ちっぱなしはきつかったし、そこは勘弁。さて、それでは説明を開始しますか。
「こいつはMyosotis。ニーナの遺品から作製された俺の武器であり、ユニークスキルだ」
では、改めて。
説明しようっ!………やっぱり普通のノリでいくわ。なんかしんどい。
Myosotisは『Myosotis』という武器だ。分かりやすく言えば、『Myosotis』というカテゴリの中の『Myosotis』という武器なのだ。それでも分からないというなら、とりあえず『Myosotis』と覚えればいいだろう。
Myosotisは、基本的には結晶の形の武器だ。勿忘草の名前の通り、花のような形をしている。能力を使ってない間はただの結晶だが、ユニークスキル《ミオソティス》を使うことでその力を発揮する。あ、これからは武器の名前を《Myosotis》、ユニークスキルを《ミオソティス》と呼ぶことにするからそこんとこ夜露死苦。
ミオソティスを使うことによって、Myosotisはその姿を変える。それがキリトやアスナが見たあの剣だ。黒の刀身で、鍔が花弁のような形をしている。そしてそこからは赤いエフェクトが出るんだけど、あれにダメージ判定とか追加効果とかは無い。まあミオソティスを起動した合図みたいなもんだ。結構かっこよくね?と自分では思ってたり。
でもそれだけじゃない。Myosotisは複数の形に変化する。あの時使った《オートクレール》を使うとニーナが使用していた大型の両手剣のような形になる。他の形態もいくつかあるけど、まあ出たときに解説すればいっか。ということで。
そんなこんなで見た目とかの話ばっかりしてたけど、次は武器やスキルの特徴を説明しよう。
大きく分けて特徴は3つ。
一つ目は、Myosotisの耐久値だ。というかそもそもMyosotisに耐久値なんて存在しない。普通は耐久値が存在し、使用する度に減少していくのだが、耐久値という欄すら存在しない。まあ、絶対に壊れない武器って覚えておいてくれればいいよ。
二つ目は、プレイヤー自身の大幅な強化。基本的なステータスは異常な程に跳ね上がり、もう人外レベル。というか人外を通り越してモンスターすら越えてんじゃね?ってレベル。正直使ってる俺自身この上がり具合には結構引いてる。ま、強けりゃ文句は無いけど。
そして三つ目は、Myosotis専用のソードスキルが使用できること。例えば、グリームアイズを倒した《ナイト・イローション》はプレイヤーが斬り続ける限り止まらない、攻撃回数無制限のソードスキル。これは結構上位のソードスキルだったりする。更に上のソードスキルもあるんだけど、ぶっちゃけ使わなくても勝てるし。下位のソードスキルでも十分過ぎる程に通用する。
ざっくりだけど、これがMyosotisとミオソティスの説明だ。
「これが、ホロウのユニークスキル………」
「というか、耐久値が無いってどういうことよ!?鍛冶屋の仕事無くなるじゃない!」
「無限に攻撃できるソードスキルというのも、もう反則じゃないですか…………」
「キリトとアスナは、確か見たんだよな?」
「うん、わたしとキリト君は見たよ。本当に強くて、グリームアイズに対しても一方的だったし」
皆、Myosotisの能力に驚いているようだ。そりゃあ「もうこれさえあればアインクラッドの攻略とか余裕じゃね?」ってレベルの強さだ、無理はない。だが、そんな中一人だけ、能力の裏を見ようとした人物がいた。
「それで、その力の《代償》ハ?」
「……………流石はアルゴ、鋭いな」
アルゴだけは、能力のリスクについて考えていたようだ。こんなチート級の能力が何のデメリットも無しに使えるとなれば、それこそゲームバランスも何も無いクソゲーになってしまう。アルゴはそこに目をつけたのだ。情報屋の彼女にとっては普通のことなんだろうけど。
「………………もしかして、それって!」
アスナがハッと何かに気がついたようだ。まあ、アスナはその場面を目撃してるしそりゃ分かるか。
「多分正解だ、アスナ」
Myosotisは絶大な力を持つ。しかし、その力を使うには代償が必要なんだ。一言で言うと、きっとこうだろう。
「Myosotisを使えば使うほど、持ち主は殺されていくんだ」
脳は、普段10パーセントしか使われていない。
……………というのは嘘だ。残りの90パーセントを使えばかめ○め波が出せるとか無いから。残念だけど、これが事実だ。素直に受け止めな。
話を戻そう。この世界で自分の体を動かしているのは、俺達の脳だ。現実世界と仮想空間の接点がナーヴギアって時点で分かってると思うけど。つまりは、この世界で自分を動かしているのは自分の脳ってことだ。キリトもスタバ(スターバースト・ストリーム)を使った後に倒れてたろ?おそらくだが、大技を使ったせいで脳に過剰な負荷がかかったと考えられる。
結論を言えば、この世界での行動は脳を使っているってことだ。分からなくてもいいから次にいこう。
そんな訳で考えてみよう。「Myosotisを使うと、どれだけ脳に負荷がかかるの?」って質問について。
考えてみろよ、あんな人外な動きをしたらどれだけ脳に負荷がかかると思う?100パーセント使ってる脳を、それ以上に酷使するとどうなるか?ぶっちゃけヤバい。マジでヤバいよ。グリームアイズを倒した後の俺を見たろ?もう脳が溶けるというか焼けるというか、壊れてしまいそうになる。この世界で痛みを感じることはないが、それでも脳が壊れていく感覚は言葉にできない。
しかも、ミオソティスを使ってる間はナーヴギアからマイクロウェーブが発生される。微弱な電磁波が脳細胞に擬似的感覚信号を与えることで俺達は仮想空間にいるわけだが、言い換えれば電子レンジのようなものだ。脳細胞中の水分を高速振動させ、蒸し焼きにさることだって可能だ。実際、このゲームでHPが0になったプレイヤーは、この方法で殺される訳だし。
Myosotisを使用している間はこのマイクロウェーブの出力が少し上昇する。死には至らないけど、脳にダメージを与えてる状態かな。まあ使いすぎれば、脳を焼かれて死ぬってことだな。ちなみにこれ、スキルの説明欄に書いてあったよ。無駄に親切でワロタ。
まとめると、
・脳への過剰な負荷
・ナーヴギアによる脳へのダメージ
この2つが、Myosotisという強大な力を使うための代償だ。これがただの代償か、それともニーナの恨みなのかは分からない。多分後者なんだろうけど。だからこそ俺はこの力を使う。自分自身の罪を受け入れながら。
「……………ざっとこんなものかな」
俺が話し終える頃には、皆何も言わなくなった。そりゃそうだ、使えば死ぬ能力だなんて普通誰も使わない。使う方が異常なのだ。
でも、俺は使うことに躊躇いはない。別に自分の命を大事に思ったことなんてないし、死んだとしても何かが劇的に変わることなんて無い。そんなことよりも、大事な人を守りたい。そのためには力が必要だから、俺はこの力を使う。ま、流石にホイホイこの力は使わないけどね。
「なあ、ホロウ」
「どうした、キリト」
キリトが口を開く。どこか、申し訳なさそうな表情をしている。
「どうして、そこまでして俺達を助けたんだ?自分を犠牲にしてまで…………」
キリトからすれば、どうして命を捨ててまで自分を助けるんだ?って思ってるだろう。まあそう思うのも無理はない。それが普通だ。
でもまあ、何て聞かれても返す言葉はいつも同じ。あいつが俺を救ってくれた時と同じ言葉だ。
『…………
「…………えっ?」
素っ頓狂な声を上げるキリトにお構いなしで、俺は続ける。
「それがどんな力だろうと、お前らに死なれるよりよっぽどマシだ。というかこんな能力に殺されてたまるか。この程度で死ぬほど弱くねーよ。それに、」
せっかくなので、ここは一つキメていこう。
────仲間を助けるのに、理由なんて要らねえよ。
「ホロウ、お前……………」
そう言うキリトに、俺は不敵に笑ってやる。仮面で表情は隠れているが、きっと伝わっているだろう。その証拠に、皆呆れたように笑っている。
「本当に、あんたってアホよねー」
「んだとリズてめぇこの野郎」
「でも、そこがホロウさんのいい所じゃないですか」
「そうだナ、こんなアホは二人といないゾ」
「確かに、こいつほどのアホはいないな」
「でも、流石に言い過ぎじゃ………」
「いいんだよアスナ、こいつにはこれくらいがちょうどいい」
「お前ら酷くねぇか!?」
気がつけば、皆で笑いあういつもの光景に。久しぶりなだけあって、その重みがひしひしと伝わってくる。俺がこれから守っていくべきものが、目の前にある。
きっとこれから、様々な困難が俺らを待ち受けているだろう。それでも俺は止まらない。絶望だろうが何だろうがぶっ殺してやる。愛する人との約束を、……………大切な仲間を守るために。それでいいよな、ニーナ。
でも今は、この温もりに浸っていよう。心から分かり合えた、仲間との時間を。
「あーーーーーーーーーーーっ!!!」
突然アスナが叫んだ。何事かとそちらを見ると、アスナがよく分からない顔をしてた。
「……………ホロウ君、言い忘れてたことがあるの」
ごめん、という感じの表情でアスナが続ける。
「団長が、ホロウ君と立ち合いたいって……………」
アスナの所属は血盟騎士団。その団長といえば、神聖剣というユニークスキルを使う、アインクラッド最強のあの男。そいつが、俺と?理由を考えるだけで嫌な予感しかしない。
「……………マジかよ」
この世界は、俺を逃がしてはくれないようだ。
お久しぶりです。更新が遅れてしまい申し訳ありません。
今回、ホロウのユニークスキルについて解説しましたが、分からない部分があれば苦情とともにお願いします。できる限り説明させていただきますので。
次回、あの方の登場です。2人のやり取りを書くことに全力を注ぎます。
今回も読んでくださりありがとうございました。次回もよろしくお願いします。