ああ、ひどい話だ。
縋っていたものを殺され、知られたくなかった人の前で断罪された。死ぬまで心の内に隠していこうと誓っていた醜い感情を暴露され、否定され、その上「嫌い」とまできた。オーバーキルを通り越してリスキル待機とは、さすがの俺でも脱帽してしまう。
まあ、なんというか。要するにショックだったよ。自分の汚点を人に知られるのは基本的に苦痛になる。それに、好きな人に拒絶され、そして殺された。その事実が重くのしかかる。体を圧迫し、内臓が腹から上へと押し出されるような感覚に襲われる。ガッツの語源は腸らしいが、確かに腸が蠢くような気持ち悪さに襲われている。よほど彼女の言葉が的確で正確だったかを思い知らされた。
結局のところ、俺は許されたかっただけの屑だ。
自分の行為を周囲の人間に、環境に、このゲームに押し付けて、責任から逃れようとしているだけだ。ニーナの言葉を口実に、自らの行いを正当化しようとしていただけだ。「殺人」という人間のルールを犯したことを、誰かや何かのせいにしているだけ。それだけなんだ。
「殺意」を持つことは許される。誰かを憎むという思想自体は尊く、例外なく尊重されるべきものだ。殺害に至るまでの経緯にこそその人の後ろにある背景というか、そういったものを感じられる。そしてそれは大抵は悲哀に満ちたもので、それを責めることは部外者である人間にはできない。それほど、大事にされるべきものだと俺は思う。
しかし、行動に移した瞬間、それは醜悪なモノへと姿を変えてしまう。他人へと危害を加えたら、それこそ自分が憎んでいた奴と同じ底辺の住人になってしまうんだ。
行動に移した者、すなわち殺人を犯した俺は、そのルールに触れてしまった。そんな人間を待つのは法による裁き。例えその隙間をかいくぐったとしても、今までの日常は消え去ってしまう。俺にとっては、前者よりも後者の方が苦痛だったけど。
だからその事実を隠そうとした。でもできなかった。ならどうするか。責任をなすりつけてしまえばいい。正当防衛なら罪には問われない。オレンジプレイヤーを殺せば自分にペナルティーはない。愛する人の願いとなれば、叶えない方が不自然だ。あらゆる言い訳を駆使して、これまでは回避することができた。
しかし、それもニーナによって壊された。自分の行いから目を逸らし、誰かの、何かのせいにして責任転嫁する俺を、そして許されようと自分の過去やニーナとの出来事をさも悲劇のように話すことで同情を得ようとした俺の本質を、彼女は見抜いていた。そしてあの場で暴露され、醜い自分を隠していた仮面は破壊された。それこそが、あの場で起きた全ての真実だ。
そりゃあそうか。そりゃあ嫌いにもなるよな。ニーナを救ってくれたのはそんな俺ではなく、それこそ英雄とも言えるような奴だ。だから、そんな英雄ではない俺の一面を垣間見た彼女は失望したのだろう。なら、嫌いになるのも同然か。
「お前のことが大嫌いだよ、ソラ」
あの時言われた言葉が未だに響く。いつまで経っても頭から離れない残響が、少しずつ俺の気力を奪っていく。
────ああ、そう言えば「嫌い」って言われたこと無かったっけ。
初めて言われた拒絶の言葉。あの時は全てを受け入れてくれた彼女が俺に向けた、有らん限りの嫌悪感。どう向き合えばいいのかを俺は知らない。だって、こんなこと言われたこと無かったから。
────でも、自業自得だよな。
そう、全ては俺自身が招いたことだ。他の誰のせいでもない。ニーナの父を殺したのも、このゲームの殺人者を殺したのも、ニーナを殺したのも、全て自らの意志で決めたことだ。他人のせいにして逃げようとした俺に、罰が下るのは当然のことだ。
だから、この結果を受け入れよう。どうなるかは分からないけど、それでも受け入れる。それが、咎人である俺が背負うべき責務だ。どんな結末が来ようとも、もう否定も拒絶もしない。
でも。
────やっぱり、まだ終わりたくないや。
そう呟く俺の視界を意識ごと、瞬く閃光が奪い去った。
目を開くと、見慣れた街並みが視界に広がった。多くの店が連なるその通りは、いつも以上に活気づいていた。第48層主街区《リンダース》。今日もこの街は平常運転である。
「何も変わらないな、ここも」
俺を取り巻く環境が著しい変化を見せる中、この街の風景も人も、何一つ変わってはいなくて。それがどこか安心できるような、そういう雰囲気を醸し出していた。俗に言う、「実家のような安心感」というやつだろうか。
そんな街並みと同じように、俺の為すべきことは何一つ変わらない。初めから、選択肢は一つしか残されていない。だから俺は、その選択肢を躊躇せずに掴める。その先に広がるものが、今以上の地獄だとしても。
「…………悔いは、残さないようにしないとな」
そう呟き、慣れ親しんだ街に溶け込む。不思議と、足取りは軽かった。
今、あなたには一つの疑問が浮かんでいるはずだ。
「え、ホロウって殺されたんじゃなかったの?」
そう、俺が殺されたと思っているはずだ。ニーナの攻撃を食らい、アバターが割れた瞬間を多くのプレイヤーが目撃していたあの状況。さすがにあれは死んだんじゃないか?と皆が思っているだろう。そうだろ?
残念だったな。それは残像だ。
ということはあるわけないですね。こういうものにはタネと仕掛けがある。どんな手品だってあるはずのそれだ。
俺は今回あの場所での死を回避するために、色々とやったわけだ。まあ、半分運に助けられたようなものだけどね。それでもあの状況であの場所から離脱することは叶ったわけなので結果オーライなのである。
それじゃあ、大したことのないそのタネを暴露するとしよう。
まず、HPの問題だ。彼女の攻撃をどう耐えたのか、そこから説明しよう。
結論から言うと、バトルヒーリングでギリギリ持ちこたえたといったところだ。
バトルヒーリングの存在は、ピナ蘇生のための道中でキリトが見せたから知っているだろう。分かりやすく言えば自動回復のスキルで、キリトはそれでタイタンズハンドを圧倒していた。少し前のことだけど、忘れていたら覚えておいてほしい。
俺がニーナの攻撃を食らって吹き飛んでる間も、HPバーは急速に減少していた。しかし、10秒に一度発動するというこのスキルのタイミングが丁度重なり、減少中に800もの体力が回復した。19200の体力の中の800ではあるが、俺にとっては突如現れた希望の光だった。
そして最終的には耐えたわけだが、残りの体力を見ると、わずか324しか残っていなかった。まあ死ぬとしか思っていなかったので驚きしか無かったわけだが、何とか生還を果たしたのだった。
では次だ。「え、でもお前の体パリーン言うたよな?消えたはずだよな?」という質問について回答しよう。
…………とその前に、圏内PKという言葉を知っているかな?
これはキリト達に聞いた話だが、圏内でプレイヤーが殺されていくという奇妙な事件があったらしい。まあ、それは死んだように見せかけただけらしく、目的は別にあったらしいけど、当事者でない俺は詳細な情報を持ち合わせていなかった。まあ、そのトリックは仕入れたんだけどね。
それでそのトリックを使って自らの死を演出したんだけど、その方法を簡単に説明しようと思う。
1. 攻撃を受けると同時にマントをナイフで斬り、耐久値をゼロにする
2. 転移結晶を取り出し、何とか《リンダース》への転移を実行する。
3. 転移と同時に装備の耐久値がゼロとなり、装備は破壊されたエフェクトを発生させ、それが消えた時には既に転移していた。
………というわけである。実際、この方法で圏内事件は起きたらしい。それをパクっただけなのだが。
それでも、ニーナとの戦闘中はこのアイデアを思いつきはしなかった。この作戦を思いついたのは、リズがくれたペンダントが砕けた時だった。あの瞬間、この方法で自らの死を偽装できることに気がついた。本当に、リズが勝利の女神なんだって、あの時は本当に思ったよ。
そして、あの場所へ戻るための回廊結晶も用意してある。ボス攻略の直前に部屋の前に場所を設定してあるから、それを使えばすぐに戻れる。
とまあこんな感じでゲームオーバーを奇跡的に回避した俺は、リンダースへと転移していた。正直転移先はどこでも良かったのだが、頭に浮かんだのがここだった。商売をしたりリズを煽りに行ったりと、何かと縁があるんだよね。
「というか、そこまでして何で一度撤退したんだ?」と言いたい人もいるかもしれない。正直、撤退したところで別にパワーアップとかしないし、特にステータス的な恩恵を受ける訳でもない。では、何故こんなことをしたのか。
自分の気持ちを整理する時間が欲しかった。
自らを構成していたニーナへの想いを全て否定され、何が起こっているのか把握できていないというのが正直なところだ。それほどに彼女の言葉は俺の心を抉っていた。
だから、冷静になるための時間が欲しかったんだ。あの状況で戦っていても、心が邪魔をしてしまう。揺れ動いている感情のまま戦えるほど、俺は強くない。ただでさえ今のニーナは俺より上位に位置するボスとなっているのに、そんな状態で戦おうだなんて自殺志願者かって感じだよな。そうもいかないので戻ってきたというわけだ。
一時は混乱して使い物にならなかった頭も冴えてきて、ようやく自分のやるべきことが見えてきた。しかし、それはあまりにも報われない行為であり、全てを捨ててこそなされるような苦行だった。
「…………歯車は、もう止められない」
狂っていた歯車を元には戻せない。
「それでも、まだ」
だから、結末のその先を目指すことにした。
「…………後悔は、したくないな」
こうして俺は、破滅に自ら足を進める。たとえそれが、全てを失い、己を殺すことになろうとも。
「さて」
準備にかかった時間は5分程度。ちょいとお高いカップラーメンくらいの時間だ。事前にこうなることは予感していたから物は用意できていたし、時間もないから俺も用意した。これで、準備は終えた。あとは歯車を廻すだけだ。
さあ、今からこの意味をこの手で─────
「…………ホロウ?」
不意に聞こえた声の方向を向く。反射的に後ろを振り向いた俺の眼には、リズ、シリカ、ナタリアさん、アルゴが映っていた。ちなみに声の主はリズだった。今回75層のボス攻略に参加しなかった面々が集まるのは珍しくないし、そうだろうとは思っていたけど。思わず、苦笑いしてしまった。
「あんた、それ………………」
「ああ、そうか」
そういえば、仮面はニーナに破壊されていたな。きっと、仮面が無くなっていることを驚いているのだろう。それにマントも脱いでいるから普段の格好とはかけ離れて見えるに違いない。四人とも驚いた顔をしているし、リズは声を失っている。それが証拠だろう。相変わらず、流れる涙は止まらないけど。
「ホロウさん、一体何が…………」
「うぃっす、四人集まって何してんだ?」
シリカの発言を妨害するように、それでいて可能な限り自然に挨拶をする。
「何って、ボス攻略が終わった後に皆を労おうと思ってね。そのための買い物をしてたんだよ」
「宴会ktkr!!」
どうやら、ボス攻略に参加した面子を労うための準備だったらしい。今回のボス攻略は厳しい戦いだったために、これは非常にありがたい。ま、俺は参加できないけどさ。
「何これ大勝利じゃないっすか!皆ゲショゲショ喜びますよ!!」
「…………ホロウさん?」
テンションを上げてみたが、流石に厳しいか。皆の表情がだんだんひどいものになっている。それでも、何とかうやむやにしないと。
「いやー今回の攻略が超厳しくってさ、アホみたいにデカい骨太カマキリがもう手強いったらなんの。何とか勝てたけどそれなりに犠牲は出ちゃった。あ、でもキリト達なら全員生きてるから問題ないぜ?」
「ちょっと、あんた…………」
「俺も危うくやられそうでさ、腰抜けたおじいちゃんみたいになっちゃって。そこにシーナが電気ショック入れてくれたおかげで何とかなったけど、冷静に考えれば接骨院の電気のやつかよって思っちゃったよ」
「ホロウ、お前おかしいゾ?一体何が…………」
「それで俺がカマキリ………やっぱ百足か。その百足と鬼ごっこしてる間に皆が野郎をフルボッコにしてたんだけど予想以上に固くて固くて。一時間近く鬼から逃げまくったんたぜ?そりゃあもう駅伝のランナーみたいに終わった後倒れ込んだししかもさっきの腰のやつがまた来てもうそりゃあ生まれたてのバンビみたいな腰つきで這いつくばってたのさ。あ、今のバンビの腰つきって意外と卑猥そうに聞こえて実はそうでもなかったり」
「ソラっ!!!」
ベラベラと言葉を並べる俺をどこか異常に思ったのか、ナタリアさんが肩を両手でがっちり掴み、今度こそ俺の声を途切れさせた。鬼の形相で、しかもSTRをフル活用したホールドなんてされたら嫌でも会話が途切れてしまう。物理的にもそうだが、驚きで下手したら心臓止まってたかも。
「ナタリア、さん?」
必死に喉から声を絞り出すも、情けなく弱い声しか出なかった。彼女の必死ながらも悲壮感漂う表情に、言葉を失ってしまった。
「…………何を隠してるの?」
その一言に、背中が凍りついたような感覚を覚えた。
「いや、何もないですって。隠すようなことなんて何も」
「いや、絶対ある。確信を持って言えるよ。今のソラは絶対におかしい」
「何か根拠でもあるんですか?それとも親の勘って、やつですか?そんな非科学的なものを根拠にするだなんて論文なら鼻で笑われるレベルっすよ?」
どうにかして、誤魔化さないと
「嘘つくときは、そうやって右肩が下がってるんだよね」
その言葉に思わず右肩を上げてしまう。
「あ、ごめん。それニーナの話だった」
「…………嵌めたんですか?」
「いや、ソラが勝手に引っかかっただけ」
実際に下がっているわけではない。なのに上げてしまった。つまり、俺にそういう気があったということになる。こんな子供だましに引っかかるなんて、普段なら有り得ない。それほど、俺にも余裕がないってことだ。
「ナタリアさん、一体…………」
「リズちゃん。この子はね、あたしたちに隠し事をしてるわるーい子なんだよ。それも、かなり重大なことをね」
その一言が、皆の視線を俺に集めた。
「じゃあ、サクッと吐いてもらいましょうか?ソラ、隠してること全部話して」
「…………無理ですね」
それを聞いたら、きっと止めてくれるだろうから。でも、止まるわけにはいかないから。
「そこまでして話さないなんて、何を隠してるのよ…………!あたし達が、そんなに信用ならないってわけ!?」
違うんだ、リズ。皆のことを信用してるからこそ話せないんだ。信用してるから、話したらどうなってしまうかが見えてしまうんだ。だから、話すわけにはいかないけど、ありがとう。今まで支えてくれたこと、嬉しかった。
「ホロウさん…………。あたし、力になりたいんです。ピナを、あたしを助けてくれたお礼を、ここでさせてください」
ありがとう、シリカ。でも、もう貰ったよ。お礼ならちゃんと受け取った。俺を受け入れて、信じてくれた。だから、もうそれに縛られなくていい。ピナと、皆と幸せに生きてほしい。
「仮面が壊れていて、マントも着ていない。異常な表情だし、シーナちゃんもいない。そんな状況で隠しきれると思ったら大間違いダ。頼むから、正直に話してクレ」
アルゴ、お前には度々助けられた。今もその観察力で俺の異常を正確に見抜いている。頼りになるやつだよ、お前は。でも、時々おちょくったりしたからね、これは軽い復讐ってことにしておこう。
「……………………」
皆の言葉が、とても温かかった。とても優しく、俺を許してくれるその言葉の温もりが、「もういいよ」と言っているように聞こえる。それは、一度堕ちたら抜け出せない、甘い甘い誘惑だった。
だからこそ。
「…………ごめんな、みんな」
その言葉を、俺は拒絶する。
「どうし、て」
「逃げることはできないし、逃げたくない。だからこそ、これは俺自身が解決する。自分の中にいるそれと決着をつけないと、何も終わらないんだ」
そう、これは紛れもなく俺の身勝手な主張だ。少なくとも俺は、これまでの事とこれからの事を皆に打ち明け、その上で解決するべきなんだ。本来、これはそうするべきなんだろう。
だからこそ、俺は独りで立ち向かう。独りで戦うからこそ意味があり、俺自身で解決するからこそこの事象に存在する理由がある。だから一人じゃなきゃいけないんだよ。
それに、これは自分自身との戦いでもあるんだ。
身勝手で、自己中心的で、自分の在り方を押し付け、あたかもそれが正論だと喚いて。今置かれている状況の責任を他人に転嫁し、自分を守ろうとする醜悪な存在。俺が一番忌み嫌う存在を。
「そのために、これを預けておくよ」
右手を動かし、用意してきた物を準備する。ストレージの中から目的のブツをオブジェクト化した。
「それは…………?」
「あれだ、メッセージを録音したクリスタルだよ。まあ知ってると思うけどね」
これは、録音した音声を持ち運び、再生できるという優れものだ。先程の5分弱で用意したものはこれだ。時間も限られているので、これで済ませてしまおう。
「それ、あとで見といて。割と大事な話が録音されてるから」
「ソラ、それってまさか」
「待って、そんな大事な話ならどうしてここで…………」
クリスタルを強引に…………近くにいたリズに押し付ける。何のことか分からないリズの手の平をこじ開け、クリスタルは添えるだけ。あとは開いたものを閉じて作業完了。何のこっちゃ分からないだろうが、勘弁してほしい。残されてる時間はそれほど多くないんだ。
「渡すものは渡したからな。それじゃあこの辺で……」
言及されるのも厄介なのですぐさま逃げようと後ろを向く。そしてAGIにものを言わせてその場を
「待って!」
「ぐぉ!?」
足を踏み出そうとする……がしかし進まず、逆に後ろへ引っ張られる。態勢を崩されしりもちをつきそうなところを、リズに抱き留められる。
「………………いかないで」
背中から俺を抱き寄せ、決して逃がそうとしない。自分の体を背中に押し付けがっちりと固定している。リズのSTRを考えるとこの強さは納得がいく。が、それだけとは思えないほど強く、きつく抱きしめられていた。
「リズ、何を」
「嫌だ……。行かないでよ…………」
背中越しに聞こえる声は、カタカタと震えていた。「行かないで」という言葉は直感からだろうが、なんだか全て見過ごされているような感じがする。
「あんたがいなくなるだなんて嫌よ……!そんなの耐えられない…………!」
「いなくなるだなんて、そんなこと一言も」
「言わなくても分かるわよ!!どれだけ長い時間いたと思ってるのよ、バカ!!」
「リズ…………」
悲鳴のような懇願は、いつしか号哭へと。
「ここであんたを離せば、絶対に帰ってこない……。だから、何が何でも…………」
「リズ、俺は」
「やめて!そんな諦めたような顔で言わないで!そんな顔、永遠の別れみたいじゃない……………」
…………本当に、バレバレなんだな。全く、こいつには敵いそうにない。
「行かないでよ…………。どこにも行かないで………………」
リズ………………。
ごめん。
「ぅあ…………」
リズの腕を解き、後ろにいるリズに振り向く と同時にリズの喉元に突きを繰り出す。突きは黄色のエフェクトを纏い、リズの喉元を抉る。体術スキル《エンブレイザー》。圏内だからダメージは通らず、衝撃だけがリズを襲う。その一撃は、俺からリズを引き離すのには十分だった。
「どう、して?」
「悪い。でももう戻れないから。言いたいことはそれにブチ込んどいたし」
伝えたいことは、全部クリスタルに詰め込んだ。退路も断った。だから。
「ああ、でも。まあ、一つだけここで言っとかなきゃな」
改めて、四人と向き合う。ほんの一瞬、されど
「ダメ、待って………………」
リズが俺に手を伸ばす。「行かないで」、「逝かないで」と捕まえようとして。最後の悪あがきのように、必死で。
だが、掴んだのは何もない空間だった。
「うそ、やだ……」
最期に伝えるなら、感謝の言葉でなくちゃね。
「お世話に、なりました」
残響が消えないうちに、後悔が俺を捕まえる前に、逃げるようにその場から走り去った。
『えー、テステス。ん、ちゃんと録音されてるみたいだな。』
『それじゃ、時間もないし始めようと思う。』
『これから話すのは、今あの場所で起きていること。それと、それからどうなるかってこと。情報量が多くて大変だろうけど、勘弁な。カップラ程度しか時間がないからさ。分からない部分があったら、まあ知らなくてよかったとか思っといて。』
『それと、ささやかながら贈り物があるんだ。』
『そだ。聞いたら、このメッセージは速やかに処分してくれ。クリスタルを抹消して、情報は誰にも漏らさないこと。いいね?こんな話を他の人に聞かれて混乱させたくはないからね。まあ、その辺はアルゴがいるから安心してるよ。』
『それじゃあ、話すとしますかね。世界に歪められた二人の男女の、悲しい悲しい恋物語を。』
『え、なに恰好つけてるんだって?いやだなぁもう。そのくらい許されたっていいじゃないか。』
『せっかくの遺言なんだ。最期のわがままくらい笑って許してよ。』
遅れてしまい申し訳ありません。
詳しいことは活動報告で。
あと、いつも通り批判苦情など、私を潰すような言葉を大募集しますのでよろしくお願いします。