IS-Twin/Face-   作:reizen

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初めてのかたは初めまして。もう一つの方を知っている方はありがとうございます。
酷くつまらないことを覚悟してお読みください。


第1章 優しき顔には裏があり
第1話 二人の男


 その学校は厳密にはそう決まってはいないが、特質上では実質的に「女子校」となっていた。そのため規則は一般的な女子校のものを参考にされている。また、カリキュラムも通常授業とは別に「IS」という、パワードスーツを用いた軍事訓練に砂糖の塊を入れた感じの授業が行われる。

 そんな特殊な学校……IS学園に今年度、二人の()()()()が入学することになった。

 

 

 「IS」とは「インフィニット・ストラトス」という今日では「競技」として用いられている戦闘用パワードスーツの略称である。IS学園はISを学ぶ学校であり、世間では軍事学校と言うイメージが強い。それでも入学希望者は設立当初から常に定員の10倍はおり、激戦区となっている。

 そんな学校に入学する男子生徒はどれほどのものかと聞かれても、おそらく一人の評価は高いだろうがもう一人の評価はイマイチとなる。何故なら一人はイケメンであり、もう一人はブサメン……ではないが、少なくとももう一人に容姿は劣っていた。さらに言えばその男の髪は無駄に整えられており、同時に「残念なナルシスト」と言う称号も得ている。もっとも彼が髪をセットしたのかと聞かれれば彼を知る人間は揃って「それはない」と答えるだろう。寝癖があるならば直すが、少なくとも普段から髪をセットするなどと言う行為を行うような人間はなく、ましてや周りが女だからという理由で気合いを入れてセットするタイプでもない。

 

(………休憩しよ)

 

 チラホラと生徒が集まりだしたのを見たもう一人の男子は私用していたシャープペンシルを机の上に置き、教科書とノートを重ねて枕代わりにしてそのまま突っ伏す。

 それからしばらくして教室に同年代に見える一人の女性が入ってきたことで一同は席に着く。そのうるささに顔を上げた男子生徒はその女性の姿を確認するとすぐに顔を下げた。

 そしてSHRが始まるがイマイチ生徒たちが悪いため、初めて教職を務める彼女は一通り学校のことを説明し終えると、「自己紹介を始める」という名目で生徒たちに丸投げをした。

 しばらくその自己紹介が続いたところで、女性が自分の目の前にいる男子生徒に声をかける。

 

「織斑君……織斑一夏君!」

 

 一度目で反応しなかったため、二度目はフルネームで、そして先程よりも大きな声で名前を呼ぶと反応する男子生徒声を上ずらせながらも返事をした。

 

「大声出しちゃってごめんね? でも今自己紹介中で、「あ」から始まって今は「お」の織斑君なんだよね。だからね、自己紹介してくれるかな? ダメかな?」

 

 本人にその気はないのだが、比較的に猫なで声を出して尋ねる女性―――山田真耶は何度も頭を下げていた。

 

「あの、そんなに謝らなくても……っていくか自己紹介しますから、先生落ち着いてください」

「本当? 本当ですか? 約束ですよ、絶対ですよ!!」

 

 男子生徒の手を平然と手に取って詰め寄る山田真耶。やがて自分がしたことを理解した彼女は手を戻して大人しくなる。

 先程まで真耶と手を繋いでいた男子生徒は最前列に真ん中と言う、注目を集めやすい場所に座っていたためか、自己紹介をするために後ろを向いて生徒たちを一望する。先程まで彼を見ていた視線が一気に注いだため、話すのを躊躇った。

 

(ええい。ここで躊躇っていたら男が廃る!!)

 

 自分にそう言い聞かせた少年は挨拶を始め、

 

「えー…えっと、織斑(おりむら)一夏(いちか)です。よろしくお願いします」

 

 頭を下げてから数秒してあげる。するとさらに視線が集中し始めたので、彼は最後列の左端に座る自分と同じ「男」という性を持つ者を見た。

 だがその男は未だに突っ伏している。それでも視線をかわそうとしたのが通じたのか、その男子生徒は顔を上げた。

 

(頼む、俺に救いを―――)

 

 その念は届かなかったようで、男子生徒は再び突っ伏した。

 

(ヤバい。これ以上黙っていたら「暗い奴」ってレッテルを貼られてしまう!! それだけはなんとか避けねば!!)

 

 頭をフルに回転させ、ある一つの単語が出て来たのでそれを堂々と言った。

 

「———以上です!!」

 

 しかしそれは女子たちが期待したものではないこと、そしてようやく出たと思ったものがそれだったため、ほとんどのクラスメイト達はその場で滑る。

 

「え? 何か問題ありました?」

 

 本気でそう尋ねる一夏。彼の後ろに人影が現れ、一夏の頭部に衝撃を食らわせた。

 そのまま勢いよく机に突っ込み、前後から事実的に攻撃を食らう一夏。頭を擦って文句を言おうと後ろを見ると、鋭くなっていた視線は緩くなり、

 

「げえっ、関羽!?」

 

 最近では武将を女にしたものを見かけるようになったが、例えそうだとしても一般的に男の武将として知れ渡っている名前を堂々と言うのは失礼に当たる。二発目が当たったが、誰も同情しなかった。

 だがそれは傍から見ればの話であり、一夏にとっては話は別だ。

 

「誰が三国志の英雄か、馬鹿者」

 

 そう言った女性が上げた功績を考えればあながち間違いでもなかったりする。

 千冬は真耶との会話を始めるが、一夏は考えていた。

 

(な、何で千冬姉がこんなところにいるんだよ!? 職業不詳で月に1度か2度ぐらいしか帰らない我が姉が!?)

 

 織斑千冬と織斑一夏。この二人は姉弟であり、この世の中では珍しいほどに仲がいい姉弟である。だが千冬はあまり一夏に自分のことを話さないため、一夏によく「失踪癖がある」と思われていた。さらに自分には見せない顔を真耶に見せていることもあって、新しい姉を見て困惑を覚える。

 会話が終わり、千冬は生徒たちの方を見て自己紹介を始めた。

 

「諸君、私が織斑千冬だ。君たち新人を一年で使い物になる操縦者に育て上げるのが仕事だ。私のいう事はよく聴き、よく理解しろ。できない者にはできるまで指導してやる。逆らっても良いが、私の言っていることはいずれ貴様らのためになる聞け。いいな」

 

 織斑千冬。補足すると彼女は世界最初に行われたISの大会で世界一になった女性である。そのため国内外問わず、彼女に憧れるものは少なくないため―――

 

「キャー!! 千冬様! 本物の千冬様よ!」

「ずっとファンでした!」

「私、お姉さまに憧れてこの学園に来たんです! 北九州から!」

「あの千冬様にご指導いただけるなんて嬉しいです!」

「私、お姉さまのためなら死ねます!」

 

 ―――このようにかなり度を越えた熱狂的なファンがいるが、これはまだ多少マシな方だった。

 

「……毎年、よくもこれだけの馬鹿者が集まる者だ。感心させられる。それとも何か? 私のクラスにだけ馬鹿者を集中させてるのか?」

 

 本気で呆れている千冬だが、その言葉はむしろ増長を招く結果となった。

 

「きゃあああああああ!! お姉様! もっと叱って! 罵って!」

「でも時には優しくして!」

「そしてつけあがらないようにして躾をして~!」

 

 一夏は担任が自分の姉だったことに混乱と驚愕していたのだが、さっきまでのソニックブームでその感情が冷めていて、つい先日見た「誰も知らない○○シリーズ」でやっていた「自分よりも強い感情が近くにあると人は相対的な意識が働いて落ち着く」という説明を思い出していた。

 生徒たちを沈めた千冬は一夏を見て辛辣な言葉を吐く。

 

「で? 挨拶も満足にできんのか、お前は」

 

 その言葉に言い訳をしようとする一夏だが、出した言葉がまずかったことに気付いたのは殴られた跡である。

 

「いや、千冬姉、俺は―――」

「織斑先生と呼べ」

「………はい、織斑先生」

 

 一夏としてはつい家にいる風に呼んでしまったが、「せめてどうしてか説明してほしい」と内心泣き始める。

 しかし、どうやらクラスメイトたちは千冬と一夏の関係性に気付かなかったらしい。周りでひそひそと彼らの関係性を話し始める。

 

「え……? お、織斑君て、あの千冬様の弟……?」

「それじゃあ、世界で数少ない男で「IS」を使えるっていうのも、それが関係して……」

「いいなぁっ。代わってほしいなぁ……」

「え? じゃあもう一人も………」

 

 自然ともう一人の男子の方に視線が集まるが、さっきから微動だにしないでいる。

 それに気づかなかった千冬はその男子に挨拶するように言った。

 

「もうそろそろ時間だな。最後に舞崎(まいさき)、自己紹介をしろ。………舞崎?」

 

 「舞崎」と呼ばれた男子は返事をしないどころか、全く動かなかった。

 心配になった千冬はその男子の所へと移動する。

 

「おい、舞さ―――」

 

 唐突に拳を繰り出される。千冬はそれを受け止めると同時に顔を上げた少年は周りを見回して、

 

「ああ、なんだ。夢か」

 

 ホッとため息を吐いて伸びをしようとしたが、自分の腕が千冬に掴まれていることに気付いた。

 

「…………意外です。IS操縦者も発情するんですね。発情期ですか? だったらすぐに男を作ることをお勧めしますよ。ただでさえIS操縦者って敬遠されがちなので。それと離してくれませんかね? 残念ですが、僕はあなたほど年上の方はタイプじゃないんです」

「あ、ああ……」

 

 急に言われた内容が頭に入ってこなかったため、つい普通に離してしまう。

 

「で、一体何か用ですか? 僕は見ての通り勉強に忙しいので早く用件を伝えてくれません?」

「…………まぁいい。もう時間がない自己紹介をしろ」

 

 言われた少年は「わかりました」と答えて席を立ち、一度咳払いをする。

 

「初めまして、みなさん。私の名前は舞崎静流(しずる)。女として使われることが多い名前ですが、れっきとした男です。ISに関してはつい最近動かせることを知ったためそんなに知識がありませんが、できれば仲良くしていただけると幸いです」

 

 あまりにも普通の自己紹介だったことで全員が驚く。だが千冬だけはホッとした様子で言った。

 そして教卓の前に戻った彼女が、先程の自己紹介と同じテンションで堂々と言う。

 

「これでSHRは終わりだ。諸君らにはこれからISの基礎知識を半月で覚えてもらう。その後実習だが、基本動作は半月で体に染み込ませろ。いいか、いいなら返事をしろ。良くなくても返事をしろ。私の言葉には絶対に返事をしろ!」

 

 女子たちは一斉に「はい」と返事する。一人は未だに現実に戻れず、一人は恥ずかしさから沈黙で返す。そして教員二人が部屋から出た瞬間、静流は出していた教科書と参考書を積み立てて枕にし、突っ伏すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 舞崎静流の精神体力はこの時間で既に限界を迎えていた。彼はこの学園に入学が決まった時にはこの日まで二週間もなく、本当勉強する日々を続けていた。

 家族がいない彼は引っ越しすることを決めたが、そのための引っ越しの準備を終えた時の1週間と数日。さらに毎日のトレーニングもかなりハードを送っていたのである。とはいえ流石に休憩してはいたが、その時もロボット関係のゲームやアニメを見るなど、ここに適応するためのことをしていたので実質寝る時以外は準備しかしていない。元々アニメは見ていたとはいえ、それでも体に来るものがあった。

 そのため、一時間目が終わった彼はすぐさま体を休めているのである。

 

(やっぱり、もう少し手加減しても良かったかなぁ)

 

 流石に寝てしまっては次の時間に支障をきたしてしまうので意識を手放すことはしていないが、それでも気を緩めればすぐに寝れる自信はあった。

 そんな状態の静流に、とある生徒が声をかける。

 

「ちょっといいか?」

「……ああ、君か。何だい?」

 

 静流の前に現れた黒髪でこのクラスで……いや、この学園の生徒で静流を除いて唯一の男子生徒になる織斑一夏。織斑千冬の弟だ。

 

「この学園で男って俺と静流だけだろ? だから挨拶しておこうって思って」

「「この学園の女はすべて俺の物だ、手を出すな」って?」

「いや、何でだよ」

 

 静流の口から飛び出した爆弾発言に冷静に突っ込みを入れる一夏。

 

「いやぁ、てっきり挨拶って言うからそういうことかなぁって。中学時代にいたんだよ、そういう人」

「い、いたのか……お前も苦労してるんだな」

 

 同情的な視線を向ける一夏に、静流は微笑んで返し手を差し伸べる。

 

「改めて、僕は舞崎静流。……そういえば、こういう時って好きなロボットとか言った方がいいの?」

 

 静流の質問に一夏は「え?」と言う顔をした。

 

「悪い。俺、あまりそういうのはあまり知らないんだ」

「そうなんだ。なんか、ごめんね」

「俺もごめん。今度見ようか?」

「いいよ。IS関係をこの年から勉強するのって結構疲れるし、そんな元気なんてないよ?」

「そうなのか? そうだ、俺は織斑一夏。一夏でいいぜ」

 

 そう言って二人は握手をする。とその時、一人の女生徒が二人の所へと近づいていき、声をかけた。

 

「んんっ! ……ちょっといいか」

 

 二人の男子はその声を方へと向く。そこには美しい黒髪に長いポニーテール、髪をまとめている緑のリボンがトレードマークな女生徒がいた。

 

「……箒?」

「二週間ぶりだね、篠田(しのだ)さん」

「え!?」

 

 静流の言葉に驚きを顕わにする一夏。その様子が顔に出ているが、静流はその女生徒の方を見ているので気付いていない。その女生徒は言うと、静流と話をしていた。

 

「そうだな。だが今の私は「篠ノ之(しののの)」なんだ」

「そうなんだ。ごめんごめん」

「いや、いい。つい最近までそう名乗っていたのだからな」

 

 二人は仲良く話しているため蚊帳の外にいる一夏。しかし当の本人はそれに突っ込みもせず、ただただ箒と呼んだ知り合いが成長していることに驚いていた。

 織斑一夏と篠ノ之箒は幼馴染だ。そのため過去の箒の事を知っているが、話し方が男口調ということもあってよく男子から弄られていたこともあって自分以外の男と話すことはほとんど見たことがない。一夏の場合はその状況を助けたこともあって会話するが、それ以降も一夏の前では他の男と会話することはなかった。

 

(……箒……成長したんだな……)

 

 本人が聞けば怒られるとわかっている一夏は言葉に出さないが、それでも何を考えているのか気付いた箒は一夏にジト目を向けた。

 

「一夏、何だその目は」

「え? 生まれたままの目をしているんじゃないのか?」

「たぶんそういうことを言いたいんじゃないと思うよ、篠……ノ之さんは」

 

 静流に言われて何かを思い出した一夏はすぐに聞く。

 

「そういえば、二人って知り合いだったのか?」

「うん。昨年度の頭に彼女が転校して来てね。隣同士だったからそれが縁で話すようになったんだ」

「へぇ………」

 

 意外そうに箒を見る一夏。その反応に箒は「何か言いたそうだな」と圧力のようなものをかけるが、一夏はゆっくりと顔を逸らす。

 

「そう言う君たちは? もしかして篠ノ之さんがずっと話していた―――」

「それ以上は言うな!」

 

 急に叫ぶ箒に元から注目していた生徒たちに、興味を持っていなかった者たちが加わる。顔を赤くする箒だが、その熱を冷ますように一夏が言った。

 

「? よくわからないけど、俺たちは幼馴染なんだ」

「……へぇ」

 

 この時点で何か気付いたらしい静流は相槌を打つように答える。その答えを聞いた一夏は「反応が弱いな」と思うが、それは彼が箒の気持ちに気付いていないからできる所業だった。

 

「で、篠ノ之さんはどうしたの? もしかして早速行動に移そうとして、僕を排除しに来たとか―――」

「お前はもう黙ってろ!」

「やだなぁ。僕の口を閉めるのは並大抵じゃできないってよく知ってるでしょ」

「………ああ、そうだな」

 

 箒はどこか遠くを見始める。二人が知る世界が展開されているようで一夏はまた置き去りにされるが、怒るよりもむしろ二人が仲良く話す様に感動していた。

 するとチャイムが鳴って教員たちが戻ってくるのを見て、箒と一夏はすぐさま戻っていく。だからだろう、静流の顔が少し変わったことに気付かなかった。




ということで記念すべき第一話は典型的な説明回。
たぶんこれで「主人公がありえない人たちと仲良くしている!?」と思った人は、自称策士から来てくださった方と予想します。

次回予定

慣れない授業に追いつくために勉強を続ける静流。その休憩時間に彼と一夏の前に金髪の彼女が現れる。

わがままの歩む道 第二話

「英国代表候補生」
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