IS-Twin/Face-   作:reizen

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第42話 一方的な暴力

 目が覚めた時、俺は死んだのかと思った。

 思わぬ裏切りに俺は怒りもよりも後悔が先に来ていた。

 

「……何で俺は、先にIS学園に入学したんだろう」

「それは仕方ないことだと思います。何故なら人は自分のことが大切―――」

「IS奪って女権団を壊滅させとけばクロエと離れることがなかったのに!!」

「………もはや予想の斜め上にぶっ飛びすぎて何とも言えないです」

 

 そんなこと言われてもな、後悔と言えばそっちの方が先に……ところで……

 

「誰だ、テメェ」

「あ、私ですか? 私はその………」

「新しい遺伝子強化素体?」

「………違います。あなたのイメージとしてクロエ・クロニクルの身体をお借りしているだけです」

 

 わけがわからないよ。

 

「で、誰だお前は。さっさと答えないとお尻ぺんぺんだ」

「………実はあなた、凄く子ども好きですよね? あ、わかりました! 言いますから」

 

 一睨みすると黙り、こいつもこいつで予想の斜め上を言った。

 

「私はコアNo.27、そしてあなたの感情に予定外の事態で反応し、あなたの家族が殺される元凶を作ったものです」

 

 …………OK、把握した。

 俺は目の前の女を掴み、文句を怒鳴るように言う。

 

「テメェのせいで……テメェのせいで俺の家族は!! …………って、あの時の俺なら言ってたろうな」

「………え? いつもみたいに殴らないんですか?」

「じゃあ逆に聞くが、お前は俺を殺したくて反応したのか?」

 

 自称ISコアは首を横に振る。そりゃそうだ。基本的にこいつらに世界をどうこうできないのだから。………できたとしても、逆に「いずれ世界を乗っ取られるかもしれない」と思われて処分されるのは目に見えている。

 ………ところで、いつもみたいとは一体どういうことかね?

 

「つまりそういうことだ。ま、恥ずかしいことに、確かに俺は前まではISを恨んでいた。藍越学園に進んだのも技術を吸収して新兵器を作るため………だがまぁ、今じゃそんなことは止めることにしたよ」

「………どうしてですか? そうすれば男の利権だって―――」

「だって今の女と戦争したって俺ら3人の圧勝だってわかり切ってるからな」

 

 早坂零司も桂木悠夜も、俺が知らない間に力を付けている。だからこそあいつらと共にかつてのように戦えば女権団だろうがなんだろうが余裕で潰せる。

 

「………あなたはもう、そのような形でしか対話できないのですか?」

「向こうがまともな対話をするって言うなら、こっちはそうするつもりだ。実際女でもまともに話が分かる奴はいる。それは俺の経験の中でも現れているが………女権団は別だ。それに俺は―――」

 

 俺はふと、あることに気付いて周りを見渡した。

 

「………時間が……止まっている?」

「……いえ。私が存在できるのはあくまであなたの意識下の中。なので、あなたの意識を無理矢理引っ張り込みました。……つまりあなたは生きています」

 

 俺はさっきまで自分が立っていた自分の位置からクロエが銃を撃ったと仮定して飛んだであろう銃弾の場所を探す―――と、

 

「あれは私が投影した偽物です。本物の銃弾は量子変換してすぐに消去しました」

「……な、なぁにそれぇ」

「凄いでしょ。ですが、この映像もわずかですが少しずつ動いています。………見ての通り、今度は彼女が狙われますよ」

 

 見ると、1人が懐から銃を出そうとしているようだ。

 

「………じゃあ、もう早速本題に入れ」

「…わかりました。私があなたに問うのはたった1つ。あなたは、ISという力を欲しますか?」

「もちろんだ」

 

 即答すると、その少女は驚いたように言った。

 

「……あの、あなたは専用機をいらないって―――」

「話を変えるが、俺にしか反応しないコアってお前だろ?」

「何でわかったんですか?」

 

 とりあえず近付いて俺は少女の頭をグリグリした。ちゃんと手加減しているけどな。

 

「まるで幼女に取りついた幽霊みたいに何度も何度も謝ってきた怪奇現象の声に似ていて、さっきからしなくてもいいお節介ばっかり焼いていれば誰だってわかるっての!! 俺は織斑みたいな超が100個じゃ足りない程ついている阿呆じゃねえんだぞ!」

「だからって、それだけで私があのコアだってわかるわけが―――」

「織斑千冬っぽいのを相手にする時に装甲の解除に反対する意見が妙に人間ぽかったんだが?」

「……………あ、あれは、つい……」

 

 負けると思われていたのか。結構ショックだ。

 

「ともあれ、だ。今はそんなことどうでもいい。さっさと寄越せ。後出口もだ」

 

 すると少女は泣きながら見覚えのあるコアになり、まるでアニメのようにドアが現れる。

 俺はそれを掴んでドアを開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 という事を伝えたところで鼻で笑われるだけなので、話が分かる奴にしか言うつもりはない。………にしても、

 

(エネルギー吸収に異空間に無茶な理論で強制接続してエネルギーをぶっ放すったぁ……俺でもわかるレベルのロマンだな)

 

 思わず叫びながらぶっ放したが、威力は全く申し分ない。いや、それどころか………クロエが殺されたと思っていたあの時の早さと何ら変わっていない。

 

【このISはあなたのための………いえ、あなたのためだけに生み出したもの。思う存分使ってください】

(………ああ。言われなくても、だ)

 

 機体名を出すと、これはこれで洒落た名前じゃねえか。「羅鬼(らき)」とはね。

 

「………なんなのよ……」

「あれって、アメリカとイスラエルが共同開発しているって機体よね……?」

「どうして軍用ISがここにいるのよ?!」

「―――へぇ……」

 

 俺は思わず笑みを浮かべた。だって軍用だぜ、軍用。そんな大物を相手にできるなんて……

 

「最高にハイって奴だ!!」

 

 瞬時加速でいつも通り福音の懐に中に入ってぶん殴った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――最高にハイって奴だ!!

 

 遠くでそんなことを静流が叫んでいる頃、1人の女性スナイパーが馬鹿にするように笑みを浮かべながら静流を撃とうとしていた。

 

「何馬鹿なことを叫んでいるんだか」

「それに関しては概ね同感だ」

 

 急に男の声がしたため、スナイパーはすぐそっちに照準を向けようとするが腹部を蹴られて吹き飛ぶ。

 

「な、何でここが………」

「ここ以外に絶好の殺害スポットはないからな。従弟を囮にして奴の化けの皮が剥がれた後に1人1人逮捕しようとしたが………まさか祖父母を殺すとはな」

 

 男は女に踵落としした―――が、それだけで女性の右腕と右足はもげ、肘と膝から先が分離した。

 悲鳴を上げ、助けを呼ぶ女性。だが、

 

「よく見ろ………って見れないか。今、下では馬鹿が軍用相手に暴れていてな。そろそろ弱すぎて飽きる頃だろうよ」

「………何で……相手は軍用……」

「おそらく俺と同じISだろうな、あれは」

 

 女性は今の発言の意味を理解できなかった。いや、してしまえばそれは―――彼女らにとって新たな絶望の種になるからだ。

 

「そんなことよりも、だ」

 

 男は女の顔を殴り、鼻の骨を折る。

 

「アンタの処遇は俺個人に一任された。つまり、お前を殺すも生かすも俺次第―――」

「そこまでにしろ、高間」

 

 高間と呼ばれた男は舌打ちをして現れた男に言った。

 

「何の用だ?」

「そこまでやれば十分だ。後は法で捌く」

「そうか。では罪状は「女として存在し、逆恨みで老夫婦を殺害したので虐殺処刑」だな」

「お前裁判舐めてるだろ?」

「舐めてねえよ。っていうか何でお前が来たんだよ、武藤」

「お前を止められるのが俺しかいないからだよ!」

 

 盛大に突っ込みを入れる武藤正勝。

 

「全く。ようやく起きたと思ったら早速勝手に出撃した挙句に今度は「仇を見つけたからちょっと殺ってくる」とか意味不明なメッセージを送りやがって!!」

「そのままの意味だったんだが?」

「そっちの話をしているんじゃねえよ!!」

 

 すると下の方で騒がしくなったので、高間と呼ばれた男は女を掴んで他の女たちがいる場所に放った。

 

「おい待て、何さりげなく止め射してんだ」

「なに。着地する瞬間にロゼに受け止めさせる」

 

 そう言って高間は同じ軌道で自分の従弟である静流がいる場所に飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、静流の周囲はまさしくお通夜状態だった。それもそのはず、急に高性能機を展開したかと思ったら軍用相手に一方的な蹂躙ぶりを見せ、福音を右足のみで地面に抑えつけているのだから。

 

「………軍用ってこんなに弱いのか。やっぱり篠ノ之束と友達になってもう少し強い最終兵器でも作ってもらおうかな」

 

 第四世代機である紅椿の他、3か国の最新機影に1機のカスタム機が相手になっても苦戦した第二形態となった福音。それを静流は羅鬼のみで潰してこの発言である。これには女らは何も言えまい。

 

 ―――ドサッ

 

 静流の後ろに何かが落ちてくる。それを見た一夏はあまりのグロさに意識が飛びそうになった。

 

「え………?」

「何で撃たないのって思ったら……」

「って言うか、何でバレてんのよ……」

「―――狙撃手を使うなら市街戦が常識だ。それをこんなクソッ広いところで使うとか常識を疑うな。襲ってくれと言っているようなものだぞ」

 

 そう述べる高間を見た静流は舌打ちをして、福音の装甲を無理矢理引き剥がして、コアを無理矢理分離させて自身のISを解除する。

 

「……こんなもんか。で、これは何だ?」

「じいさんとばあさんを殺した奴だ」

「そうか」

 

 そして静流は既に弱っている女の腹部に蹴りを入れた。

 

「おい! 何やってんだよ静流! もうその人は弱ってんだぞ!?」

「こいつに関して……いや違うな」

 

 静流は一夏を馬鹿にするような目で見て言った。

 

「ここにいる女は愚かにも俺たちに喧嘩を売った馬鹿共だ。ならば、相応の制裁が必要だろ」

「そんなこと必要ない!」

「そうか―――だがそれは所詮、お前ら雑魚の理屈だ」

 

 静流はそこから消え、状況を打開するためかクロエを人質に取ろうと移動した女の顔面を蹴り飛ばした。

 

「覚えておけ、織斑一夏。俺がIS学園を潰さないのは―――どうせ戦っても雑魚しかないからだ」

 

 一夏は今すぐ止めようとするが、それを止めたのは意外なことに箒だった。

 

「箒!? 邪魔をしないでくれ!!」

「………一夏、はっきり言おう。行っても無駄だ」

「でも―――」

「今行っても、無駄死にするだけだ!!」

 

 叫ぶように言われたこともあり、一夏はその場で止まる。だがそれは正解でもあった。

 もしあそこで庇おうものならば、一夏は静流によって「処刑」と称してボコボコにされていだろう。ISを壊され、完膚なきまでに精神を折られてもおかしくない。そうなりそうだと思ったからこそ、箒は止めたのである。

 

 しばらくし、その一方的な蹂躙は誰も戦えるものがいなくなったので終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「作戦完了………と言いたいところだが、お前たちは独自行動という重大な違反を犯した。学園に帰ったらすぐ反省文の提出と懲罰用のトレーニングを用意してやる。……だがその前にだ」

 

 千冬は帰ってきた戦士たちに冷たくそう言い、後ろで平然といちゃつく(というよりも一方的に愛でている)静流に言った。

 

「舞崎、お前も一応は違反者だ。正座しろ」

「黙れ死ね失せろ」

 

 静流は噛まずにクロエを撫でる。抱きしめる。そのパターンを何度も繰り返すが、もしここに人がいなければ押し倒していただろう。そんな中で正座を強要された場合の発言に、千冬は頭を抱えた。

 

「ま、マスター……その、あの………正座、しましょう?」

「………まぁ、クロエがそう言うなら」

 

 クロエに言われて静流は大人しく正座すると、千冬は少しショックを受けた。

 ちなみに静流はクロエを離すつもりはないのか、彼女を膝に座らせてそのまま抱きしめている。

 

「で、でも、織斑先生。みなさん怪我をしていますし……」

「舞崎はしていないだろう?」

「流石にここで着替えさせるので少しマズいですよ」

 

 空気を読んだのか、静流はクロエを抱きしめたまま立ち上がって部屋を出る。

 

「……とても同一人物とは思えないわね」

「……ええ。ラウラさんにも見せたことありませんわよね、あの笑顔」

 

 そのラウラはと言うと、バレないように顔に出さないが物凄く嫉妬していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そろそろ、シャワー浴びたいと思う。

 いや、決して下品な意味ではない。ただいくら雑魚相手とはいえ、流石に汗をかきすぎた。

 

「なぁクロエ、一緒に風呂に入らないか?」

「………随分と大胆になりましたね。ラウラと一緒に入ったのに、私とも、なんて」

「あれはただの妹だからな………おい待て」

 

 今、とても重要な事を聞いたんだが……というか、

 

「何でラウラと一緒に入ったことを知っている!?」

「それは―――」

「―――その秘密、教えてあげようか?」

 

 唐突に声をかけられて俺は本心から驚いた。全く気配が感じなかったこともそうだが、何よりも―――

 

「篠ノ之束、か? アンタが俺に話しかける一体どういう―――」

 

 ―――パァンッ!!

 

 乾いた音が俺の前で起こる。一瞬、俺が死んだかと思ったがそれは間違いだった。

 

 ―――何故なら、俺の隣で鮮血が舞ったから

 

「―――君が悪いんだよ、舞崎静流。君みたいなのがいたから、私はくーちゃんを捨てたんだ」

 

 俺は倒れていくクロエを受け止める。周りからは急に起こった音で生徒たちが飛び出して来た。

 

「クロエ! クロ―――」

 

 揺らしながら名前を呼ぶと、感じたことがある手が俺に触れる。

 

「彼女の命は私が繋いでおく。だから……行ってらっしゃい」

 

 その声は信じれる。そう思った俺は事を成し得てスキップした女を―――ぶん殴って山に叩きつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――完



























―――次章 最終章 篠ノ之


第43話 唸る修羅
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